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週刊『夏野総研』号外【「スマホでマリオ」が任天堂を復活させる!】(※再掲載)
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週刊『夏野総研』号外【「スマホでマリオ」が任天堂を復活させる!】(※再掲載)

2015-03-25 15:40
    ▼号外
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         夏野剛メールマガジン 週刊『夏野総研』
                    号外
             【「スマホでマリオ」が任天堂を復活させる!】(※再掲載)
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    この記事は、20131220日に掲載したビジネスモデル分析の再掲載です。


    ・「スマホでマリオ」が任天堂を復活させる!

     201311月に行われた『ドラゴンクエスト』の無料配信キャンペーンは大きな話題となった。これは『ドラゴンクエスト ポータブルアプリ』内で、通常価格500円の『ドラゴンクエストI』を先着100万ダウンロード限定で無料配信するというもの。初日で100万ダウンロードを達成し、あまりの人気ぶりに無料配信期間を延長するほどであった。このように『パズル&ドラゴン』を筆頭に大流行中のスマホのゲーム業界では、ドラクエの例のように往年の人気ゲームがスマホ展開されつつある。
     だが、国民的なゲームと言っても過言ではない『ポケットモンスター』や『スーパーマリオ』などの任天堂のゲームがスマホ対応したというニュースは聞かない。ドラクエや『ファイナルファンタジー』が大ヒットするなか、任天堂が自社以外のプラットフォームにコンテンツを提供することはなかった。しかし、スマホやタブレットがDSなどゲーム専用機としての携帯型ゲーム機に取って代わった今、ビジネスモデルの大きな転換は遅かれ早かれしなくてはいけないことになる。
     では、任天堂はどのように進化していけばよいのだろうか? 今回は日本のゲーム業界をけん引する任天堂のビジネスモデルについて解説していきたいと思う。

     具体的なビジネスモデルの内容に移る前にゲームコンテンツの課金方法について触れておきたい。
     コンテンツの購入(課金)は、大きく「都度課金」と「月額課金」に分類することができる。日本の携帯コンテンツの市場は、月額課金で立ち上がったといっても過言ではない。この月額課金のビジネスモデル、「月額300円以内」という設定があったのだが、最初にその理由をゲーム理論的に解説してみたいと思う。
     まず、ユーザーの視点。300円という値段はユーザーから見て手頃な価格であるという印象を与えることができる。お試し感覚で登録してみることもでき、サービスを利用することへの敷居は低くなる。加えて、継続課金を止めることは今までプレイしてきたゲームのセーブデータや登録情報が消えてしまうことを意味し、ユーザーはこれを好まない傾向が強い。つまり、退会のリスクを減らすこともできる。結果、多くのユーザーは長期的に課金を続けることになり、一人300円/月という価格設定であっても、その合計金額はまとまった金額となる。また、ユーザー側にとってもいつでも退会できるという安心感を低リスクで得られるのも大きいだろう。
     次は、コンテンツプロバイダーの視点から見てみよう。月額課金を行うことで、一定数の退会があったとしても一定の割合での入会もあるので、ベースとしてのユーザー規模が急激に減少することはない。そして、プロモーションを行う度にベースとなるユーザー数は底上げされていく。このように、ユーザー数はキープされ、プロモーションや新サービスによってユーザー数が積み上がっていくことを、業界用語では「ザブトン」と呼ぶ。短期間で見ると、コンテンツプロバイダーにとって300円という価格設定は、「1ヶ月では元が取れないこと」を意味するものの、ライフタイムバリュー(ユーザーが平均何ヶ月で退会するかという値)が10ヶ月ならば、ユーザーは平均で3000円払うということになる。つまり、長い目で見れば大きな利益を得ることも可能になるのだ。ドコモなどのキャリア側にとっても、通信によるトラフィックの増加を見込むことができるのでメリットはとても大きい。

     一方の都度課金の場合のビジネスモデルだが、サービスの価格設定の基準となるのは「コスト+プロモーション代÷ユーザー数」である。もし3000円を回収しようと思ったら、1つのゲームを3000円の値付けにしないといけない。ユーザーにとってこの価格は、かなりハードルが高いことであるし、プロモーションを行えば販売数は増えるものの、それは一時的な効果になることも多い。たしかに、売れるときは順調に売上を伸ばすものの、プロモーションには多額のコストがかかってしまう。プロモーションをストップすれば販売数が激減する可能性もあり、自転車操業的な側面も否めない。このように利益のアップダウンが激しいことを金融用語で「ボラティリティ」と呼び、今月は利益ラインに乗ったとしても、来月はどうなるかわからない状況が続くのだ。
     反対に月額課金の場合では、ザブトンが積み上がることで一定数のユーザーは存在しており、今月黒字なら来月もほぼ黒字になる可能性が高い。

     そして、私が月額課金にこだわった理由がもう一つある。それは、コンテンツプロバイダーが良い意味で緊張感を持つことになるからだ。300円の月額課金を行う場合、より多くの売上を確保するには、ユーザーに少しでも長くサービスを利用してもらう必要がある。つまり、コンテンツやサービスの中身が重要になるので、ユーザーが長く利用しようとするための仕掛けや価値をサービスに織り込むことが必須となってくるのだ。

     ユーザーが長く利用するための仕掛けや価値をサービスに織り込むことが必須となる月額課金に比べて、都度課金の場合は、一度売ってしまえば売上は確保できるので、「見かけよくして中身なし」というアプリやサービスも少なくはない。オーバープロモーションも横行している。これらの問題を防ぐために、レビューなどの評価システムがあるものの、アイテムやポイントを提供する代わりに高評価をつけさせたりと、十分に機能していないことも多い。もし月額課金でオーバープロモーションのようなことを行っていたら、ユーザーが離れていくのはわかりきったこと。良い緊張感によって、目先の利益に走ることを防ぎ、結果的にはコンテンツプロバイダーとユーザーがWin-Winの関係を築くことが可能になるのである。


    ・任天堂復活への大戦略


     さて、本題に移ろう。これまでの任天堂のビジネスモデルは、都度課金型といえる。ポケモンやマリオ、最近では『どうぶつの森』といった魅力的なソフトをパッケージとして販売し、そのプラットフォームをWiiといった自社製のハードウェアに限定することで、莫大な利益を上げてきた。しかし、このビジネスモデルに陰りが出てきたのは前途の通り。DSはもはや大人よりも子供向け端末となっており、我が家のように子供向けにゲーム専用端末よりもスマホやタブレットを買い与えるケースも多い。このように、ハードが売れないということはソフトも売れないということを意味し、従来までのビジネスモデルが成り立たなくなることを物語っているのだ。

     では、任天堂はどのようにビジネスモデルを転換すべきか。感のいい人はお気づきだろうが、月額課金だ。用意するのは、任天堂の全ソフト遊び放題の月額1万円のプレミアムプランと、全ソフトのなかから常時1タイトルしかプレイできない月額1000円のライトプランを用意する。キーポイントになるのは、どちらも、DSWii、スマホなど「ハードを選ばない」という点だ。これに、従来通りのパッケージ販売も加える。

     
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