• うにゅほとの生活2445

    2018-08-15 23:412時間前2

    2018年8月15日(水)

    「んー……」
    マウスホイールの隙間から、マウスの内側を覗き込む。
    「どしたの?」
    「マウスの調子悪いって話しただろ」
    「うん」
    「この、ホイールの芯の部分に、ゴミが絡まってるのが原因らしい」
    「みえる?」
    「よく見えない……」
    貯金箱の投入口から中身を窺うようなものである。
    「分解、あんまりしたくないんだよなあ」
    「ぶんかい……」
    「さらに壊れる気しかしない」
    「そだねえ」
    「見えない場所のゴミを取る方法、か……」
    「うーん」
    ふたり並んで思案する。
    「あ、ふーってするとか」
    「息で?」
    「うん」
    「なるほど」
    わりと良いアイディアかもしれない。
    「でも、隙間が細いからな……」
    「あー」
    貯金箱の投入口に息を吹き込むようなものである。
    「──いや待て。いいものがある」
    「?」
    本棚の下段の隅を漁り、
    「じゃーん、エアダスター!」
    「あ、ぷしゅーってするやつ」
    「これなら威力もバッチリだろ」
    「おー」
    「××、やってみるか?」
    「いいの?」
    「誰がやっても同じだし」
    「やる!」
    うにゅほが、エアダスターのノズルをマウスホイールの隙間に合わせる。
    そして、
    「ぷしゅー!」
    エアダスターが唸りを上げた瞬間、隙間からぽろりと何かが転げ落ちた。
    それは、ほんの小さなホコリの塊だった。
    「これ、ひっついてたのかなあ」
    「かもしれない」
    カリカリとマウスホイールを回し、動作を確認する。
    「──あ、直ってる!」
    「やた!」
    「いえー」
    「いえー」
    うにゅほとハイタッチを交わす。
    愛用のマウスだけに、あと二、三年は頑張ってほしいものだ。




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  • うにゅほとの生活2444

    2018-08-14 23:51

    2018年8月14日(火)

    今日は、父方の墓参りだった。
    朝六時起床、六時半出発で、三時間かけて菩提寺へ。
    懇意にしているメロン農家でメロンをたらふく食わされたあと、両親の友人宅へ挨拶回りを行った。
    最後に焼肉を食べて帰途についたのだが、
    「──……すう」
    ランクルの後部座席で、俺の膝を枕にうにゅほが寝入ってしまった。
    終始楽しそうにしていたのだが、さすがに体力が尽きたらしい。
    「ごめんな、父さん。帰り俺が運転するはずだったのに……」
    「気にすんな。ちゃめ起こすわけにも行かねえし」※1
    「そうそう」
    父親の言葉に、母親が頷く。
    「それにしても、意地でも(弟)には寄り掛からねえんだな」
    「うッ」
    うにゅほを挟んで反対側の弟が、痛いところを突かれたという顔をする。
    「……俺が××に嫌われてるみたいな言い方やめてくんない?」
    「違うのか」
    「違うって! ……違うよね?」
    同意を求められた。
    「俺とお前だから俺に寄り掛かってるのであって、お前と知らん人だったらお前に寄り掛かってるよ」
    「知らん人と比べられても……」
    そりゃそうか。
    「おう、◯◯。俺と(弟)だったら、どっちに来ると思う?」
    「父さんと弟か……」
    難しい問題だ。
    「……父さんと母さんだったら、母さんに行くと思う」
    「あら嬉しい」
    「弟と母さんでも、母さんかな」
    「××、母さんにも懐いてるもんね」
    「で、俺と(弟)なら?」
    「うーん……」
    しばし黙考し、
    「……そもそも、寝ないんじゃない?」
    「──…………」
    「──……」
    ずうん。
    父親と弟がふたり揃って落ち込むSEが、どこかから聞こえた気がした。
    「いや、実際のところはわからんからね。ただの予想だから……」
    弁解の言葉が、虚しく車内に響く。
    真実を握る少女は、気持ちよさそうに夢の中。
    そんなこんなで今年の墓参りは終わりを告げたのだった。
    疲れた。

    ※1 父親はうにゅほのことを「ちゃめ」と呼ぶ。




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  • うにゅほとの生活2443

    2018-08-13 23:472

    2018年8月13日(月)

    カリカリ、カリカリ。
    マウスホイールを回す音が、静かな自室に響く。
    「なんか、調子悪いなあ……」
    「!」
    うにゅほが立ち上がり、俺の額に手を当てる。
    「ねつない」
    「いや、俺じゃなくて」
    「?」
    「マウスの調子が悪いなーって」
    「あー」
    うんうんと頷く。
    「こわれた?」
    「壊れたってほどじゃないんだけど……」
    ディスプレイを指し示し、マウスホイールをカリカリと回す。
    「──こんな感じで、ページをスクロールすると、一瞬だけ反対側に戻される」
    「はー」
    「よくわからない?」
    「よくわかんない」
    素直である。
    「ぜんぜん使えるんだけど、なんかこう、微妙にストレスが」
    「そなんだ……」
    「喩えるなら、気に入ってる服のタグが、たまにチクチクして鬱陶しい感じ」
    「あ、わかる!」
    「わかってくれたか」
    「うん」
    上手く喩えられてないような気もするが、些末な問題である。
    「あたらしいの、かうの?」
    「このマウス、なんだかんだ四千円くらいするからなあ」
    「たかい」
    「それに、いま売ってる新モデルだと、俺の好きな機能が削られててさ」
    「なんで?」
    「……バージョンアップすることでどんどん悪くなっていくことが、PC業界では多々ありましてな」
    直近だとSkype。
    「まあ、騙し騙し使ってみるよ」
    「そか……」
    ワンタッチサーチとのお別れも近いのかもしれない。




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