• うにゅほとの生活2506

    2018-10-16 23:3820時間前

    2018年10月16日(火)

    「ない」
    「……ないねえ」
    近所のホームセンターに、ダンボール箱入りのペプシが入荷していない。
    震災のあとから急に品揃えが悪くなった気がする。
    「しゃーない、別の店を探そう」
    「そだね」
    慣れたものだ。
    ホームセンターを出ると、パラパラと降っていた小雨がやんでいた。
    ミラジーノに乗車し、駐車場を出る。
    「あのサツドラは確実に置いてるけど、ちょっと遠いんだよなあ」
    「うん」
    「アークスは近いけど、数が不安定だし」
    「かいんず、なんでないんだろうねえ……」
    「スペースと値札はあるんだよな」
    「あった」
    「にも関わらず常にないってことは、入荷が少ない上に、タイミングが悪いんだと思う」
    「そか……」
    しばしミラジーノを走らせていると、
    「──……?」
    うにゅほが口をつぐみ、前方に目を凝らした。
    「どした」
    「なんか、にじいろ……」
    「虹色?」
    運転をおろそかにしない程度に、ほんのすこし目を細める。
    「……たしかに、うっすら虹色がかってるな」
    虹色の光が街を覆っているように見える。
    「にじかなあ」
    「虹にしては太すぎないか?」
    「ふといにじ……」
    「そんなの、あるのかな」
    「わかんない」
    だが、虹の太さが一定と決まっているわけでもあるまい。
    「なんか、珍しいものを見た気がする」
    「そだね」
    「いいことあるかもよ」
    「なにかな」
    「五百円拾うとか」
    「うーん……」
    「千円拾うとか」
    「おかねからはなれたい」
    「図書カード拾うとか」
    「きのうもらった……」
    少なくとも、気分は悪くない。
    虹を見るのもいいものだ。




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  • うにゅほとの生活2505

    2018-10-15 23:38

    2018年10月15日(月)

    「──…………」
    目を覚ます。
    「あ、おきた」
    寝顔を見ていたのか、うにゅほがベッドサイドに立っていた。
    「いま何時?」
    「うーと、はちじ、にじゅうごふん」
    「余裕だな」
    「はちじはんになったら、おこそうとおもってた」
    「ビンタされずに済んだか……」
    「しないよー」
    うにゅほが苦笑する。
    「××」
    「?」
    「誕生日、おめでとう」
    「うん!」
    今日は、うにゅほの誕生日である。

    「"カメラを止めるな!"、面白かったな!」
    「おもしろかった!」
    「これはたしかにネタバレ厳禁だわ」
    「おかあさんに、どんなえいがかきかれたら、どうしよう」
    「父さんと一緒に観に行けって言えばいいよ」
    「そか」
    「帰り際、喫茶店でも寄ってくか。お昼も食べたいし」
    「いつものとこ?」
    「いつものとこは逆方向。今日は、別のチェーン店を開拓しよう」
    「いいねー」
    ケーキ以外の甘いものに舌鼓を打ちながら、一時間ほど映画の話で盛り上がる。

    古着屋、本屋、ゲームセンター──
    デートをたっぷり楽しんで帰宅すると、既に日が暮れかけていた。
    夕飯はカレーだった。
    カレーとバースデーケーキの食い合わせはどうなんだろうと思ったが、うにゅほが喜んでいたのでなんだっていいや。
    両親からの誕生日プレゼントは、安定の図書カード。
    弟からのプレゼントは、ネイルケアセットだった。
    「ほんやいくの、あしたにすればよかったね」
    「たしかに」
    俺からのプレゼントは、
    「ちょっとお高めのヘアケアシャンプーと、トリートメントのセットです」
    「わあ!」
    「弟のネイルケアセットと合わせて、いい女になるがいい」
    「うん、いいおんなになる」
    うにゅほと出会って、ちょうど七年。
    幸せな毎日を過ごしている。




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  • うにゅほとの生活2504

    2018-10-14 23:45

    2018年10月14日(日)

    パワーボールというトレーニング器具を購入した。
    「……?」
    俺の手に握り込まれたパワーボールを、うにゅほが不思議そうに覗き込む。
    「これなに?」
    「パワーボール」
    「ぱわーぼーる」
    「これを使って、前腕部の筋肉を鍛えるのだ」
    「……にぎにぎするの?」
    「にぎにぎしない」
    「どうやるの?」
    「見てな」
    野球のボールより一回り小さいそれの内部には、更に小さいボールが内蔵されている。
    一部露出した内部のボールを、両手の親指を使って矢印の方向にしばらく回し、指を離す。
    すると、

    ぶいー……

    「──まわった!」
    内部のボールが回転を始めた。
    「そうしたら、手首を使ってパワーボール自体を回転させて──」

    ブウゥ──────ン……

    内部のボールの回転に合わせて手首を動かすことで、回転数が徐々に上がっていく。
    回転数の上昇は、高くなっていく音でも判断することができる。
    「おー……」
    「とまあ、こんな感じ」
    「……?」
    うにゅほが小首をかしげる。
    「なんで、うで、きたえれるの?」
    「回転数が上がると負荷が上がって──まあいいや。やってみればわかるよ」
    パワーボールをうにゅほに手渡す。
    「矢印の方向にボールを回して」
    「うん」
    「止まるまで回して」
    「んッ、んッ!」
    「回したら、指を離す」

    ぶいー……

    「まわった!」
    「中のボールが回ったら、パワーボールを握り込んで、手首を使って回す」
    「んッ! んにッ!」
    「──…………」
    「んいッ! いッ!」
    内部のボールの回転が止まる。
    「まわらない……」
    「手首、回ってなかったぞ」
    「!」
    「上下にしか動いてなかった」
    「もっかい」
    何度やっても回らない。
    「つかれた……」
    「……まあ、うん」
    不器用だなあ、とは言わないでおこう。
    「あ、つかれたから、きんにくつくかも」
    「そういう道具じゃないです」
    「そか……」
    まあ、前腕部ムキムキのうにゅほなんて見たくないから、これでよかったと思うことにしよう。




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