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「勇者の冒険」第8回 デジタルゲーム事業部 妄想記録【216日目】
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「勇者の冒険」第8回 デジタルゲーム事業部 妄想記録【216日目】

2015-03-05 14:30
    こんにちは、すすろです。

    リレー小説の第8回を書いていきたいと思います!
    第7回はこちら
    http://ch.nicovideo.jp/neet-coltd/blomaga/ar738747


    試験に合格した俺は、早速魔王を倒しに行く計画を立てた。
    魔王の居住地はわかっている。
    俺の住む村のある大陸から、海を越えてひたすら東へ向かうと、岩礁に囲まれた孤島がある。
    一般人は上陸することが決して許されないその島に、魔王の住む城はあった。

    俺は何とかしてその島に上陸する手立てを考えた。
    すると、上陸はできないが、極めて近くに接近する手段はあることがわかった。
    しかも簡単に。
    魔王の島に最も近い、半島の先端にある町に、このようなものがあったのだ。
    「魔王の城を間近で見よう!魔王島クルーズ」

    これは、観光船に乗って、魔王島を一周し、船から島の様子を見るというもの。
    特典として、魔王島の全体像が写った写真のステッカーももらえるそうだ。
    このような観光気分で、魔王の島に近づいて大丈夫なのかという疑問がわいたが、安全面は保証されているそうで、今まで一度もトラブルはないという。

    とにかく、この町に行くのが、魔王に近づくためにまず必要なことだろう。
    この村からその町までは鉄道が通っているが、運賃が高額になるため、俺は「勇者18きっぷ」の時期を待ち、出発することにした。
    「勇者18きっぷ」とは、年に3回期間限定で発売される切符で、1日に限り「勇者鉄道」の全区間で普通列車に乗り放題になる。
    ただし、村とその町の区間内に、一部他社線が乗り入れている区間があり、そこは別料金を払わなければならないのだが。
    それを加味しても、「勇者18きっぷ」を利用したほうが、だんぜん安くなるので、俺は時期を待つことにした。

    切符発売の時期を待っている間、俺はハンターとしての仕事、すなわち魔物を狩ることに従事した。
    勇者試験に合格し、他に職業にも就いていない以上、この村ではハンター業務につくことを求められる。
    その収穫物は、お金になるので、俺は魔王討伐の資金集めと訓練の意味もあり、それを受け入れた。
    しかし、やってみると、この業務が割に合わないことにも気づいてきた。
    体を張って魔物と一日中戦い、やっと手に入れた魔物の素材は、安値で買い叩かれる。
    酷い時には、戦闘で負った傷の治療費が、収入を上回ることさえあった。
    両親や村の大人たちに愚痴をこぼすと、
    「仕事とは厳しいものだ。それに耐えてこそ成長がある」
    「お金というのは、そうやって苦労して手に入れるもの」
    「つらくても頑張って働いて得たお金は、たとえ少なくても、もらったときの喜びは大きいだろう」
    などと言われた。
    しかし俺はどうにも納得できなかった。
    楽して大金を得るのが一番良いに決まっている。

    俺はやみくもに狩るのをやめて、まず情報収集をすることにした。
    すると、都市部では、この村では安価で買い叩かれている一部の素材が、非常に高値で取引されていることがわかった。
    俺は、村の共同販売所を通さず、都市部の商人に直接商品を卸すことにした。
    そうすると、今までの何倍もの利益が得られた。
    さらには、もっと大量に仕入れたいという注文があり、しかし1日に狩れる量には限界があると俺が言うと、都市で販売されている罠や狩猟用具などを渡された。
    そこで、俺は、直接魔物と戦って倒すという狩猟法から、罠を仕掛けて落とし穴にはめたり、眠らせて捕獲するという方法に切り替えた。
    これにより、負傷のリスクを負うことなく、大量に獲物が得られ、俺の収入は跳ね上がった。

    しかし、そんなことをすれば当然、村の者に目をつけられる。
    案の定、村の共同販売所を通して、獲物を売るようにと注意された。
    共同販売所の買取価格は安いので、高価な罠を買うと元が取れなくなると俺が言うと、それなら罠を使わず狩りをしろと言われた。
    おまけに、罠を使ったりするのはけしからん、正々堂々と魔物と対峙するのが、正しい勇者としてのあり方だと説教を受けた。
    正しい勇者とは、危険を顧みず、魔物に立ち向かい、戦いの末に勝利を勝ち取るものだと。
    罠などの道具を使い、楽をして、戦わず利益を得ることだけを目的とするようなやり方は、正しい勇者の伝統を壊すものである、と。

    俺はあまりにもバカバカしくなり、さっさとこの村を出て、魔王城に向かうべきだと思った。

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