ニコニコ技術部 深圳観察会レポート(4)「ネットにつながります、スマホで操作できます」
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

ニコニコ技術部 深圳観察会レポート(4)「ネットにつながります、スマホで操作できます」

2014-08-16 00:12
  • 2
  • 2

前々々回→ニコニコ技術部 深圳観察会レポート(1)「あなたは過去を向いている」
前々回→ニコニコ技術部 深圳観察会レポート(2)「本物のオリジナルです」
前回→ニコニコ技術部 深圳観察会レポート(3)「うちのボスがデザインしたのよ」

 8月9日、ツアー4日め。この日は夕方からハッカースペースを訪ねる予定があったが、参加は任意で、多くのメンバーが自由行動を取った。この日から帰国する人も出てきた。
 たいへん実り多いツアーだったが、私は団体行動が苦手で、そろそろ一人で動きたくなっていた。帰国は11日朝からなので、9、10日はグループから離脱することにした。ツアー中にあったことも含めて、今回は単独行動中のことをレポートしよう。

 香港からのフェリーが発着する蛇口港。その近くに「海上都市」(Sea World)という場所がある。
 高須氏が「あそこも見ておくといいですよ」と言うので行ってみた。
 これまで見てきた深圳と違い、ここはぐんとオシャレだ。欧風のカフェやレストランが並び、日本料理店もある。大きな客船が見えるが、横浜の氷川丸のような状態で、中はレストランか何かになっている。周囲の水面は人工的な池で、水深はごく浅い。
 スコールの兆しがあったので、急いで手近なカフェに入った。アイスモカと鮭の入ったブリトーを頼んだ。味はまあ普通だ。
 料理といっしょに小さな包みが出てきて、首を傾げていると、店の女の子が「手袋ですよ。食べるときに使ってください」と教えてくれた。薄いポリエチレンの手袋をはめて食べるブリトーは、なんだか奇妙だった。それよりティッシュがほしかったのだが、テーブルには出ていなかった。
 海上都市はオシャレで深圳の豊かさを感じさせた。だが、西欧を取り入れた文化としてはまだ未成熟な印象を持った。お台場あたりの新興スポットに近いだろうか。



 深圳の街中、どこにでも見かけるパラソルつき電動バイクor電動トライク。軽快に走り回る姿がとても魅力的だった。電動スクーターは数年前に行った上海でもよく見かけた。一台買って帰りたいが、日本では法整備が不十分で公道を走れない。輸送費も相当なものだろう。
 せめてあの、後ろに長く張り出したパラソルだけでも欲しい。あれを自分のリカンベントに装着すれば、日照りや雨をしのげるだろう。
 機会をうかがっているうち、JENESiSの近くで電動バイク店を見かけた。パラソルは陳列してなかったが、店内で修理していたバイクにパラソルがついていた。だめでもともと、と思いながら、私は店のおばちゃんに「私、あれがほしいある」と指さしてみた。
「メイヨー(没有)」と言われるかと思いきや、おばちゃんは店の奥から布袋にはいった細長いものを出してきた。開いてみると、まぎれもなくあのパラソルだった。
 中国は「没有の国」と言われる。切符もホテルもトイレもトイレの紙も、すべて「メイヨー!」の一言で拒絶される。だが深圳でこの言葉を聞いたことがない。言えばなんでも出てくるのだ。
 写真のパラソル部分は100元、約1700円。取り付け金具が50元だった。ただ、帰りの飛行機では別扱いの荷物になり、7000円ほど超過料金を払うことになってしまった。

 Makerなら電動三輪車の構造が気になるだろう。燕南の裏通りで、たまたま修理中の車体を見かけた。後輪の車軸、ディファレンシャル・ギヤで膨らんだ部分の前側に、黒い円筒と銀色の放熱板らしきものがある。そこが電動機だろう。
 バッテリーはこのアングルからは見えない。後輪に緩衝機構はなく、ブレーキワイヤーがつながっているだけ。実にシンプルだ。
 なお、深圳市内には――都心から50kmほど離れているが――大亜湾原子力発電所がある。電力は豊富にあるのだろう。


 ホテルのある燕南から東に少し歩くと、茘枝公園という、大きな池のある公園がある。日曜日に行ったら親子連れなどがのどかに散策していた。たまたまスコールの最中だったが、困った様子の人もなく、静かな雰囲気だった。

 池の一角は「釣魚区」として柵で囲まれている。一日40元で入場できるとわかった。ゲートの隣で釣具店も営業している。
 深圳で釣りができるとは思わなかった。私は高鳴る胸をおさえつつ、竿と仕掛け、餌とバケツを買い揃えた。一式60元(1100円)ぐらいだ。
 餌にミミズを使うと、ブルーギルに似たスズキ科の小魚が釣れてきた。これは国際的に雑魚なので、ヘラブナ用の練り餌に切り替えた。そして釣れたのが写真の魚だ。全長33cm、コイ科にちがいない。釣具店の主人に写真を見せると、「りんゆい」と聞こえた。手帳を差し出すと「鯪魚」と書いてくれた。Wikipediaで調べてみるとケンヒー項に中国の標準名、リンユーとして記載されている。四大家魚のひとつで、食用にされている。


 釣りを終えて池の周囲を歩いていると、中国式カフェ、茶館があった。茶館は上海を旅したときに入って、大好きになった場所だ。中国の飲食店は全体に騒々しいが、茶館は静かで、ゆったりした時間を味わえる。値段は少々高いが、香り高いお茶が飲める。写真のグラス茶で30元ぐらいだったか。後ろにある茶器を使った本格的なお茶も飲めるようだ。

 床には犬がのんびり寝そべっていた。店のおねえさんが「ティンティンっていうのよ」と教えてくれた。しばしの間、もふもふして遊んだ。
 二階には写真右のような個室があった。いつか友達と入って、まったり語らってすごしたいものだ。


 雨が止むと、休憩所や木陰が賑やかになってきた。将棋や碁、トランプをしている。中国らしく、卓球台もあった。近くには「公園内で金を賭けたゲームは禁止」という看板がかかっていた。アジアに限らず、こういう風景はどこを旅しても見かける。

 人の少ない一角で、フルートのようなものを練習している人がいた。知らない曲だったが、会釈すると「トルコ行進曲」を演奏してくれた。

 こうやってほっつき歩いてみても、深圳の理解が深まるわけではない。
 むしろ、くっきりと記号化されていた「深圳」像がぼやけてくる。私はそれでいいと思う。都市のような複雑なものを記号化して扱いたくない。電気街とベンチャー企業だけが深圳ではない。若者が多い街だが、経済特区に指定されてからでも34年経つから、1世代は経過しているわけだ。忙しく働き、休日には公園で憩い、金のかからない遊びにふける人々がいる。深圳にも普通の中国がある。
 SF屋は天の邪鬼を身上とするから、「深圳は未来を占う都市だ」と言われると、頷きつつも「じゃあ人生の大半が過去にある人、お年寄りは何をしてるの?」と考えてしまう。
 seeedでエリック・パンと質疑応答になったとき、山形浩生さんに通訳してもらって「こちらの高齢者はどうしているか? お年寄りへのサービスは考えられるか」と質問してみた。
「高齢者はデジタル機器を使いこなせない人が多い。スマホでは高齢者にも使えるアプリもある」と、消極的な返事が返ってきた。

 深圳のベンチャー企業家たちは、これからも続々とデジタル製品、特にIoT製品を世に送り出していくだろう。にぎやかで退屈しない時代がしばらく続くはずだ。そこで一発当ててやろうと思う人は、どんどんやればいい。ビジネスも遊びだと述べた。
 だが私はIoTの「ネットにつながります、スマホで操作できます」というお題目に飽き飽きしている。そんながらくたで経営情報を集める世界は、私の願う未来ではない。
 IoTにつきものの、APIを活用するハッカーや製品ごとのコミュニティは、新味のある現在なら賑わうかもしれない。だが身の回りのあらゆるものがネットにつながる時代になったら、かまう気になれないだろう。
 あらゆるものがネットにつながるのはOKだ。だが、集まったデータを利用するのは、人間であってほしくない。
 文明が発展すれば、いずれ商機をうかがう経営者も、いかがわしいデータ・サイエンティストも姿を消す。人は労働から解放されている。そしてネット上に実装されたシステムが、すべての人類に健康で文化的な生活を確保してくれる。
 そのためには、人を含む万物をネットに結ぶ神経網が必要だ。IoTはそこに結びついてこそ意味があると信じる。

 ボカロ・ムーブメントで素晴らしいと思ったのは、初音ミクという架空の存在を中心にして人々がドーナツ状に集まり、互恵的な力を発揮したことだ。中心にいるのが人間だったら、こうはならなかっただろう。
 GPL感染とも呼ばれるGnuのライセンスは、誰にも金銭的利益をもたらさず、ソフトウェアの共有と発展という高次の目標に向かう。私はこういうものが好きだ。
 Makerムーブメントにおいても、短期的ビジョンにおいてなら、気の利いたIoT製品を開発してスタートアップを狙えばいいだろう。事業を成功させて、どんどん大きな事をやればいい。
 だが本物の未来を語るなら、ネットワーク上に公平無私な高次の存在を構築して、そのコントロール下で生き、人が最大限の自由を享受できる世界をめざしたい。
 クリエイターは好きなだけ創作し、思索し、表現できる。そして創造的でない大部分の人々は、ただ暇つぶしをしているだけでいい。文化はそんなところにも必ず宿る。
 当面必要な稼ぎを得つつ、そんな未来につなげる道が必ずあるはずだ。
 深圳での最終日、燕南のファーストフード店で涼みながら、そんなことを考えていた。

 ツアーを企画してくださった高須さん、seeed、HAXLR8R、Makeblock、Imlab、JENESiS、見学させていただいた工場の皆様、ツアーメンバーの皆様、本当にありがとうございました。

★ツアー参加者によるレポートリンクはこちらにまとめられている→深圳是創客的天国! ニコ技深圳観察会レポートまとめ(更新中) #sz0806


広告
×
『当面必要な稼ぎを得つつ、そんな未来につなげる道が必ずあるはずだ。』ですか。
ふわふわの泉からこっち、野尻さんの希望する未来像はブレないですね。
37ヶ月前
×
現代が過去より悪くなったためしがないですからね。
37ヶ月前
コメントを書く
コメントをするには、
ログインして下さい。