• 背川昇「キャッチャー・イン・ザ・ライム【1】」

    2018-02-23 21:0016時間前



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    あの「ビッグコミックスピリッツ」で連載中の背川昇先生による「百合ラップ・コミック」(帯に明記されています)の「キャッチャー・イン・ザ・ライム【1】」(もちろん、このタイトルはサリンジャーの捩りですよね)が発売です!!!

    沼津女子高校に入学した皐月は、人見知りが激しい眼鏡っ娘で、高校デビューを機に変わろうとするものの、自己紹介から見事に撃沈…
    部活もロクに決められず、途方に暮れていたところに目に付いたのが、同じ1年生と思われる少女二人組で、彼女たちは新しく「ラップバトル部」なるものを立ち上げるため、勧誘のチラシをばら撒いた上に、突然その場で相手に文句をぶつける(もちろん本気ではありませんが)文字通りの(苦笑)「ラップバトル」を繰り広げ、皐月はその光景に見とれている内に(?)部員候補としてゲットされる羽目に。
    そんなこんなで、猪突猛進タイプのレンと世話焼き女房タイプのアンズという二人に引っ張られるような感じで、今まで全く無縁だったラップの自分の言いたいことを肯定してくれる魅力にどんどん惹かれていき、さらに空木さんというクラスメイト(しかも彼女はTS(!)という)も入部。
    さらに、部長をラップバトルで決めることになり、最初にアンズと皐月が激突し、アンズの速射本音ディスり攻勢に対して、窮地に追い込まれたかに見えた皐月が一転して「謝罪」(!)ラップの畳みかけで反転勝利する様は、ラップの本質と皐月たちの想いが見事にシンクロしたシーンでしたが、最終戦の皐月VS空木は何か煮え切れないまま、部長はなんと皐月に確定。
    そして最後の部員候補として、慣れ合うことが大嫌いな一匹狼(ではなくて虎?)のヒップホップフリークであるカエデ先輩を勧誘するも、逆に四人の絆の弱さを思い知らせる(!)ために登山(?)に誘われ、結局、勧誘に失敗したかに思えたところで、「山月記」(!?)を下敷きにした皐月の渾身のライムが炸裂し、先輩も入部を快諾、次のラップバトル部の目標である「文化祭」に向けて盛り上がりますが…。

    という感じで、まず「スピリッツ」に「百合」が連載されるという快挙に、祝福を捧げたいと思います。
    あと、引っ込み思案な少女が、新しい友達と(この作品の場合は「ラップ」を通じてですが)時にはスレ違いながらも徐々に距離を縮めていくところも、簡単に自分の性格を変えられず、それでもお互いにそれを認め合いながら、行きつ戻りつ繰り返すのが、「王道友情百合」でありながら、いい意味で泥臭さも含めて描いている様には惹かれるものがありましたね。
    もちろん、テーマとなっている「ラップ」に関しても、本職ラッパーの監修も受けながら、「山月記」の「ライム」の下りで示された「書き込み」のハンパなさなど、手抜きなど一切感じさせないところも圧倒されましたね。
    そして、背川先生の絵も、少年漫画らしさと「青春(!)百合」が無理なく融合していて、これもまた「百合」における一つのオリジナリティだと感じた次第です(カバーも何かスタイリシュでありながら異色(?)ですよね)

    皐月たち五人は、まだまだチグハグなところも垣間見られ(特に他の四人と異なる空木など)、危うさも感じますが、それをお互いの「ライム」の力でどう乗り越えてゆくのか、非常に楽しみですので、背川先生にはこれからもよろしくお願いしたいと思います!!!


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  • 「百合」の広がりについて

    2018-02-22 22:07
    最近は、すっかり「百合」という言葉がポジティヴな形で定着して、かつて私たちのような(苦笑)一部ファン以外は「腫れ物に触るように」(?!)扱っていたのが嘘みたいなのは嬉しいことですね。
    以前は、きらら系などの「日常系百合」は「百合か、否か」ということが、激しい対立を引き起こしたりしていましたが、「百合を「厳密」に定義」するのは無駄であり、「曖昧」なままのほうがより建設的だということが、多くの百合ファンの共通認識になってきているのは、本当にいい傾向だと思います。
    そして、かつては「学生同士」がメインだった「百合」も、ここにきて「社会人」、「おねロリ」、(義理だけでなく実も含めた)「姉妹」、(吸血鬼は元より、ロボット、異世界人、幽霊、妖怪、宇宙人など多種多様な)「人外」などなど、様々な「女性同士の関係性」を描くものへと急速に広がっているのには、注目したいですね(以前ならば、却って「未成年同士以外」「キス以上の肉体的接触」は「百合にあらず」、などという極端な潔癖症がゴロゴロ(?)いましたけど(苦笑))
    但し、ここで注意したいのは、「百合は売れる」とブームになるのもいいことなんでしょうけど、徒に「細分化」(別名「蛸壺化」「ガラパゴス化」(?))して、「学生百合」を「古臭い」、「王道百合」を「ご都合主義」などと、「百合」の内輪で潰し合いをした挙句、ブームが終わったら、何も残っていなかった、なんてことにならないように、私たち「百合ファン」は、今こそ「勝って兜の緒を締めよ」という言葉どおり、「百合」の広がりを「許容」しながら、その広大な「百合」を軟着陸(!)させるために努力しなければいけないということです。
    しかし、これは、かつての「百合氷河期」(!)の時のように、少しでも「百合」の可能性のある作品を探し求めて、応援し、時には(ヘテロエンドなどで)酷い失望(泣)を味あわされたのとは全く別の方法で、「百合」を「持続可能なジャンル」として支えていかなくてはならないという困難さを抱えているんですよね。
    これには、例えば、「電子媒体の一層の推進と正当な評価の確立」、「海外市場への積極的な進出」、「クラウドファウンディングの有効な活用」、「商業と同人の相互補完的な融合の推進」といったところが思い付くのですが、結局、一百合ファンとして出来るのは「好きな百合を可能な範囲で購入する」「合わない百合でも攻撃したりしない」「お互いに情報共有は友好的に行う」といった基本的なことに落ち着いてしまうと思っているところなんですが(苦笑)
  • 浜野りんご「Cotton Candy」

    2018-02-22 00:17



    ©ガレットワクークス
    「ガレット」を発行している「ガレットワークス」より、百合単行本(!)の第2弾として、浜野りんご先生が同人で発表された百合中短編を集めた「Cotton Candy」が発売になりましたね(一応、同人とは異なる普通書籍扱いですので、各「百合部」などでも購入可となっています)

    タイトル作は「ガレット」に掲載された中編で、バス通学を通して親しくなった少女同士が切ないスレ違いを乗り越えていく様を、過去の同性からの拒絶に加え、八つ当たり気味のヤローからの嫌味に過剰に反応してしまうミイの弱さだけでなく、ひなこの芯のある強さや文さんの苦さをも感じさせる的確なサポートを含め、「今の少女同士の恋」として正攻法で描き切っていますし、その他も、ちょうどシーズン的にピッタリのヴァレンタイン百合とか、ちょっとした相手の変化にも過剰に(?)反応する少女ならではの百合、一度振られた相手に生徒と教師(!)として再会する百合、惚れっぽい少女に片想いする百合、ずっと昔の悲恋と現在の熱愛を一つのペンダントがつなぐ(?)という異色な構成の百合、こちらも(?)髪型を変えるだけで雰囲気も全く変わる少女(委員長、ズル過ぎです(笑))ならでは百合、そして最後は「Cotton Candy」のイチャラブな後日譚できっちり締め、となっていました。

    どの作品も、浜野先生ならではのシンプルでやわらかい絵柄に相応しい、少女同士の淡く、ちょっと感傷的な恋を優しく掬い上げていて、重過ぎず、「百合」の醍醐味に浸れる心地よさに溢れる作品集になっていたと思います。

    最近は、「百合」もバラエティに富んできて、ともすると、「少女同士」の「百合」を、古臭いなどと叩く見当違いな向きもあるようですが、「少女同士」ならではの良さを枠組みだけで簡単に切り捨ててしまうのは、馬鹿げたことだと、この単行本を読めば再認識できるのではないでしょうか。

    浜野先生には、「ガレット」で新連載も開始されていますから、これからも引き続き魅力的な百合をお願いしたいと思います!!!