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記事 4件
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その5

    2020-08-08 01:47  
    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/8月号連載記事■その5 共感・同調が社会・経済の基本原理●「国富論」は「道徳感情論」の別冊であった アダム・スミスが1776年に著した「国富論」は、近現代における経済学の出発点とされるあまりにも有名な本であり、実際に読んだことがあるかどうかはともかく、その名を知らない読者はいないはずだ。 しかし、世の中に意外と伝わっていないことが二つある。 一つはアダム・スミスが道徳哲学の教授であったことだ。 グラスゴー大学卒業後、オックスフォード大学中退。1748年にエディンバラ大学で文学と法学の講義を始めた。そして、1751年にはグラスゴー大学の論理学教授に就任し、翌年道徳哲学教授に転任しているのである。 1750年には、「人間本性論」で有名なデビッド・ヒュームと出会うが、彼が死ぬまで生涯親しく交流し、強い影響を受けるこ
  • 書評:国富論(下) 国の豊かさの本質と原因についての研究

    2017-12-21 15:27  

    書評:国富論 (下) 国の豊かさの本質と原因についての研究 アダム・スミス 日本経済新聞出版社  http://amzn.to/2AXTG3i[「経済学」の本格的始動]  物理学と呼ぶべきものがギリシャ時代・ローマ時代に無かったわけではありません。しかし、現代物理学の基礎を構築しその後の発展をもたらしたのがサー・アイザック・ニュートンであることに異論はないでしょう。  同じく「進化論」の礎を築き、「進化」という全く新しい概念(今では当たり前のことのように思われていますが、キリスト教的世界観が根強く支配していた当時は、簡単に言えば「エデンの園を追われた人類はどんどん退化しているのだから、元の完全な状態に戻らなければならない」というような世界観が支配していました)を生み出したのが、チャールズ・ロバート・ダーウィンです。  同様に、それまで混沌としていた社会・経済を冷静かつ鋭い分析力で整理整頓
  • 書評:国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

    2017-12-06 17:49  

    書評:国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上) アダム・スミス 日本経済新聞出版社  http://amzn.to/2A8fjlm  人間とサルの違いは何か?  世界のあらゆる分野の研究者の頭を悩ましてきた問題であり、私が子供の頃から興味を抱き、いまだに明確な解答を得ることができずにいるテーマでもあります。  サルをはじめとする多くの動物は原始的な道具(例えば木の枝)を使用しますし、イルカはコミユ二ケーションに言語(音波)らしきものを使用することはよく知られています。また、脳のサイズも、人間だけが特別大きいというわけでもありません。  コイン(トークン)も、サルに教えれば、すぐに使い方を覚え、食べ物と交換したり「売・買春」(オスがメスにコインと交換に交尾を求め、メスがそれに応じる)も活発に行われます。売春が世界最古の職業であるとよく言われますが、本当かもしれません・・・。  
  • 書評:道徳感情論(第4部~7部)

    2017-11-10 01:31  
    道徳感情論(第4部~7部) アダム・スミス 箸、村井章子+北川知子訳、日経BP社  http://amzn.to/2z5HPCm  本書を読了して感じたのは、あくまでアダム・スミスは、ギリシャのアリストテレスやエピクロス、ローマのキケロ等に連なる(道徳)哲学者であるということです。  彼は本書の中で、共感=(社会への)同調の重要性を説いています。日本的な表現で言えば「世間様」「お天道様」に恥じない行為こそが、各個人に求められるのだという主張を繰替えしているわけです。  自分の本能を適切にコントロールすることが、個々人の「徳」を高めるのに極めて重要であり、それができない本能が優勢な人間は、「下劣な下司野郎」だというわけです。  スミスの定義によれば、銀行・証券を含む金融機関のほとんどの人間は下劣な下司野郎ですし、金儲けに血眼になっている投資家の大半も同様です。  しかし、スミスが、利己心を