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「みんながげんきにだいかつやく」
コメ0 草の根広告社 53ヶ月前
七月七日。灰色の厚い雲が海原を覆い尽くしていた。連日の雨で走るのは一週間振りだった。海からの強い風が陸に向かって吹きつけていた。高い波頭の上をロングボードと一体化したサーファーが滑り降りて来る。あんな風に自然と歩調を合わせることができたら、少しはこの陰鬱な気持ちも晴れるのだろうか。去年亡くなっ...
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「どうして朝はくるの?」
コメ0 草の根広告社 54ヶ月前
ある朝、娘が言った。「ねえパパ、どうして朝はくるの?」 五月も半ばを過ぎた頃からだろうか。ますます言語能力を発達させた三歳七ヶ月の娘からの「なぜ?」「どうして?」が日々向けられるようになった。ちなみにどのくらい発達したかというと「ぱっとやっちゃおうか」というぼくの言葉に「にょうもれぱっと?」と...
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「パパを産んでくれてありがとうございます」
コメ1 草の根広告社 54ヶ月前
時の流れというのは相対的に感じるものなのかもしれない。三月末以来、家族以外の誰とも会わずに暮らしているうちに気づけば時の流れが止まっていた。
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「忘れるための技術」
コメ0 草の根広告社 54ヶ月前
三月三十日、娘が発熱して保育園を休んだのをきっかけに自主的なロックダウンを始めて丸二ヶ月が過ぎた。ずっと三人一緒だった。ここまで妻と娘と濃密に過ごせる時間はこの先ないかもしれない。そう思って前向きにこの時間を楽しもうとしていたし、楽しませたいと思っていた。
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「自然が育ててくれる」
コメ0 草の根広告社 55ヶ月前
海が封鎖された大型連休中、娘を連れていくのはもっぱら里山の畑だった。種を蒔き過ぎたスナップエンドウの収穫と夏野菜の仕度が毎日ぼくらを待っていた。 初夏の青空の下、匂い立つほどの新緑を繁らせた里山は縮こまった心を解放してくれた。鳥の囀りだけが響き渡っていた。「ひとりでスナップエンドウ収穫できる?」...
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「はやく大人になりたい」
コメ0 草の根広告社 55ヶ月前
「はやく大人になりたいんだよ!」と娘が泣いた。ぼくとの遊びに飽きたのか。母親が恋しくなったのか。あるいはそのどちらもなのか。パソコンの前で仕事をしていた妻の洋服の裾を引っ張って泣いていた。「どうしたの?」と妻が訊くと、また繰り返す。「はやく大人になりたいんだよ!」 その悲痛な叫びに胸が抉られるよ...
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「何かを描こうとしないこと」
コメ0 草の根広告社 56ヶ月前
娘と一緒に絵を描いている。クレヨンを手にした瞬間に気がつけば「何を描こうかな」と独り言ちている。その橫で白い紙の上でクレヨンを走らせている娘に気がつけば「何を描いているの?」と訊いてしまっている。
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「子供の心を守ることは、自分の心を守ること」
コメ0 草の根広告社 56ヶ月前
テレビのニュースを見なくなって三週間になる。メディアで働く者の端くれとしていかがなものかと思うけれど、何度か行われた為政者の会見も見ていない。最新情報は朝晩一度ずつぐらいの頻度で二、三行ほどのネットニュースをチェックするだけだ。しかも積極的に見ているのは地元の自治体に関するものに過ぎない。 き...
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「元気ですか? わたしは元気です。また会える日まで元気でいようね」
コメ0 草の根広告社 56ヶ月前
二〇二〇年三月三〇日の夜、娘が発熱した。翌日に控えていた二歳児クラスの最後の日に登園できなかった。三歳児クラスの最初の日から登園できていない。幸いすぐに解熱して、鼻水や下痢などの症状も治まったけれど、そのまま自主的に登園を自粛することにした。万一のことも考え、家族であるぼくらもその日以来外出を...
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「STAY AT HOME」
コメ0 草の根広告社 56ヶ月前
娘が平日の日中も家にいるのは二年ぶりのことだ。一歳半で保育園に通い始めてからの二年間は一日の大半を園の環境で育てて頂いた。着替えやトイレトレーニングは親と園で協力し合って身についたものだけれど、地震や火災の時にどのように身を守るとかとか、集団生活の一切は保育園で学んだことだ。「この機会にその二...
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「待つことは見守ること」
コメ0 草の根広告社 56ヶ月前
ぼくはせっかちだ。のんびりした人(ぼくの主観ではルーズな人)からすればとても厄介な人種だろう。自分でもそう思う。苛々するのがわかっているからなるべく自分のペースを崩されそうな人には近づかないようにして生きてきた。待たされるのが許せないのだ。正確に言うと待つことによって自分の時間が奪われていくのが...
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「いましかできないこと」
コメ1 草の根広告社 57ヶ月前
日曜日、妻を駅まで送った後、娘と二人で逗子のミサキドーナツを訪れた。ショーケースに並ぶ色鮮やかなドーナツの中から娘はいちごが丸ごと乗ったものを、ぼくは大好きなレモンクリームドーナツをそれぞれ選んで、窓際の席に向かい合って坐った。店内にはあたたかな陽射しが射し込んでいた。今年初の夏日だった。昼前...
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「こういう時だからこそできることをしよう」
コメ0 草の根広告社 57ヶ月前
娘がドライヤーの音が怖いからと濡れた髪の毛をブローさせてくれません。音のしないドライヤーを作っているメーカーはないものでしょうか? (神奈川県 三歳の娘の父)
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「へんなかおジャンケン」
コメ0 草の根広告社 57ヶ月前
保育園の帰り道のことだ。「おともだちに、へんなかおジャンケンしようっていったら、しらないっていったよ」 桜の木の下でぼくの手を握り締めて娘が言った。ちっちゃくて、やわらかい手だ。「そうかあ、知らないって言われちゃったかあ」 友達が知っているはずがないことをぼくは知っている。「ヘンなかおジャンケ...
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「小さな小さな恋のメロディ」
コメ0 草の根広告社 57ヶ月前
娘の保育園で二月にクワガタが発見されたことが地元でちょっとしたニュースになった(と言っても半径三百メートルくらいの局所的な地域での話だ)。
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「Hey!みんな元気かい?」
コメ0 草の根広告社 57ヶ月前
地団駄を踏んで泣き叫ぶ娘にYouTubeのとある動画を見せた。 小島よしおの「そんなの関係ねぇ」 見てごらん今の自分を、と半分は鏡を見せるような思いだった。もう半分は地団駄を踏むその姿が小島よしおと重なって、笑いが堪えきれなかったからだ。人の振り見て我が振り直せが功を奏したのだろう。彼女は
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「おとうさんの通信簿」
コメ0 草の根広告社 58ヶ月前
「自己主張が強く人と協調できないところがあるので注意してほしい。気分にむらがあり、何事も最後までやり通せない。良い悪いの区別はできるが、なかなかあやまらない。少々短気なところがあり、かっとなると乱暴をはたらくことがある。質問に対して自分から手をあげて答えるが発言の内容は粗雑である。数、ことば、も...
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「雌鶏は卵を産み、自信は簡潔さと純粋さを産む」
コメ0 草の根広告社 58ヶ月前
三歳も五ヶ月を過ぎ、娘も身の回りのことがひと通り自分でできるようになった。ところが一度できるとなるとこれが可哀想なもので、今度はできないときに「できるのにどうしてやらないのかな?」と言いたくなってしまう。甘えたいとか面倒くさいとか体調が悪いとか、大人でも二日酔いでサボりたいなんて思うことがあるの...
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「なかよしのおともだちは?」
コメ1 草の根広告社 58ヶ月前
保育園で「仲良しのお友達は?」と質問され、誰もが特定のひとりを答える中、娘が「みんなすき」と答えた途端、他のみんなも「ぼくも!あたしも!」と追従してクラスがひとつになったという話を訊いて、三歳の娘を尊敬しつつも、素直に喜んでばかりもいられなかった。
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「走ることは整えること、そして自分で自分を救うこと」
コメ0 草の根広告社 58ヶ月前
ランニングを始めたのは九歳の冬だっだ。体が弱い自分を変えたくて、寒い朝、ジャージの首元にタオルを巻いて団地の周回を走り始めた。十五分から二十分ぐらいのコースだったと思う。朝靄で先が見えなかったり、野犬に追い掛けられたり、孤独に耐えながら路上を走ることで身心ともに強くなれたんじゃないだろうか。