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「彼女の世界は自分という地球を中心に回り続けている」
コメ0 草の根広告社 58ヶ月前
「ほら見て、ママがあがっていくよ」 降下するエレベーターに乗っていた娘がUFOでも見ているような顔で言った。登場階で手を振る妻の笑顔が小さなガラス窓の向こうに遠のきながら消えていく。3歳の娘はエレベーターが上下移動することを知らなかった。自分が下がっていることに気づいていなかった。それで見送った妻が...
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「愛というのは、互いに相手の顔を眺め合っていることなのではなくて、同じ方向に二人で一緒に眼を向けることなのである
コメ0 草の根広告社 59ヶ月前
ぼくと妻は大きな鏡の前に坐っている娘を後ろから見ていた。鏡に映る娘は神妙な顔をしている。中腰になった美容師さんが髪に櫛を入れている。やさしく、丁寧に、細くて長い髪を解いていく。生まれて以来一度も切ることのなかった後ろ髪は腰の上辺りまであった。娘がこの世界で呼吸し始めてからの歳月そのものだった。...
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「親の心、子知らず」
コメ0 草の根広告社 59ヶ月前
娘を初めて母(つまり、彼女にとっての祖母だ)に預けた。ぼくも妻も仕事で、かつ保育園にも迎えに行けないスケジュールだったので手を借りることにしたのだ。保育園以外では、ぼくか妻のどちらかが傍にいなかったことのない彼女にとっては生まれて初めての試練だった。
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「人はどのようにして字が読めるようになるのだろう」
コメ1 草の根広告社 60ヶ月前
ぼくは今書いている文字をいつどのようにして獲得したのだろう。それを知る機会が訪れた。娘が突然文字を読み始めたのだ。
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「ママはサンタにキスをするのか」
コメ0 草の根広告社 60ヶ月前
物欲を満たすことでしか幸福感を得られない人間は不幸とまでは言わずとも、どこか淋しい気がする。あくまで自身の経験による偏った考えなのだけれど、できれば娘にはそういう人間に育って欲しくないと考えているみたいだ。みたいだ、としたのは「どうやらそうらしい」と薄々気がついただけであって、それを押しつけよ...
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「ONE TEAM(ワンチーム)」
コメ1 草の根広告社 60ヶ月前
流行り言葉なんて仕事の原稿以外では滅多に使わないけれど、最近はなんだかこの言葉がしっくりくるような日々だ。仕事ではなく、プライベートの話なのが淋しいと言えば淋しいのだけれど、そこは色々なチームに属していてもどこか個人競技のような職業柄、仕方ないのだろう。でも、淋しくはない。むしろたまには淋しさ...
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「家庭内フリーアドレス」
コメ0 草の根広告社 60ヶ月前
ミニマリストなんて言葉が生まれるずっと前からモノがない部屋で暮らしていた。ノマドワーカーなんて言葉が生まれるずっと前からノートパソコンひとつでどこへでも行って仕事をしていた。本は好きだけれど、地震が起きたら雪崩を起こしそうな蔵書に囲まれた書斎に憧れたこともない。いつも身軽で自由でいたい。高校の...
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「時代おくれの男になりたい」
コメ0 草の根広告社 60ヶ月前
若者のファッションが理解できない年齢になってしまった。以前は流行には乗らないまでも「かっこいい」とか「かわいい」と共感することはできた。でも、今度ばかりは違う。理解できない。すなわち1ミリも共感できないということだ。
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「ぼくが存在しなくなった後の世界で」
コメ0 草の根広告社 61ヶ月前
地元の神社で町ぐるみの七五三があった。前夜には町内会主催の縁日があり、翌日にご祈祷が行われた。対象となる町の子供たちがいつも遊んでいる神社を詣でている姿はぼくが想像していた七五三とは違う素朴なものだった。
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「ママ、いちごケーキになあれ」
コメ0 草の根広告社 61ヶ月前
娘の小さな声で目を覚ましたのは明け方のことだった。娘はまだ眠っていた。寝言だった。「ビビデバビデブ」 よくよく聞いてみるとディズニー映画「シンデレラ」に出てくる魔法の呪文だった。3歳児も夢を見るのだろうか。起きているときにぬいぐるみと会話しているぐらいなのに夢と現実の区別なんてついているんだろう...
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「無邪気過ぎるその影の中に」
コメ0 草の根広告社 61ヶ月前
日溜まりの公園で子供たちが鬼ごっこをしている。娘もいずれその輪の中に入っていくのだろうか。そんな親の目線で改めて見ると誰もが当たり前のようにやっている遊びが子供たちにイジメの種を植え付けているようにも思えた。考え過ぎだろうか。疲れているのだろうか。それとも病的とも思えるようなコンプライアンスチ...
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「日が暮れても彼女と歩いていた」
コメ0 草の根広告社 61ヶ月前
すっかり日が暮れるのが早くなった。17時過ぎに保育園を出る娘は園舎を出るやいなや足を止めて夕空を見上げる。そして、ほんの数秒で月を見つけ「おつきさまあったよ」と教えてくれる。
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「『ねないこだれだ』という絵本で子供を寝かしつけてしまうことの危うさ」
コメ0 草の根広告社 62ヶ月前
せなけいこさんの『ねないこだれだ』という絵本がある。読んだことはなかったが、ロングセラーなだけあってタイトルだけはどこかで目にしていたのだろう。先日、娘がなかなか寝なかったときにちょっと怖い声で「ねないこだれだ?」と言ったら、見たこともないくらい震え上がり、しまいにはお泣きしながら布団に入って...
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「ささくれはつめのなかま」
コメ0 草の根広告社 62ヶ月前
ささくれは親不幸のしるしなんて大人の非科学的な決めつけに腹を立てた子供の頃のことを久し振りに思い出したのは、最近娘がよく「ささくれた」と指を見せに来るからだ。原因を調べたら水分や油分不足による乾燥、栄養不足なんかでも起きるそうだ。決して心のささくれが指に現れているわけではない。
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「人それぞれに違う生き方があるように通学バッグにもランドセル以外の選択肢があっていいはずだ。」
コメ0 草の根広告社 62ヶ月前
近い将来訪れるであろう子育てにおける妻や祖父母との価値観の衝突に大いなる不安を感じている事柄がひとつある。 ランドセル、だ。 昭和育ちのぼく自身ですら重いからという理由で小学校3年くらいからは手提げ鞄で登下校していたのに、平成を経て、令和となった今も多くの子供たちが動物の皮を使った重いランドセル...
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「同じ青空は二度と見ることが出来ないし、同じ波は二度とない」
コメ0 草の根広告社 62ヶ月前
「過去の記憶を想起すること」と「未来を想像すること」は脳の全く別々の場所で行われているものなのだそうだ。 生まれたときから目の前の「現在」だけを見ていた娘の脳でも「過去を想起」し「未来を想像する」機能が発達していた。
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「1969年のラブレター」
コメ4 草の根広告社 63ヶ月前
秋の彼岸は、桜が咲き始めた頃に亡くなった父の半年命日でもあった。時とともに少しずつ悲しみも癒え、引っ越しを決意した母とともに家の中を片付けた。父の背広などは供養して貰い、箪笥や食器棚などの大きな家具は処分する。棚に飾られていたよく分からない様々を容赦なくゴミ袋に入れる。長年一緒に暮らしていた僕...