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「子どもを寝かし付けているうちに寝落ちしてしまう理由」
コメ0 草の根広告社 38ヶ月前
残暑も峠を越し、彼岸花が咲き誇る季節に入った。午後8時過ぎ、山側に面した寝室の窓を開けると鈴虫の声とともに秋風が通り抜けていく。静かな夜だね、と家族三人でベッドの上で大の字になる。間に挟んだ娘から保育園であったことをあれこれ聞きながら、妻と顔を見合わせ、今日も無事に過ごせたことに感謝する。もう1...
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「サイレント・プロテスト」
コメ0 草の根広告社 39ヶ月前
朝食の後、娘と二人で浜辺を散歩する。1㎞先まで続く砂浜には誰もいない。当然だ。平日の午前9時。多くの人は働いている時間だ。本来なら僕も娘を保育園に送り届けてパソコンに向かっているところだ。書きかけの原稿を気に掛けながら「まったくもう」と独りごちる。「誰もいないね」と娘も淋しそうに呟く。こちらも...
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「2021年8月31日」
コメ0 草の根広告社 39ヶ月前
朝起きて、歯を磨いた。明け方こそ浅い眠りだったが、トータルで7時間近くは眠った。ぬるい白湯を飲んで、脇の下に体温計を入れる。安定の36.5℃。免疫力が高いことの証明だ。とはいえ、昨日から便通が悪い。ストレスで腸の動きが悪くなっているのが自分でも分かる。 2021年8月31日。なんだか夏休み最後の日を迎えた小...
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「海の心を見つめ、風の歌を聞き、星と話そう」
コメ0 草の根広告社 39ヶ月前
「あ、いちばんぼしだ!」 夕闇が迫る空を見上げて娘がうれしそうに声を上げる。そして「星がまたたいていると明日は雨なんだよ!」とか「かさ雲が見えると明日は雨なんだよ!」などと明日の天気を予報してくれる。 天気予報という与えられる情報をまだキャッチできていない娘は夕暮れの空で明日の天気を予想する。そ...
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「つまんないつまんない」
コメ0 草の根広告社 39ヶ月前
8月17日火曜 曇り時々小雨 四歳の娘がヨシタケシンスケさんの「つまんないつまんない」という絵本ばかり読んでいる。 緊急事態宣言下での自治体からの「保育園の利用を最小限にして下さい」という通達。子どもたちの感染リスクを少しでも減らす為に保育施設の利用は医療従事者やエッセンシャルワーカーに留め、それ以...
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「2021年、いくつの夏を捕まえられただろう」
コメ0 草の根広告社 40ヶ月前
8月7日 土曜 雨のち曇り 台風の前触れでもあるのだろうか。午前中に30分ほど驟雨があった以外は嘘みたいに静かな週末だった。海岸通り沿いの県営駐車場も閉鎖になり、浜辺を賑わせていた子どもたちの声も消えていた。
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「僕がネイルを始めた理由」
コメ0 草の根広告社 41ヶ月前
身体の部位で一番見ているのは、指先だった。こうしてキーボードを叩いているとき、ふたつの目は画面と文字を紡ぎ出す指を交互に見続けている。見飽きたその指先に今は他人のようなくすぐったさと新鮮さがある。二週間ほど前からネイルを塗るようになったのだ。ネットで購入したメンズ用のネイルアーマー。マット系の...
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「子どもに振り回される子どもに振り回されていた僕」
コメ0 草の根広告社 41ヶ月前
子どもって気まぐれだ。 飽きっぽくて、移り気で、論理的な思考や行動の一貫性とは程遠いところで生きているように大人である僕の目には映る。いや、そう思っているのは僕だけじゃないかもしれない。
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「そのとき彼女は怪獣になる」
コメ0 草の根広告社 41ヶ月前
ごはんを食べるとき、4歳の娘は怪獣になる。 スプーンにごはんをこれでもかと載せ、口を目一杯開けて頬張るとき、両の目と眉が閻魔大王のように吊り上がる。とにかくすごい顔なのだ。目に入るたびに思わず、吹き出してしまう。
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「父性ってなんだろう」
コメ0 草の根広告社 41ヶ月前
海が茜色に染まり始めた頃、娘を膝に乗せて母に電話した。何度目かの呼び出し音に続いてパソコン画面に母の顔が映る。「オヤジどうしてる?」 母がはいはい、とカメラを仏壇に切り換えてくれた。黄色い花と白い花が供えられていた。母が鳴らしてくれたリンの音に合わせて、画面越しに娘と妻と一緒に手を合わせた。
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「猿は猿を殺さない」
コメ0 草の根広告社 42ヶ月前
「転んだ人を笑うな。彼らは歩こうとしたのだ」 多くの人が一度は耳にしたことのある格言ではないだろうか。新しいことに挑んで失敗した人を笑ってはいけない。人類が月を目指していた1950年代にたくさんのいいねを獲得しリツイートされた、ある経営者の言葉だという。
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「今日の雨はいつかの雨でできている」
コメ0 草の根広告社 42ヶ月前
「今日の雨はいつかの雨でできているんだよ」 窓の外の雨を眺めているうちに、ふとそんなことを呟いていた。 「大楠山に降った雨が、前田川を流れて、秋谷の海に注ぐんだ。その雨が蒸発して雲になってまた大楠山に降るんだよ」 首を傾げていた娘がイメージしやすいように、彼女が良く知っている近所の山や川や海の名...
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「人は誰もが休む権利を持っている」
コメ0 草の根広告社 42ヶ月前
子どもに「保育園休みたい」と言われるとなんとも返す言葉がない。一番の理由は、僕自身が幼稚園や学校に行きたくない子どもだったからだ。「行きたくない」と言う子どもに「どうして行きたくないの?」とは聞けない。「がんばって行ってみよう」とも言えない。子どものころに言われて嫌だったことを、親になった途端...
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「自由は不自由、不自由は自由」
コメ2 草の根広告社 42ヶ月前
ひとりの人間がこの世界に生まれてくるところから日々成長していく姿を最前列で見続けることができるのが親になることの最大の特権なのかもしれない。それは自分にとって最大のミステリーでもある自分自身の誕生と物心つくまでの記憶という〈欠落〉を埋めてくれる時間でもある。たとえば途中入場した為に見逃していた...
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「僕らは忘れてしまうのではない、ただ思い出せなくなるだけなのだ」
コメ0 草の根広告社 42ヶ月前
「てんじんがしまってどこ?」 3歳だった去年中止になっただけで、1歳、2歳と毎年遠足に行っていた場所のことを4歳の娘は当時の写真を見てもまるで憶えていなかった。
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「仲間の頑張っている姿が、歩き続ける力になる。」
コメ0 草の根広告社 43ヶ月前
友達の少ない僕にも、仲間と呼べる人たちはいる。今は会えない人も多いけれど、その人たちを思い浮かべるたびに、苦楽を共にした様々な場面が甦ってくる。人生に輝きをくれた仕事。生涯忘れ得ぬ幾つもの旅―――。
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「風邪をひいても休めない」
コメ0 草の根広告社 43ヶ月前
子どもの風邪をもらっているうちは親として未熟なのだろうか。二年前に比べたらだいぶ減った方だけれど、年に二度は娘が風邪を持ち帰ってくる。発熱こそしなくなったけれど、咳き込んだり、鼻をぐずらせたり。こちらも手洗いとアルコール消毒、うがいという習慣はもちろん、家の中でもマスクを着用して対策していけれ...
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「補助輪が外れたら」
コメ0 草の根広告社 43ヶ月前
一年前以上の温度差だ(ちなみに僕は温度差に弱い寒暖差アレルギーだ。意味が違うけれど)。何が正しいのか。あるいは何も正しくないのか。見失いそうになることもある。混沌としている。いや、みんな正しいのだろう。後悔している人はいるかもしれないけれど、間違っている人は誰ひとりいない。みんな自分の大切なもの...
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「土に始まり、土に終わる」
コメ0 草の根広告社 43ヶ月前
娘を保育園に送った足で車で五分ほどのところにある子安の里山へ行く。夏野菜の準備だ。夢中になると時間を忘れてしまうのでアルバム一枚分と決めている。誰もいない畑でマスクを外し、音楽と鳥の囀りを聴きながら無心で汗を流していると気持ちが前向きになっていく。
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「カラダがくれたプレゼント」
コメ0 草の根広告社 43ヶ月前
いつものように保育園に迎えに行くと、おもむろに僕の手を掴んで「パパ来て」と鉄棒へと連れて行かれた。なんだろう、と見守っていると「みてて」とやってくれたのは、逆上がりだった。
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「げんきなおやすみ」
コメ0 草の根広告社 43ヶ月前
しくじった。菜園が塩害でやられた。前夜の暴風雨と朝からの初夏の陽射しで収穫間近のスナップエンドウなんかが一部枯れ始めていた。強い陽射しを受ける前に水で洗い流しにこなければいけなかったのに。 「しくじったぁ」と大きな声で叫んでいた。悔恨の情が誰もいない里山にこだまする。悔しいなぁ。切ないなぁ。「あ...
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「忘れ得ぬ日々が支えてくれる」
コメ0 草の根広告社 44ヶ月前
僕自身は誰かに管理されることに抵抗感の強い子どもだった。行進が嫌いでいつも少しだけ列をはみ出して歩いた。先生の号令の下で一致団結しているクラスメートたちをひとりだけ冷たい目で見ていた。通知表には毎年「協調性がない」と書かれ続けた。
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「見ることと観察すること、会話することと対話すること」
コメ2 草の根広告社 44ヶ月前
「君は見ているが、観察していない」という名探偵ホームズの言葉が『絵を見る技術』という書籍に引用されていた。絵画もまた漫然と見るのではなく、ある程度の知識をもって見つめることで多くの情報と洞察が得られる、という目から鱗のような話だった。同時にとても腑に落ちる話でもあった。絵画はともかく、子どもに関...
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「僕は誰に謝っているんだろう」
コメ0 草の根広告社 44ヶ月前
一年前の春、この海辺の町ではマスク姿で歩いている人はまだ少なかった。マスクが品薄だったこともあったのかもしれないけれど、そもそもコロナ以前から人通りが少なかったからする必要がなかったのかもしれない。それが一年経った今はどうだろう。大して人が増えたわけではないのに、マスクをしていない人はひとりも...