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記事 5件
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第257回「仲代と門下生・役所広司 映画での師弟演技対決!」『金融腐蝕列島 呪縛』

    2017-09-21 05:00  
     仲代達矢が映画・演劇界に標してきた功績は大きい。役者としての幾多の名演はもちろんだが、それだけではない。自ら私塾「無名塾」を主宰し、数々の後進たちを育成してきたことも忘れてはならない。
     その役者人生をインタビューさせていただいた最新刊『仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』(文春文庫)の取材にあたり、筆者は無名塾での仲代の新人たちへの稽古風景を何度か取材させていただいた。その際、仲代は発声や歩き方など、基礎的なことを徹底して教え込んでいた。無名塾出身の役者たちが、長年に亘って足腰の強い芝居を続けられているのは、早い段階にこうした基礎を叩き込まれているからだと痛感できた。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第256回「成瀬の世界を見事に体現 仲代、静の芝居も素敵!」『女が階段を上る時』

    2017-09-14 05:00  
     その役者人生をインタビューさせていただいた最新刊『仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』(文春文庫)の執筆に当たり、改めて仲代のフィルモグラフィを俯瞰して驚かされたことがある。
     それは、役柄の幅の広さだ。たとえば黒澤明作品だけをとっても、『用心棒』では蛇のような冷酷なやくざを演じたかと思えば、翌年の『椿三十郎』では剛直な侍を演じた。五社英雄作品のやくざ役でも、『出所祝い』ではストイックな男を演じる一方で『鬼龍院花子の生涯』では粗野な男を演じる――といった具合に、一人の役者とは思えないほど千変万化の様を見せているのだ。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第255回「若き仲代が演じる冷血男『瞳の温度差』の凄い色気!」 『黒い河』

    2017-09-07 05:00  
    『仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』が文春文庫から刊行された。 これはタイトルの通り、出演してきた様々な名作映画の舞台裏について仲代に筆者がうかがったインタビュー本で、以前PHPから出た新書を大幅に増補して文庫化した一冊だ。表題となっている過去の話はもちろんだが、八十四歳の今もなお現役の役者として新境地を開拓し続ける仲代の現在進行形の活動や、演技に関しての様々な芸談も新たに書き足すことができ、新書版をご覧になった方にも「新作」として刺激的に受け止めていただける一冊になっている。 この刊行に合わせ、しばらく仲代出演作を取り上げていきたい。まず今回は『黒い河』。今からちょうど六十年前、仲代が二十四歳の時の作品だ。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第254回「『虚構』に憑かれた人々へ筆者を向かわせた作品!」『全身小説家』

    2017-08-31 05:00  

     先日、渋谷で行われたドキュメント映画『ゆきゆきて、神軍』の公開三十周年上映で、原一男監督とトークイベントをさせていただいた。

     作品自体、時を経ても色あせることのない強烈な内容であったが、その後でうかがった監督の製作秘話がさらに強烈だった。具体的なことはここでは述べないが、実は作中での対象人物の行動はカメラを意識したフィクショナルなものであったというのだ。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第253回「『バッカヤロー』の絶叫を岡本喜八は戦争に放つ!」『肉弾』

    2017-08-23 05:00  

     岡本喜八監督は生涯で計八本もの戦争映画を撮ってきた。
     戦争を多く描いてきた理由を、彼は自著「マジメとフマジメの間」(ちくま文庫)で次のように述べている。「ささやかな戦争体験だったけど、私にとっては痛烈だったから」
     実際に同著には彼の「痛烈」な戦争体験が記されているのだが、そんな目に遭いながらも映画では戦争の悲惨さを正面から描かず、喜劇的に演出しようとしてきた。その理由も同著の中でこう述べている。「そんなある日、はたと思いついたのが、自分を取りまくあらゆる状況を、コトゴトく喜劇的に見るクセをつけちまおう、ということであった」「戦争は悲劇だった。しかも喜劇でもあった。戦争映画もどっちかだ。だから喜劇に仕立て、バカバカシサを笑いとばす事に意義を感じた」
     そんな岡本喜八ならではの、戦争と戦争映画に対する視線が如実に表れているのが、今回取り上げる『肉弾』である。