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記事 5件
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第264回「カメラマンの創意が光る 雷蔵、雪中の大立回り!」『眠狂四郎女地獄』

    2017-11-16 05:00  
     かつて太秦(うずまさ)にあった大映京都撮影所は、スタッフたちの卓越した技術力に定評があった。カメラ、照明、美術、小道具……、そこでは、一人一人が創造的な意識をもって時代劇作りに臨み、朝も昼も夜も、春夏秋冬も、日々の日常も、画面に映る全てを隅々までこだわり抜いて意のままに作り上げていた。その姿勢はもはやアーティストであった。
     この撮影所では「座頭市」「眠狂四郎」などの人気時代劇シリーズが作り出されてきたが、どのシリーズも作品ごとにスタッフは固定されずに代わるがわる担当してきた。そして、誰もが「自分が一番」という意識があるため、「向こうがこう来たなら、こっちはこう行く」と、シリーズを追うごとに互いを高め合っていった。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第263回「池部良が演じる真面目男 出来心で堕ちる惨めさ!」『黒い画集 第二話 寒流』

    2017-11-09 05:00  
     松本清張原作の映像化作品の最大の魅力は「真面目に生きてきた人間がふとした誘惑に負け、やがて転落していく」という、理不尽な物語展開だ。
     それだけに、主人公に配役されるのはどこか生真面目そうなイメージの強い役者が多く、彼らが誘惑と転落のドラマを通して演じている、他の作品ではなかなかお目にかかれない狂気と情けなさに満ちた一面が見せ場になっている。『黒い画集 あるサラリーマンの証言』の小林桂樹、『影の車』の加藤剛はその代表例だ。
     今回取り上げる『黒い画集 第二話 寒流』における池部良もまた、そうだった。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第262回「健全な善人が誰一人登場せず 『清張の毒』充満!」『けものみち』

    2017-11-01 05:00  
     先週は別頁の特集記事を担当したため、本連載は休載となった。その特集は、松本清張没後二十五年に際して映像化作品の魅力を改めて検証するという内容。ただ、清張原作の映画が大好きでたまらない筆者からすると、書きたい作品はまだまだある。
     そこで、今週と来週は本連載でも清張原作映画を扱っていきたいと思っている。 
  • 《ブーム白熱!「松本清張の世界」》圧巻の清張ドラマ傑作選(春日太一)

    2017-10-26 05:00  
     松本清張原作の映像化作品の大きな魅力は、その物語の理不尽さにある。
     真面目一筋に生きてきた人間が欲望の落とし穴にはまり込み、そこから地獄への一本道を突き進む。その行き着く先には絶望と破滅しかない。そこには情容赦は微塵もない。
     特に多いのが、ふとした気の迷いや目先の欲望に駆られて女性と関係をもち、結果、悲惨な目に遭わされる男たちの物語。だが悲劇の発端は全て、誘惑に負けたほんの出来心だった。 
  • 春日太一の木曜邦画劇場 第261回「実直から狂気へと瞬時に変身、加藤剛の凄演技!」『子連れ狼 死に風に向う乳母車』

    2017-10-19 05:00  
     加藤剛は映画・テレビ・舞台を通して「正義と信念を貫き通す生真面目な男」を一貫して演じ続けてきた。
     ただ時折、そのイメージを逆手にとってキャスティングされることもあった。たとえば『影の車』『砂の器』といった松本清張原作の映画では、いかにも実直そうな加藤が演じているからこそ、「実は少年時代に過酷な経験をしていた」という過去の暴露が意外性をもって映し出されている。
     そして、今回取り上げる『子連れ狼 死に風に向う乳母車』もまた、加藤のキャラクターを巧みに使って意外性を生み出した作品である。