• 『コスプレ少女』新装版 225-228頁        ★サキちゃんの親友は、うちだけや!

    2017-06-18 23:24
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、イベント会場でリンの幼馴染の遠藤マリが現れた。
    彼女は かつてヤンチャしてたリンの姉貴的存在で、親の借金取りの事務所を火炎瓶で襲撃する過激な不良少女だった。
    リンの過去をめぐって、まわりの少女達の葛藤が渦巻く。


    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    *****

    【登場人物紹介】                
                       人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

      
                                               滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






                          白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストはぺんたごん 様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       225-228頁です。

    遠藤マリは左脚を少し引き擦りながら、ルミ達の方にゆっくりと近づいてきた。

    先ほどと同じく黒いワンピース姿だが、頭のヘッドドレスは外していた。
    ティアラを着けたまま出歩くエリカよりは、常識のある少女かと思いきや、
    小脇には包帯を巻いた大きなクマのヌイグルミは大事そうに抱えている、
    どっちもいい勝負なのかも知れない。

    眼帯をしていて片目だけを怪しく細め近づいてくる黒づくめの少女に、
    ルミは無意識に鞄をギュっと強く抱きしめ、エリカの後ろに隠れた。
    お菓子の缶に大した額は入っていないのだが、何だかカツアゲされそうな気がしたからだ。

    リン …… じゃなくって、坂本サキは、あたしたちとは一緒じゃないわよ
     エリカが突如現れた遠藤マリにそう告げた。

    いや、あんたらに話があるや

    あたしらに? 何よ?
     相変わらず遠藤マリに対しては、愛想のないエリカ。腕組みをして斜に構える。

    サキちゃんと、どういう仲か知らんけどな、あんたらは不似合いや

    それ、どういう事よ!

     路地に響き渡るくらいエリカが吠えた。
    他人から自分達の友人関係を不似合いと言われるなど不快極まりない。
    腕組みを解き半歩踏み出すと、相手を射抜くくらいの鋭い眼差しで睨みつけた。

    遠藤マリエリカの気迫に目蓋をピクつかせなら声を荒げた。

    フン! あんたらは今にサキちゃんが引き摺ってる過去に手が負えなくなってくる。
    そうして、いつかはあの子を見捨てるんや。
    あんたらには、あの子と付き合い続ける覚悟なんてないに決まってる!

    覚悟って何よ! あたしは親友を見捨てたり裏切るようなことはしないわ! 
    例え、死んだって絶対にしない!

     遠藤マリの言葉がエリカの逆鱗に触れた。

    目を吊り上げ、睨み続けるエリカに対して、一方の遠藤マリは、
    何かを悟ったように落ち着きを取り戻して言葉を返す。

    例え死んでも? ふ~ん。
    滝沢さん、あんたは単純に自分はいつ死んでも、ええと思ってるだけちゃうか? 
    そう思てる自分に納得してるだけや。

    あんたの正体が分かったわ、自殺願望者や! 
    だからサキちゃんと今、付き合えている。

    でもなあ、サキちゃんはあんたらの事をどう思てるやろなあ。

    サキちゃんの親友は、うちだけや!

     エリカが視線をそらして俯いた、いつもの強気な反論が出来ないでいる。

     両者のやりとりを聞いていたルミは思った。
    遠藤さんは会って半日と経っていないのに、一瞬でエリカさんの心を見透かした!
    自殺願望者、確かにそうかも知れない。

    でもさあ、命懸けで友達を信じる、これって何がいけないの?
    エリカさんは前にこう言ったよ『裏切られたってかまわない、
    自分が友達を信じきれなかった方が死ぬより嫌だ』って。

     命懸けで友達を信じる。これこそが真の友情じゃないの? 

    それにね、友情に一番とか、二番ってあるの? ないよね。恋愛じゃあるまいし。
     遠藤さんはこの間の刑事さんと同じようにリンちゃんと関わるなと言いたいんだろうか?

      無言のままのエリカ
    ルミは重苦しく漂う雰囲気に堪らず、鞄をギュっと抱きしめながら、
    遠藤マリに恐る恐る質問をした。

    あのう、脚が悪いんですか?

     話の流れとは全く違う内容の質問に、遠藤マリは一瞬、戸惑いを見せながらも、
    その独眼をルミに向けて答えた。

    昼間も話してやろ。取立て屋の事務所を火だるまにしたことの御礼参りや。
     待ち伏せされて、袋叩きにされたんや

     彼女はスカート越しに左脚をさすりながら、やられた当時を思い出したのか、
    顔をゆがめ、
    ほんま、酷いことする連中やで。いたいけな女の子相手に
    そう忌々しげに言った。

     取立て屋の事務所へ火炎瓶で戦争を仕掛けに行くようなテロリスト少女が、
    はたして『いたいけな』と形容されるかは、大きな疑問で突っ込みどころなのだ
    が怖くてルミは突っ込めない。

     項垂れたままのエリカも無反応。

    ほな、そろそろ帰るわ

     遠藤マリはふたりへの話の目的を達したからなのか、ぶっきらぼうに、そう言った。
     包帯を巻いたクマのヌイグルミを抱え、脚を引き摺りながら、路地の先へと進んで行った。

    その姿が見えなくなった途端、エリカが倒れるようにルミに寄りかかり、
    首に腕を回して抱きついた。
    突然なのでルミは驚いた、鞄を前に抱えていたので、
    丁度鞄を挟むような感じで抱き合う体勢になった。

    ありがとうルミ。ワザと話をそらしてくれたんでショ?
    ルミの耳元に、エリカが弱弱しく呟いた。

    脚の事についての質問は、あの場の空気を変えるためだった。
    そして、ルミのこの機転をエリカは察していたのだ。

    うん。エリカさんの心が崩れそうになっちゃってないかと思って……

    そうよ。もう崩れちゃってるわ。
    あたしは心の奥底で、まだ死にたいと思っているのかしら……
    独りよがりなだけなのかしら……

    大丈夫。エリカさんは独りじゃないですよ。
    わたしがいるんですから。
    それにリンちゃんだって言ってたじゃないですか。身を犠牲にしても護る大切な人だって

    そ、そうよね

     安心したかのようにエリカは目を瞑って、ルミをさらに抱きしめた。
     人通りが少ないとは言え、行き交う人が抱き合うふたりをチラチラと見る。
     それでもルミは気にならなかった、他人からの好奇の視線よりも、
    エリカの癒しの役に立てている事が嬉しかったからだ。

    首筋にエリカの息が熱く伝わってくるのを感じながら、優しく抱きしめ続けた。

    コミュ障の自分を助けてくれたエリカさん。
     普段は自信たっぷり強気に振る舞う超自己中なお姉さんも、
    その心の奥底は傷だらけであることをわたしは知っている。

    「エリカ姫」のコスプレを剥いだ裸のエリカさんをわたしは知っている。

     友達を失うことの怖さに、わたし以上に怯えていることをわたしは知っている。

    そんなエリカさんの心の傷を母猫のようにひとつひとつ舐めて少しでも癒してあげたい。

    今のエリカさんには、わたしが必要なんだ。エリカさんに必要とされることで、
    わたしは
    わたし自身の存在を確かめられる、とても安心できるんだ

     少女ふたりは夕暮れになるまで抱き合った。

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    ―― 遊園地の決闘 ―― 

    リンが強盗退治をした日から二週間ほど経った日曜の朝、朝と言っても十時を廻っていた。
    ルミはいつものごとく深夜のネトゲーでドラゴン退治にあけくれていたので、
    まだベッドの中にいた。

    机に置いていたスマホが賑やかにアニソンを歌いだす。
    この着歌はエリカからのもので、珍しくメールではなく電話だった。

    寝起きで覚醒しきっていないルミは、慌てて手探りでスマホ掴むと電話に出た。

    ハイハーイ、ルミでーす

     彼女は今まで寝ていたことを悟られないよう、軽快な返事をする。

    もしもし、本田さん?

    ん! 誰? エリカさんの声じゃない!

    うちや、遠藤マリや。憶えてる?

    遠藤さん! リンちゃんの幼馴染みの …… で、どうしてエリカさんの電話に?
    寝起きの頭がさらに混乱した。

    もしもし、エリカさんは?

    ちょっと、助けてほしいねん

    助ける?

     意外な相手からの意外な言葉。

    サキちゃんを狙ろてる不良グループに、ドジ踏んで捕まってしもてん

    ええーっ、不良グループに捕まってるって!

    前にもあったな、こんなパターン。
    わたしも捕まってリンちゃんに助けてもらったけど、オシッコちびったっけ……

    ルミの寝ぼけ頭の混乱をよそに、遠藤マリは一方的に喋りだす。

    サキちゃんに伝えて欲しいんや、助けに来てくれって。相手は爆龍連合って言う、
    最近群れだした三十人くらいの族や。
    多分、サキちゃんをやっつけて目立ちたいんやろう。

    場所は琵琶湖の近くに、おっきな観覧車がある処、今はつぶれてしもうた遊園地の跡や

     遠藤マリは言うだけ言うと電話を切った。

    かけ直しても繋がらない。ルミはメールやエリカのブログの秘密掲示板を使って
    連絡を取ろうとしたがダメだった。

    なぜ、リンちゃんじゃなくて、わたしに連絡してきたのだろう? 
    リンちゃんを本名の坂本サキで登録されてなかったから?

    疑問に思いながらもルミリンに電話する。


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 221-224頁        ★コスプレコンテスト

    2017-06-04 21:49
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、イベント会場でリンの幼馴染の遠藤マリが現れた。
    彼女は かつてヤンチャしてたリンの姉貴的存在で、親の借金取りの事務所を火炎瓶で襲撃する過激な不良少女だった。
    リンの過去をめぐって、まわりの少女達の葛藤が渦巻く。


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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
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    【登場人物紹介】                
                         人公の本田ルミ
    この、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   

    イメージイラストは ぽよん様提供。

                       
                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。





                             白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会った
    ベレー帽がトレードマークの
    萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。
    イメージイラストはかりん 様提供。

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       221-224頁目です。

    コスプレコンテストが行われる特設ステージでは、パーティーグッズで売っているような
    ラメの入ったバカデカイ蝶ネクタイをした司会者が審査発表を始めようと
    しているところだった。

    審査自体はもう終わっていて、ステージ上には二十名くらいエントリーメンバーが
    横一列に並んで発表を待っていた。

    この即売会の会場内にもコスプレをしている人は沢山いるが、
    さすがに参加料まで払ってエントリーしているレイヤーたちは気合が違う

    どうやって会場内に運び込んだのかと思うくらい大きな羽根の付いたエルフの人がいた。

    その隣りでは、ダイオード電飾を付けた赤いロボットのレイヤーが、
    聖剣のような武器をガシャンガシャンと変形させてヒーローポーズをとっている。

    変形パーツが実に精巧に出来ていて、一体いくら金をつぎ込んだのかと思わえるほどの
    超リアルな出来栄えだ。

    また、その隣りには金髪ロングヘアーの美女レイヤーがいた。
    ブルーのカラコン、スレンダーなボディ、コルセットで締め上げられた白い胸
    半分以上見えていて、妖艶なポーズで観客の注目を浴びていた。

    ルミエリカのような、制服にアクセサリーをちょっと付け足しただけのコスプレでは、
    とても太刀打ち出来そうもない高スペックなレイヤーたちばかりだ。

    マイクを持った司会者が下位入賞者から発表を始めた。名前を呼ばれたレイヤーたちが
    ステージ中央に順に進み出て観客の喝采を浴びる。

    リンの名前は、まだ呼ばれていない。

    ステージの隅にいたリンはいた、胸に付けた大きなリボンの前で小さな手を組み、
    祈るような仕草で発表を待っている。

     司会者の声のボルテージも上がってきた。
     いよいよ優勝者が発表される。

    観ているルミもドキドキした。頑張れリンちゃん!


    「それでは優勝者の発表です。
    京都同人誌即売会コミュ協同開催、コスプレコンテストの優勝者は『天使のリン』を
    独自のイメージでコスプレした白銀(しろがね)リンさんです! リンさん前へどうぞ!」

    おおっ、リンちゃんが優勝だ、おめでとう!

    名前を呼ばれたリンは、両隣にいたレイヤーに会釈すると、観客に小さく手を振りながら
    ステージ中央に進み出た。

     観客の方々から『リンちゃーん! アレやってー』と声援が飛び交う。

    アレって何? リンちゃんが何かするの?
     ルミはステージのリンを括目した。

    ステージの中央に進みかけたリンは、一旦、右端まで下がるとタタタッと短い助走から、
    振りかぶった両手を床に着いて前転、体を捻って着地から今度は高く跳躍して
    伸身宙返りしながらベレー帽を脱いで司会者の横に着地した。

    着地と言うより舞い降りたという感じで、栗色の光沢を放つ髪が空中で拡がり、
    シルクのようにふんわりと肩に注ぐ。

     この一瞬を待っていたのか、ステージ下の最前列からカシャカシャと
    カメラの連写音が潮騒のように響いた。


     新体操ばりの激しい動きにも関わらず、彼女はニッコリと萌えスマイルを観客に振り撒く。

    うわー、リンちゃん、あざといなあ。
     自分の可愛らしさを分かっててやってるよ。
     小数点の掛け算は出来ないくせに計算高い!

     観客から大きな拍手と喝采を浴びながら、表彰に臨んだ。
     司会者がリンに優勝盾を手渡し、マイクを向けて感想を求める。

    とっても嬉しいですゥ!
     みなさん、ありがとうございますですゥ

     甘ったるいアニメ口調がマイク越しに響く。

    「え~、審査結果では衣装技術点8ポイント、ビジュアル6ポイント、
    パフォーマンス7ポイント、そして撮影会での人気得票数がトップでしたので
    10ポイント加算されて合計31ポイント獲得とのことでした。

     審査員の方々にも評価を訊いてみましょう。
     服飾学園講師の羽衣(はごもろ)先生?」

     ステージの前には、ブースと同じく長テーブルとパイプ椅子の特別席が設けられ、
    審査員たちが並んでいた。その中でド派手な羽根帽子を被った三十代くらいの女性に
    運営スタッフからマイクが手渡された。

    「素敵な衣装だと思いました。独創的でエレガントなデザイン性を特に評価しましたわ」

     壇上から羽衣先生に軽く会釈するリン

     審査内容を聞いたルミは、なるほどと思った、
    ただコスプレが似合っているだけではコンテストで勝てないのだと。

    「続いては、協賛いただいております株式会社野男射(やおい)印刷様から、どうぞ」

    マイクが羽衣先生から隣に座っている頭の薄いスーツの中年男性に渡された。

    「えー、みなさま毎度お世話になっております。野男射印刷のピカル源氏でございます」

    印刷会社の男性が薄い頭を撫でながらそう挨拶すると場内にドッと笑いが起こった。
    このイベントの主力スポンサーで審査員歴も長く、審査員名も頭の薄さを自虐ネタにした
    愛称で通しているらしい。

    「えー、洗練されたオリジナルコスプレも見事ですが、アピールタイムでのアクションも
    凄くてびっくりしました。たいへんよかったです」

     どうやら午前中のアピールタイムでも、あの新体操みたいな演技が受けたらしい。

    「え~では、最後に実行委員長から一言述べさせていただきまして、
    コスプレコンテストを締めたいと思います」

     司会者に言われて審査員席の端に座っていた黒縁メガネの痩せた男性が立ち上がった。

    年齢は若くない、長髪を後ろで束ね、美少女キャラが全面にプリントされた
    Tシャツを着ている。そのまま突っ立っていたら、抱き枕カバーを巻いてきたのかと
    思うぐらいの萌絵だ。

    あまりに堂々と着ているので、むしろ清々しさすら感じられるのだが、
    街中では決して一緒に歩きたくない格好だ。

    そんなオタくオーラ全開の委員長が手渡されたマイクを握り締めて一言発した。

    可愛いは正義! 以上!

    委員長のこの短い締めの言葉で閉会となった。


    コンテストが終わってからも、優勝者のリンは、他の出場者たちと共に
    撮影エリアでカメラに取り囲まれていた。

    カメラマンのリクエストに応じて、手を丸めたニャンコのポーズをしたり、
    指でハートの形を作ってドッキュンサインをしたりと、
    眩しく浴びせられるフラッシュにも笑顔を崩さない。

    おーい、リンちゃーん」 ルミは手を振ってリンを呼んでみた。

    すると、気付いたリンがすぐさま駆け寄って来て、ルミの両手を握りしめながら、

    ルミちゃん見ててくれましたですゥか?

    見てたよ。凄いねえ、優勝おめでとう!

    ありがとですゥ

     エリカリンを軽くハグして、ベレー帽越しに頭を撫でた。

    優勝おめでとう。よくやったわね

    エリカさん、ありがとですゥ

    まだ、忙しそうね

    ええ、人気投票での高ポイントは、カメラマンさんたちのおかげなんですゥ。
    サービスしとかなくっちゃいけないんですゥ
    審査評価の対策を白状してしまうリン

    あ、それからですねえ。この後、コンテストの打ち上げに行くんで
    一緒に帰れないですゥ。
     ゴメンナサイなのですゥ

    いいわよ。あんたは優勝者なんだから、打ち上げに出ないとマズいんでショ

    エリカさん、中学生が打ち上げ出ても大丈夫かなあ

    まあ、大丈夫でショ。
     リンの周りの人が危ない目に合うことはあっても、あの子自身が
    危ない目に合うことはない
    でしょうからね

    それもそうだね、リンちゃんは強盗を瞬殺しちゃうくらい、戦闘能力値が高いもんね」 

    リンの強さをからかい半分で喋っていたルミエリカに向かって、
    リンは唇に人差し指をあてて、「シーっ」と内緒だよって意味を込めた仕草をしながら、
    撮影エリアへと戻って行った。

    ああ、そうか。萌え可愛いキャラを売りにしているのに、喧嘩猛者だって
    正体がバレるとマ
    ズかったんだ


    コスプレコンテストも終わり、会場内ではテーブルや設営物の撤収作業が始まっていた。

    ルミエリカも引き揚げることにした。

    帰り支度にあたり、ルミはもちろん、『賢者のルミ』のコスプレアイテムのマントや
    小さい角帽も外して変身を解除する。

    エリカ『エリカ姫』のコスプレアイテムである銀のティアラを着けたまま、
    アクセサリだと言い張って、いつも外さないのだ。

    青いブレザーに赤いネクタイの制服姿、そしてポニーテールに燦然と輝く銀のティアラ。

    制服にティアラは不釣り合いだ、コスプレだと知らない人が見たら、
    単なるパーブリンな女の子だ、美少女だから許されるのだろうか?

    最寄りの駅まで、近道の路地を歩くふたり。

    ルミの抱えた鞄から、シャカシャカと今日の売り上げ金を入れたお菓子の缶が鳴っている。

    不意に黒い人影がふたりの行く手を遮った。一瞬、カツアゲかとルミは身構えたが、人影

    の正体は、帰った筈の遠藤マリだった。


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 217-220頁        ★マリちゃんの片方の眼を潰したのは、うちなんですゥ

    2017-05-14 02:23
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、イベント会場でリン幼馴染の遠藤マリが現れた。
    彼女は かつてヤンチャしてたリンの姉貴的存在で、親の借金取りの事務所を火炎瓶で襲撃する過激な不良少女だった。
    リンの過去をめぐって、まわりの少女達の葛藤が渦巻く。

    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
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    【登場人物紹介】                
                      人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   


    イメージイラストは ぽよん様提供。

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






                         白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは かりん 様提供。

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       217-220頁目です。


    遠藤マリと一緒に居た間、なぜか、滝沢エリカはずっと無愛想だった。

    ルミ彼女遠藤マリの印象を訊くつもりで声をかけた。
    エリカさん、どうだった?

    ピラフが美味しくなかったわね。やっぱりパスタ系をチョイスすべきだったわ

    違~うううっ、ピラフの感想なんか訊いちゃいないよう、遠藤さんのことだよ

    ……

    エリカは何も答えず、肩の前にかかったポニーテールを手で跳ね上げると、
    ツカツカと早歩きで即売会会場へ入っていく。

    ちょっと、ちょっと、エリカさ~ん
    慌ててルミは 鞄の中で売上金を入れたお菓子の缶をジャラジャラと鳴らしながら追いかけた。

    即売会会場のブースに戻ったルミエリカは、午前中と同じようにテーブルへ
    ブロマイド写真を並べて、再び客待ちをする。

    午後になると来場客のピークを過ぎたのか、ブースを訪れる客もめっきり減った。

    退屈だったルミは、金庫代わりにしているお菓子の缶に顎を載せて、
    通り過ぎる来場者をぼんやりと眺めていた。

    ほどなくして、コスプレに着替えた白銀リンがやってきた。

    胸元に大きなピンクのリボンを飾り、まるでアニメ雑誌から飛び出てきたような
    ファンタジックで可愛いらしい衣装だ。

    似合わない娘が着たら、周りから嫌悪感を持たれてしまいそうな衣装なのだが、
    愛くるしい彼女が纏えば文句のつけようのない最強の萌コスになっている。

    エリカさ~ん

    小さな握りこぶしを胸元に添えるあざとい萌ポーズでエリカに笑顔を向けるリン

    だが、エリカはリンに対して、まるで恋人の素行を問い詰めるような言い方で迫った。

    どういう関係なの? かなりヤバそうな子だけど

    えっ、えっ? マリちゃんのことですゥか?
    さっきも紹介したように幼馴染ですゥけど

     突然の尋問にリンは目をパチクリさせて小さな肩を縮ませる。

    エリカはブースのパイプ椅子から立ち上がるとテーブルにバンッと手をつき、語気を強める。

    どういう付き合いかって訊いてんのよ!
    あんた、まさかあの子にお金をたかられているんじゃ
    ないでしょうね?

     立ち上がった勢いで、エリカのポニーテールが早いピッチで揺れ動く

    そんなんじゃないですゥ!
    マリちゃんの事をそんな風に言うなんて。
    いくらエリカさんでも、酷いですゥ!

    普段はエリカに従順なリンが、珍しくヒステリックに言い返した。
    ついさっきまで萌えスマイルだったのに、眉間にシワよせ厳しい表情でエリカを睨んでいる。

    対峙するエリカリン、両者の間にバチバチと火花が飛び散らんばかりの雰囲気だ。
    突然の仲違いに、ルミはあたふたした。
    どうしよう、リンちゃんがいつになくヒートアップしてるよ。
    キレたら暴走しちゃうタイプだし ……
    また、わたしたちから離れていっちゃうかもしれない。
    ここはやっぱり、エリカさんの方に

    そう考えたルミは、恐る恐るエリカの袖を引っ張り自分の方に振り向かせると、
    黙したままエリカをジッと見つめた。

    眼鏡の奥の切ない表情で仲違いは止めてと訴える。

    エリカは我に返り、周りを迷惑な空気にしていることに気づかされる。
    彼女はうな垂れ、髪をクシャクシャと掻きながら、低く呟いた。

    …… ちょっと言い過ぎたわ、謝る ……
     でも、あたしあんたのことが心配なの。
    だから、あの子とどういう付き合いなのか教えてちょうだい ……

    エリカ自分の言動を悔やんだ。

    なぜなら、普段、彼女は自己中な振る舞いをしているが、親友を信じることに関しては、
    たとえ裏切られようが絶対的に信じる、そのことを信条にしていた。

    それなのに、リンの付き合っている相手を一方的に疑っている自分自身を酷く嫌悪した。

    言葉の勢いが失せて沈むエリカを見て、リンも緊張した表情を解いてブース前に屈んだ。

    マリちゃんとは、託児所で一緒になった時からの友達なんですゥ。
    マリちゃんはお父さんがいなくて、お母さんが薬中でまともに働かないから、
    家にお金も無くって、とっても苦労してきたんですゥよ。
    施設にあずけられたり、転校したり ……

    リンの家がまだ貧しかった時からの付き合いなのね

    ああ見えてマリちゃん、優しいんですゥよ。
    託児所にいた時、大きい組のイジメっ子からうちをよくかばってくれたですゥよ。
    姉妹のいないうちにとっては、お姉ちゃんみたいな存在なのですゥ

    リン、あんたの素行が悪くなったのは、あの子のせいじゃないのね?

    マリちゃんと関係なく、うちはうちで荒れてたですゥから、アハハハ
     頭を掻きながら照れ笑いして答えるリン

     何とか二人が元通りになった様子を見て、ルミは小さな胸をそっと撫で下ろした。

     リンの説明はまだまだ続いた。
    それと…… 本当はうちらお互い会っちゃいけないのですゥ……

    会っちゃいけないって? どういう事?

    親からも法務教官からも、うちら会わないように言われているんですゥよ

    何、それ?

    実は……マリちゃんの片方の眼を潰したのは、うちなんですゥ

    ええっー

    眼帯をしていた遠藤マリ、なんとその眼を潰したのは、リンだと言うのだ。

    エスクリマのお稽古をしている時に、うちの肘打ちが当ってしまって眼球破裂……

    眼球破裂~っ!
     ルミは思わず声を出して驚いた。

    『お稽古』なんて、上品ぶった言い方してるけど、エスクリマって格闘術じゃん。
    近接戦闘の訓練で事故ったってこと?

    うちが大怪我させてしまったけど、それをマリちゃんは、自分の方が悪いんだって……
    もちろん、治療費とか補償とかは、うちのパパがしてくれたんですゥよ。

    でも、マリちゃんのお母さんが借金元の人にそそのかされて、法外なお金を強請ってきたり、そのそそのかした借金元も別の犯罪で捕まったりとかしたんですゥ。

    それと、うちもマリちゃんも別の傷害事件で家庭裁判所のお世話になってたりとか、
    色々あって……
    それで、うちら会っちゃいけないってことに

    よく分かんないけど、かなり複雑そうね
     エリカがため息混じりで感心する。

     ルミもふたりの複雑な関係を思った。
    お金を強請るような事は、遠藤さんやリンちゃんに全部責任があるわけじゃない。
    でも、問題児二人を一緒にしておいてはいけないと
    保護者と法務教官の判断なんだろうなあ。 

    まあ、お昼に聞かせてもらった二人の武勇伝からも、隔離しておいた方が良さそう、
    混ぜるな危険っていうことだ

    中腰でブースに立っていたエリカが、パイプ椅子にドッと腰を降ろす。

    リン、あなたたちの関係は分かったわ。
     あたしはね、あんたとあの子との関係が不安だったのよ

    ふう~、分かってもらえたですゥか

     そう言って、リンは大きなリボンの着いたコスプレ衣装の上から胸を撫で下ろした。

     事態が落ち着いたところで、ルミはコスプレコンテストのことを思い出した。
     午後からのプログラムが迫っていた筈だ。

    リンちゃん、そろそろコンテストの本審査が始まる時間じゃなかったけ?

    そ、そうでしたぁ。行ってきますですゥ~

     ベレー帽を手で抑えながら、リンは大慌てで審査会場へと駆け出して行った。
     彼女を見送ると再びエリカのブースは閑散とした空気に包まれた。

    この日、ルミエリカのブースの手伝いをするために来ていた、と言うか
    半ば強制手的に徴用されてきていたのだ。
    午前中はそれなりに客も来てくれていたが、午後はパッタリと途絶え、
    張り合いのない売り子に飽きていた。

    コンテストかあ、いいなあ。
    確か、リンちゃんは優勝候補だって言ってたなあ、見たいなあ

    ルミは横に座っているエリカの顔をチラ見しながら、わざとらしく棒読み口調で呟いた。
    徴用主のエリカにコンテストを見に行きたいと露骨にほのめかしているのだ。

    いいわ。お客さんも少なそうだから、もうブースを閉めて、一緒に見に行きましょう

    マジっすか! わ~い

     珍しくエリカが同意した。
    たまには言ってみるもんだなあ

    ルミは喜々としてテーブルに並べたエリカのブロマイドを片付けて、
    『終了しました』と丸い字体で書いたポップを貼り紙して、ブースを離れた。


    (つづく)
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