• 『コスプレ少女』新装版 277-280          ★患者の心拍数を測る液晶パネルが

    2018-04-15 19:38
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。**********************************************************
    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    リンの幼馴染遠藤マリリンへの病んだ想いからエリカを監禁する事件を起こした。
    リン遠藤マリと決別し、事件は落着したのだが、遠藤マリが火事で重体となる
    ルミたちは搬送先の病院を探しだし、駆けつける。
    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                         人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」
    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケありの美少女。ルミをダンス動画作りに誘う。






                        白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

              
    イメージイラストは べこあめ様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       277-280頁です。

    ベッドの傍らにぶら提げられた点滴の袋から、透明なチューブがベッドの中へと伸びていた。患者の心拍数を測る液晶パネルがハートマークを点滅させながら刻々と心拍音を奏でている。

    エリカがビニールカーテン越しに、ベッドの遠藤マリに声をかける。

    遠藤さん、聞こえる? あたしよ、滝沢エリカよ

     その呼びかけに気付いた遠藤マリは、片目を開け、ゆっくりと首だけを動かして振り向く。

     元々、眼球破裂の事故で独眼の彼女、失った方の目には、いつもの眼帯ではなく
    四角い絆創膏が貼られていた。恐らく、治療で眼帯を外され、代わりに
    貼られたものなのであろう。

    なんで、あんたらが此処に?
    遠藤マリが喋った、その声は少ししゃがれていた。

    リン …… サキも、もう直、ここへ来るわ。
     今、タクシーでこっちに向かってるところよ

     エリカ遠藤マリに対して、リンを本名のサキと言い直して、優しく伝えた。

    ホンマか、サキちゃんも ……
     あんたらが呼んでくれたんか、おおきに ……

     礼を言う遠藤マリ、重体患者の割には、しっかりとした話し方で、元気そうに思われた。

    あの子、テレビのニュースで遠藤さんが火事に遭ったって知ったのよ。
    それで、どうしても、あなたに会いたいって。
    でも、あなたが何処の病院に居るのか判らなくて、みんなで探したのよ。
    ほんと、捜すのたいへんだったんだから

    にこやかな表情のエリカ遠藤マリに対して、まるで自分の幼馴染を相手に
    しているかのように、親し気に喋っている。

    傍に居たルミは、その様子に目を丸くして、エリカの心境を理解しかねていた。

    何しろ、遠藤マリエリカを拉致した犯人だ。
    拉致された時に二人の間で、自分の知らない
    何かがあったのでは?と
    ルミはメガネの奥の瞳をキョロキョロさせて訝った。

    実は、エリカ遠藤マリリンとの決別を受け入れた時点で 既に彼女を許していたのだ。

    そして、この病院に来て、看護師が遠藤マリの親族を捜していたその様子から、
    彼女の容態が相当深刻なのではと、心配していた。

     だから、会話が出来るくらいの彼女の様子に安心し、表情を緩ませたのだった。

    滝沢さん、あんたにはスマンことした。
     正直なあ、サキちゃんがおらんで、うちは寂しかったんや ……

    ふふん、許してあげないんだから

     許さないとの言葉とは裏腹に、エリカの目はとても優しそうに笑っていた。

    フフッ、そうか
     遠藤マリも片方だけの目を細めて微笑み返す。

     傍でその様子を見ていたルミも、二人の間に拉致事件の蟠りなど
    既に無いんだと、ようやく判ってきた。


    サキちゃんとは出会った時から直ぐに仲良うなれた ……
     酸素マスクを曇らせながら、遠藤マリリンとの出会いをポツポツと語り始めた。

    初めて会うたんは託児所やった。
    うちは五つで、あの子は三つやった。うちの方が後から託児所に入ってきたんや。

    託児所で最初に話しかけてくれたんが、あの子やった。
    あの子もお父さんがおらへん、うちと同じ境遇やったのが 仲良うなるきっかけやったな


     白銀(しろがね)リンは、今でこそ、義父がミュージシャンとして成功したおかげで
    大邸宅に住まうお嬢様だが、幼い頃はランドセルを買うにも苦労したくらいの
    貧しい母子家庭だったので、二人の出会いは託児所だったのだ。

    たまたま託児所に来た日が、うちの誕生日やったんや。
    それを知ったあの子は、うちを庭へ連れ出して、お金ないけどプレゼントや言うて、
    シロツメ草の冠を頭に載せてくれたんや。

    お誕生日おめでとうって、それはもう天使みたいな笑顔で言うてくれたんや。

    施設の大人が言う事務的なもんと違うて、本心から誕生日を祝ってくれた言葉。

    嬉しかったわ、今でもハッキリ憶えてる ……

    よう考えたら、うちは親にも誕生日プレゼントなんか 一度も貰うたことあらへんかった

    (ええっ、親に誕生日プレゼントをもらったことがないなんて!) ルミは胸が締め付けられた、気づかない内に彼女のメガネのレンズが曇りだす。

     遠藤マリの幼少期のことをルミも少しは本人から聞かされていた。

     遠藤マリは母親が薬中で ろくすっぽ面倒を見てもらえず育児放棄も同然だった、
    おまけに出入りしていた母親の男関係や借金の取り立て屋から殴る蹴るの暴力を
    振るわれ、幼い頃は性的虐待まで受けていた。

     普通なら他人に絶対知られたくないような悲惨な過去を 遠藤マリは、
    初対面のルミに ファミレスの雑談の中で、バラエティ番組の話でもするように
    カラッと明るい調子で語っていた。

    重い過去をあまりにも明るく語るので、ルミは最初、揶揄われているのかと
    思ったくらいだ。

    だが、それが真実だと知って、なんて心の強い人何だろうとある種、彼女を尊敬した。

     イジメが原因で心を病み、自殺未遂までしたエリカとは違うタイプの人なんだと。


     ベッドの遠藤マリは、時折苦しそうにフウフウ言いながらも話を続ける。
    託児所には半年くらいしか一緒に過ごせへんかった。
    次にあの子と会うたのは、小学校五年の時や。
    最初、サキちゃんやとは気がつかへんかった。
    なんせ、母親が再婚して名字が坂本に変わっ
    とったからなあ。

    転校してきたうちは、まずは学校の頭を取ったろう思うてな、一番喧嘩の強い奴を捜した。
    そしたら、二つ下の学年に六年生もかなわへんメチャクチャ喧嘩の強い子がおると、
    しかもそいつは女の子やと言うやないか。

    放課後、聞いて回って、ジャングルジムの天辺にいるところを見つけ出した。
    思ったより小柄で、短パン姿のボーイッシュな子やった。うちは直ぐに喧嘩をふっかけた。
    うちを見下ろすその子からは、女の子とは思えんピリピリとした殺気のような感じがしたな。

    それから、いきなりジャングルジムの天辺から、うちの前に飛び降りてきよった。
    そやけど、お互い間近で会うて、気がついたんや、託児所で一緒やったと。

    抱き合ってキャッキャとはしゃいだなあ。

    しかもや、会うた翌日にサキちゃんは、うちに大きなクマのヌイグルミを
    プレゼントしてくれたんや。

    全くの偶然やったけど、その日はうちの誕生日やったんや! 
    人生で最高に嬉しかった!

    あの子は、ずっと憶えててくれたんや! 

    うちの誕生日をずっとな!

    遠藤マリは息で酸素マスクが浮き上がるくらい興奮しながら当時の事を語った。

    うち自身も忘れてたのに…… その時思った、サキちゃんこそ親友やと

     彼女の残された片目から、涙が頬を伝った。


    ルミはハッと気が付いた。
    クマのヌイグルミって! 遠藤さんがいつも大事そうに持ち歩いていたあのヌイグルミ! あれがそうなのか

    ルミは病室を見回した、ベッドの隅に、それは置かれていた。
    少し煤けてはいたが無事だったようだ。

    見つけたルミは、何だかすごく安堵した。
    この病院に来るまでは、正直、遠藤マリのことが怖かった。
    リン自分のものにしようとして暴走する病んだ不良少女だと。

    でも、今は、誕生日の思い出のヌイグルミを肌身離さない、幼子のような彼女の一面に
    触れて、愛らしく思うと同時に同情した。

    彼女は喧嘩が強く、逆境に負けない強い心を持ってはいるが、独りなのだ。

    彼女の心を唯一満たしてきたのは、絶対的親友のリンの存在であり、
    その化身であるクマのヌイグルミなのではないか?

    ルミはそうな風に考えていた。


    病室の外が何やら騒がしい。ルミがそう感じて後ろを振り向いた瞬間、
    ドアを壊さんばかりの勢いで 白い衛生着姿のリンが飛び込んで来た。

    マ、マリちゃん! 大丈夫なの?

     病室なのに着けさせられたマスクを吹き飛ばしそうな大きな声。
    看護師が慌てて入室者を注意する。

    サキちゃん!来てくれたんやね。心配あらへん、ちょっと煙を吸うただけや

    エリカがベッド前の場所をリンに譲ると、リンはそこに跪いて遠藤マリと面会した。

    ごめんな、サキちゃん。うちの母親が、またリンちゃん家に金をせびろうとしたから……

    ん!? 遠藤マリのその言葉がルミに引っかかった。

    お金をせびろうとしただって? で、遠藤さんはどうしようとしたんだ? 
    待てよ、火事の原因はシンナーの引火だって、テレビのニュースでは言ってたな。

    シンナー …… 遠藤さんは前にシンナーで火炎を作ったって言ってた……

    ひょっとして母親の行動を止めようとして…… まさか、考え過ぎかな

    酸素マスク越しでくぐもった遠藤マリの声が、段々と小さくなり、よく聞き取れなくなる。



    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 273-276          ★幼馴染みが重体と聞き

    2018-03-24 20:19
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    リンはテレビのニュースで幼馴染遠藤マリが重体と聞き……

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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                      人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは ぽよん様提供。
                      

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






                        白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストはゆりぺっこ 様提供。

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       273-276頁です。

    ホームシアターを兼ねた大きなテレビ画面に、無残に焼け焦げたアパートが
    映し出されていた。

    その映像を食い入るように見つめるリン
    幼馴染みが重体と聞き、その表情に悲壮感が漂う。

    アナウンサーがニュース原稿を淡淡と読み上げる。

    消防警察の調べでは、火元とみられる遠藤さん方よりシンナーの容器が
    見つかっており、亡くなられた遠藤かず子さんは過去にシンナー中毒で入院
    治療をしたことがあるとの事で、火災との因果関係を調査中とのことです

    マリちゃん……

     遠藤マリ、先日の乱闘事件で決別したとは言え、リンにとっては姉のように慕ってきた
    幼馴染みに変わりはない。

    借金の取り立て屋の事務所を火炎瓶で襲撃したこともある過激な不良少女

    リンエリカを慕っていることに嫉妬して、エリカを拉致し、
    さらに不良グループを焚きつけてリンを襲わせまでした。

    そんな尋常ではない病みっぷりが故に、リン遠藤マリと決別したのだった。

    だが、やはり重体と聞いては落ち着いてはいられないのだろう、
    リンは鳶色の瞳を潤ませ、エリカに無言で訴える。

    遠藤マリの元へ行かせて欲しい、一番の被害者であったエリカに許しを懇願しているのだ。


    リンの切ない視線をエリカは真っ直ぐ受け止める、聡明な年長者は全て悟った。

    そして、食事のナイフとフォークをテーブルに静かに置くと、ポニーテールを翻して
    勢いよくスクっと立ち上がり、リンの無言の訴えを確かめることもなく、こう言った。


    リン、行ってあげなさい。
    きっとどこかの病院へ救急で運ばれているわ


    あ、ハイですゥ! 

    たちまちリンは破顔する、だが。

    でも …… どこの病院へ運ばれたか ニュースでも言ってなかったから、
    判らないのですゥ ……

    ルミ! ネット検索、救急を受け入れてくれる病院をリストアップしなさい

    ラジャー(了解)

     ルミがタブレットPCで火災現場と病院の所在地を比べながら、搬送先を探す。

    火災現場から一番近いこの病院かなあ?

    救急はタライ廻しにされるから、近い所とは限らないわ。片っ端から電話するのよ

     リストアップした病院に電話をかけるルミ

     エリカの指示で勢い電話をかけたルミだったが、番号発信をしてから、はたと気づいた。
    自分はコミュ障だったことを ……

     コール音が三回ほど響いた後、女性が出た。

    〇〇総合病院受付でございます

    うわっ相手出ちゃったよ、ええと、何て言ったらいいんだっけ?

     スマホを握り締め口ごもるルミ

    喋らなけりゃイケない、頭の中で考えてることがグルグル回っているんだけど……

    ……あ、あの …… え~と ……

    もしもし、どうかなされましたか? お具合、大丈夫ですか?

     ルミは気力を振り絞って応える。

    いえ、だ、大丈夫です。 自分が病気なんじゃないんです。

     今日、そちらに遠藤マリさんっていう人が、救急で入院されてませんでしょうか?

    言えたあ~、何とか言えたぞ!

     たかが電話の応答が出来ただけなのだが、心の中で小躍りするルミ

    失礼ですが、ご親族の方でしょうか?

    えっ? いえ、違います ……

    申し訳ございません。 そういったお問い合わせにつきましては、
    個人情報になりますので、お答え出来ないことになっております

    えー、そ、そうなんですか …… 失礼しました

     病院側の説明にルミはすごすごと引き下がり電話を切った。そして、深い溜め息を吐いた。

    ダメだったよ。個人情報になるから教えられないんだって

    ふうん、病院ってケチくさいこと言うのね。じゃあ、搬送される可能性の高そうな所!

    今度はエリカがタブレットPCでマップを探る。

    この総合病院と大学病院と市民病院のこの三ヶ所に分かれて、直接行ってみましょう。
    見つけたらスマホで連絡、いいわね

     普段は自由奔放、コスプレしているお姫様キャラよろしく超がつくほど身勝手な振る舞いでルミリンを振り回しているエリカなのだが、こういう時の彼女は実に頼もしい、
    判断と指示と行動が早く、優秀な指揮官のようだ。

    で、病院にはどうやって行くの?

     ルミが質問した。何しろ、此処、リンのセレブ邸宅、市街地から外れた山の中にあるのだ。

    リンの他に家人も居ないので 最寄りの駅まで行くにも自転車か歩きしかないと思われた。

    うちがタクシーを手配しますから、みなさんそれで行ってください

    タ、タクシー! お、お金は?

     中学生で財布の中身も乏しいルミが心配する。

     セレブな邸宅に住まうリンは、そんなルミの小市民的な質問に苦笑しながら。

    大丈夫ですゥよ。三台まとめて貸し切りますから自由に使ってください。
    お金は後でタクシー会社に払い込みますですゥよ

     そう早口で説明しつつ、スマホでタクシー会社に電話をかけるリン
     手慣れた様子から、度々、タクシーを利用していることが知れた。

     三人は到着したタクシーにそれぞれ乗り込むと、割り当てられた病院へと向かった。


    ********************

    ルミが行った先の病院が当たりだった。遠藤マリはこの病院に緊急搬送されていた。

    ルミは直ぐに皆に知らせたが、先に来たのはエリカだった、
    リンは運悪く渋滞に捕まってしまい まだまだ 時間がかかるらしい。

    病院側の対応は、電話で問い合わせた時と違い、ルミ達がタクシーで乗り付けて来たので
    信用したのか、とても丁寧で親切だった。

    遠藤マリが集中治療室にいることを教えてもらい、病室の前に置いてある黒い長椅子に
    ルミエリカは並んで座った。

    病院独特の消毒薬の匂い、集中治療室前の薄暗い廊下には 彼女達の他には誰もおらず、
    遠く離れた待合所のざわめきだけが聞こえてくる。

    治療室からは物音は何一つ聞こえてこない。

    ルミはビニール製の長椅子に太腿が汗でベタつくのを気にしながら、
    リンの到着をそわそわと落ち着きなく待った。

    突然、治療室の横にある扉が開いたので、ルミはメガネが飛びそうになるくらい驚いた。

    中から出てきたナース服の看護師が、辺りを少し見回してから、
    長椅子に座っているルミ達の顔を覗き込むようにして、
    患者さんのご家族の方ですか?と、神妙な面持ちで尋ねた。

    ベテランの風格漂う看護師に、ルミはすっかり緊張してしまい顔を下げた、
    隣りに座るエリカに目配せして助けを求める始末だった。

    代わって、エリカが答えた。凛とした彼女の声が病室の廊下に響く。

    いいえ、違います。あたしたちは遠藤さんの友達です。彼女の容態はどうなんですか?

    意識は有りますが、良い状況とは言えません。
     お願いなんですけど、患者さんのご家族と連絡をとってもらえませんか?

    すみません。遠藤マリさんは母子家庭でお母様もこの火事で亡くなられたと聞いています

    そうですか …

     看護師は残念そうに肩を落とす。

     エリカが長椅子から立ち上がり、看護師に向かって申し出た。

    意識があるなら、面会出来ませんか?
     あたしたち、遠藤さんに声をかけてあげたいんです。
    彼女、独りぼっちになったから …… 

     エリカの申し出に看護師は暫し躊躇う。 親族でも無い者の面会は異例だ。
    看護師は 頭にティアラを着けた中学生をじっくりと観察する。
    変な子だと思ったのだろうか?   

    しかし、友達を思う少女の曇りなき瞳にほだされたのか、面会が許された。

    ありがとうございます。それと、もう一人、遠藤さんの幼馴染が遅れて来ます。
     その子にも面会を許可してやってください

     エリカは厚かましくも追加の申し出をした。

    敢えて、幼馴染というワードを使い、同意を得ようとしているのだ、
    大人も舌を巻くような狡猾さがエリカにはある。

    看護師も、もう一人だけなら仕方ないなという感じで黙って頷いた。

    ルミエリカは、別室で白い衛生着とマスクを着用するように指示される。

     ルミはマスクを着けながら、ふと思った。

    どうして、エリカさんは遠藤さんへの面会を申し出たんだろうか?
     遠藤さんはついこの間、自分を拉致った犯人じゃないか。
     お見舞いとして面会するにしても、普通ならリンちゃんの到着を待つだろう?

     ルミエリカの行動が読み切れないでいた。

    何しろ、この年長で自己中なお姫様キャラのエリカが突飛な行動に出た場合、
    深い思慮がある時と 何の考えもなしに勢いだけの場当たり的な時があるからだ。

     準備の整った二人は、手に消毒薬をスプレーしてもらい、集中治療室へと入った。

    透明なビニールカーテンで仕切られたベッドに、酸素マスクを着けられた遠藤マリが居た。

    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 269-272          ★「血の七日間抗争ってどんなの?」

    2018-03-04 20:08
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    実はリンには小学生の頃から不良にも一目おかれる喧嘩猛者だった。かつてのヤンチャ仲間で幼馴染遠藤マリエリカを監禁する事件を起こし、リンは乱闘を制して救出に成功した。
    そして、リンは自分絡みで迷惑をかけたお詫びにと、エリカルミを家に招いた。

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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                          人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   

    イメージイラストは ぽよん様提供。


                          滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」
    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。




                       白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも
    一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。
    イメージイラストは 海冥様制作の3Dモデルから提供。ナイフモデルはアサシンPさん作から借用。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       269-272頁です。

     エリカが子供みたいにイタズラっぽい目つきをして、タブレットPCの検索ワードに
    『狂犬サキ』と打ち込んでいる。『狂犬サキ』とは、喧嘩猛者であるリンの通り名だ。

     ローカルでニッチなワードにも関わらず、いくつかヒットした。

    『族狩りが趣味のマジキチ小学生』

    『少年院帰りの鬼の子』

    『チンピラフルボッコ事件』

    『血の七日間抗争』

     

    「「ウププッ」」
     エリカルミは吹き出し笑いをした。
    本人には悪いけど、エラい書かれようじゃん

     ふたりは声を出して笑いたいところを必死で堪えようと口を手で押える。

    顔を真っ赤にして涙目になり、互いに小突き合いながら、ヒットワードを読んでは
    無呼吸状態
    での笑いに悶絶するふたり。

    プハア! ヒィー、ヒィー

     堪えきれなったエリカがとうとう息を吹いてしまった。

     様子のおかしいふたりに、リンが気付いたのかアイランドキッチンから首をのばす。

     視線の合ったエリカが冷やかすように。

    リン~。あんたの通り名『狂犬サキ』って結構有名なのね

    ああっ! ふたりとも何を見てるですゥか!

    狼狽し、青ざめるリン

    リン、一つ訊いてもいいかしら?

    な、何をですゥか? ネットのくだらない噂をそのまま信じちゃったり
    したらダメですゥよ

    声のトーンを下げ、エリカがマジな質問をする。

    血の七日間抗争ってどんなの?

    あっ ……

     料理をしているリンの手元が止まった。

     そして、何やら意味不明な鼻歌を歌い出す。

    な、七日間~、七日間~、一週間は七日間ん~ん♪

    かなりの動揺が見てとれた。

    しかし、そんな鼻歌で質問を誤魔化しきれるわけがない。

    ソファーのエリカが長い脚を組み直す。

    本腰を入れて質問を続けるつもりだ。

    この間、『爆龍連合』のボスや遠藤マリも口にしていたわよね、血の七日間抗争って。

    ネットで見ても詳しく載ってないの

    そ、そ、そうですゥかあ、それは残念 ……

    だから、参戦していた、あ・ん・たに訊いてるんだけど?

     語気を強めるポニーテールのお姉さん

    参戦って、そんなあ。 うちは最後の方でチョロっと『参加』しただけなんですゥよ

    参加? そんな運動会にでも参加したみたいな軽い感じで言ったってダメよ。抗争でショ

     ポニテお姉さんから質問攻めに、タジタジとなるリン

    抗争だなんて、そんなあ。
    みんな大げさに言ってるだけですゥよ~。

     ……ちょっとした揉め事、そう、そう揉め事。
     去年起きた、ヤンチャなグループどうしのちょっとした揉め事なのですゥ」

    ふうん、揉め事ねえ。 で、その揉め事には何人くらいの参加者がいたのかしら

    えっ? 何人って…… さ、三百人くらい…… いた…… かな?

     そう答えてから、リンはテヘっと自分で頭に拳固をコツンと当てて、舌をペロっと出した。

     可愛い子ぶって誤魔化そうとする気だ。

    三百人って!喧嘩のレベルじゃないじゃん!

     その規模の大きさにルミが思わず声をあげた。


    血の七日間抗争について、その後もエリカの尋問が続き、嘘をつくのが下手なリンは、
    ポロリポロリと漏らしてしまうのだった。

    その断片的な話を繋ぎ合わせると、五つの大きな不良グループが互いの勢力争いから起こした大乱闘事件だったらしい。

    しかも、単純なグループ間の争いではなく、劣勢なグループどうしが同盟して優勢なグループと対抗したり、人数の大きなグループでは仲間割れが起きたりと、
    さながら関ヶ原の闘いのように勢力図が複雑だったとか。

    総勢三百名による血みどろの争いが一週間に渡って繰り広げられ、
    半死半生で病院送りになった者も続出、逮捕者まで出した。

    ほんの一年前の出来事にも関わらず、血の七日間抗争として、
    今や伝説的な評判になったのだった。

    訊き出したエリカも顔を引きつらせる。

    ふ~ん。そんな抗争事件に、リン、あんたは遠藤マリとチョロっと『参加』しただけだと。

     大半が高校生や十代後半の不良連中に混じって、まだ小学生だったあんたは
    参加しただけなんだと言い張るのね。
     よくもまあ、この事で鑑別所のお世話にならなかったもんだわね

    いやあ、この時は上手く逃げられたのですゥ うっかり口を滑らすリン

    逃げたとか、逃げられなかったとかの問題?

     目まいに襲われたエリカは、こめかみに指を当てソファーに崩れていく。

     さすが狂犬の通り名で呼ばれるだけのことはあるなと、ルミも改めて納得したのであった。


     *******************

     血の七日間抗争の追求で、白銀(しろがね)リンの小学生時代のハチャメチャぶり
    浮き彫りになったところで、料理が出来上がった。

     自分の黒歴史を白状し終えて気分もすっきりとしたリンは、ゲストのふたりを
    アイランドキッチンの奥にあるテーブルへと案内する。

     フリルエプロン姿のリンが躍るようなリズミカルな配膳を始める。
    白いテーブルクロスの上には、銀製のフォークとナイフが並べられ、
    温められた白いボーンチャイナにスープや盛りつけられた料理が供される。


    お待たせしたですゥ。近江牛のソース・ドミグラース・ハンバーグに
    ニンジンとアスパラガスの温野菜添えでっすゥ。
     コーンポタージュと焼きたての天然酵母パンもありますので、
    さあさ、冷めないうちに召し上がれなのですゥ~


     配膳するなり、食べるように促すリン

    リンちゃんも一緒に座ってよ

    わ、わかりましたですゥ
     テンション上げ過ぎたと自覚したのか、リンも静かに着席した。

     席に着いた三人は、両手を合わせる。

    「「いただきま~す」」

     ルミはナイフとフォークを手に取って、リン御手製のソース・ドミグラース・ハンバーグを食べにかかる。

     小判形に焼かれ、濃厚な褐色のスースがたっぷりとかけられたハンバーグに
    ゆっくりとナイフを入れる。
     溢れる出る肉汁がルミの口によだれを呼ぶ。

    フォークで一切れ口に運ぶ、口の中で広がる肉の旨味、甘い芳香が鼻を抜けていく。

     ルミは目を瞑ってじっくりと味わう。

    超美味しい! さすが近江牛! 近江牛食べたの初めてだけど

    ほんと美味しいわ。 デミグラスソースも自分で作ったの?

    いえ、ドミグラースは有名ホテルの缶詰を使ったのです

    あら、そうだったの

    リンちゃん得意のネット通販だよね

    ピンポーン!

     リンの答えにエリカも苦笑する、食事会は賑やかに始まった。

    エリカお姉様には、ほんっとうに申し訳なく思ってるのですゥよ、
    うちのせいで二回も人質みたいなアブナイ目に合わせてしまって

     リン自分と不良グループのいざこざにエリカを巻き込んでしまったことを神妙に謝った。

     今日の食事会もお詫びのために開いたのだ。

    別にあたし自身が何回人質になろうと構わないわ。
    でも、あんたが無茶するのが心配なのよ。 

    遠藤マリにも言ったけど、あたしはリンが何者であろうとも、
    どんな過去を引き摺っていようとも、付き合う覚悟はあるわよ。
    だって、あんたは大切な友達ですもの

    エリカの言葉に嘘偽りはない、強い信念を持つ彼女は、真っ直ぐにリン見据えて語った。

    エリカお姉様 ……  エリカの言葉にリンは目を潤ませる。

     胸アツな感動の雰囲気、こういう場を茶化さずにはおれないルミの悪い癖が出る。

    じゃあ、エリカさんにもう1回くらい誘拐されてもらって、
    助けだしたら、次は近江牛のステーキをご馳走してもらおうかな

     と、ボケをかました。

    エリカルミに脳天チョップを仕掛けたが、それを予想していたルミ
    身を反らしてかわし、エリカの手刀は空を切る。

    あんた、よけたわね

    そりゃあ、打たれるのが分かってたら、よけますよ。いつもわたしの脳天狙ってくるから。ツインテの分け目のところは、髪がないから衝撃がモロにくるんですよ

     そんな、掛け合いをしながらも、お互い破顔する。

    点けっぱなしにしていたテレビから、火事のニュースが流れてきた。

    『今日、午前十時頃、〇〇市のアパートで火事があり、205号室の住人遠藤かず子さんが、搬送先の病院で死亡が確認されました。長女のマリさんも重体とのことです。』

    マリちゃん! リンが声をあげて反応した。

    (つづく)
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