• 『コスプレ少女』新装版 233-236頁        ★ 三十二 対 一

    2017-09-16 20:36
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
    **********************************************************

    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    エリカリンの幼馴染の遠藤マリとともに不良グループに捕まってしまう
    ルミリンは、エリカたちを救出すべく、不良グループの呼び出しに応じることにした。

    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

    *****************************************************
    *****

    【登場人物紹介】                
                           人公の
    本田ルミ

    この春、中学生になったばっかりの
    女の子。

    ゲームオタクでプチ引籠り
    コスプレをきっかけにコミュ障から
    リハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘の
    ゲームキャラ「賢者のルミ」
    コスプレイヤー。   

    イメージイラストは
     ぽよん様提供。       

                       滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。





                         白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは 海冥さん制作の3Dモデルから提供。
     ナイフモデルはアサシンPさん作から借用。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       233-236頁です。

    コミュ障で臆病なルミが、囚われたエリカをを助けるため、乱闘覚悟の不良グループの
    呼び出しに、自分リンと一緒に行くと言い出した。

    そのことに、リンは少し戸惑いながらも。
    じゃあ、何か身を護るものが必要ですゥねえ。ナイフをお貸ししましょう。
     そうですねえ、このアイクホーン社製のKM2000なんかどうでしょう? 
    渋くてルミちゃんにピッタリだと思うですゥよ

    そう言いながら、リンは迷彩柄ジャケットの胸のホルダーから黒いナイフを抜き出し、
    ルミに勧める。

    それは刃まで真っ黒でカッターナイフのように角張った形をしたアーミーナイフだった。

    リンがプラスチック製のグリップ側をルミの手にポンと載せて握らせた。

    思わず受け取ってしまうルミ、ズッシリとした重量感、それは見た目より重たく、
    家で使っているステンレス包丁なんかと違って刃も分厚く鉄板のようだと思った。

    この真っ黒なナイフのどこがどう、自分にピッタリなのだろうか? ルミは困惑した。

    いや …… リンちゃん、あのねえ

    それドイツ製なんですゥよ、ゾーリンゲンの老舗!

    いやいや、別にナイフの値打ちなんか訊いてないし! わたしこんなの振り回せないし!

    KM2000、見せるだけでも相手がビビりますですゥよ。うふふふっ

    うふふっじゃないよ~、リンちゃんってナイフマニアだったの?

    愛好家と呼んで欲しいですゥ

    この物騒な物、返すから早く仕舞ってよ
     ルミがナイフを突き返すと、リンは手馴れた手つきで胸のホルダーに戻した。

    わたしのアイテムはこれだよ

     そう言って、ルミはスマホをかざして見せた。

     首を傾げて訝るリン、その意味を図りかねているようだ。

    三十人も相手するんだよ、まともにやったら、直ぐにやられちゃうよ。
    強盗キラーのリンちゃんの戦闘値を有効に使わなくっちゃね

     すっかりコスプレキャラの『賢者のルミ』モードになっているルミは、
    策士気取りで不敵な笑みを浮かべた。



     ―― 三十二 対 一 ――

     遠藤マリが助けに来て欲しいと言い残した場所は、琵琶湖の傍にある遊園地だが、
    今はもうつぶれてしまって廃墟となっている。
    リンの家からも、さほど遠くはなく、自転車で行けるような距離だ。

    立ち入り禁止の看板はあるが、朽ちた金網のフェンスには、大きく拡げられた穴があり、
    簡単に中へ入ることが出来た。
    おそらく、誰かが不法に出入りしているのだろう。
    ルミも今から無断で入ろうとしているのだから偉そうなことは言えない。

    アトラクションに乗って喜ぶ子供を描いた大きな看板が彼女を出迎える。
    子供の顔から錆びが血涙のように垂れ、おどろおどろしい。 

    ルミは廃墟となった遊園地を進む。

    今はもう動かない大きな観覧車を見上げていると、
    懐かしさが沸き立ってくる。

    なぜなら、ここは彼女が小さい頃、
    親によく連れて来てもらった馴染みのある
    場所だからだ。

    ペンキの色がすっかり薄くなった遊具、
    閉鎖された売店、ガランとした広場。

    そう遠くない記憶から、ジェットコースターの
    騒音や子供の歓声が聞こえてきそうだった。

    ルミは小さなリュックを背負って廃墟を
    うろつきながら、朽ちた案内版を頼りに、
    イルカショーが行われていた場所を目指す。

    ここは海ではなく琵琶湖の近くだと言うのに、どういうわけかイルカショーをやっていた。
    ウエットスーツを着た飼育員のお姉さんが、イルカに乗って颯爽と手を振る姿が思い浮かぶ。

    ルミはイルカに乗ってみたかったなあと思いつつ、荒れ果てたイルカショーの入口を潜った。

    イルカの泳いでいた大きなプール、今はすっかり干上がり空っぽの寂しい姿をさらしていた。

     隅にはゴミが散らかっていた。その中にウエットスーツの破れたやつがあったので、
    ルミが何気に蹴飛ばそうとしたら足がひっかかった。
    やたらと重い。それはダイビングで重りに使う『鉛ベルト』だった。

     プールの中央に立って周囲を見回してみた。

     階段状の観客席、オレンジ色のプラスチック製のベンチは風雨にさらされ色あせていた。

    観客席を覆うテントの大屋根は、まるで幽霊船の帆のようにボロボロで、
    ところどころ裂けたキャンバスが風にはためいていた。

    テントの大屋根を支えている鉄柱も、ペンキが剥げ落ち、赤錆をさらしている。

    ルミはプールの底から観客席へ上がった。

    彼女は屋根を支える鉄製の円柱に近寄り、つま先でゴンゴンと蹴ってみた。
    すると、錆びた表面が崩れ、何度か蹴っていると中が空洞の円柱に穴を空けることが出来た。
    相当、脆くなっているようだ。

    イルカショーのエリアから出ると直ぐに、乗り物系遊具の管制室が目に入った。

    管制室と言っても、小さな見晴らし台みたいなもので、ルミは外付けの
    赤錆びたスチール階段を使って昇っていった。

    そこは遊具操作盤の残骸があるだけで、人が一人入れるだけの狭い部屋だった。

    位置的には、隣りのイルカショー側よりも高いエリアに建っているので、
    管制室からイルカショー側を全て見渡すことが出来た。

    いい場所だ、ここに隠れることにしよう

     ルミはポケットからスマホを取り出し、別行動をしているリンにメールを入れた。

    それから、背中のリュックを下ろし、中からモスグリーンの双眼鏡を取り出した。

    それはリンから借りたもので、バードウオッチングで使うようなコンパクトサイズ、
    対物レンズの保護キャップを外すと、そのレンズは宝石のルビーのように
    綺麗な赤色をしている。

    高そうな双眼鏡。リンちゃん、これもネット通販で買ったのかな?

     覗いてみると、カチカチとメガネに当たってピントが合わせづらい。
     こういう時、メガネって不便だなとルミは思っているのだが、
    目にコンタクトを入れるのが怖いので替えるつもりはない。

     双眼鏡をイルカショーのステージに向ける。

    居た、居た、リンちゃんロックオン!
     迷彩服に身を包んだリンを捉えた。

     首に真紅のバンダナ、足元を黒のコンバットシューズで堅め、トレードマークの
    ベレー帽は深みのあるワインレッドだ。
     黒い革手袋をした手には、例の六十センチほどの鉄パイプを二本、
    そう彼女が愛用している端にL字の継ぎ手が着いたあの細い鉄パイプだ。

     このすっかり喧嘩支度をしてきた女の子が、
    普段は可愛い服を着て愛らしく振る舞い、別荘のような邸宅に住まう
    セレブなお嬢様だと誰が信じるだろうか。

     これから不良グループを相手にしようかというのに、お嬢様はとても落ち着いていた。
     いつもの萌え可愛らしさとは違って、その表情は、試合前のアスリートのように凛々しい。

     イルカショーのステージの上で、彼女はコンクリートの床を鉄パイプで
    カンカンと打ち鳴らし始めた。
    鉄パイプとコンクリートの打音が静かな遊園地中に短い木霊を伴って響き渡る。

    やがて、これを聞きつけたのか、ぞろぞろとゾンビのように沸いて出てきた不良どもが、
    イルカショーを目指してやって来る。

    こ、こいつらが爆龍連合 ……
     双眼鏡に被りついたルミは、思わず息を飲む。

     連中は、みな、手に手にバットや角材などの長物(ながもの)のエモノを持っていた。

    こっちはリンちゃん1人だけなのに、メチャメチャ重武装じゃん

     見る間に連中はステージの前に集まってきた。

    一、二、三、四 ……

     急いでルミは 相手の人数をカウントする。

    全部で三十二人!

     高校生くらいだろうか、みな目つきが悪く、斜に構えてステージのリンにガンを飛ばす。 

     ルミは双眼鏡から目を外すと、ステージに背を向け、狭い管制室に座り込んで唇を噛む。 心臓が高鳴り、血液が流れる音が聞こえるほど緊張に襲われていた。

    今からでも、警察に連絡した方がよくないか? 
    圧倒的な数の相手、リアルな現実を目の当たりにして、ルミに迷いが出た。

    だが、今から通報しても止められそうにない、覚悟を決めるしかないと思い直す。

    彼女は顔をプルプルと、ツインテールの先が頬に当たるほど強く振って、気を奮わせた。

    そして、手鏡を取り出すと自分を映し見た。

    ツインテールに赤いリボン、赤いメガネの自分が鏡の中に居る。

    わたしは賢者のルミだ、賢者のルミだ、賢者のルミだ ……

     彼女は呪文のごとく何度も呟く。

     自己暗示にかけているのだ、心にもコスプレを纏い、賢者のルミ成りきるために。

    「賢者のルミ」は、ゲーム「ファンタジア学園」の中では知識と奇策でピンチを切り抜ける知性派のメガネっ娘キャラなのだ。

     彼女は体を向き直して再び双眼鏡を握った。

    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 229-232頁        ★戦いの時こそ、己を飾るのが武人なのですゥ

    2017-08-06 16:06
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、イベント会場でリンの幼馴染の遠藤マリが現れた。
    彼女は かつてヤンチャしてたリンの姉貴的存在で、親の借金取りの事務所を火炎瓶で襲撃する過激な不良少女だった。
    リンの過去をめぐって、まわりの少女達の葛藤が渦巻く。


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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                           人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   

    イメージイラストは ぽよん様提供。

                       

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」
    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケありの美少女。ルミをダンス動画作りに誘う。






                           白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった過去がある。
     
    イメージイラストは 海冥さん様制作の
     3Dモデルから提供。
                          ナイフモデルはアサシンPさん作から借用。

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       229-232頁です。

    ルミは最初、警察に相談しようかと迷った。
    それと言うのも、いまだリンは鑑別所から観
    察処分中の身の上であったので、
    警察絡みになるとマズい事情があるからだ。

    以前、リンが銀行強盗を退治した時、刑事から忠告されていた『リンに関わることの危険性』が、今、現実の事態となっている。

    こんな時は、いつも頼りにするエリカに相談したいところなのだが、
    今はそのエリカ本人も捕まってしまっていて連絡が取れない。
    遠藤マリの話をまるまる信用して、そのままリンに伝えるしかなかった。

    ルミリンに電話で事情を説明したが、直接会って相談しようということになった。
    リンの家はルミが住んでいる京都の隣県、滋賀県の大津市にある、
    不良グループが呼び出しに指定してきた遊園地からも、そう遠くはない。

    ルミは玄関を飛び出し、地下鉄の駅を向かう、JRを乗り継ぎ、大津駅で降りた。

    道中もずっとLINEで連絡を取り合った、リンは迎えをよこすと伝えてきた。
    駅の降り口でルミが待っていると、目の前に一台のタクシーが滑り込んできた。
    後部座席のドアがバクっと開き、奥の運転席から白髪混じりの運転手が身を捩じらせて
    ルミに声をかけてきた。

    「お客様が本田様ですね」

    あっ、ハ、ハイ
    裏返った変な声で慌てて返事をするルミ
    コミュ障の彼女は、知らない大人から声をかけられ、緊張してしまったのだ。

    そして、勧められるがまま、タクシーの後部座席に乗り込んだ。
    ドアを閉めようとして、運転手から、
    「ああ、触らないでください、こちらで閉めますから」と、恥ずかしい注意をされてしまう。

    ルミはタクシーが自動ドアだということを知識として知っていたが、緊張で忘れていた。
    実はタクシーに乗るのは、コレが生まれて初めてだったりする。
    何しろ、彼女が生まれた時から家にはマイカーがあり、バス停も地下鉄も近い
    恵まれた所に住んでいるからだ。
    それに去年まで小学生だったから、タクシーを利用して出かけるような用事もなかった。

    タクシーは市街を抜けると、山への登り口に入っていく。
    山と言っても小さな山で未舗装の坂道を登っていく。

    途中、黒と黄色のトラ縞の遮断柵がある。
    いつも閉まっているこの鉄柵が、今日は開けられていた。ここから先は私有地なのだ。

    タクシーは緑の景色を進んで行く、直ぐに
    木々の間に赤い大きな三角屋根が見えてくる、
    このペンションのような邸宅がリンの家なのだ。


    タクシーが減速して、石畳の敷地内に入った。
    そこに薄い花柄の可愛いチェニックを着たリン
    待っていた。
    珍しくトレードマークにしているベレー帽は被らず、
    亜麻色の髪を風になびかせていた。


    タクシーから降りるルミ
    リンちゃん、迎えの車ありがとう

    いいえ、いいんですゥよ

    そう言いながら、リンはタクシーの前席の窓に小さな上半身を突っ込んで、
    運賃をカードで支払うやり取りをしていた。

    精算を済ませた後、彼女は頭の後ろで手を組んで、何か考え事をしながら、
    玄関へ続く花壇をゆっくりと歩いていく。
    自分のせいで友達が巻き添えになった事を憂いているようだ。

    ピカピカの大理石が敷かれた広い玄関を上がって、長い廊下を進んでリビングルームに入る。
    大きなソファーセットがいくつもあるまるで家具売り場のような広いリビングだが、
    ふたりは隅っこの小さなソファーに座った。

    リンの義父は映画音楽で世界的な賞を取ったこともある有名なミュージシャンで、
    国内外をいつも忙しく飛び回っている。
    まだ二十代の若い継母も義父と一緒に仕事をしていて、両親とも家に帰っている時が少ない。今日も両親とも家に居ないみたいだ。

    今の両親とリンとには血の繋がりがない。リンは元々、父親知らずの母子家庭育ち。
    実の母親はリンが小学校に一年生の時に、今の義父と結婚したのだが、
    不幸にも通り魔に刺されて亡くなっている。
    今は大邸宅に住むセレブなお嬢様リン、けれどもかなり複雑な生い立ちなのだ。

    ソファーに向かい合わせのルミリン

    どうして、遠藤さんはエリカさんのスマホを使って連絡してきたんだろうね?
    遠藤マリの不可解な行動がルミは気になった。
    多分……マリちゃん家はお金がなくて、携帯なんて持ってなかったからじゃないですゥか
    遠藤マリの幼馴染であるリンがそう推測した。

    な、なるほど、携帯持ってないのかあ……
    じゃあさあ、なんで直接リンちゃんにじゃなくって、わたしに電話してきたんだろうね?」「エリカさんのスマホには、うちを本名の坂本サキで登録しているわけがないから、
    きっとうちに直接かけたくとも、かけられなかったんじゃないですゥか?

    白銀(しろがね)リン』というのは、リンのハンドルネームで、本名ではない。

    それだったらさあ、スマホを貸してくれたエリカさんに訊けばいいじゃん

    そ、それもそうですゥね……

    ね、おかしいでしょ?

    確かにおかしいですゥねえ。
    でも あのマリちゃんが捕まっちゃうくらいですから、きっと何か事情があるのですゥよ。
     例えば、エリカさんが人質みたいになってい
    て、手がだせないとか……

    人質って…… これはもう警察に連絡した方がよくない?

     リンは首を傾げ、思案してからこう言った。
    警察でなく、うちに助けを求めてきたって事は、マリちゃん自身も警察と関わりたくない
    か何か事情があると思うのですゥよ
    警察への通報を促すルミに対して、渋るリン

    警察に頼まないなら、助けに行く気なの?

     リンは意を決したように立ち上がると、ルミにこう言った。
    もちろん、行くですゥよ。マリちゃんもエリカさんも見捨てられませんですゥ

    相手は三十人もいるって言うのに?
     ルミは心配な瞳でリンを見上げた。

     確かにリンは刃物を持った強盗を瞬殺したり、チンピラ六人をメッタ打ちにしたりと
    信じられないくらい喧嘩が強いが今度の相手は大勢だ。

     ルミの心配をよそに、リンは少しも動じた様子がない、むしろ瞳をギラつかせ、
    スポーツの試合にでも出かけるような雰囲気だ。

    大勢相手に勝ち目はあるの?

    無いかもしれませんですゥねえ。あのマリちゃんが捕まっちゃうぐらいですから ……

    無いのかよ!
     思わずルミは声を出して突っ込んだ。
     リンの自信有り気な素振りとは反対の、かわされた答えにのけぞった。

    遠藤マリはエスクリマと言うフィリピン古武道の達人で、リンに喧嘩の仕方を
    教えたのが姉貴分の彼女だ。その彼女が捕まっている。

    勝ち目が無くったって助けに行くですゥよ。行かなきゃならないんですゥ。
    だって、うちを狙ってきた連中のせいで巻き添えになっているんですから
     固い意志を語るリン

    凄いなあ、リンちゃん、身を挺して助けに行く気なんだ。
    もちろん、わたしだってエリカさんを助けに行きたい。
    でも、非力なわたしが加勢したところでどうなる?

     ルミは俯いて心を沈ませる。

    リンが着替えてくると言って、リビングから出て行った。
     ソファーに独り残されたルミは、自分自身に問いかける。
    このまま、何もせずにいていいのか?
    単身で乗り込むつもりのリンちゃんをただ見送るだけで本当にいいのか?
     自分にはリンちゃんみたいに自分の身を挺しても
    友達を助けようとする気持ちがないのか?
    ルミはソファーの端を強く握って考え込む。

    リンが着替えから戻ってきた。その姿を見てルミは目を丸くした。

    迷彩服のジャケットにカーゴパンツ、首には真紅のバンダナを巻いた戦闘モードだ。
    お決まりのベレー帽はワインカラーで、どこぞの国の特殊部隊、そののコスプレみたいだ。

    さすがリンちゃん、喧嘩しに行くのにも、お洒落なんだね

    戦いの時こそ、己を飾るのが武人なのですゥ
     そう言って、ペッタらこな胸を張ってみせる。

    いつから、あんたは武人になったんだよっ
    声には出さず、ルミは心の中で突っ込んだ。
    でも、わたしもエリカさんを助けたい。
     非力なわたしが加勢したところでどうなる?
    いや、わたしは賢者のルミじゃないか。
    知恵を使って手助けくらいは出来る筈だ

    ルミは心に賢者のルミのコスプレを纏った。
    爆龍連合という不良グループのドラゴン退治
    をやろうと決意する。

    わ、わたしも行くよ! エリカさんを助けなきゃ

    えっ、ルミちゃんも!

     ルミの言葉に今度は戦闘服のリンが驚いた。

    (つづく)*************************************************************

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  • 『コスプレ少女』新装版 225-228頁        ★サキちゃんの親友は、うちだけや!

    2017-06-18 23:24
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、イベント会場でリンの幼馴染の遠藤マリが現れた。
    彼女は かつてヤンチャしてたリンの姉貴的存在で、親の借金取りの事務所を火炎瓶で襲撃する過激な不良少女だった。
    リンの過去をめぐって、まわりの少女達の葛藤が渦巻く。


    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                       人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

      
                                               滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






                          白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストはぺんたごん 様提供。

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       225-228頁です。

    遠藤マリは左脚を少し引き擦りながら、ルミ達の方にゆっくりと近づいてきた。

    先ほどと同じく黒いワンピース姿だが、頭のヘッドドレスは外していた。
    ティアラを着けたまま出歩くエリカよりは、常識のある少女かと思いきや、
    小脇には包帯を巻いた大きなクマのヌイグルミは大事そうに抱えている、
    どっちもいい勝負なのかも知れない。

    眼帯をしていて片目だけを怪しく細め近づいてくる黒づくめの少女に、
    ルミは無意識に鞄をギュっと強く抱きしめ、エリカの後ろに隠れた。
    お菓子の缶に大した額は入っていないのだが、何だかカツアゲされそうな気がしたからだ。

    リン …… じゃなくって、坂本サキは、あたしたちとは一緒じゃないわよ
     エリカが突如現れた遠藤マリにそう告げた。

    いや、あんたらに話があるや

    あたしらに? 何よ?
     相変わらず遠藤マリに対しては、愛想のないエリカ。腕組みをして斜に構える。

    サキちゃんと、どういう仲か知らんけどな、あんたらは不似合いや

    それ、どういう事よ!

     路地に響き渡るくらいエリカが吠えた。
    他人から自分達の友人関係を不似合いと言われるなど不快極まりない。
    腕組みを解き半歩踏み出すと、相手を射抜くくらいの鋭い眼差しで睨みつけた。

    遠藤マリエリカの気迫に目蓋をピクつかせなら声を荒げた。

    フン! あんたらは今にサキちゃんが引き摺ってる過去に手が負えなくなってくる。
    そうして、いつかはあの子を見捨てるんや。
    あんたらには、あの子と付き合い続ける覚悟なんてないに決まってる!

    覚悟って何よ! あたしは親友を見捨てたり裏切るようなことはしないわ! 
    例え、死んだって絶対にしない!

     遠藤マリの言葉がエリカの逆鱗に触れた。

    目を吊り上げ、睨み続けるエリカに対して、一方の遠藤マリは、
    何かを悟ったように落ち着きを取り戻して言葉を返す。

    例え死んでも? ふ~ん。
    滝沢さん、あんたは単純に自分はいつ死んでも、ええと思ってるだけちゃうか? 
    そう思てる自分に納得してるだけや。

    あんたの正体が分かったわ、自殺願望者や! 
    だからサキちゃんと今、付き合えている。

    でもなあ、サキちゃんはあんたらの事をどう思てるやろなあ。

    サキちゃんの親友は、うちだけや!

     エリカが視線をそらして俯いた、いつもの強気な反論が出来ないでいる。

     両者のやりとりを聞いていたルミは思った。
    遠藤さんは会って半日と経っていないのに、一瞬でエリカさんの心を見透かした!
    自殺願望者、確かにそうかも知れない。

    でもさあ、命懸けで友達を信じる、これって何がいけないの?
    エリカさんは前にこう言ったよ『裏切られたってかまわない、
    自分が友達を信じきれなかった方が死ぬより嫌だ』って。

     命懸けで友達を信じる。これこそが真の友情じゃないの? 

    それにね、友情に一番とか、二番ってあるの? ないよね。恋愛じゃあるまいし。
     遠藤さんはこの間の刑事さんと同じようにリンちゃんと関わるなと言いたいんだろうか?

      無言のままのエリカ
    ルミは重苦しく漂う雰囲気に堪らず、鞄をギュっと抱きしめながら、
    遠藤マリに恐る恐る質問をした。

    あのう、脚が悪いんですか?

     話の流れとは全く違う内容の質問に、遠藤マリは一瞬、戸惑いを見せながらも、
    その独眼をルミに向けて答えた。

    昼間も話してやろ。取立て屋の事務所を火だるまにしたことの御礼参りや。
     待ち伏せされて、袋叩きにされたんや

     彼女はスカート越しに左脚をさすりながら、やられた当時を思い出したのか、
    顔をゆがめ、
    ほんま、酷いことする連中やで。いたいけな女の子相手に
    そう忌々しげに言った。

     取立て屋の事務所へ火炎瓶で戦争を仕掛けに行くようなテロリスト少女が、
    はたして『いたいけな』と形容されるかは、大きな疑問で突っ込みどころなのだ
    が怖くてルミは突っ込めない。

     項垂れたままのエリカも無反応。

    ほな、そろそろ帰るわ

     遠藤マリはふたりへの話の目的を達したからなのか、ぶっきらぼうに、そう言った。
     包帯を巻いたクマのヌイグルミを抱え、脚を引き摺りながら、路地の先へと進んで行った。

    その姿が見えなくなった途端、エリカが倒れるようにルミに寄りかかり、
    首に腕を回して抱きついた。
    突然なのでルミは驚いた、鞄を前に抱えていたので、
    丁度鞄を挟むような感じで抱き合う体勢になった。

    ありがとうルミ。ワザと話をそらしてくれたんでショ?
    ルミの耳元に、エリカが弱弱しく呟いた。

    脚の事についての質問は、あの場の空気を変えるためだった。
    そして、ルミのこの機転をエリカは察していたのだ。

    うん。エリカさんの心が崩れそうになっちゃってないかと思って……

    そうよ。もう崩れちゃってるわ。
    あたしは心の奥底で、まだ死にたいと思っているのかしら……
    独りよがりなだけなのかしら……

    大丈夫。エリカさんは独りじゃないですよ。
    わたしがいるんですから。
    それにリンちゃんだって言ってたじゃないですか。身を犠牲にしても護る大切な人だって

    そ、そうよね

     安心したかのようにエリカは目を瞑って、ルミをさらに抱きしめた。
     人通りが少ないとは言え、行き交う人が抱き合うふたりをチラチラと見る。
     それでもルミは気にならなかった、他人からの好奇の視線よりも、
    エリカの癒しの役に立てている事が嬉しかったからだ。

    首筋にエリカの息が熱く伝わってくるのを感じながら、優しく抱きしめ続けた。

    コミュ障の自分を助けてくれたエリカさん。
     普段は自信たっぷり強気に振る舞う超自己中なお姉さんも、
    その心の奥底は傷だらけであることをわたしは知っている。

    「エリカ姫」のコスプレを剥いだ裸のエリカさんをわたしは知っている。

     友達を失うことの怖さに、わたし以上に怯えていることをわたしは知っている。

    そんなエリカさんの心の傷を母猫のようにひとつひとつ舐めて少しでも癒してあげたい。

    今のエリカさんには、わたしが必要なんだ。エリカさんに必要とされることで、
    わたしは
    わたし自身の存在を確かめられる、とても安心できるんだ

     少女ふたりは夕暮れになるまで抱き合った。

    ************************************************************


    ―― 遊園地の決闘 ―― 

    リンが強盗退治をした日から二週間ほど経った日曜の朝、朝と言っても十時を廻っていた。
    ルミはいつものごとく深夜のネトゲーでドラゴン退治にあけくれていたので、
    まだベッドの中にいた。

    机に置いていたスマホが賑やかにアニソンを歌いだす。
    この着歌はエリカからのもので、珍しくメールではなく電話だった。

    寝起きで覚醒しきっていないルミは、慌てて手探りでスマホ掴むと電話に出た。

    ハイハーイ、ルミでーす

     彼女は今まで寝ていたことを悟られないよう、軽快な返事をする。

    もしもし、本田さん?

    ん! 誰? エリカさんの声じゃない!

    うちや、遠藤マリや。憶えてる?

    遠藤さん! リンちゃんの幼馴染みの …… で、どうしてエリカさんの電話に?
    寝起きの頭がさらに混乱した。

    もしもし、エリカさんは?

    ちょっと、助けてほしいねん

    助ける?

     意外な相手からの意外な言葉。

    サキちゃんを狙ろてる不良グループに、ドジ踏んで捕まってしもてん

    ええーっ、不良グループに捕まってるって!

    前にもあったな、こんなパターン。
    わたしも捕まってリンちゃんに助けてもらったけど、オシッコちびったっけ……

    ルミの寝ぼけ頭の混乱をよそに、遠藤マリは一方的に喋りだす。

    サキちゃんに伝えて欲しいんや、助けに来てくれって。相手は爆龍連合って言う、
    最近群れだした三十人くらいの族や。
    多分、サキちゃんをやっつけて目立ちたいんやろう。

    場所は琵琶湖の近くに、おっきな観覧車がある処、今はつぶれてしもうた遊園地の跡や

     遠藤マリは言うだけ言うと電話を切った。

    かけ直しても繋がらない。ルミはメールやエリカのブログの秘密掲示板を使って
    連絡を取ろうとしたがダメだった。

    なぜ、リンちゃんじゃなくて、わたしに連絡してきたのだろう? 
    リンちゃんを本名の坂本サキで登録されてなかったから?

    疑問に思いながらもルミリンに電話する。


    (つづく)
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