• 『コスプレ少女』新装版 209-212頁        ★独眼のテロリスト少女

    2017-04-09 22:30
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    イベント会場でリンの幼馴染の遠藤マリが現れた。
    久しぶりの再会で話が弾むリンマリ
    だが、話の内容は、ふたりがヤンチャしていた武勇伝だった……


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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                          人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   

    イメージイラストは ぽよん様提供。

                       
                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。





                           白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナル
    コス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストはべこあめ 様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       209-212頁目です。

    冬の湖に放り込まれるという非情なリンチ遠藤マリリンは、
    まるで流行のスイーツの話でもするかのように、ファークをせわしく口に運びながら
    ハイテンポなお喋りで盛り上がっている。

    そりゃあ、ずぶ濡れの女の子が湖から出できたら、誰だってビックリするですゥよ

    あのおじさんは親切やったよね。
    お前ら風邪引くやろうから、焚き火にあたれって言うてくれたし

    あの時は、ほんと助かったですゥよ。
    冬にずぶ濡れ、凍え死にそうなくらい寒かったし、あのおじさんは命の恩人ですゥよ

    ほんまや、ドラム缶の焚き火で助けられたで。
    焚火の前でうちらふたりともパンツいっちょの裸になってたよなあ

    裸でしたけど、うちはまだ小学生だったし、見られるような胸もなかったですゥ

    サキちゃんは今でもないけどなあ

    そんないじわるな

    キャハハハッ

    パンツいっちょの裸で焚き火、そんな大昔の少年漫画のような豪快なふたりの会話に、
    ルミは目を丸くして聞き入る。 

    そんなルミの様子に気づいたのか、遠藤マリは斜め向かいに座っているルミに喋りかけた。

    うちの母親がさあ、ちょっと、薬中でね

     突然、話しかけられたルミは、スプーンを咥えたまんま固まった。
    薬中って 麻薬中毒! 母親が麻薬中毒って ……

    眼帯少女はその一つ目を妖しく輝かせながら。

    薬の代金の借金があってさあ、その取立てが朝っぱらアパートのドアをガンガン叩いたり、金返せって貼り紙されたりとかさあ。
    あんまりしつこいんで、元締めの所へ文句言いに行ったんよ

    えええっーー、取立て屋の元締めに!

    文句を言いに行ったって …… 
    子供が借金の取立て屋に文句を言いに行ってどうにかなるものなのか?

    遠藤マリは手にしたフォークを小さく振りながら得意顔で話を続ける。
    火炎瓶を持ってな

    か、かえんびん!

     ずっと静かに聞いていたルミも、さすがに火炎瓶と聞いて思わず大きな声を上げてしまい、周りの客から一斉に視線を向けられた。


    暫しの沈黙 …… 注目の視線から解放されるのを待ってから、遠藤マリは小声で話を続けた。

    そんでな、取立て屋の事務所へ火炎瓶をブチかまして、火だるましてやったんよ

    えっ、火、火だるまにですか!
    今度はルミも周りを気にして、小声で驚く。

    か、火炎瓶なんて、そんなのどうやって作ったんですか?

    ペットボトルにシンナー入れて作ったんや
     口の端を上げて自慢気に答える遠藤マリ

    あのう …… ペットボトルだと瓶が割れないから、上手くいかないんじゃないですか?

    樹脂製の容器では破裂しないから、火炎瓶としての実用性に疑問を投げかけたのだ。

    ルミからの思わぬ質問に、遠藤マリは少々驚きながらも、片目を細めて笑う。

    これだから、素人さんは
     チッチッと遠藤マリは舌打ちをして、人差し指を左右に振りながら説明を始めた。

    でも、メガネの本田さん、あんたオモロイこと訊いてくんなあ。
     ええか、教えたげるわ。ガラス瓶でも結構硬いから割れにくいんや。
    ペットボトルっていうても、炭酸が入ってるやつに 使こてあるような耐圧性と違ごて、
    ミネラルウオーターなんかのベコベコのやつや。

    割れへんけど中身が飛び出すんや。
    火炎瓶はな、人に投げつけるもんやないんや。
    思いっきり床に叩きつけて、そこら中に火をバラ撒くのが有効的な使い方なんやで

    そう言いいながら、独眼のテロリスト少女は、床に叩きつける手振りをして、
    ルミ火炎瓶の使い方をレクチャーする。

    そ、そうだったのか、知らなかったよ、火炎瓶の正しい使い方 ……
    もし、使う機会があったら参考にしよう。多分、そんな機会はないと思うけど ……

    その様子を直ぐ傍で見ていたエリカは、あんたは何の話に喰いついてんだと
    言いたげな顔でルミを睨んでいた。

    でもな、取立て屋の事務所を火だるまにした事で、御礼参りを受けたんや

    調子に乗ったからですゥよ

     隣のリンが、パスタをフォークに巻きつけながら、遠藤マリに愚痴っぽくこぼす。

    半端ない御礼参りやった
    遠藤マリはソファーの背もたれに反り返るように背中を預け、当時を語った。

    夜遅くの人気のない駅の地下道で待ち伏せに合うてな、
    大人六人がかりで寄って集ってボコボコにされたんや。

    サキちゃんが助けに来てくれたんやけど、フルボッコにされた後やったし、
    来てくれるなら、もうちょっと早う来て欲しかったわ~ん

    そう言って笑いながら隣のリンを肘で小突く。

    そんなの無理だったですゥよ!
    強い調子でリンが言葉を返す。

    アハハ、冗談や。サキちゃんはスゴいんやから。

    駆けつけてくれたサキちゃんは、まず地下道の配電盤をぶっ壊して、灯りを消しよったんや。

    地下道は一寸先も見えないくらいの真っ暗闇、そうしてから相手に近寄って、
    ある方法でやっつけていくんや。
    真っ暗やから相手は何をされたか解らへん

     ここまでの話を聞いて、ルミ『ある方法』にピンときて、思わず口に出した。
    それって、ソニックボイスのことですね

    ソニックボイス、それは二万ヘルツ?とも言われる大声を発して、
    相手の鼓膜を突き破り、失神させるというリンの必殺技だ。
    この間の銀行強盗の一人も、これでやられた。

    本田さん、あんたソニックボイスを知ってるんかいな 」
    眼帯少女は驚いた風に ルミに訊き返すと、隣リンをチラリと見た。

    見られたリンは澄ました顔でフォークにパスタ絡め、遠藤マリの視線を無視して食べている。

    なーんや、知ってるんかいな。サキちゃんの必殺技ソニックボイス
    遠藤マリは実に残念そうにそう嘆くと、肩を脱力させソファーに崩れていった。
    どうやらソニックボイスの解説をしたかったらしい。

    助けに来てくれた時のサキちゃんは、メチャメチャ強かった。怖いくらいにな ……
    気絶させたチンピラ六人をメッタ打ちにしたんやから

     その言葉を聞いたルミは。
    チンピラをメッタ打ちにしたって!
    この前、刑事さんから聞かされた話と一緒だ、やっぱり本当にあった事だったんだ
    刑事の話との辻褄に 密かに納得していた。

    エリカは最初の自己紹介で名前を言ってからほとんど喋っていない、
    ずっと厳しい目つきで真正面の席に座っている遠藤マリのことを見ながら
    黙々とピラフを口に運んでいる。
    何か気に喰わないことでもある様子だった。 

    遠藤マリがテーブル端に置いてある食器入れのバスケットに手を伸ばした。
    そこからナイフを取り出して指に絡めるようにクルクルと器用に回した。
    キラキラと光るナイフ、まるで手品師のような巧みな指使い、
    次の瞬間、遠藤マリはいきなりエリカの眼前にナイフを突きつけた。

    ひいいっ! 遠藤さん、いきなり何を!
     驚いたのはルミだった。

    ナイフはエリカの鼻っ柱で寸止めされた。
    ほとんど同時に横にいたリンも動いていた。
    リンの持つフォークの先端が、遠藤マリの白い喉下にピタリと当てられ、
    突然の狂気に走った幼馴染の動きを制していたのだ。 

    リンが唇から垂れていたパスタを勢いよく啜り上げてから、
    マリちゃん! エリカさんに何を!
     店中に聞こえる大きな声だった。店内の客も何事かと視線を向ける。

    遠藤マリは喉にフォークを当てられながらも、
    この人、眉ひとつ動かさへんかったで。何者や?
    そうすごみのある声でリンに問うた。

     鼻先に突然ナイフを突きつけられたというのに、エリカは微動だにせず、
    遠藤マリをただ睨みつけていた。

     騒ぎに気づいたのか、店員がルミたちのテーブルの様子をうかがっている。

     遠藤マリも流石にマズい雰囲気だと思い、ナイフを握った手をゆっくりと引っ込め、
    テーブルのバスケットの上で手のひらを拡げた。
    チャリンと手からナイフが落下した。

    それを見届けたリン遠藤マリの喉元に当てていたフォークを静かに引いた。

    「どうかなさいましたか」
    店員が訊いてきたが、エリカがうるさくしてごめんなさいと一言先に誤ったので、
    それ以上の事は訊かれずに済んだ。

     店員から訊かれた時、ルミは心臓がバクバクするくらい緊張した、
    落ち着きを取り戻そうとコップの水を一気に飲み干した。

    ルミたちが静かになると、周りの客も直ぐに関心が薄れたのか店内も平常に戻った。


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 205-208頁        ★眼帯の少女 遠藤マリ

    2017-03-26 17:36
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日の同人誌即売会場で……

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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                          人公の本田ルミ

    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは ぽよん様提供。
                     

                        滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。
    リストカットした過去もあるちょっとワケありの
    美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






    白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも
    一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは海冥 様制作の3Dモデル画。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       205-208頁目です。

    リンが眼を大きく開いて声をあげた。
    ええっ、マリちゃん! 久しぶりでっすゥ!
    腕を拡げ、眼帯の少女の懐に飛び込んだ。

    ほんま、久しぶりやなあ」 

    互いに頬を擦り合わせ、熱い抱擁を交わす。

    ところでマリちゃん、どうしてここへ? 
    おまけにヘッドドレスまでして?
    それってゴシックロリータ?

    違うわ、ここへ入る時にな、うちと同じような黒い服着たグループからもろたんや。
    ここの集まりは一体何なん? 

    入場するのにパンフレット代を要求されたで。
    払うの渋っとったら、一緒に並んでた子らが
    おごってくれたけどな

    きっとゴスロリファッションのグループから、同好者と勘違いされたですゥね

     マリと呼ばれる眼帯少女の服装、よく見ると真っ黒なワンピースドレスは、
    所々破れた所を繕い直された跡があり、ヘッドドレスを着けた髪もぼさぼさで、
    お洒落上手な美少女リンと比べるからなのか、みすぼらしく感じられた。

    脇にクマのヌイグルミを抱えているのだが、そのヌイグルミは頭に汚れた包帯を
    グルグルと巻かれていて、ゴミ捨て場から拾ってきたのかと思うくらい古ぼけていた。

    黒いドレスと相まってゴシックパンクのコスプレのような不気味さが漂う。

    しかし、少女の言葉から、ここで開催されているイベントについて知らないらしく、
    即売会とかコスプレとかの世界とは無縁のようだ。


    抱き合っているふたりにエリカが尋ねる。
    誰なの、その子?

    遠藤マリちゃんですゥ。うちの幼馴染みなのですゥ

    抱擁を解いて、リン幼馴染を紹介した。

    遠藤マリエリカルミに対して、頭だけの遠慮がちな会釈をすると、
    リンのアニメ口調の喋り方に突っ込んだ。

    サキちゃん、その変な喋り方、何?
    あんた、ここで何やっとんや?

    変な喋り方って! うちは今、天使のリンなのですゥ~

    既に着替えてはいたが、私服もプチコスプレなリンは、
    得意顔で自分の格好をくるっと回って幼馴染に見せた。

    ふーん、似合てへんなあ

    …………

     過去の自分を知っている幼馴染から、服装が似合ってないと指摘されてリンは、
    頬をプクっと膨らませ、不満げに口を尖らせた。

    で、マリちゃんは、どうしてここに?

    あんたに会いに来たんや。
    この近くに来たのは偶然なんやけどな、外にたむろしていたグループの会話から
    銀行強盗があった話を耳にしたんや。

    聞けば、人質になってた女の子が強盗を捕まえたって、
    しかも、一瞬で強盗のナイフを叩き落とし、肘打ち喰らわしたって言うやないか。   

    うち、直ぐにピンときたで。
    そんな芸当が出来るのは、サキちゃんしかおらんと思うてな。
    あれ、あんたの仕業やろ?

    ピンポーン!ですゥ

    なんと、遠藤マリ強盗の仕留め方リンの仕業と見抜いていた。鋭い子だ。

    強盗やっつけた子はベレー帽被ってて、この会場に来ているって聞きつけたから来たんや

    マリちゃん、探偵さんになれそうですゥ
     手を叩いて幼馴染の推理に感心するリン

    ほんま? 浮気調査は任しといてや!

     まるで漫才のような掛け合いのお喋りで盛り上がっているふたりに対し、
    エリカこいつらまだ話終わんないのっというような感じで
    厳めしく腕組みして体を揺らしている。

    お昼前でお腹も空ってきたからか、イラついているエリカ
    一緒にいるルミも同様に体を揺らして『話終われ』のアピールを始めた。

    いつもは周りの空気に鈍感なリンも、さすがにエリカ達のシンクロ動作を感じとった。

    マリちゃん、ここで立ち話も何だから、近くのファミレスへ行きましょうよですゥ

    うん、わかった。でも、先に言うとくけど、うち、今、お金あんまり持ってへんからね

    大丈夫、うちがおごりますですゥよ

     連れ立って会場を出ようとするリン
    遠藤マリは脚がどこか悪いのか、左脚を少し引き擦っていて、リンがそれを気遣っていた。 


    ルミ達四人は昼食を食べにイベント会場の近くにあるファミレス『サイデスカ』に入った。

    この『サイデスカ』は本格イタリアンレストランと銘打ち、
    イタリアの三色旗カラーをお店のイメージに使っているのだが、
    メニュー内容はパスタとかピザとかありふれた品しかない。

    けれども、安くてボリュームあるので学生や子連れの家族層には人気のお店なのだ。

    店名の『サイデスカ』と言うのは左様で御座いますかが関西弁的に訛ったもので、
    お客様にへりくだった接客姿勢を表している、決して某有名ファミレスチェーン店の名前を
    パクったものではないらしい。

    ただし、どこまで本当なのかは定かではない。


    ファミレスの受付にエリカが人数を告げると、直ぐにメニューを持った係りの人が
    やって来て、壁側のテーブル席に四人を案内した。

    「四名様~っ、こちらで~す」

    リンが壁側のソファーへ小さなお尻を放り込むように勢いよく座った。
    そして、店員から差し出されたメニューも開けず小学生のように手を大きく挙げて
    オーダーをした。

    ぺペロンチーノ!

     係りの人もその元気な仕草に圧倒されてか、営業スマイルを少し引きつらせながら、
    手に持った端末機にオーダーを入力していく。

    マリちゃんは何にするですゥか?
    そう言って、リンはまだ席にも座っていない幼馴染に尋ねた。

    そうやなあ …… うちも同じもんでええわ

     遠藤マリリンと同じくぺペロンチーノをオーダーすると、
    脚を引き擦りながらリンの横に静かに腰をおろし、抱えていたクマのヌイグルミを
    自分の隣に丁寧に座らせた。

    彼女はこの包帯の巻かれたヌイグルミをとても大事にしている様子だった。

    ルミエリカはリン達とは対面側の席に着くと、メニューを拡げ、
    ふたりして店のお薦めのシーフードピラフをオーダーした。

    店員が引き上げていった後、四人は改めて挨拶をし合った。

    あたしは滝沢エリカ、中学三年生よ

    わたしは本田ルミ、中学一年生です

    マリちゃんは二つ上の中三なんですゥよ

    遠藤マリです、ども……

     遠藤マリも控えめな挨拶を返す、エリカと同じく中学三年生ということだ。

    彼女は今日のイベントが何をやっているのか知らなかったくらいだから、
    オタク系の趣味ではないらしく、リンの可愛いコーデにも突っ込みを入れ、
    褒めてはいなかったので、ルミエリカ彼女との話題が見つけられずにいた。 

    自己紹介を済ませたが、結局リン遠藤マリのふたりだけが賑やかに喋っていた。 

    ルミは目の前でリン自分の知らない子と嬉しそうにお喋りしているのを見て、
    何だか置いてけぼりにされたような気分だった。

    自分が知らないリンがそこに居た、本名である『坂本サキ』としての彼女がそこに。
    最も、ふたりは久々に会ったのだから、話が弾むのも無理はないと思った。

    注文した料理が運ばれてきて、話が中断する。
    リン遠藤マリの前には、ぺペロンチーノが、ルミエリカにはシーフードピラフが
    オーダー通りに配膳された。

     配膳を終えたウエイトレスは、プリントアウトした勘定書きをテーブルのホルダーに留め、丁寧なお辞儀をしてから戻っていった。

    さあ、いただきましょう、ですゥ!
    真っ先にリンがフォークを手に取り食べ始める …… と同時にまたお喋りを始めた。

    ルミが横に居るエリカの様子を見てみると、ルミと同様にいつもよりテンションが低い。
    ポニーテールのお姉さんは静かにピラフを口に運びつつ、遠藤マリの方をじっと見ている。
    まるで、リンを取られて妬いているかのような眼差しだ。


    リン遠藤マリ、ふたりの楽しそうな会話が耳に入ってくる。

    キャハハハッ」「アッハハハッ

    くったくなく笑う中学生の女の子同士の会話。

    だがしかし、その内容にルミは耳を疑った、それは信じられないような ……
    彼女らのヤンチャな武勇伝だったからだ。

    どこそこで誰々をやっつけたとか、逆にあの時はボコボコにされたとか ……

    その内容のあまりの凄まじさに、ルミの顔が段々と引きつった。

    ボッコボコにされたと言えばマリちゃん、ほら、ミニバイクに縛り付けられて琵琶湖に
    放り込まれた事があったですゥよねえ~

    あった、あった、あん時は死ぬかと思たわ

     それを聞いたルミはピラフを喉に詰まらせた。
    ひいーっ、バイクに縛り付けられて湖に放り込まれたりしたら死んじゃうじゃん!

    おまけに冬だったですゥ

    サキとふたりで、湖からバイク抱えて揚がってきたらさあ。
    浜辺で焚き火してたおじさんがビックリしてたよねえ、
    おじさんの驚いた顔! ありゃあ、おかしかったな。アハハ!

    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 201-204頁        ★『男前』だよエリカさん!

    2017-02-26 21:30
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    買い物の途中で銀行強盗に遭遇、なんと、リン強盗を退治してしまう。
    その後、警察がやってきて、ルミエリカは刑事からリンの過去を聞かされる……


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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                          人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   

    イメージイラストは、ぽよん様提供                   

                          滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた
    「エリカ姫」
    コスプレイヤーで
    中学三年生。イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もある
    ちょっとワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。
    イメージイラストは 安堂ゆな 様提供

                           白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは かりん様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       201-204頁目です。

    チンピラ相手の乱闘事件、その噂は ルミも耳にしていた、
    刑事の話からそれは本当だったのだ。
    返り血を浴びるくらい相手を殴っていたという生々しい証言に、その時の惨状が窺えた。

    刑事の話は続く。
    「最近、良くない情報を耳にしているんだ。
    あの子に怨みを持っている奴や、功名心から襲おうとしている連中がいるって。

    あの子自身に、そのつもりが無くとも巻き込まれる恐れがある。

    つまり、僕が言いたいのは、あの子にあまり関わらない方がいいって事さ 」

     若い刑事は独りで喋るだけ喋ってから、ルミたちを解放した。

     パトカーから降りた二人は、リンの事を話し合った。
    驚いた、リンちゃんって、今でも警察から危険人物としてマークされているんだね 」 

    昔の相手から狙われてるって言ってたわね
    エリカも表情を厳しくする。

    いいことルミ。今日、刑事さんから聞かされた事は、リンには黙っておくのよ

    どうして?

    だって、警察からリンに関わるなって言われたなんて知ったらショックでしょ。
     また、あの子が気にして、あたしたちから離れていったらどうすんのよ

    そ、それもそうだね。うん、わかったよ

    二人は刑事の話の事は、リンには内緒にしておくことにした。


      ーー ☆ ーー


    そんな銀行強盗事件の翌日の週末、ルミは 京都市内で開かれる同人誌即売会に出かけた。

    会場前は相変らず入場待ちの人で長蛇の列だ。 
    今回、エリカはサークル参加登録していて、
    ルミより先に会場に入っていた。

    ルミの方は、一般入場者の列に辛抱強く並ばなければいけなかった。
    後からやって来たサークル参加の人達が、首から提げた登録証をかざして
    先に入場していく様子が、VIP待遇みたいで、ルミはちょっと羨ましかった。

    最も、遅れてきたサークル参加の本人達は、設営準備がままならず、焦っていたことだろう。

    ルミは 長くなっていく行列に並びながら。
    エリカさんから手伝ってと言われて来たけれど、一体何を売る気なんだろう?

     そう、ルミエリカの活動内容について、何も聞かされていなかったのだ。
     いつものように自己中のお姉さんから、一方的な連絡がきただけだった。

     同人誌即売会と言っても、必ずしも本を売るとは限らない。
    今や三割くらいのサークルはフィギュアとか、自作ゲームソフトとか、
    PCのパーツだとか同人誌以外の物を売っている。

    ネットアイドルを目指しているエリカさんが、同人誌を作ってるとは思えん。
    一体何を手伝わされるんだろう?

    そうルミが思案している間にも、入場の列は動き出した。

    入場後、ルミは一旦、トイレに入る。
    そう、『賢者のルミ』のコスに着替えるためだ。
    と言っても、初めての時と違って 短いスカートは始めから履いてきた。
    丈のある巻きスカートでそれを覆っていただけだ。

    黒いハーフマントを羽織り、頭にお手製の小さな角帽を着け、ツインテールを結い直す。
    すっかり慣れた様で、コスチェンを完了した。


    同人誌即売会の会場は、サークル参加の場合、登録料を払って折りたたみ式テーブルの
    半分の面積が売り場のスペースとして割り当てられる。
    この売り場スペースがブースと呼ばれるものだ。

    Fの14ブース、エリカさんは何処かな?

     人ごみに揉まれながら、エリカのブースを捜すルミ
    銀色に輝くティアラを頭に着けたエリカは、目立つから直ぐに見つかった。

    青いブレザーにボタンダウンのシャツ、赤いネクタイをキリリと締め、整った顔立ちと
    相まって、今日のエリカはいつも以上にお姉さんぽく見えた。

    『男前』だよエリカさん! なんか気合入ってるなあ。
    それで、一体何を売る気なのかなあ?) 

    テーブルに並べられているものに視線を向けルミは、目が点になってしまった。

    ブロマイド写真!

    エリカさん自身のコスプレ写真、ご丁寧にブログのURLが記載されているよ。

    気分はアイドル?

    …… これの …… 売り子を手伝えと。

    一体誰が買うんだよ! 素人の写真だよ。

    確かにエリカさんは美少女だよ、百人に訊いたとしても 百人が美少女だって答えるだろうよ。

    うん、それは認めるよ、異論ないよ。

    でもね、エリカさんレベルの美少女なんて、
    モデルとか、タレントがいっぱいいるじゃない。 

    それにこの写真 …… 綺麗に撮れてはいるけれど、ムッチャ普通の写真じゃん! 

    萌が足んないよ、萌がさっ! 

    もっとこう、膝上の絶対領域をポイントにするとか、
    自慢の美脚を強調するためにアングルを凝るとか工夫が欲しいよ。

    売れ残ったら買わされたりしないだろうか、それが心配だ )

    ルミは低いテーブルの下を潜って売り子側のエリアに入る。
    会場設置のパイプ椅子とは別のエリカが用意した小さなキャンプ椅子に座り、
    エリカの隣に並んだ。

    ちょっと相談してくれれば、売れそうな写真のアドバイスくらいしてあげたのにい
     ちょっと不満気にルミは言った。

    あんたなら、そう言うと思ったわ

    へっ?

    あのね、たくさん売るのが目的じゃないのよ。
    あたしを知ってくれた人と、ネット上だけじゃなくって、生身の人と会いたいのよ。
    自分自身の存在を確かめる為にね

    エリカさん ……


    売れないと思われていたブロマイド写真、ところがルミの予想に反して結構売れたのだ。

    オタクなお兄さんが女子中学生の生写真を その手の趣味で買っていくのは何となく分かる。
    だが、それ以上に女の子が買っていくのだ。

    こんな素人写真が、なぜ売れるのか?

    ルミは買いに来るお客とエリカの会話を側でじっと聞いていて、何となく理解できた。
    ほとんどの人が エリカのブログを見てファンになり、ブースまで会いに来た人だった。

    エリカのコスプレした容姿だけが目当てではなく、彼女の行動力に憧れていますと言って、
    サインや握手を求めてくる人までいる。
    中には会えた感動で手は震え、言葉に詰まって涙ぐむ女の子までいた。

    ファンと接するエリカの横顔をルミは 間近で見ながら思った、

    (アイドルの握手会と変わらないなあ。でも、な~んか不思議な感じがするよ。

    だってさあ、ブログのエリカさんは、本人の願望キャラだよ。
    自殺未遂までしたエリカさん自身が憧れている気高く強いエリカ姫、
    生きている自分の居場所、コスプレの分身である滝沢エリカなんだよ。

    本物のアイドル業の人達も同じなのかなあ、人前で仮の姿を演じているって点で …… )

    ルミはそんな事を考えながら、ブロマイド写真の売上金を入れている『金庫』(ブリキ製の
    お菓子の缶)に顎を載せて、立ち寄るお客を眺めていた。


     雑踏の中、見知った顔が近づいて来た。

    エリカさーん、調子はどうですゥかあ?

    甘ったるいアニメ声で萌っ娘喋りの白銀(しろがね)リンが、
    エリカのブース前までやって来た。

    まあまあって、ところかしら
     エリカが笑顔で返す。

    今日、白銀リンエリカのサークル参加とは全く別個で、この即売会の
    コスプレコンテストにエントリーしているのだ。

    お決まりのベレー帽からなびく柔らかな髪、肩まで覆う大きな襟、胸元は光沢のある
    大きなピンクのリボン、膝丈の白いスカートと『天使のリン』をイメージした
    オリジナルコスプレで、ファンタジックな世界から飛び出てきたようだ。

    それでいて、くどさが感じられないのは、彼女が鳶色の大きな瞳で愛くるしい笑顔を
    振り撒く萌え度全開美少女だからだ。

    とても、この少女銀行強盗瞬殺した猛者とは、誰も想像ができないだろう。

    リンのコスプレは、コスプレの撮影エリアでカメラマンからの評判も良く、
    コンテストの優勝候補だ。

    リンも一緒にお昼に行く?
     エリカリンを昼食に誘う。

    行くですゥ! 行きますですゥ。
    午後からの本審査まで、ちょっと時間が空きますから、直ぐに着替えてくるですゥよ
    リンは桜色の唇で即答すると、すぐさまレイヤー用の更衣室へと向かっていった。。

    ルミエリカとテーブルの売り物を片付け、チラシの裏に食事中と書いて貼り付けた。
    そして、着替えから戻ってきたリンとブースから離れようとしていた時。

    サキちゃん!

    誰かがリンを本名の『サキ』で呼び止めた。
    ルミ達三人は、驚いて声の方へ振り向いた。
    声の主は、左目に眼帯をして、真っ黒なワン
    ピースドレスを着た少女だった。


    (つづく)
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