• 『コスプレ少女』新装版 197-200頁        ★ギラギラと光るナイフを向けて

    2017-02-12 23:14
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、三人が買い物の途中で銀行強盗に遭遇、リンが人質になってしまう ……

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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                     人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

                          滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた
    「エリカ姫」
    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もある
    ちょっとワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






    白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは かりん様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       197-200頁目です。

    白昼の銀行強盗、犯人の男は、人質のリンを左腕で首絞めしたまま、
    ギラギラと光るナイフを向けてエリカを威嚇する。

    だが、エリカは 少しも、たじろかない。

    ポニーテールが逆立たんばかりの気迫で男を指差し、こう言い放った。

    その子を放しなさい! その子を放すんなら、
    あたしが刺されたって構わないんだから!

     そして、無謀にもナイフを持った強盗犯に、真正面から近づいていこうとする。

    緊迫する銀行内、周囲の者達が、みな固唾を飲んで
    勇ましい少女と強盗犯とのやりとりを見守った。


    すると人質となっているリンが、首絞めされながらも、くぐもった声でこう言った。

    エ、エリカさん …… やっちゃっていいですゥか?

     いつものアニメ口調で切迫感は感じられない、エリカに何か訊いているようだ。

     ルミは この現場を目の前にして、身体が強張り、銀行のソファーから立ち上がることすら
    出来ずにいたが、リンの言葉に どこか余裕のようなものを感じていた。

    一体、これはどういうことだろうか?
     リンちゃんはその可愛いらしい姿に似合わず街の不良グループからも
    『狂犬』と呼ばれるほどの喧嘩猛者だ。

    実際に不良六人を相手にして、フルボッコにしたのをわたしも見ている。
    でも、それはリンちゃんが自由自在に動けて、鉄パイプという武器を持ってた時の話だ。
    今はガッチリ首を絞められ身動きすらままならない。
    男の片腕で人形のように振り回されるほどの華奢な体躯、大人の男との体格差は明らかだ、
    女の子の力ではとても外せそうにない。
    おまけに相手はナイフを持っている、街の不良との喧嘩とは、わけが違う

    ルミはそんな心配に思いを廻らせていたが、エリカの方は予想外の行動に出た。

    強盗犯を鬼気迫るくらい睨みつけていた勇ましい少女は、
    リンの言葉を聞くとあっさり腕の力を抜いた。

    仕方がないわね、ケガしないようにね

     エリカは投げ出すように そう言い放つと、首をすくめ、手のひらを上に向けて拡げ
    『おてあげ』のポーズをした後、二、三歩後ろに下がり、
    ポニーテールを後ろに払って腕組みをした。

     ??? ふたりの間で何が合意されたのか? リンは一体何をする気なのか? 

    強盗犯の左腕に首絞めされてぶら下がり状態のリン彼女は鳶色の瞳を妖しく輝かせ、
    手に持っていたボールペンの握り手を変えると親指をペンの後ろにあてた。

    そして、首を絞めている男の左腕に、そのボールペンを鋭く突き立てた。

    「いでっ」
    男の短い悲鳴。瞬間、男の腕が緩んだ。

    そのわずかな隙をつき、リンは男の腕から素早く首を抜く。
    抜くやいなや、ナイフを持つ男の右手首を掴み取り、足払いをかけた。

    ズンっと鈍い音が銀行の大理石の床に響いた、男が腰から落下したのだ。

    リンの動きはまだ止まらない、男の手首を掴んだまま、さらに倒れた男の鳩尾を目掛けて、
    彼女の全体重をかけた肘打ちが突き降ろされた。

    「グヘッ」

     男の手からナイフがこぼれ落ち、硬い大理石の床にカランと金属音が響いた。

    速い! 一秒とかかっていない早業だった。

    これで事件も落着かと思いきや、強盗犯を仕留めたリンは、なぜか直ぐさま
    銀行の外へと飛び出して行った。

    呆気にとられ、見送ってしまうルミエリカ
    アレ? リンちゃんは何処へ? オシッコ?

    外の通りには、一台の車が停まっていた。
    白い乗用車、その運転席には人がいた、強盗の仲間がいたのだ、逃走を手助けする係が。

    リンは車の後部座席に勝手に乗り込んでいく。
    後部ドアを開けるやいなや、小さなお尻を後部座席シートの奥へ滑らせるように座った。
    奥の車道側は、運転席の真後ろだ。

    いきなり見知らぬ女の子が車に乗り込んできたのものだから、運転席の男はひどく慌てた。

    「な、なんだ! おまえは?」
     首を大きく捻り、後ろの珍客を確かめようとする男。

    あのねえ、中のおじさんから伝言ですゥ

    リンが 内緒話をするように 男の耳元へ手を添えて口を寄せてきたので、
    男もつられて耳を貸してしまう。

    ―― キャン ―― 

    犬の鳴き声のような甲高い声が銀行内にいたルミ達にも聞こえた。

    通称『ソニックボイス』、これは誰か測ったのか分からないが、二万ヘルツの声を発して、
    その衝撃波で 相手の鼓膜を突き破るという リン必殺技なのだ。

    餌食となった運転席の男は、目と口を大きく開き埴輪みたいな顔をして気絶していた。

    そして、何事も無かったかのようにリンは、外から銀行へと悠々と戻ってきた。

    リンを出迎え、我にかえるルミ

    (リンちゃん強いよ! 恐ろしく強い! だって相手は刃物を持った強盗だよ。

    わたしと同じ中学一年生の女の子。背丈だってわたしとそうたいして変わんないし、
    胸だってペッタラコだ。

    それなのに平然と強盗を倒した、しかも外にいた仲間までやっつけた。

    自分なら倒せる相手だと分かってやったいた。

    単純にキレた暴れん坊じゃない。

    リンちゃんって、本当に何者なの?)

    強盗退治の主役は、行内の人達から賞賛の声を浴び、照れ笑いしきりであった。

    しばらくして、パトカーのヒステリックなサイレン音が近づいてきた。

    これを聞いてエリカリンに促す。
    リン、早く行きなさい。あんた、警察と関わるのイヤなんでしょう

     そう言って、エリカリンを気遣った。
     リンには補導歴があって、鑑別所のお世話になったりと、色々ワケ有りなのだ。

    リンはその言葉に素直に従いルミ達と別れた。

     

    やって来た警官達が 床に転がっていた強盗犯を引き起こし、手錠を掛け、
    銀行員達に事件の状況の聞き取りを始めた。

    その場に残っていたルミエリカも、パトカーの中へと連れていかれ、事情を訊かれた。

    乗せられた車は、フォードアのセダンタイプではなく交通事故の現場とかでよく見る
    電光表示板の着いたワンボックスカーだった。

    生まれて初めてパトカーに乗せられたルミは、思ったより中が汚いので驚いた。

    安っぽい座席シートには、泥の乾いた跡があり、彼女はそれを手で払い落としてから座った。

    「君達が強盗を退治したのかな? もうひとり友達がいたんじゃないのかな?」
    スーツ姿の若い刑事が、ふたりにぎこちないが優しく話しかけてきた。

    警察が好きじゃない子なんです。だから帰りました

     ルミの横に座っていたエリカがムスっとした態度で答えた。
    銀色ティアラを冠したポニーテールの少女は、警察相手の質問にも少しも臆することなく、
    長い脚を組み替えてみせた。

    刑事は弱ったなという顔をしながら。
    「これも仕事なんでね、ちょっと話を訊かせてもらうよ。君の名前は?」

    滝沢エリカ

     エリカの大胆な返答にルミはドキリとした。

    エリカさん、それ本名じゃないでしょうよ。いいのか? 相手は警察だよ

    「帰って行った友達の名前は?」

    言いたくありません

    エリカはキッパリと拒否した。腕組みした姿勢から強い意思表示が感じられる。

    それでも刑事は、質問を変えて続ける。
    「帰って行った子は、ひょっとして坂本サキという名前じゃないのかな?」

    さあ、知りません

    警察がリンちゃんの事を知っている! どうして? そんなに有名なのか?

    「そっちのメガネの君は?」

    ルミは黙って首を横に振る。

    「そうかい、別に君達が悪い事した訳じゃないからな……」

     刑事はルミ達の頑な態度から何か察したようだった。

    「じゃあ、話を聞いてくれているだけでいい。
    実は僕が刑事になる前、交番勤務だった頃、
    ある事件があってね」

     若い刑事は物語を話すかのように過去の出来事を話し始めた。

    「チンピラが乱闘騒ぎを起こしていると通報があって、現場へ駆けつけたんだ。
     駅に通じる地下通路、暗い奥へと入って行くと、そこに小学生の女子がいたんだ」

    乱闘現場に女の子が、それって……

     ルミは信じたくはなかったが、リンの事だと直ぐに解った。

    「その子は鉄パイプを握り、無表情にチンピラを殴りつけていた。
    懐中電灯を向けると、照らしだされたその子の顔には、ぽつぽつと赤い血が着いていた。
    返り血を浴びるくらい殴っていたんだ。正直、ぞっとしたよ。

    相手は小学生の女の子なのに、僕は膝が震えた、恥ずかしいけど怖いと思った。

    その子が札付きの問題児『狂犬サキ』と呼ばれている子だと、後になって聞かされた」


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 193-196頁        ★咽元にギラリと光るナイフを突きつけ

    2017-01-09 15:51
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    そして、ふたりと打解けていくのだが ……
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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                     人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりで、
    京都市に住んでる女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」の

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もある
    ちょっとワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。


        

                         白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは かりん様提供。

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       193-196頁目です。

    ―― 危険人物 ――

     週明けの学校はダルい。 重い足取りで登校するルミ、教室の前で立ち止まり、
    深い溜息をついてから扉に手をかける。

    おはよう ……
    かぼそい声を出して中に入るも、クラスの誰からも 挨拶は返ってこない。

     普段、彼女は髪をツインテールなどにしていない、
    地味なおさげだ、リボンも結んでいない。
    コスプレ仲間のエリカ達と遊ぶ時と違って、メガネも赤い下縁タイプではなく、
    黒くて安っぽいやつを掛けている。

    現実の世界、ここではコスプレヤー『本田ルミ』ではなく、未だクラスに馴染めない
    コミュ障の中学生なのだ。

    彼女は 隅っこにある自分の席に着くなり 溶けるように突っ伏した。
    ああ、次の週末が待ち遠しいよ

    先生が来るまでの教室は、ふざけて走りまわる男子や お喋りに夢中の女子で
    喧騒に満ちた空間だが、ルミにとっては 音の無い深海にでも居るような気分だ。

    彼女の心のソナーには、真っ暗で何の反応もなく、もがいても何も掴めない
    そんな世界しか映っていなかった。

    しかし、今の彼女に入学したての頃のような酷い悲壮感はない。
    なぜなら、学校の外では、趣味のコスプレで通じた友達がいるからだ。


    下校時間、今日も苦行のような一日を終えたルミは、そそくさと帰り支度を済ませると
    足早に教室を出た。
    登校時よりは幾分軽い足取りで家路につく。

    スカートのポケットに仕舞ってあるスマホが お気に入りのアニソンメロディを奏でた。

    エリカさんからだ!
     嬉々としてスマホを取り出すルミ

     エリカからメールの着信だった。

    金曜日、買い物に行くから一時に四条(しじょう)駅に集合!

    ……エリカさんらしいメールやな

     滝沢エリカルミより二つ年上の中学三年生、人気ゲーム『ファンタジア学園』
    ヒロイン『エリカ姫』のコスプレイヤーだ。

     キャラコスである黒髪ロングのポニーテールに銀のティアラがトレードマーク、
    キュっと引き締まった細いウエストにスラリと伸びた長い脚は モデル並みの美少女なのだが、お姫様キャラそのまま、自分勝手に振る舞うので、ルミはいつも振り回されているのだ。

    ルミへのメール内容も相手の都合など一切お構いなしの現地集合せよという命令だ。

        ―― ☆ ――

    待ちに待った金曜日、この日は行事予定日の調整で 授業は午前中までなのだ。
    ルミは急いで京阪電車に乗り、エリカが指示した四条駅へ出かけた。

    京都の四条(しじょう)という所は、一般の買い物客だけでなく、修学旅行生や
    海外からの観光客もたくさんやって来る人気スポットだ。

     そんな繁華街を 頭に銀のティアラを輝かせ、颯爽と歩いているセーラー服の少女がいた。

     エリカだ、眩しいくらいの白い夏服に真紅のスカーフがよく映える。

    エリカさん、やっぱりティアラ着けてのコスプレなんですね

    これはアクセサリーよ、アクセサリー!
     そう言って、この自己中なポニーテールの美少女は憚らない。

     そう、エリカは芸能スカウトをされそうなくらいの綺麗な子なのだが、
    ティアラを着けた『エリカ姫』コスのまま、平然と外を出歩く、
    ちょっと残念なところがあるのだ。

    ルミは 街中をコスプレして出歩いたりしない、イベント開場以外では律儀に着替えている。
    今日もTシャツにデニムパンツの普段着だ。

     エリカの左腕には、白銀(しろがね)リン誰にもエリカを取られまいと
    アピールしているかのごとく絡み付いていた。

    リンちゃん、こんにちは。 今日の服装もすごく可愛いよ

    こんにちはルミちゃん。ありがとですゥ~
    甘いアニメ声で挨拶を返すリン

    淡いブルーのベレー帽にノースリーブのワンピース、その小さな肩を
    彼女の柔らかな髪がふわりと包んでいる。上品で可愛らしいコーデだ。

    もちろん、服装だけでなく、彼女から愛くるしい微笑みを向けられたら、
    思わずギュっと抱き締めたくなる、そんな萌え可愛い女の子だ。

     ルミはコミュ障で友達と一緒に買い物をすることなどなかっただけに、
    ふたりと居られることが とても嬉しかった。

    それに、ふたりとも人が羨むような美少女なので、連れて歩くことが
    モテる男の子のように誇らしい気分に浸れた。

     三人はファンシーグッズやアニメショップを廻り、エリカが明日のイベント(同人誌
    即売会)用の小物を買い求めた。

    ちょと、ここのお店を覘いていくですゥ

     リンが語尾を延ばした甘ったるいアニメ声でブランドショップに誘う。
     エリカリンが店に入っていく、次いでルミもおずおずと入っていった。

     ゲームオタクなルミは、買い物といってもだいたいがアニメショップと本屋以外、
    あんまり用がない、自分『ファッション』感覚に自信がないので、無難で地味な
    格好ばかりしている。
     だからブランドショップなど苦手なのだ。

    この服、ルミちゃんに似合いそうですゥ~

    自らコスプレ衣装までも手作りしている萌え系レイヤーの白銀リンが、
    ルミに店内の可愛い服を色々と勧めてくる。

    ルミは手に取るも値札を見て即リリースする。

    服って高いなあ

    そうぼやくルミだが、中古ゲームやムック本には万超えの金額を平気で注ぎこんでいるのだ。

    ルミちゃん、もっと自分を可愛く見せる努力をしないといけませんですゥよ

    ルミはお洒落上手なリンからコーデの手ほどきを受けるのだが、
    明るい色合いの服は何だか気恥ずかしく、ダーク系をセレクトすると
    リンから地味過ぎだと諭されてしまうのだった。

    服選びってメンドクサイ ……

    ええっ! お洋服を選ぶのって楽しいじゃないですゥかあ
     リンは両手で頬を挟み、信じられないっといった表情でルミを見る。

    リンから真顔でそう指摘されたルミ、女子力の無さを露呈してしまった。
    まだまだコミュ障からのリハビリが必要なようだ。


    ショップを出て直ぐにリンが用事を思い出し、銀行に寄ると言い出した。
    涼みがてらルミ達も一緒に行くことにした。

    閉店間際の銀行、客はそれほどなく空いていた。
    冷房のよく効いた待合所の黒いソファーにルミエリカは腰を降ろす。
    ひんやりとしたシートがお尻に心地よい。

    エリカは短いスカートから伸びた脚を優雅に組んでいる、その膝上が白く眩しい。

    リンはカウンターテーブルの方で、そこの用紙に何やら記入している、
    大方、通販か口座の手続きでもしているのだろう。

    そこへ一人のが入ってきた。

    夏も近く外は半袖で歩く人も多いくらい暑い。
    それなのにその男は花粉症用の大きなマスク
    をして、黒いサングラスを掛けている。

    おまけに黒っぽいジャケットを着込み、その懐に右手を突っ込だまま、
    カウンターへとツカツカと近づいていった。

    は書きものをしているリンの後ろにつくや、突然、リンを背後から首絞めにすると、
    彼女の咽元にギラリと光るナイフを突きつけ、フロア中に響く声で叫んだ。

    動くな! 静かにしろ!

     大理石の銀行内が一瞬静まりかえる。

    金を出せ!

    突然の強盗に行内は一変して騒然となった。
    カウンター周りにいた客は悲鳴を上げて一斉
    に逃げ散り、腰を抜かした中年の女性が
    四つん這いになってルミ達の座っているソファーまで逃げてきた。

    (うそでしょう!)
     ルミは心の中でそう叫びながらも恐怖で声にはならず、ソファーの端っこを
    ギュっと掴んでいるだけだった。

    強盗犯の男は、辺りを警戒してか、しきりに体を左右に動かし、握り締めたナイフで
    周りを威嚇している。

    人質となったリンは、後ろから首絞めされ、の左腕にぶら下がっていた。
    小柄な彼女の体重は軽いので、が動く度にプランプランと体を左右に揺らされ、
    首吊りのような状態になっていた。

    (ひえーっ、大丈夫なのかリンちゃん!)
     この悲惨な光景に、ルミは心臓が破裂しそうなくらいドキドキした。

     そんな状況の中、エリカがソファーからすくっと立ち上がると、
    に向かって吠えるように訴えた。

    その子を放しなさいよ!
     よく通る高い声、真っ直ぐ射抜くような鋭い視線、勇敢な少女強盗犯を睨みつける。

    うるせー、動くな!

    「放しなさいってば!」

    動くなって言ってるだろ! てめえ、殺されたいのか!

    ルミは見ていて血の気が引いた。

    (ええーっ、エリカさん危ないよ、相手は銀行強盗だよ、
       刃物持ってんだよ!)


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 189-192頁        ★萌っ娘は食用ガエルの鳴き競っているのか?

    2016-12-31 13:42
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    三人は リンの家の庭先でキャンプを楽しむのだが……

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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                     人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

                        滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」の

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメにあって、リストカットした過去がある
    ちょっとワケありの美少女。

    ルミをダンス動画作りに誘う。







                     白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは ゐてぃ様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       189-192頁目です。

    リンナイフを握る手に力を込める。
    テーブルの真ん中にドンと置かれたスイカにズブズブとナイフが挿入されていく。
    赤い果汁が溢れ出る。鼻腔をくすぐるような甘い香りがリビングに広がった。

    前後にゆっくりとナイフを抜き刺ししながら切り進める。

    ナイフを動かす度にスイカの切り口からジュビジュビと果汁が溢れ、
    ナイフの柄を握るリンの手を伝い、テーブルに敷かれたビニルシートへ滴り落ちていく。

    スイカを切り裂こうとするナイフの動きが徐々に早くなり、果汁の出方も激しくなる。

    しかし、リンの手の動きが止った。まだスイカは二つに割れていない。

    リンルミエリカの方を向き、小さな舌をチロりと出して、イタズラっぽく微笑む。
    そのあざとくも小悪魔的な表情に、ルミはちょっとドキりとさせられた。


    じれったいわね!
     スイカなんだから、スパッと切りなさいよ! スパっと!


    スイカを食べる気まんまんだったエリカが、ポニーテールを逆立てんばかりに怒鳴る。

    咽が渇いてるんだから! あたし、焦らされるの大っ嫌いなの!
     かなり苛立っている。

    ルミも全く同感だ、早く切ってよと思った。

    アハ、じらしてたの、バレちゃいましたぁ
     リンがしれっとそうのたまった。

    ええっ、バレちゃいましたって?
     リンちゃん、訊いてもいないナイフの解説とか、ちんたら切ってたのってワザっだたのか
     なかば呆れ気味に怒るルミ

    早く切んなさい!
     エリカのチョップがリンの脳天に落ちた。

    ようやくスイカが半月状に切り分けられ、みなに配られた。

    はい、エリカさんどうぞ、『大中すいか』ですゥよ

    いただくわ

    エリカが手渡されたスイカをひとかじり。
    うん、甘いわね

    ルミもかじってみた。シャコっと心地よい食感、ジューシーな果汁。
    美味しい、時期が早いので、ルミにとっては、これが初物だった。

    ね、じらされると余計に美味しいでしょう
    そう言って、得意気な表情をするリン

     いや、焦らされなくても、甘いものは甘いぞと思いながら、
    ルミはシャコシャコとスイカを頬ぼった。

     甘く、冷たく、美味しい。 大はしゃぎした長風呂の後だけに、渇いた喉に染み渡る、
    待たされた分だけ美味しく感じるってのも、少しはあるのかも知れない。

    スイカを頬ぼる三人。スプーンで穿るのではなく、かぶりついている。

    リンは顔をスイカに埋めんばかりに噛りつき、とてもセレブなお嬢様の食べ方には見ない。
    お嬢様はベタベタになった口の周りを時折、腕で拭いながらスイカにかぶりついている。

    赤い汁が少女の白い咽を伝って、鎖骨の辺りまで垂れている。
    せっかくお風呂に入ったのに台無しである。

    このまま外のテントで寝たりしたらカナブンにキスされてしまいそうだ。

    さすがに寝る前にもう一度シャワーを浴びてスイカの汁を洗い流すことに。


    一応、三人はキャンプをしに来ているので、外のテントで寝ることにしている。

    リンもワンピースのお洒落着から、ルミたちと同じようにTシャツとジャージに着替えた。

    エリカが ご自慢の細い脚に 美容液やら 虫除けやらを 入念に塗ってお手入れしている間、
    ルミはリビングのカウチソファーチに並んで座った。

    リンルミの隣に腰を降ろすと、肩を擦り寄せるようにして、にじり寄った。
    そして、ほんのり赤らめた顔を両手で包むように押さえながら恥かしそうに。

    ルミちゃん、あのですゥねえ …… さっきお風呂でエリカお姉様が ……

    ん? エリカさんがどうしたの

    そのう …… うちの …… 女の子の ……

    女の子の?

    大事な所を触ってきたのですゥよ

    …… 知ってたよ

    ええっ、ルミちゃん知ってたですウか!

    一緒に入ってたもん。丸見えだよ

    ……

     どうやら、エリカの思いがけない行動に リンは周りが見ないくらい
    気が動転していたようだ。

    そ、それでですゥね。エリカお姉様は指で …… うちの ……

    指で何? 大事な『生牡蠣ちゃん』に突っ込まれでもしたの?

     ルミはキツネのような意地悪な目つきで、リンの肩を肩で小突きながらからかった。

    『生牡蠣ちゃん』って! エロい同人誌みたいな言い方しないでほしいですゥ

     耳まで真っ赤になるリン

    アハハ、からかってゴメン、ゴメン

    本当、うちは百合属性は ないのですゥよ。
     うちがエリカお姉さまを好きって言うのは、恋愛対象とかじゃなくって、
    身を挺して助けてもらったこととかあ、実の姉のように慕う気持ちっていうか……
    尊敬 …… そう尊敬しているのですゥ

     心内のもどかしさを上手く言えない彼女は、最後に尊敬という語彙を搾り出した。

    ふ~ん、わたしも一緒だよ。 エリカさんのこと尊敬してる

    ルミちゃんは 前にお姉様と抱き合ってたじゃないですか、うち知ってるんですゥよ

    あああ、あれは違うよ
    誤解を解こうと慌てて否定するルミ

    いいんですゥ。うちはお二人の関係を邪魔する気はありません

    違う ゆうてるやろ!

    うちに百合っ気は、ないのですゥよ。
    でも、もし、お姉様から求められたら、それを拒む勇気がないですゥ。
    だから、その時はルミちゃんに許してほしいのですゥよ

    リンが赤く染った頬を両手で挟み、悶絶気味に首を激しく振る。

    リンちゃんって、一旦、妄想が暴走すると止らないんだね。コスプレイヤーの性なのか?

     呆れたルミは苦笑いをするしかなかった。


    庭先とはいえ、リンの家の周りは畑や田んぼなので、暗くなると食用ガエルが
    ブモォー、ブモォーと低い声でやかましく鳴きたてる。

    テントは露店級の大きなタープの下に設営してある。

    テントの中に入ってから、足から寝袋に潜り混み、ミノムシのようになって寝転ぶ。

    しばらくは今日の出来事なんかをキャッキャッとお喋りしていたが、
    昼間に慣れない肉体運動をしたせいか、直ぐに眠りに落ちた。

    静まりかえるテント。しかし、直ぐに。

    ズゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッゴーーッ

    狭いテントに爆音が響き渡った。

    ルミエリカと顔を見合わせながら。

    すっかり忘れていたよ、リンちゃんのハイパーなイビキを!

     あまりの大イビキにルミ思った。

    萌っ娘は食用ガエルの鳴き競っているのか? カエルの方がまだお上品で静かだぞ。
    幸せそうに大きく口を開けて眠ってるなあ。
    その大口径スピーカーに何か詰め込んでやろ
    うか …… そんな度胸はないけど


    ルミエリカはテントにリンを独り置き去りにして、リビングで寝ることにした。
    ふかふかの絨毯の上に寝袋でくるまっているルミが、カウチソファに
    寝転んでいるエリカに話しかける。

    エリカさん、さっきリンちゃんが言ってたよ。
     お風呂でエリカさんに大事なところをまさぐられて、誘われているって

    ああ、男の子かどうか確かめてたこと 

    エリカさん、リンちゃんの『生牡蠣ちゃん』に指まで入れたの?

    『生牡蠣ちゃん』? 指?

     やや遅れて『生牡蠣』の意味が解ったエリカは、カウチソファから寝袋に入ったまま
    転がり降りてきて、腕を伸ばし、ルミの頭に手刀を打ちこんだ。

    このすけべ!

    痛いなあ、もう。冗談だって

    あんたの『生牡蠣』を裏返しにするわよ

    そんなプレイはイヤです

     口の減らないルミに、エリカは寝袋の足の方をドンとルミの寝袋に乗せた。

    グヘッ、リンちゃんはわたしとエリカさんが百合だと勘違いしてるよ

    あら、違ったの?

    ええっ、……逆にからかれただけかあ

     

     外では相変らず、リンのイビキと食用ガエルの鳴き声が協奏している。

     ルミは翌朝のことを考えつつ眠りについた。
    リビングに寝袋を二つ並べて寝ている光景をリンが見たら、
    また、ふたりの関係を勘違いするに違いない。
    それにテントにリン独りを置き去りにした事も怒るだろう。
    何しろ、リン自身は、イビキをかいている自覚など全くないのだから。

                     (つづく)
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    本年、最後のうpとなりましたが、いかがでしたでしょうか?
    来年はバトル中心でリンがメインの章に突入、お楽しみに。(SonicVoice)
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