• 『コスプレ少女』新装版 265-268          ★ソース・ドミグラース・ハンバーグですゥ

    2018-02-17 23:53
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。

    リンの幼馴染の因縁から、エリカが不良グループにさらわれ、リンは乱闘を制して救出する。リンはお詫びにと、エリカルミを家に招く。

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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    *****

    【登場人物紹介】                
                     人公の本田ルミ

    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   


    イメージイラストは ぽよん様提供。

                       
                      滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。




                        白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。
     
    イメージイラストは べこあめ様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       265-268頁です。

     大理石が敷き詰められた広い玄関、脇には無駄に大きい青磁の壺がドンと置かれている。

    さあさ、どうぞですゥ

    セレブな邸宅の御令嬢様が、ふたりを中へと招き入れる。

     家の中なので、彼女がトレードマークにしているベレー帽は被っておらず、
    ふわっとした柔らかな髪をなびかせていた。

     ルミは 見慣れているはずの彼女の容姿に、つい見入ってしまった。

    嗚呼、やっぱリンちゃんは可愛いなあ。
     この間、迷彩服を着て、不良グループを相手に鉄パイプ振り回して暴れてた
    野生児モードとは、雰囲気が全然違うよ。

     桃みたいに淡いピンク色の頬っぺたが齧りつきたくなっちゃうほど美味しそう。
     鳶色の瞳、無垢で眩しい笑顔を向けられると、同じ女の子ながらドキドキしちゃうよ。
     今日のリンちゃんは萌々オーラ全開だ。
     おまけに薄い水色のタンクトップの上から、大きなひらひらフリルの
    エプロンを着てやがる。

     お前は新婚ホヤホヤの幼な妻かよっ! 
    う~ん、小憎たらしいくらい超ラブリーだ

    だらしなく口を半開きにして呆けているルミ。怪しんだリンが問いかけた。

    ルミちゃん、どうしたんですゥか? 表情筋が緩みっぱなしですゥよ?

    ベ、別に……今日のリンちゃん、とっても可愛いなあって思ってただけだよ

    あら、それはアリガトでっすゥ~

    だからさあ、ハグさせて~

     そう言って、ルミリンの後ろから抱き付いた。
    トップレスから覗くリンの白い肩に顎を乗せ、耳の後ろに鼻をうずめる。

    暑苦しいのに、ベタベタくっ付かないでくださいですゥ!

    シャンプーのいい匂いがするよ。クンクン

     メガネを曇らせ鼻を鳴らすルミ

    あわわ、人の匂いを嗅がないでくださいですゥ。ルミちゃんの変態!

    いいじゃん、いいじゃん。別に減るもんじゃないし、スウハア、スウハア

     リンが体を左右に振って放そうとするも、おんぶお化けのように執拗なルミ

    ああん、エリカお姉様助けてですゥ~

     あまりにしつこいのでエリカに助けを請うリン

     じゃれ合うふたりに、銀色ティアラを冠したポニーテールのお姉さんは、
    ツカツカと近寄ると無言のまま、躊躇うことなくルミの脳天に強烈なチョップを入れた。

    うぎゃあ

    おんぶお化けは、変な悲鳴をあげて取り憑いていたリンから離れ、
    打たれた頭を押さえて廊下に蹲る。


     
    さあ、奥のリビングの方へどうぞですゥ

     リンルミを無視して、エリカを先導する。
    悠然と進むエリカの後ろで立ち上がるルミ

    ああっ、待ってよ~

     リビングまでの長い廊下には、壁の間接照明ごとに印象派の絵画が飾られている。

     リビングに到着した、リビングと言っても
    家具売り場のごとくソファーセットが
    いくつも置いてあって、バカ広い。

     リビングに「入る」ではなく、正に「到着」という感じだ。
    一般庶民にとっては、それくらい広く感じられた。

     座る場所は選り取り見取りなのだが、ルミの座る所は決まっている。

     座り心地抜群の薄いグリーンの革張りソファー、彼女の小さなお尻との相性が良く、
    お気に入りの場所なのだ。

     エリカルミの正面のソファーに腰を降ろす。

     ひじ賭けに腕を伸ばし、スラリとした長い脚を優雅に膝で交えて座る。

     高級ソファーでくつろぐ美脚の少女、そのまま家具の広告写真に使えそうなポージングだ。


     一方、ソファーの置かれたエリアの向こう側にはアイランドキッチンがあり、
    そこでは、エプロン姿のリンがガチャガチャと料理の仕込みを始めていた。

     一体、何を作ってくれるのか? 気になるルミは首を伸ばしてキッチンの様子を窺う。

     調理台に置かれたステンレスボウルの中には、赤い挽肉っぽいものが見えた。

    まさか、ウサギの肉じゃないよね ……

     心穏やかでなくなるルミ

     パタパタとスリッパを鳴らして、リンがルミたちの方にやって来た。
    お盆から冷たいお茶を客人のテーブルに給仕する。

    リンちゃん、今日は一体、何をご馳走してくれるの?

    えー、本日のメインディッシュはですゥねえ、ソース・ドミグラース・ハンバーグですゥ」

     リン料理長は舌を巻くような発音で答えた。

    デミグラスじゃなくって、ドミグラース?

    ウイ、フランス風にドミグラースなのですゥ

     そう言って、ドヤ顔するリン

    ……

     ルミは黙したまま、心の中で。

    フランス風って、どうせ、またネットの料理ハウツウで聞き齧っただけじゃん。

     それにハンバーグってドイツ料理じゃなかったっけ?

     訊きたいのは、そのお肉の正体なんだよ

     ルミはド直球だが遠慮がちに訊いてみた。

    そ、それで、お肉は、何のお肉なのかなあ?

    さすがルミちゃん、お肉の種類にも拘りますですゥねえ

    そりゃあ、何の肉か、食べさせられる方としては、ものスゴ~く気になります

     リンは目の前でクルリとターンステップをきめてから、顎を突き出し、
    ミュージカルの舞台役者のごとく腕を拡げて。

    近江牛(おうみうし)なのでっすゥ~

    ええっ、近江牛って、松坂牛とか、神戸ビーフとかの三大ブランドの一つじゃん!

     滋賀県大津市民であるリンが熱く語る。

    そうですゥよ、滋賀県が誇る超ブランド肉! 神戸ビーフも元は近江牛だったのですゥよ

    へえー、そうなんだ

    今回は近江牛のロースを使用したですゥ~

    そんな高級なお肉、挽肉のハンバーグじゃなくって、塊りのステーキで出して欲しかったよ

     ルミは口には出さずに心の中でそう思った。


     リンから近江牛のソース・ドミグラース・ハンバーグが出来上がるまで、
    テレビでも観ていてと言われたが、辺りにテレビが見当たらない。

     キッチンまで戻ったリンが、手元で何やらピッピッとリモコンを操作したかと思うと、
    天井から大画面スクリーンが静かに降りてきた。

    おおっ、ホームシアターじゃん!

     さすがセレブな坂本家、ホームシアターなんて家電売り場で見たことはあるけど、
    実際に家で使ってるのって初めて見たよ。

     このリビングルームには何度も来ているけど、収納式になってるなんて
    気が付かなった ……

     リンがキッチンからルミに向かってテレビのリモコンを投げ渡す。

     ルミを驚かせたホームシアターシステムだったが、テレビの時間帯が悪かった。

     せっかくの迫力大画面に、どのチャンネルも天気予報ばかりやっていて、
    面白い番組が一つも見当たらない。
     元々、テレビ番組ではなく映画を観る用なので衛星チャンネルとは繋げていないとのこと。

     いつも小さな画面に見慣れているルミには、大画面の天気予報映像には違和感があった。


     ルミがホームシアターのリモコンチャンネルを弄っている傍らで、
    エリカはテーブルに置いてあったタブレットPCを勝手に使っている。

    エリカさん、自由やな ……

     ポニーテールのお姉さんが、少しの遠慮もなく自分の家のように振る舞うのを見て、
    思わず心の声を吐露してしまうルミ

    ん? 何か言ったルミ?

    いや、別に、何でもないです

     エリカルミの呟きなんぞ、気にも留めず、タブレット画面から視線を外さない。

    ねえ、ルミ、コレちょっと見てよ。
     トレンドタグを適当にクリックしてたらさあ、
    『遊園地』の関連ワードの中に『乱闘』があるのを見つけたのよ。

     そしたらさあ、この間のあんた達が暴れた事についてだったわ

    ええっ、本当? 見せて、見せて

     ルミは慌てて、エリカとタブレットの間に頭を突っ込むようにして画面を覗き込んだ。

     画面に表示されたコメント文。

    狂犬サキ健在! 半端なく強いぜ

    遊園地をぶっ壊しやがった

    俺の差し歯返せ!

    …… 何か、乱闘の現場に居た奴からと思えるコメントがあるけど ……

    自分が喧嘩に負けた事をワザワザSNSに書き込むのって、どうよ?

    どきなさい、見えないでショ!グエッ

    カエルみたいな変な声を上げるルミ
    画面に覆いかぶさっているルミの頭をエリカがツインテールを
    手綱のように引っ張って退かせたのだ。

     さらに、コメの後乗りの書き込みも続く。

    ひとりで五十人相手にしたってマジ?

    サキって、どんな化け物なんだよ

     いつの間にか五十人相手にしたことになっている。
    本当は開いては三十人ほどで、実際に倒したのはその半数ほどだったのに、
    人の噂というものは尾ひれが付いて無責任に膨らんでいくものなのだ。

    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 261-264          ★友達を失うことは 何よりも怖い

    2018-01-06 21:00
    消したい過去、変わりたい今。ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    リンかつて姉貴分の不良少女遠藤マリとつるんでヤンチャしていた過去があった。
    エリカが不良グループにさらわれ、リンは乱闘を制して救出に成功するが、
    全ては遠藤マリが仕組んだことだったと知る。

    リンの過去をめぐって、まわりの少女達の葛藤が渦巻く。


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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
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    【登場人物紹介】                
                     人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けたエリカ姫

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。
    リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。




                            白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽がトレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。
                      
    イメージイラストはぺんたごん 様提供

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       251-264頁です。

    上目遣いの萌えポーズで、仔猫が甘えるようにエリカに擦り寄り、
    許しを請おうとしたリンだったが。

    あぐゥ~ 痛いですゥ~ 

    ポニーテールのお姉さんは、萌っ娘リンの頭を両脇から拳骨で挟んでグリグリお仕置きした。

    涙目になるリン、その情けない様子は 不良相手に暴れていた時とは、えらい違いだ。

    あっ、逃げた!

     隙をついて、エリカの腕から抜け出したリン

     三十メートルほど走って逃げた先から、エリカ達に手を振り大きな声で、
    この格好じゃ、駅までお見送り出来ませんから、
    お先に失礼しますですゥ~

    と言うと、ピシっと敬礼をしてから一目散に走り去って行ってしまった。

     確かに、血の滲んだ迷彩服を着た女の子が、人通りのある駅前を歩いていたら、
    誰かに通報されかねない。
    そう納得して、ルミエリカの二人だけで、トボトボと駅へと向かった。


     帰りの電車、二人は京都方面に乗り込むが、夕方の混雑する時間帯に入っていたので、
    座れそうになかった。
    電車のドアが閉まると、ルミエリカは並んで乗車口のドアにもたれた。

     駅まで歩いて来る途中、エリカは何か考え事でもしているのか、ずっと無言だった。

     電車が動き出し、ようやく、エリカが溜め息をついた後、喋り出した。
    ふう~っ、今日は散々だったわ。
     リンが後で警察に捕まったりしなけりゃいいんだけど ……

    多分、大丈夫だと思うよ。どうせ、あの遊園地は解体の予定だったんだし

    遊園地? あたしが心配してんのは、乱闘の傷害沙汰の方よ。
     あっ、遊園地をぶっ壊したのはルミも同罪ね。
     でも、あんたは初犯なんだから大したことにはなんないわよ

    しょ、初犯って! 直接壊したのは、わたしじゃないもん!

    ウフフッ」「クククッ

     互いに顔を見合わせ笑い出すふたり。

     ルミエリカリンの傷害沙汰を心配していることは解かっていて、
    あえて遊園地の事でボケてみせたのだが、エリカもそれに気づいて、
    ルミ初犯とからかうことで返してみせたのだ。

    それより、リンちゃんが幼馴染とあんな別れ方をしたことの方が、何だか心配だよ

     ルミの言葉にエリカも顔を曇らせる。
    ルミ、あんたもそう思う?

     エリカは乗車口のドアにもたれていた体をルミの方へ向き直す。
    遠藤マリは片目を事故で失くしたって言ってたでショ

    うん、知ってるよ。リンちゃんとエスクリマっていう格闘技の練習をしていた時に
    リンちゃんの膝蹴りが当たって眼球破裂したって ……
    それが?

    あたしが捕まってた時にね、あいつ、遠藤マリが話してくれたのよ。
     アレは事故じゃなくて、リンを自分に引き留めておく為に、自分の方から膝蹴りを
    受けにいったんだって ……

    ええーっ、本当に?

     ルミはメガネが跳び上がるほど驚いた。

    友達の気持ちを引き留めておく為にって ……
    目玉一つ失うことも厭わないなんて!

     病んでる! 病み過ぎだよ!

    偶然の事故をそう言ってるだけで、嘘なのかもしれないけど ……
     でも、あいつならやりかねない。
     だって、あたしを拉致して脅迫までするような子よ。
    少なくとも、そんな考えをするっていうことだけは事実だわ


     ルミは親指の爪を噛み、常軌を逸した行動をする遠藤マリの気持ちを考えた。

    片目を失ってでも、幼馴染の心を自分に繋ぎ留めておこうとした遠藤さん。
     エリカさんが言うように、これは後から辻褄を合わせた作り話なのかも知れない。

     だけど、遠藤さんはわたしたちにハッキリと言っていた。

    『狂犬』の通り名を持つリンちゃんと付き合い続けるなら、
    リンちゃんの過去のしがらみに、いつか、わたしたちの手に負えなくなると。

     だから、親友になれるのは自分だけだと ……

     確かにリンちゃんには、否応なく引き摺らされている酷く複雑な過去がある。
     でも、逆に遠藤さんが心許せる親友になれる子って、幼馴染のリンちゃんだけ
    だったんじゃないだろうか?

     遠藤さん自身も、その事に気づいていたんじゃないのかな ……

     だから、リンちゃんが自分以外のエリカさんを慕っていることに苛立ち、
    置き去りにされるような不安が怖かったんじゃないのかな?

     前にエリカさんも言っていた。

    友達を失うことは 何よりも怖いって ……

     遠藤さんがエリカさんを拉致するという異常な行動をしたのも、
    きっと友達を失う恐怖があったんじゃないのかな?

     わたしもエリカさんを救出するために、
    普段なら絶対に出来っこない、不良グループの所に乗り込んでいった。
     友達を失いたくない気持ちがそうさせた。

    エリカさんへの友情を示すためにやった …… でも、本当にエリカさんのため?

     身を賭して助けに行くと言ったリンちゃんを妬む気持ちも、あったかも知れない。

    リンちゃんとエリカさんの距離が縮まることで、自分が置いてけぼりになってしまう、
    そんな気がした。

     エリカさんの親友なんだと、自分が思いたい、そう信じたい自分のため ……

    そう考えると、遠藤さんの考えた事と、たいして違わないような気がしてきた ……

    エリカは車窓をぼんやりと眺めている。
    ポニーテールの下に覗く白いうなじ、物思いにふけるその様子は、どこか寂しげにも見えた。

     ルミエリカの手にそっと触れてみた。すると、柔らかな指で握り返された。

    ルミは体が熱くなった、彼女は自分がエリカにとって、普通の友達以上の親友と
    認めてもらえているのか不安だった。
    手を繋ぐ、指を通して伝わってくる体温がルミのそんな不安を解かしていった。

    降りる駅が近づいてきた時に、エリカがさらりとルミに言った。

    あっ、まだ今日の御礼を言ってなかったわね。 助けに来てくれてありがとう、ルミ

     直ぐにルミも応えた。
    と、友達だからね

    そうよね。あたしたち親友ですものね

    思いがけずも、ルミが欲しかった親友という言葉、ルミは周りの景色が
    明るく見えるくらい嬉しくなった。

    エリカの柔らかな手をギュッと握り締め、ツインテールを振り振り、
    めいいっぱいの笑顔で応えた。

    うん、わたし達、親友だよ!



       ―― 義姉妹 ――

     不良グループを相手に、廃墟の遊園地で屋根を壊すほどの乱闘した事件から三日が経った。

    ルミエリカは、白銀リンから食事に招かれ、山手にある彼女の家を目指して林道に入った。

     乱闘騒ぎの発端が、リンの幼馴染である遠藤マリだったことから、
    そのお詫びにとリンが手料理で持て成してくれるとのことだった。

    手料理って……まさか、ウサギ汁じゃないよね?
     ルミの頭に一抹の不安がよぎった。

    それと言うのも、リンの家で振舞われた食事で思い出されたのが、
    庭先にテントを張って皆でキャンプをした時に、
    自家菜園を荒らす野良ウサギを食べさせられたことだった。

    あの時は、リンちゃんが罠に掛かっていたウサギさんを
    サバイバルナイフで首ギッチョンするのを目の前で見ちゃったからなあ。
     今、思い出してもアレは結構エグかった

    両肘を抱えて身震いするルミ

    でも結局、カレーに作り直して食べさされたんだけど。
    お料理の腕前は、うちの母親なんかよりずっと上手なんだけど、
    時々変なチャレンジするからなあ

     そんな、トラウマな出来事を思い返しながら、ルミエリカとふたり、
    木々に囲まれた坂道を登っていく。
    やがて、赤い大きな三角屋根のペンションホテルのような邸宅に着いた。


     黒い門扉が自動で左右に開いていく。

     噴水のある洋風庭園を抜け、大理石の階段を上がって
    玄関へと辿り着く。

     呼び鈴は不要だ、玄関の上に設置してある半球状の
    カメラドームがチカチカと赤く点滅して
    来訪者を感知している。

     何度来ても、羨ましいセレブな邸宅だ。

     リンの義父は、映画音楽で世界的な賞も取ったことのある有名な作曲家、坂本龍吉だ。
     昨年、彼は綾華(あやか)というまだ二十代の歌手と再婚した、リンにとっては継母だ。

     夫婦ふたりとも音楽活動で世界中を忙しく飛び回っていて、家に帰っていることは稀だ。
     なので、リンはこの大きな邸宅に、ほとんど独り切りで生活をしている。

     今日もリンは独りだと言っていた。

     ガシャンと扉の施錠が解かれる音がした。
    いらっしゃいませですゥ~
     舌足らずなアニメ口調とともに、大きな玄関扉が開いて、出迎えのリンが現れた。


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 257-260          ★白銀(しろがね)リン対遠藤マリ

    2017-12-24 10:05
    隠したい過去、変わりたい今。ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、イベント会場でリンの幼馴染の遠藤マリが現れた。
    彼女 かつてヤンチャしてたリンの姉貴的存在で、親の借金取りの事務所を火炎瓶で
    襲撃する過激な不良少女だった。
    エリカが不良グループにさらわれ、リンは乱闘を制して救出に成功するが、
    全ては遠藤マリが仕組んだことだったと知る。
    リンの過去をめぐって、まわりの少女達の葛藤が渦巻く。


    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                           人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは ぽよん様提供。                   

                       滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。




                         白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストはゆりぺっこ 様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       257-260頁です。

    閉園して廃墟となった遊園地、その一角のチケット売り場の事務所の中で、迷彩服に
    身を包
    みコンバットブーツを履いた戦闘姿の少女と 裾にフリルの付いたゴスロリ風の
    黒いワンピース
    ドレスの少女が互いにエモノを持って睨み合っていた。

     迷彩服の少女は白銀(しろがね)リンが手にしているエモノは、
    細い鉄パイプで端にL字の
    継ぎ手が付いている。

    一方の黒いドレスの少女は遠藤マリ彼女眼帯をしていて独眼だ、
    手にしている硬い樫の木のスティックをリンに突き出している。

    そして、対峙する二人の成り行きを部屋の隅から固唾を飲んで見守っている者が居る、
    メガネの本田ルミとポニーテールの滝沢エリカだ。

    遠藤マリリンとエリカ達との仲を裂こうと仕組んだ今回の事件、不良グループを
    巻き込んでの乱闘となり、予想外にも劣勢なリンが闘いを制する結果となった。

    遠藤マリの目論見が費えた今、彼女はフィリピン古武道エスクリマの武具である
    木製のスティックをリンに差し出し勝負を迫っている。

    彼女リンにエスクリマを教えた姉貴分、同等にエスクリマでタイマンしようと言うのだ。

    いいかげん、受け取れ!

     勝負を拒み続けるリンに痺れを切らし、スティックをリンに向けて放り投げた。

     しかし、リンはそれを無視して受け取ろうとはしない。
     受け取り手のいないスティックは、カランカランと乾いた音を立てて床に転がった。

     今度はリンの方が、持っていた細い鉄パイプを突き出し、軽く宙に放り投げた。

     ルミは思った、リンが武器を投げ出した行為は闘わないという意思表示だと。
     そして、このまま二人とも争わずに済むようにと切に願った。

     放り投げられた銀色の鉄パイプは、ゆっくりと回転しながら、そう高くはない事務所の
    天井
    まで迫ると、元の軌道で落ち始める。

     グルングルンとそのスローモーションのようなゆっくりとした動きに、
    周りの誰しもが気を
    奪われてしまっていた。

     だが、床に落ちる寸前、リンが予想外の動きを見せた。
    鉄パイプの端をコンバットブーツの
    つま先で鋭く蹴り飛ばしたのだ。

     鉄パイプは遠藤マリめがけて矢のように真っ直ぐ飛んでいき、彼女の腹にぶち当たった。

    ウグッ

     短い呻きを上げ、腹を押さえる遠藤マリ

     間髪を入れず、リンが 弾丸のようにダッシュして遠藤マリに飛びかかった。
     勢いそのまま、リン遠藤マリの腕と肩を掴んで事務所の壁にドンと体ごとブチ当たる。

     さらに右ひじを使って、遠藤マリの顔面を壁に押し当て動きを封じようとした。



    遠藤マリは掴まっていない方の腕を強引に胸
    の前で通すと、
    リンの上着に着いているホルダーから ナイフを素早く
    抜き取った。

     黒いナイフ、例のアイクホーン社製のKM2000だ。

     両者の動きが止まった。


     リンの白い首筋に黒いナイフのブレードが宛てられた。

     この一瞬の展開にルミは背筋を凍らせる。
    (ヤバい! 最悪の事態だ。
     遠藤マリは、この闘いに勝ってもリンちゃんとの仲を修復出来ないことを
    分かっている筈だ。
     あの人の狙いは、リンちゃんと『心中』する気なんじゃ …… )

     嫌な予感がルミの胸を横切った。

     遠藤マリは、壁に押さえつけられた体勢ながらも、リンに話しかける。

    誘ったのに、エスクリマでの勝負には乗ってこなかったな。
     さっきまで重い鉄パイプを振りまして暴れていたんや、おまえの握力は
    相当弱っている筈、
    エスクリマなら絶対勝てると思ってたのに

    首筋に冷たいナイフを当てられながらも、リンは落ち着いた声でそれに答える。

    相手の得意な土俵では戦わない。
     コレって、マリちゃんがうちに教えてくれたことですゥよ

    ふふっ。でも、詰めが甘いぞ。相手の動きを止めたら直ぐに蹴りを入れて、きめなきゃ……女の子は体重が軽いから、肘打ち、膝蹴りで直ぐにきめろって、いつも言ってたやろ

    うん、マリちゃんがそう教えてくれた ……

     そう言うと、リンは目を閉じ、首を差し出すように細い顎を突き出した。

     長いまつ毛、人形のように端整な顔立ち、死を覚悟したというよりも、
    何か悟ったようなその表情は、聖母のように神々しく見えた。

    「ㇷ゚ッ!」

     遠藤マリが吹き出し笑いをした。眼帯で独眼の瞳から一気に殺気が消え去った。

     そして、目を閉じているリンの花びらのように可憐な唇に 自分の唇を寄せた。
    ほんの少し躊躇いの間があってから、軽く当ててキスをした。

     突然の奇行に驚いたリンは、目をパチクリと瞬かせる。

    そんな綺麗な顔で迫ってきたおまえが悪い

     遠藤マリは そんな照れ隠しな台詞でキスの言い訳をした。
    手にしていたナイフをゆっくりと下げると、リンのホルダーへと戻した。

    リン遠藤マリを押さえつけていた手の力を緩め解放する。

    うちがナイフで牽制したのは、あんたのソニックボイスに耳をやられたら堪らんからや

     ソニックボイスというのは、リンの必殺技で、相手の耳元で強烈な声を出し、
    鼓膜を破るほどの衝撃を与えて失神させる特殊能力なのだ。


     遠藤マリに心中する気はなかった、そう分かった途端、ルミはへなへなと
    腰が砕けてその場に座り込んだ。
    良かった、最悪の事態にならなくて そっと胸を撫で下ろした。

     解き放された遠藤マリは、押さえつけられていた肩の方の腕をグルっと回して
    首をコキコキと鳴らすと、リンの肩に馴れ馴れしく腕を回す。

    ちょうど、リンが足の悪い彼女に肩を貸すような格好になり、滝沢エリカの方へと近づく。

    滝沢さん、うちの負けや。悔しいけど、この子はあんたの事を心底、大切に思ってる。
     だから、あんたもこの子を大事にしたって

     そう言われたエリカは、凛とした声で言葉を返す。
    もちろんよ。頼まれなくったって、あたしは友達を大事にするわ

     ティアラを冠したポニーテールのエリカ、その真っ直ぐな視線を向けられて、
    独眼の少女は納得したのか満足そうに笑みを浮かべた。

    もう、あんたらに迷惑は、かけへん

     遠藤マリはそう言って、リンから腕を離すと、独りで脚を引き摺り、
    隅の事務椅子に置かれたクマのヌイグルミを拾いあげた。

     彼女がいつも持ち歩いているヌイグルミ、所々に繕った痕があり、包帯が巻かれ、
    ホラーチックな
    代物なのたが彼女の愛用品だ。

     遠藤ルミはヌイグルミを頬擦りして大事そうに抱きしめる。
     その仕草は、凶悪な不良少女とは思えない、幼い女の子が見せるのと同じ可愛らしさだ。

     遠藤マリは振り返ることなく事務所を出ていく。
    その寂しげな背中をルミは黙って見送った。
    (遠藤さん自身の友達は、もう、あのヌイグルミだけなのかな …… )
     ルミはふと、そんな感傷的な気持ちになった。

     全てが終わった。
    さあ、ここから引き揚げようと思っていたルミだったが、そう簡単にはいかなかった。

     滝沢エリカが 事務所から一歩出るなり、辺りに怪我をした不良連中が
    自分達を遠巻きにして怯える様を見て、

    何、このまるでリンが暴れたような光景は?

    いや、まるでじゃなくって、リンちゃんが暴れたんだよ

    本当に暴れたんだ ……

     絶句するのかと思いきや、ポニーテールのお姉さんは、弾幕連射のごとく
    ルミリンを責め立てたのだ。

     今回の事件でエリカは狭いロッカーに閉じ込められていて、リンの闘いっぷりを知らない。

     エリカを助け出すためにやったことなのに、どうしてこんな危ない目をしたんだと。


    あんたたち、何やったのか分ってるの?

     乱闘よ、乱闘! しかも大乱闘!

     不良相手とは言え、立派な傷害事件よ!

     おまけに遊園地の屋根を壊したんですってね。

     もう、テロよ、テロ! テロリストよ!


     ルミリンは、ポニーテールに銀色ティアラをしたコスプレお姉さんから、
    ついにはテロリスト呼ばわりされてしまうのであった。

     助けに来たのに理不尽なとルミは思いつつも。
    まあ、この遊園地に無断侵入して、建物を壊しちゃったのは事実だし ……

    リンも ヒステリックになっているエリカしどろもどろで言い訳をしている。

    リンはただ、ただ、エリカお姉さまを助けたい一心でやったことなんですゥ~

    (リンちゃんの持ってるアーミーナイフ、正当防衛って言っても
    アレって銃刀法違反じゃ …… )

     リンは両手の拳を口の前で揃え、鳶色の瞳をウルウルさせて上目遣い、
    萌えオーラ全開でエリカに許しを請っている。

    あざといわね、でも、そんな顔したってダメ!

     残念ながら今回のエリカには通用しなかった。



    (つづく)
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