• 『コスプレ少女』新装版 217-220頁        ★マリちゃんの片方の眼を潰したのは、うちなんですゥ

    2017-05-14 02:23
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
    **********************************************************

    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、イベント会場でリン幼馴染の遠藤マリが現れた。
    彼女は かつてヤンチャしてたリンの姉貴的存在で、親の借金取りの事務所を火炎瓶で襲撃する過激な不良少女だった。
    リンの過去をめぐって、まわりの少女達の葛藤が渦巻く。

    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

    *****************************************************
    *****

    【登場人物紹介】                
                      人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   


    イメージイラストは ぽよん様提供。

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






                         白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは かりん 様提供。

    *****************************************************
    *******
     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

    ***********************************************************
       217-220頁目です。

    遠藤マリが居た間、なぜか、滝沢エリカはずっと無愛想だった。

    ルミ彼女遠藤マリの印象を訊くつもりで声をかけた。
    エリカさん、どうだった?

    ピラフが美味しくなかったわね。やっぱりパスタ系をチョイスすべきだったわ

    違~うううっ、ピラフの感想なんか訊いていないよう、遠藤さんのことだよ

    ……

    エリカは何も答えず、肩の前にかかったポニーテールを手で跳ね上げると、
    ツカツカと早足で即売会の会場へ向かった。

    ちょっと、エリカさ~ん

    ルミは売上金の入ったお菓子の缶をジャラジャラと鞄の中で鳴らしながら彼女を追いかけた。


    即売会会場のブースに戻ったルミエリカは、午前中と同じようにテーブルへ
    ブロマイド写真を並べて、再び客待ちをする。

     午後になり、来場客のピークを過ぎたのか、ブースを訪れる客もめっきり減って、
    ルミは金庫代わりにしているお菓子の缶に顎を載せ、通り過ぎる来場者をぼんやりと
    眺めながら、退屈な時間を過ごす。

    ほどなくして、コスプレに着替えた白銀リンがやってきた。

    胸元に大きなピンクのリボンを飾り、まるでアニメ雑誌から飛び出てきたような
    ファンタジックで可愛いらしい衣装だ。

    もし、似合わない娘が着たら、周りから嫌悪感を持たれてしまいそうな衣装なのだが、
    愛くるしい彼女が纏えば文句のつけようのない最強の萌コスになっている。

    エリカさ~ん

    小さな握りこぶしを胸元に添える萌ポーズでエリカに笑顔を向けるリン
    だが、エリカリンに対して、まるで恋人の素行を問い詰めるような言い方で。

    どういう関係なの? かなりヤバそうな子だけど

    えっ、えっ? マリちゃんのことですゥか? さっきも紹介したように幼馴染ですゥけど

     突然の尋問にリンは目をパチクリさせて小さな肩を縮ませる。

    エリカはブースのパイプ椅子から立ち上がるとテーブルにバンッと手をつき、語気を強めて。
    どういう付き合いかって訊いてんのよ!
    あんた、あの子にたかられているんじゃないでしょうね?

     立ち上がった勢いで、エリカのポニーテールが早いピッチで揺れ動く

    「そんなんじゃないですゥ! マリちゃんの事をそんな風に言うなんて。
    いくらエリカさんでも、酷いですゥよ!

    普段、エリカには従順なリンが、珍しくヒステリックに言い返した。
    眉間にシワよせ、エリカを睨みつける。

    突然の仲違いに、ルミはどうしたらいいのか分らずおろおろする。


    しばし、無言で対峙するエリカリン

    ルミが恐る恐るエリカの袖を引っ張ると、ようやくエリカは、
    周りを迷惑な空気にしていることに気づいた。

    彼女はうな垂れて髪をクシャクシャと掻きながら、低く呟いた。

    …… ちょっと言い過ぎたわ、謝る ……
    でも、あの子とどういう付き合いなのか教えてちょうだい
    エリカは心の中で深く反省していた。

    何しろ、彼女は日頃から親友のことは絶対的に信じることを信条している、
    それなのに親友の付き合う相手を一方的に偏見で見ていた自分に酷く嫌悪した。

    リンも緊張した表情を解いてブース前に屈む。

    マリちゃんとは、託児所で一緒になった時からの友達なんですゥ。
    マリちゃんはお父さんがいなくて、お母さんが薬中でまともに働かないから、
    家にお金も無くって、とっても苦労してきたんですゥよ。
    施設にあずけられたり、転校したり ……

    ふうん、リンの家がまだ貧しかった時からの付き合いなのね

    ああ見えてマリちゃん、本当は優しい人なのですゥよ。
    託児所にいた時、大きい組のイジメっ子からうちをかばってくれたですゥよ。
    姉妹のいないうちにとっては、お姉ちゃんみたいな存在なのですゥ

    リン、あんたが荒れて素行が悪くなったのは、あの子の影響じゃないの?

    違うですゥ! マリちゃんは関係ないですゥ。
     うちら二人して荒れてましたから。
     それに…… 本当はうちらお互い会っちゃいけないのですゥ……

    会っちゃいけないって? どういう事よ?

    親からも、法務教官からも、会わないように言われているんですゥよ

    何よ、それ?

    …… 実はですねえ。マリちゃんの片方の眼を潰したのは、うちなんですゥ」

    眼帯をしていた遠藤マリ、まんとその眼を潰したのは、リンだと言うのだ。

    「エスクリマのお稽古をしている時に、うちの肘打ちが当ってしまって眼球破裂 ……

    ええーっ、眼球破裂!

     ルミも思わず声を出して驚いた。

    『お稽古』なんて、上品ぶった言い方してるけど、エスクリマって格闘術じゃん。
    近接戦の模擬訓練で事故ったんだ ……

    うちが大怪我させてしまったけど、それをマリちゃんは、自分の方が悪いんだって ……

    もちろん、治療費とか補償とかは、うちのパパがしてくれたんですゥよ。
    でも、マリちゃんのお母さんが借金元の人にそそのかされて、法外なお金を強請ってきたり、そのそそのかした借金元も別の犯罪で捕まったりとかしたんですゥ。

    それと、うちもマリちゃんも傷害事件で家庭裁判所のお世話になってたりと色々あって……
    それで、うちら会っちゃいけないってことに

    よく分かんないけど、かなり複雑そうね ため息混じりで感心するエリカ


     ルミもふたりの複雑な関係を考える。

    お金を強請るような事は、遠藤さんやリンちゃんに全部責任があるわけじゃない。
    でも、問題児二人を一緒にしておいてはいけないと保護者と法務教官の
    判断なんだろうなあ。 
    まあ、お昼に聞かせてもらった二人の武勇伝からも、隔離しておいた方が良さそう、
    混ぜるな危険っていうことだ

    中腰でブースに立っていたエリカが、パイプ椅子にドッと腰を降ろす。

    リン、あなたたちの関係は分かったわ。
     あたしはね、あんたとあの子との関係が不安で心配だったのよ

    ふう~、分かってもらえたですゥか
     そう言ってリンは大きな胸のリボンの上から胸を撫で下ろす。

     事態が落ち着き、ルミが午後からのコスプレコンテストの時間を気にして
    リンに声をかける。

    リンちゃん、そろそろコンテストの本審査が始まる時間じゃあ?

    そ、そうでしたぁ。行ってきますですゥ~

     ベレー帽を手で抑えながら、リンは慌てて審査会場へ駆け出して行った。

    コンテストかあ、いいなあ。
    確か、リンちゃんは優勝候補だって言ってたよねえ、見たいなあ

    エリカをチラ見しながら棒読み口調のルミ

    この日、ルミエリカのブースの手伝いをするために来ていた、
    と言うか半ば強制手的に徴用されてきている。

    だけど、張り合いのない売り子は退屈で飽きていたので、徴用主のエリカに対して
    コンテストを見に行きたいと暗にほのめかしているのだ。

    いいわ。お客さんも少なそうだから、もうブースを閉めて、一緒に見に行きましょう

    マジっすか! わ~い

     珍しくエリカが同意してくれたので、言ってみるもんだなあとルミは喜々とした。

     ルミたちはさっきテーブルに並べたエリカのブロマイドを回収し、
    『ただ今、お散歩中』と書いた貼り紙をしてブースを離れた。

    コスプレコンテストが行われる特設ステージでは、マイクを持った運営委員が
    審査発表を始めようとしているところだった。

    審査自体はもう終わっていて、ステージ上には二十名くらいエントリーメンバーが
    横一列に並んで発表を待っていた。

    即売会の会場内にもコスプレしている人は沢山いる、
    だけどさすがに参加料まで払ってエントリーしているレイヤーたちは気合が違う。

    どうやって会場内に運び込んだのかと思うくらい大きな羽根の付いたエルフの人がいる。

    その隣りでは、ダイオード電飾を付けた赤いロボットのレイヤーが、聖剣のような武器を
    ガシャンガシャンと変形させてヒーローポーズをとっている。
    変形パーツが実に精巧に出来ていて、一体いくら金をつぎ込んでいるかと思われた。

    また、その隣りには金髪ロングヘアーの美女レイヤーがいる。ブルーのカラコン、
    スレンダーなボディ、コルセットで締め上げられた白い胸が半分以上見えていて、
    妖艶なポーズで観客の注目を浴びていた。

    ルミエリカのような、制服にアクセサリーを付け足しただけのコスプレでは、
    とても太刀打ち出来そうもない高スペックなレイヤーたちばかりだ。

    (つづく)
    *****************************************************
    ********
    ★初めて読まれた方は、1頁目からどうぞ
    http://ch.nicovideo.jp/sonicvoice/blomaga/ar858417

  • 広告
  • 『コスプレ少女』新装版 213-216頁        ★エスクリマの達人

    2017-05-05 23:40
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
    **********************************************************

    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、イベント会場でリン幼馴染の遠藤マリが現れた。
    久しぶりの再会で話が弾むリンマリ
    だが、話の内容は、ふたりがヤンチャしていた武勇伝だった……
    ……


    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

    *****************************************************
    *****

    【登場人物紹介】                
                         人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは ぽよん様提供。

                       

                        滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






                         白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは 海冥 様制作提供の
    3Ðモデルから。

    *****************************************************
    *******
     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

    ***********************************************************
       213-216頁目です。

    騒ぎの張本人でリンの幼馴染、独眼のテロリスト少女遠藤マリは、少しも悪びれた様子なく、滝沢さん、マジにならんといてな。サキちゃんをちょっと試してみただけやから
     そんな軽い言い訳をした。

     一方、ナイフを眼前に向けられて、もてあそばれたエリカは、
    気にしてないわとつっけんどんな言い方で返した。

     ソファーに背を預け深々と座る遠藤マリは、ホステスを侍らす酔客のように、
    隣に座っているリンの肩に 腕を回してグイと抱き寄せ、下衆な笑みを浮かべつつ
    リンの耳元に囁いた。

    ええ反応やったでサキちゃん、メチャメチャ速かった。腕はちっとも鈍ってへんなあ

     それを聞いたルミは、
    腕が鈍ってないって? 何それ?
    この人はナイフとフォークの格闘術でも試したかったのか?
    といぶかり、メガネの奥の瞳をキョロキョロさせながら、ふたりの顔を交互にうかがった。

     ぺペロンチーノを平らげたリンが ナプキンで口元を手稲に拭きながら、
    マリちゃんが テーブルナイフでチャラチャラ遊び始めたから、
    ちょっと用心してたですゥよ

    事前に 警戒していたことを告白した。

    な~んや、気付かれとったんか

    でも、まさか、エリカさんにあんなことするなんて思ってなかったですゥよ。
     ほんとビックリですゥ。
     初対面の相手にするですゥか、普通?

    あのう …… 初対面でなくても 普通しちゃダメだと思うんだけど。
    ところで、腕を試したって …… 一体、ふたりの関係って?

    ただの幼馴染じゃないと感じたルミは、思い切ってリンに訊いた。

    関係 …… ですゥか? 
    マリちゃんはですゥねえ、うちに喧嘩の仕方を教えてくれた人なんですゥ

    リンちゃんに喧嘩を教えた人!

    この遠藤さんが リンちゃんを銀行強盗も一撃で倒す人間凶器に調教したのか …… 
    教えた遠藤さんって一体?

    マリちゃんは エスクリマって言う格闘技の達人なんですゥ

    エス、エス、エスクリマ …… エスクリマって 何?

     ルミには聞いたことのない名前だった。

    エスクリマって言うのは ですゥねえ ……

    ん?

    で、ですゥねえ ……

    んん?

    ……

     リンの言葉が途中でフリーズ、口を開いたまま視線が宙に止まっている。

    リンちゃん、ど、どうしたの?

    エ、エスクリマは …… マジ凄いんですゥ~

    リンちゃん、それじゃあ説明になってないよ

     語彙力の乏しさからか、リンルミに上手く説明することが出来なかった。

     そんな会話にじれったくなった遠藤マリが、代わりに話し出した。

    本田さん、エスクリマっていうのはなあ、フィリピンに伝わる古武道の一つなんよ。
     ナイフを持った相手を倒す近接戦にかけては最強やね、
    アメリカ軍でも採用してるって話や。 

    パワーよりスピードとテクニック重視の武術。
    なにせ、昔のサキちゃんは突進していくだけの
    反射神経のみで喧嘩してた子やったからなあ

    反射神経だけって、悪かったですゥねえ!

     愛らしい唇を尖らせ、怒るリン

     その表情を見た遠藤マリは、片方だけの目を細めてニヤニヤと笑った。

    このエスクリマの達人、遠藤さんはリンちゃんの喧嘩の先生。
    ってことは、強盗を瞬殺したリンちゃんよりも強いってこと? ……

     ルミは正面のソファーに座っている独眼のテロリスト少女の容姿を改めて見た。
     鼻筋の通った顔立ちは凛々しく綺麗だ。
    だが、リンのような可愛い子供っぽさはなく、独眼の鋭い目つきから、
    触れれば切れる刃物のような危ない感じが漂う。

     同じ中学三年生のエリカが時々見せる大人っぽさとも違う、凄みのようなものがあった。

    ところで遠藤さん自身は、そのフィリピンの古武道を何処で覚えたんですか?

     もっともなルミの疑問。リンより年長とは言え、たった二つ上だ。
    中学生の女の子が何故、外国の武道を体得しているのか?
     もしかして、彼女は親から子への一子相伝の武術の継承者なのか? 
     ルミの頭の中では、疑問が漫画的な展開の妄想へと膨らんでいた。

    さっきも言うたけど、うちの母親は薬中でさあ。
    その筋の男がよく家へ出入りしてたんよ。
    そんな連中の相手をうちの母親はしてたんや。

    中には母親だけでなく、子供のうちにまで手を出す酷い奴がいてな、
    慰めもののオモチャにされたりした

    …… オモチャって?

    うちの口の中にナニをやな ……

    遠藤マリが舌を突き出し、上唇をゆっく舐めて見せた。

    マリちゃん! 話が脱線してるですゥよ。エスクリマの話!

    そう言ってリン幼馴染を注意し、話を元に戻そうとした。
    奥手なルミでも、遠藤マリの仕草が意味するところの察しがつき、生唾を飲んだ。

    そして、そんなエグい過去を初対面の自分にあっさり告白をする遠藤マリは、
    凄い人だなと思った。


    ああ、そうそう、エスクリマの話やったな。
    そんでな、その出入りしてた男の中にフィリピン人で用心棒をやってた人がいたんよ

    用心棒 …… ですか?

    組織のボスを守る用心棒や。まあ、殺し屋みたいなもんや

    殺し屋!

     遠藤マリの話は、ルミの妄想以上に漫画的な展開になってきた。
    知合いに殺し屋がいる女の子なんて、そうは居ないだろう。

    そのフィリピンの用心棒はね。
    うちにイヤラシイ事なんかしなかった。
    何でも故郷に、うちくらいの娘がおるとか。

    うちは母親だけで父親はおらんかったし、自分の子供のようにスゴく可愛がってくれて、
    エスクリマも教えてくれたんや。

    エスクリマは元々、虐げられた人々が支配者に抗う術として、連綿と伝えられてきたんや。 今は武術って言うてるけど殺し技や

    なるほど

    でもなあ、そのフィリピン人、帰国前にトカレフで撃たれて死んでしもたそうや

    トカレフ?

    ロシア製の拳銃のことや

    そう言うと独眼少女は、手を拳銃の形にして指先を頭に向け、引き鉄を引く真似をした。

    ピストルで撃たれたってことですか! 」

    あまりに違う世界の話にルミも疑った。

    それって、本当の話なんですか?

    アハハハーーッ

    遠藤マリは大きな声で笑い出した、ルミが豆鉄砲をくらったハトのような顔をして
    質問してきたからだ。腹を抱え、むせかえっている。

    そして、むせび笑った涙を指で拭きながら、ルミに鼻がぶつかるくらい顔を近付けて、
    ほんまの話や
    と腹の底から凄みのある低い声で告げた。

     片目しかないが、その瞳に籠る眼力は、見る者を金縛りにするくらい迫力がある。
     どうやら、本当の話らしい。

    あのう、ソニックボイスもエスクリマの技なんですか?

    ちゃうちゃう。あれはサキちゃんのオリジナルや、
    あんな特殊な技、他の誰も真似でけへん

     遠藤マリは顔の前で手首をブルブル振って即座に否定した。

    あれは一種の超能力やな。
     何でも『呪われた実』を食いしん坊なサキちゃんが食べたから出来るようになったとか

     遠藤マリの目が細く歪んだ。

    それはウソでしょ!

    バレた~、今のはウソやっ

    そう白状してから遠藤マリは、またケラケラと笑い出した。

     ルミ遠藤マリとで話が盛り上がっていた …… と言うか、
    ルミ彼女にからかわれたと言うべきか。

    食事も終えたので、店を出ることになった。
    レジ前では、リン幼馴染の分まで支払いをしている。

    奢ってもらった遠藤マリは、『ごっつあんです』と礼を言いながら、
    相相撲取りみたいに手刀を切っている。

    そんな他愛もなくふざけ合う仲の良い二人だが、リンが上目遣いで寂しそうに言う。

    マリちゃん、悪いけど、うちは昼からもエリカさんたちと …… それにうちらは …… 」

    ああ、分ってる、分かってるって。
    今日はあんたに会えただけでも良かった。
    久しぶりにお喋りもいっぱい出来たし、嬉しかったわ

    リンエリカに『先に行ってて』と言い残し、
    片足を引き摺って歩く遠藤マリに寄り添いながら、先に店の外へ出て行った。

    ルミエリカも、リン達を見送りつつ即売会会場のブースへと向かうため店を出た。


    (つづく)
    *****************************************************
    ********
    ★初めて読まれた方は、1頁目からどうぞ
    http://ch.nicovideo.jp/sonicvoice/blomaga/ar858417

  • 『コスプレ少女』新装版 209-212頁        ★独眼のテロリスト少女

    2017-04-09 22:30
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
    **********************************************************

    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    イベント会場でリンの幼馴染の遠藤マリが現れた。
    久しぶりの再会で話が弾むリンマリ
    だが、話の内容は、ふたりがヤンチャしていた武勇伝だった……


    *********************************************************
    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

    *****************************************************
    *****

    【登場人物紹介】                
                          人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレを
    きっかけにコミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   

    イメージイラストは ぽよん様提供。

                       
                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もあるちょっとワケあり
    の美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。





                           白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナル
    コス
    プレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストはべこあめ 様提供。

    *****************************************************
    *******
     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

    ***********************************************************
       209-212頁目です。

    冬の湖に放り込まれるという非情なリンチ遠藤マリリンは、
    まるで流行のスイーツの話でもするかのように、ファークをせわしく口に運びながら
    ハイテンポなお喋りで盛り上がっている。

    そりゃあ、ずぶ濡れの女の子が湖から出できたら、誰だってビックリするですゥよ

    あのおじさんは親切やったよね。
    お前ら風邪引くやろうから、焚き火にあたれって言うてくれたし

    あの時は、ほんと助かったですゥよ。
    冬にずぶ濡れ、凍え死にそうなくらい寒かったし、あのおじさんは命の恩人ですゥよ

    ほんまや、ドラム缶の焚き火で助けられたで。
    焚火の前でうちらふたりともパンツいっちょの裸になってたよなあ

    裸でしたけど、うちはまだ小学生だったし、見られるような胸もなかったですゥ

    サキちゃんは今でもないけどなあ

    そんないじわるな

    キャハハハッ

    パンツいっちょの裸で焚き火、そんな大昔の少年漫画のような豪快なふたりの会話に、
    ルミは目を丸くして聞き入る。 

    そんなルミの様子に気づいたのか、遠藤マリは斜め向かいに座っているルミに喋りかけた。

    うちの母親がさあ、ちょっと、薬中でね

     突然、話しかけられたルミは、スプーンを咥えたまんま固まった。
    薬中って 麻薬中毒! 母親が麻薬中毒って ……

    眼帯少女はその一つ目を妖しく輝かせながら。

    薬の代金の借金があってさあ、その取立てが朝っぱらアパートのドアをガンガン叩いたり、金返せって貼り紙されたりとかさあ。
    あんまりしつこいんで、元締めの所へ文句言いに行ったんよ

    えええっーー、取立て屋の元締めに!

    文句を言いに行ったって …… 
    子供が借金の取立て屋に文句を言いに行ってどうにかなるものなのか?

    遠藤マリは手にしたフォークを小さく振りながら得意顔で話を続ける。
    火炎瓶を持ってな

    か、かえんびん!

     ずっと静かに聞いていたルミも、さすがに火炎瓶と聞いて思わず大きな声を上げてしまい、周りの客から一斉に視線を向けられた。


    暫しの沈黙 …… 注目の視線から解放されるのを待ってから、遠藤マリは小声で話を続けた。

    そんでな、取立て屋の事務所へ火炎瓶をブチかまして、火だるましてやったんよ

    えっ、火、火だるまにですか!
    今度はルミも周りを気にして、小声で驚く。

    か、火炎瓶なんて、そんなのどうやって作ったんですか?

    ペットボトルにシンナー入れて作ったんや
     口の端を上げて自慢気に答える遠藤マリ

    あのう …… ペットボトルだと瓶が割れないから、上手くいかないんじゃないですか?

    樹脂製の容器では破裂しないから、火炎瓶としての実用性に疑問を投げかけたのだ。

    ルミからの思わぬ質問に、遠藤マリは少々驚きながらも、片目を細めて笑う。

    これだから、素人さんは
     チッチッと遠藤マリは舌打ちをして、人差し指を左右に振りながら説明を始めた。

    でも、メガネの本田さん、あんたオモロイこと訊いてくんなあ。
     ええか、教えたげるわ。ガラス瓶でも結構硬いから割れにくいんや。
    ペットボトルっていうても、炭酸が入ってるやつに 使こてあるような耐圧性と違ごて、
    ミネラルウオーターなんかのベコベコのやつや。

    割れへんけど中身が飛び出すんや。
    火炎瓶はな、人に投げつけるもんやないんや。
    思いっきり床に叩きつけて、そこら中に火をバラ撒くのが有効的な使い方なんやで

    そう言いいながら、独眼のテロリスト少女は、床に叩きつける手振りをして、
    ルミ火炎瓶の使い方をレクチャーする。

    そ、そうだったのか、知らなかったよ、火炎瓶の正しい使い方 ……
    もし、使う機会があったら参考にしよう。多分、そんな機会はないと思うけど ……

    その様子を直ぐ傍で見ていたエリカは、あんたは何の話に喰いついてんだと
    言いたげな顔でルミを睨んでいた。

    でもな、取立て屋の事務所を火だるまにした事で、御礼参りを受けたんや

    調子に乗ったからですゥよ

     隣のリンが、パスタをフォークに巻きつけながら、遠藤マリに愚痴っぽくこぼす。

    半端ない御礼参りやった
    遠藤マリはソファーの背もたれに反り返るように背中を預け、当時を語った。

    夜遅くの人気のない駅の地下道で待ち伏せに合うてな、
    大人六人がかりで寄って集ってボコボコにされたんや。

    サキちゃんが助けに来てくれたんやけど、フルボッコにされた後やったし、
    来てくれるなら、もうちょっと早う来て欲しかったわ~ん

    そう言って笑いながら隣のリンを肘で小突く。

    そんなの無理だったですゥよ!
    強い調子でリンが言葉を返す。

    アハハ、冗談や。サキちゃんはスゴいんやから。

    駆けつけてくれたサキちゃんは、まず地下道の配電盤をぶっ壊して、灯りを消しよったんや。

    地下道は一寸先も見えないくらいの真っ暗闇、そうしてから相手に近寄って、
    ある方法でやっつけていくんや。
    真っ暗やから相手は何をされたか解らへん

     ここまでの話を聞いて、ルミ『ある方法』にピンときて、思わず口に出した。
    それって、ソニックボイスのことですね

    ソニックボイス、それは二万ヘルツ?とも言われる大声を発して、
    相手の鼓膜を突き破り、失神させるというリンの必殺技だ。
    この間の銀行強盗の一人も、これでやられた。

    本田さん、あんたソニックボイスを知ってるんかいな 」
    眼帯少女は驚いた風に ルミに訊き返すと、隣リンをチラリと見た。

    見られたリンは澄ました顔でフォークにパスタ絡め、遠藤マリの視線を無視して食べている。

    なーんや、知ってるんかいな。サキちゃんの必殺技ソニックボイス
    遠藤マリは実に残念そうにそう嘆くと、肩を脱力させソファーに崩れていった。
    どうやらソニックボイスの解説をしたかったらしい。

    助けに来てくれた時のサキちゃんは、メチャメチャ強かった。怖いくらいにな ……
    気絶させたチンピラ六人をメッタ打ちにしたんやから

     その言葉を聞いたルミは。
    チンピラをメッタ打ちにしたって!
    この前、刑事さんから聞かされた話と一緒だ、やっぱり本当にあった事だったんだ
    刑事の話との辻褄に 密かに納得していた。

    エリカは最初の自己紹介で名前を言ってからほとんど喋っていない、
    ずっと厳しい目つきで真正面の席に座っている遠藤マリのことを見ながら
    黙々とピラフを口に運んでいる。
    何か気に喰わないことでもある様子だった。 

    遠藤マリがテーブル端に置いてある食器入れのバスケットに手を伸ばした。
    そこからナイフを取り出して指に絡めるようにクルクルと器用に回した。
    キラキラと光るナイフ、まるで手品師のような巧みな指使い、
    次の瞬間、遠藤マリはいきなりエリカの眼前にナイフを突きつけた。

    ひいいっ! 遠藤さん、いきなり何を!
     驚いたのはルミだった。

    ナイフはエリカの鼻っ柱で寸止めされた。
    ほとんど同時に横にいたリンも動いていた。
    リンの持つフォークの先端が、遠藤マリの白い喉下にピタリと当てられ、
    突然の狂気に走った幼馴染の動きを制していたのだ。 

    リンが唇から垂れていたパスタを勢いよく啜り上げてから、
    マリちゃん! エリカさんに何を!
     店中に聞こえる大きな声だった。店内の客も何事かと視線を向ける。

    遠藤マリは喉にフォークを当てられながらも、
    この人、眉ひとつ動かさへんかったで。何者や?
    そうすごみのある声でリンに問うた。

     鼻先に突然ナイフを突きつけられたというのに、エリカは微動だにせず、
    遠藤マリをただ睨みつけていた。

     騒ぎに気づいたのか、店員がルミたちのテーブルの様子をうかがっている。

     遠藤マリも流石にマズい雰囲気だと思い、ナイフを握った手をゆっくりと引っ込め、
    テーブルのバスケットの上で手のひらを拡げた。
    チャリンと手からナイフが落下した。

    それを見届けたリン遠藤マリの喉元に当てていたフォークを静かに引いた。

    「どうかなさいましたか」
    店員が訊いてきたが、エリカがうるさくしてごめんなさいと一言先に誤ったので、
    それ以上の事は訊かれずに済んだ。

     店員から訊かれた時、ルミは心臓がバクバクするくらい緊張した、
    落ち着きを取り戻そうとコップの水を一気に飲み干した。

    ルミたちが静かになると、周りの客も直ぐに関心が薄れたのか店内も平常に戻った。


    (つづく)
    *****************************************************
    ********
    ★初めて読まれた方は、1頁目からどうぞ
    http://ch.nicovideo.jp/sonicvoice/blomaga/ar858417