• 『コスプレ少女』新装版 201-204頁        ★『男前』だよエリカさん!

    2017-02-26 21:30
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    買い物の途中で銀行強盗に遭遇、なんと、リン強盗を退治してしまう。
    その後、警察がやってきて、ルミエリカは刑事からリンの過去を聞かされる……


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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                          人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   

    イメージイラストは、ぽよん様提供                   

                          滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた
    「エリカ姫」
    コスプレイヤーで
    中学三年生。イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もある
    ちょっとワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。
    イメージイラストは 安堂ゆな 様提供

                           白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは かりん様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       201-204頁目です。

    チンピラ相手の乱闘事件、その噂は ルミも耳にしていた、
    刑事の話からそれは本当だったのだ。
    返り血を浴びるくらい相手を殴っていたという生々しい証言に、その時の惨状が窺えた。

    刑事の話は続く。
    「最近、良くない情報を耳にしているんだ。
    あの子に怨みを持っている奴や、功名心から襲おうとしている連中がいるって。

    あの子自身に、そのつもりが無くとも巻き込まれる恐れがある。

    つまり、僕が言いたいのは、あの子にあまり関わらない方がいいって事さ 」

     若い刑事は独りで喋るだけ喋ってから、ルミたちを解放した。

     パトカーから降りた二人は、リンの事を話し合った。
    驚いた、リンちゃんって、今でも警察から危険人物としてマークされているんだね 」 

    昔の相手から狙われてるって言ってたわね
    エリカも表情を厳しくする。

    いいことルミ。今日、刑事さんから聞かされた事は、リンには黙っておくのよ

    どうして?

    だって、警察からリンに関わるなって言われたなんて知ったらショックでしょ。
     また、あの子が気にして、あたしたちから離れていったらどうすんのよ

    そ、それもそうだね。うん、わかったよ

    二人は刑事の話の事は、リンには内緒にしておくことにした。


      ーー ☆ ーー


    そんな銀行強盗事件の翌日の週末、ルミは 京都市内で開かれる同人誌即売会に出かけた。

    会場前は相変らず入場待ちの人で長蛇の列だ。 
    今回、エリカはサークル参加登録していて、
    ルミより先に会場に入っていた。

    ルミの方は、一般入場者の列に辛抱強く並ばなければいけなかった。
    後からやって来たサークル参加の人達が、首から提げた登録証をかざして
    先に入場していく様子が、VIP待遇みたいで、ルミはちょっと羨ましかった。

    最も、遅れてきたサークル参加の本人達は、設営準備がままならず、焦っていたことだろう。

    ルミは 長くなっていく行列に並びながら。
    エリカさんから手伝ってと言われて来たけれど、一体何を売る気なんだろう?

     そう、ルミエリカの活動内容について、何も聞かされていなかったのだ。
     いつものように自己中のお姉さんから、一方的な連絡がきただけだった。

     同人誌即売会と言っても、必ずしも本を売るとは限らない。
    今や三割くらいのサークルはフィギュアとか、自作ゲームソフトとか、
    PCのパーツだとか同人誌以外の物を売っている。

    ネットアイドルを目指しているエリカさんが、同人誌を作ってるとは思えん。
    一体何を手伝わされるんだろう?

    そうルミが思案している間にも、入場の列は動き出した。

    入場後、ルミは一旦、トイレに入る。
    そう、『賢者のルミ』のコスに着替えるためだ。
    と言っても、初めての時と違って 短いスカートは始めから履いてきた。
    丈のある巻きスカートでそれを覆っていただけだ。

    黒いハーフマントを羽織り、頭にお手製の小さな角帽を着け、ツインテールを結い直す。
    すっかり慣れた様で、コスチェンを完了した。


    同人誌即売会の会場は、サークル参加の場合、登録料を払って折りたたみ式テーブルの
    半分の面積が売り場のスペースとして割り当てられる。
    この売り場スペースがブースと呼ばれるものだ。

    Fの14ブース、エリカさんは何処かな?

     人ごみに揉まれながら、エリカのブースを捜すルミ
    銀色に輝くティアラを頭に着けたエリカは、目立つから直ぐに見つかった。

    青いブレザーにボタンダウンのシャツ、赤いネクタイをキリリと締め、整った顔立ちと
    相まって、今日のエリカはいつも以上にお姉さんぽく見えた。

    『男前』だよエリカさん! なんか気合入ってるなあ。
    それで、一体何を売る気なのかなあ?) 

    テーブルに並べられているものに視線を向けルミは、目が点になってしまった。

    ブロマイド写真!

    エリカさん自身のコスプレ写真、ご丁寧にブログのURLが記載されているよ。

    気分はアイドル?

    …… これの …… 売り子を手伝えと。

    一体誰が買うんだよ! 素人の写真だよ。

    確かにエリカさんは美少女だよ、百人に訊いたとしても 百人が美少女だって答えるだろうよ。

    うん、それは認めるよ、異論ないよ。

    でもね、エリカさんレベルの美少女なんて、
    モデルとか、タレントがいっぱいいるじゃない。 

    それにこの写真 …… 綺麗に撮れてはいるけれど、ムッチャ普通の写真じゃん! 

    萌が足んないよ、萌がさっ! 

    もっとこう、膝上の絶対領域をポイントにするとか、
    自慢の美脚を強調するためにアングルを凝るとか工夫が欲しいよ。

    売れ残ったら買わされたりしないだろうか、それが心配だ )

    ルミは低いテーブルの下を潜って売り子側のエリアに入る。
    会場設置のパイプ椅子とは別のエリカが用意した小さなキャンプ椅子に座り、
    エリカの隣に並んだ。

    ちょっと相談してくれれば、売れそうな写真のアドバイスくらいしてあげたのにい
     ちょっと不満気にルミは言った。

    あんたなら、そう言うと思ったわ

    へっ?

    あのね、たくさん売るのが目的じゃないのよ。
    あたしを知ってくれた人と、ネット上だけじゃなくって、生身の人と会いたいのよ。
    自分自身の存在を確かめる為にね

    エリカさん ……


    売れないと思われていたブロマイド写真、ところがルミの予想に反して結構売れたのだ。

    オタクなお兄さんが女子中学生の生写真を その手の趣味で買っていくのは何となく分かる。
    だが、それ以上に女の子が買っていくのだ。

    こんな素人写真が、なぜ売れるのか?

    ルミは買いに来るお客とエリカの会話を側でじっと聞いていて、何となく理解できた。
    ほとんどの人が エリカのブログを見てファンになり、ブースまで会いに来た人だった。

    エリカのコスプレした容姿だけが目当てではなく、彼女の行動力に憧れていますと言って、
    サインや握手を求めてくる人までいる。
    中には会えた感動で手は震え、言葉に詰まって涙ぐむ女の子までいた。

    ファンと接するエリカの横顔をルミは 間近で見ながら思った、

    (アイドルの握手会と変わらないなあ。でも、な~んか不思議な感じがするよ。

    だってさあ、ブログのエリカさんは、本人の願望キャラだよ。
    自殺未遂までしたエリカさん自身が憧れている気高く強いエリカ姫、
    生きている自分の居場所、コスプレの分身である滝沢エリカなんだよ。

    本物のアイドル業の人達も同じなのかなあ、人前で仮の姿を演じているって点で …… )

    ルミはそんな事を考えながら、ブロマイド写真の売上金を入れている『金庫』(ブリキ製の
    お菓子の缶)に顎を載せて、立ち寄るお客を眺めていた。


     雑踏の中、見知った顔が近づいて来た。

    エリカさーん、調子はどうですゥかあ?

    甘ったるいアニメ声で萌っ娘喋りの白銀(しろがね)リンが、
    エリカのブース前までやって来た。

    まあまあって、ところかしら
     エリカが笑顔で返す。

    今日、白銀リンエリカのサークル参加とは全く別個で、この即売会の
    コスプレコンテストにエントリーしているのだ。

    お決まりのベレー帽からなびく柔らかな髪、肩まで覆う大きな襟、胸元は光沢のある
    大きなピンクのリボン、膝丈の白いスカートと『天使のリン』をイメージした
    オリジナルコスプレで、ファンタジックな世界から飛び出てきたようだ。

    それでいて、くどさが感じられないのは、彼女が鳶色の大きな瞳で愛くるしい笑顔を
    振り撒く萌え度全開美少女だからだ。

    とても、この少女銀行強盗瞬殺した猛者とは、誰も想像ができないだろう。

    リンのコスプレは、コスプレの撮影エリアでカメラマンからの評判も良く、
    コンテストの優勝候補だ。

    リンも一緒にお昼に行く?
     エリカリンを昼食に誘う。

    行くですゥ! 行きますですゥ。
    午後からの本審査まで、ちょっと時間が空きますから、直ぐに着替えてくるですゥよ
    リンは桜色の唇で即答すると、すぐさまレイヤー用の更衣室へと向かっていった。。

    ルミエリカとテーブルの売り物を片付け、チラシの裏に食事中と書いて貼り付けた。
    そして、着替えから戻ってきたリンとブースから離れようとしていた時。

    サキちゃん!

    誰かがリンを本名の『サキ』で呼び止めた。
    ルミ達三人は、驚いて声の方へ振り向いた。
    声の主は、左目に眼帯をして、真っ黒なワン
    ピースドレスを着た少女だった。


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 197-200頁        ★ギラギラと光るナイフを向けて

    2017-02-12 23:14
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    ある日、三人が買い物の途中で銀行強盗に遭遇、リンが人質になってしまう ……

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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                     人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりの女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    「賢者のルミ」のコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

                          滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた
    「エリカ姫」
    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もある
    ちょっとワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。






    白銀(しろがね)リン
    ルミ
    がイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    「天使のリン」をイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
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       197-200頁目です。

    白昼の銀行強盗、犯人の男は、人質のリンを左腕で首絞めしたまま、
    ギラギラと光るナイフを向けてエリカを威嚇する。

    だが、エリカは 少しも、たじろかない。

    ポニーテールが逆立たんばかりの気迫で男を指差し、こう言い放った。

    その子を放しなさい! その子を放すんなら、
    あたしが刺されたって構わないんだから!

     そして、無謀にもナイフを持った強盗犯に、真正面から近づいていこうとする。

    緊迫する銀行内、周囲の者達が、みな固唾を飲んで
    勇ましい少女と強盗犯とのやりとりを見守った。


    すると人質となっているリンが、首絞めされながらも、くぐもった声でこう言った。

    エ、エリカさん …… やっちゃっていいですゥか?

     いつものアニメ口調で切迫感は感じられない、エリカに何か訊いているようだ。

     ルミは この現場を目の前にして、身体が強張り、銀行のソファーから立ち上がることすら
    出来ずにいたが、リンの言葉に どこか余裕のようなものを感じていた。

    一体、これはどういうことだろうか?
     リンちゃんはその可愛いらしい姿に似合わず街の不良グループからも
    『狂犬』と呼ばれるほどの喧嘩猛者だ。

    実際に不良六人を相手にして、フルボッコにしたのをわたしも見ている。
    でも、それはリンちゃんが自由自在に動けて、鉄パイプという武器を持ってた時の話だ。
    今はガッチリ首を絞められ身動きすらままならない。
    男の片腕で人形のように振り回されるほどの華奢な体躯、大人の男との体格差は明らかだ、
    女の子の力ではとても外せそうにない。
    おまけに相手はナイフを持っている、街の不良との喧嘩とは、わけが違う

    ルミはそんな心配に思いを廻らせていたが、エリカの方は予想外の行動に出た。

    強盗犯を鬼気迫るくらい睨みつけていた勇ましい少女は、
    リンの言葉を聞くとあっさり腕の力を抜いた。

    仕方がないわね、ケガしないようにね

     エリカは投げ出すように そう言い放つと、首をすくめ、手のひらを上に向けて拡げ
    『おてあげ』のポーズをした後、二、三歩後ろに下がり、
    ポニーテールを後ろに払って腕組みをした。

     ??? ふたりの間で何が合意されたのか? リンは一体何をする気なのか? 

    強盗犯の左腕に首絞めされてぶら下がり状態のリン彼女は鳶色の瞳を妖しく輝かせ、
    手に持っていたボールペンの握り手を変えると親指をペンの後ろにあてた。

    そして、首を絞めている男の左腕に、そのボールペンを鋭く突き立てた。

    「いでっ」
    男の短い悲鳴。瞬間、男の腕が緩んだ。

    そのわずかな隙をつき、リンは男の腕から素早く首を抜く。
    抜くやいなや、ナイフを持つ男の右手首を掴み取り、足払いをかけた。

    ズンっと鈍い音が銀行の大理石の床に響いた、男が腰から落下したのだ。

    リンの動きはまだ止まらない、男の手首を掴んだまま、さらに倒れた男の鳩尾を目掛けて、
    彼女の全体重をかけた肘打ちが突き降ろされた。

    「グヘッ」

     男の手からナイフがこぼれ落ち、硬い大理石の床にカランと金属音が響いた。

    速い! 一秒とかかっていない早業だった。

    これで事件も落着かと思いきや、強盗犯を仕留めたリンは、なぜか直ぐさま
    銀行の外へと飛び出して行った。

    呆気にとられ、見送ってしまうルミエリカ
    アレ? リンちゃんは何処へ? オシッコ?

    外の通りには、一台の車が停まっていた。
    白い乗用車、その運転席には人がいた、強盗の仲間がいたのだ、逃走を手助けする係が。

    リンは車の後部座席に勝手に乗り込んでいく。
    後部ドアを開けるやいなや、小さなお尻を後部座席シートの奥へ滑らせるように座った。
    奥の車道側は、運転席の真後ろだ。

    いきなり見知らぬ女の子が車に乗り込んできたのものだから、運転席の男はひどく慌てた。

    「な、なんだ! おまえは?」
     首を大きく捻り、後ろの珍客を確かめようとする男。

    あのねえ、中のおじさんから伝言ですゥ

    リンが 内緒話をするように 男の耳元へ手を添えて口を寄せてきたので、
    男もつられて耳を貸してしまう。

    ―― キャン ―― 

    犬の鳴き声のような甲高い声が銀行内にいたルミ達にも聞こえた。

    通称『ソニックボイス』、これは誰か測ったのか分からないが、二万ヘルツの声を発して、
    その衝撃波で 相手の鼓膜を突き破るという リン必殺技なのだ。

    餌食となった運転席の男は、目と口を大きく開き埴輪みたいな顔をして気絶していた。

    そして、何事も無かったかのようにリンは、外から銀行へと悠々と戻ってきた。

    リンを出迎え、我にかえるルミ

    (リンちゃん強いよ! 恐ろしく強い! だって相手は刃物を持った強盗だよ。

    わたしと同じ中学一年生の女の子。背丈だってわたしとそうたいして変わんないし、
    胸だってペッタラコだ。

    それなのに平然と強盗を倒した、しかも外にいた仲間までやっつけた。

    自分なら倒せる相手だと分かってやったいた。

    単純にキレた暴れん坊じゃない。

    リンちゃんって、本当に何者なの?)

    強盗退治の主役は、行内の人達から賞賛の声を浴び、照れ笑いしきりであった。

    しばらくして、パトカーのヒステリックなサイレン音が近づいてきた。

    これを聞いてエリカリンに促す。
    リン、早く行きなさい。あんた、警察と関わるのイヤなんでしょう

     そう言って、エリカリンを気遣った。
     リンには補導歴があって、鑑別所のお世話になったりと、色々ワケ有りなのだ。

    リンはその言葉に素直に従いルミ達と別れた。

     

    やって来た警官達が 床に転がっていた強盗犯を引き起こし、手錠を掛け、
    銀行員達に事件の状況の聞き取りを始めた。

    その場に残っていたルミエリカも、パトカーの中へと連れていかれ、事情を訊かれた。

    乗せられた車は、フォードアのセダンタイプではなく交通事故の現場とかでよく見る
    電光表示板の着いたワンボックスカーだった。

    生まれて初めてパトカーに乗せられたルミは、思ったより中が汚いので驚いた。

    安っぽい座席シートには、泥の乾いた跡があり、彼女はそれを手で払い落としてから座った。

    「君達が強盗を退治したのかな? もうひとり友達がいたんじゃないのかな?」
    スーツ姿の若い刑事が、ふたりにぎこちないが優しく話しかけてきた。

    警察が好きじゃない子なんです。だから帰りました

     ルミの横に座っていたエリカがムスっとした態度で答えた。
    銀色ティアラを冠したポニーテールの少女は、警察相手の質問にも少しも臆することなく、
    長い脚を組み替えてみせた。

    刑事は弱ったなという顔をしながら。
    「これも仕事なんでね、ちょっと話を訊かせてもらうよ。君の名前は?」

    滝沢エリカ

     エリカの大胆な返答にルミはドキリとした。

    エリカさん、それ本名じゃないでしょうよ。いいのか? 相手は警察だよ

    「帰って行った友達の名前は?」

    言いたくありません

    エリカはキッパリと拒否した。腕組みした姿勢から強い意思表示が感じられる。

    それでも刑事は、質問を変えて続ける。
    「帰って行った子は、ひょっとして坂本サキという名前じゃないのかな?」

    さあ、知りません

    警察がリンちゃんの事を知っている! どうして? そんなに有名なのか?

    「そっちのメガネの君は?」

    ルミは黙って首を横に振る。

    「そうかい、別に君達が悪い事した訳じゃないからな……」

     刑事はルミ達の頑な態度から何か察したようだった。

    「じゃあ、話を聞いてくれているだけでいい。
    実は僕が刑事になる前、交番勤務だった頃、
    ある事件があってね」

     若い刑事は物語を話すかのように過去の出来事を話し始めた。

    「チンピラが乱闘騒ぎを起こしていると通報があって、現場へ駆けつけたんだ。
     駅に通じる地下通路、暗い奥へと入って行くと、そこに小学生の女子がいたんだ」

    乱闘現場に女の子が、それって……

     ルミは信じたくはなかったが、リンの事だと直ぐに解った。

    「その子は鉄パイプを握り、無表情にチンピラを殴りつけていた。
    懐中電灯を向けると、照らしだされたその子の顔には、ぽつぽつと赤い血が着いていた。
    返り血を浴びるくらい殴っていたんだ。正直、ぞっとしたよ。

    相手は小学生の女の子なのに、僕は膝が震えた、恥ずかしいけど怖いと思った。

    その子が札付きの問題児『狂犬サキ』と呼ばれている子だと、後になって聞かされた」


    (つづく)
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  • 『コスプレ少女』新装版 193-196頁        ★咽元にギラリと光るナイフを突きつけ

    2017-01-09 15:51
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    そして、ふたりと打解けていくのだが ……
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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                     人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりで、
    京都市に住んでる女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」の

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もある
    ちょっとワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。


        

                         白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは かりん様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       193-196頁目です。

    ―― 危険人物 ――

     週明けの学校はダルい。 重い足取りで登校するルミ、教室の前で立ち止まり、
    深い溜息をついてから扉に手をかける。

    おはよう ……
    かぼそい声を出して中に入るも、クラスの誰からも 挨拶は返ってこない。

     普段、彼女は髪をツインテールなどにしていない、
    地味なおさげだ、リボンも結んでいない。
    コスプレ仲間のエリカ達と遊ぶ時と違って、メガネも赤い下縁タイプではなく、
    黒くて安っぽいやつを掛けている。

    現実の世界、ここではコスプレヤー『本田ルミ』ではなく、未だクラスに馴染めない
    コミュ障の中学生なのだ。

    彼女は 隅っこにある自分の席に着くなり 溶けるように突っ伏した。
    ああ、次の週末が待ち遠しいよ

    先生が来るまでの教室は、ふざけて走りまわる男子や お喋りに夢中の女子で
    喧騒に満ちた空間だが、ルミにとっては 音の無い深海にでも居るような気分だ。

    彼女の心のソナーには、真っ暗で何の反応もなく、もがいても何も掴めない
    そんな世界しか映っていなかった。

    しかし、今の彼女に入学したての頃のような酷い悲壮感はない。
    なぜなら、学校の外では、趣味のコスプレで通じた友達がいるからだ。


    下校時間、今日も苦行のような一日を終えたルミは、そそくさと帰り支度を済ませると
    足早に教室を出た。
    登校時よりは幾分軽い足取りで家路につく。

    スカートのポケットに仕舞ってあるスマホが お気に入りのアニソンメロディを奏でた。

    エリカさんからだ!
     嬉々としてスマホを取り出すルミ

     エリカからメールの着信だった。

    金曜日、買い物に行くから一時に四条(しじょう)駅に集合!

    ……エリカさんらしいメールやな

     滝沢エリカルミより二つ年上の中学三年生、人気ゲーム『ファンタジア学園』
    ヒロイン『エリカ姫』のコスプレイヤーだ。

     キャラコスである黒髪ロングのポニーテールに銀のティアラがトレードマーク、
    キュっと引き締まった細いウエストにスラリと伸びた長い脚は モデル並みの美少女なのだが、お姫様キャラそのまま、自分勝手に振る舞うので、ルミはいつも振り回されているのだ。

    ルミへのメール内容も相手の都合など一切お構いなしの現地集合せよという命令だ。

        ―― ☆ ――

    待ちに待った金曜日、この日は行事予定日の調整で 授業は午前中までなのだ。
    ルミは急いで京阪電車に乗り、エリカが指示した四条駅へ出かけた。

    京都の四条(しじょう)という所は、一般の買い物客だけでなく、修学旅行生や
    海外からの観光客もたくさんやって来る人気スポットだ。

     そんな繁華街を 頭に銀のティアラを輝かせ、颯爽と歩いているセーラー服の少女がいた。

     エリカだ、眩しいくらいの白い夏服に真紅のスカーフがよく映える。

    エリカさん、やっぱりティアラ着けてのコスプレなんですね

    これはアクセサリーよ、アクセサリー!
     そう言って、この自己中なポニーテールの美少女は憚らない。

     そう、エリカは芸能スカウトをされそうなくらいの綺麗な子なのだが、
    ティアラを着けた『エリカ姫』コスのまま、平然と外を出歩く、
    ちょっと残念なところがあるのだ。

    ルミは 街中をコスプレして出歩いたりしない、イベント開場以外では律儀に着替えている。
    今日もTシャツにデニムパンツの普段着だ。

     エリカの左腕には、白銀(しろがね)リン誰にもエリカを取られまいと
    アピールしているかのごとく絡み付いていた。

    リンちゃん、こんにちは。 今日の服装もすごく可愛いよ

    こんにちはルミちゃん。ありがとですゥ~
    甘いアニメ声で挨拶を返すリン

    淡いブルーのベレー帽にノースリーブのワンピース、その小さな肩を
    彼女の柔らかな髪がふわりと包んでいる。上品で可愛らしいコーデだ。

    もちろん、服装だけでなく、彼女から愛くるしい微笑みを向けられたら、
    思わずギュっと抱き締めたくなる、そんな萌え可愛い女の子だ。

     ルミはコミュ障で友達と一緒に買い物をすることなどなかっただけに、
    ふたりと居られることが とても嬉しかった。

    それに、ふたりとも人が羨むような美少女なので、連れて歩くことが
    モテる男の子のように誇らしい気分に浸れた。

     三人はファンシーグッズやアニメショップを廻り、エリカが明日のイベント(同人誌
    即売会)用の小物を買い求めた。

    ちょと、ここのお店を覘いていくですゥ

     リンが語尾を延ばした甘ったるいアニメ声でブランドショップに誘う。
     エリカリンが店に入っていく、次いでルミもおずおずと入っていった。

     ゲームオタクなルミは、買い物といってもだいたいがアニメショップと本屋以外、
    あんまり用がない、自分『ファッション』感覚に自信がないので、無難で地味な
    格好ばかりしている。
     だからブランドショップなど苦手なのだ。

    この服、ルミちゃんに似合いそうですゥ~

    自らコスプレ衣装までも手作りしている萌え系レイヤーの白銀リンが、
    ルミに店内の可愛い服を色々と勧めてくる。

    ルミは手に取るも値札を見て即リリースする。

    服って高いなあ

    そうぼやくルミだが、中古ゲームやムック本には万超えの金額を平気で注ぎこんでいるのだ。

    ルミちゃん、もっと自分を可愛く見せる努力をしないといけませんですゥよ

    ルミはお洒落上手なリンからコーデの手ほどきを受けるのだが、
    明るい色合いの服は何だか気恥ずかしく、ダーク系をセレクトすると
    リンから地味過ぎだと諭されてしまうのだった。

    服選びってメンドクサイ ……

    ええっ! お洋服を選ぶのって楽しいじゃないですゥかあ
     リンは両手で頬を挟み、信じられないっといった表情でルミを見る。

    リンから真顔でそう指摘されたルミ、女子力の無さを露呈してしまった。
    まだまだコミュ障からのリハビリが必要なようだ。


    ショップを出て直ぐにリンが用事を思い出し、銀行に寄ると言い出した。
    涼みがてらルミ達も一緒に行くことにした。

    閉店間際の銀行、客はそれほどなく空いていた。
    冷房のよく効いた待合所の黒いソファーにルミエリカは腰を降ろす。
    ひんやりとしたシートがお尻に心地よい。

    エリカは短いスカートから伸びた脚を優雅に組んでいる、その膝上が白く眩しい。

    リンはカウンターテーブルの方で、そこの用紙に何やら記入している、
    大方、通販か口座の手続きでもしているのだろう。

    そこへ一人のが入ってきた。

    夏も近く外は半袖で歩く人も多いくらい暑い。
    それなのにその男は花粉症用の大きなマスク
    をして、黒いサングラスを掛けている。

    おまけに黒っぽいジャケットを着込み、その懐に右手を突っ込だまま、
    カウンターへとツカツカと近づいていった。

    は書きものをしているリンの後ろにつくや、突然、リンを背後から首絞めにすると、
    彼女の咽元にギラリと光るナイフを突きつけ、フロア中に響く声で叫んだ。

    動くな! 静かにしろ!

     大理石の銀行内が一瞬静まりかえる。

    金を出せ!

    突然の強盗に行内は一変して騒然となった。
    カウンター周りにいた客は悲鳴を上げて一斉
    に逃げ散り、腰を抜かした中年の女性が
    四つん這いになってルミ達の座っているソファーまで逃げてきた。

    (うそでしょう!)
     ルミは心の中でそう叫びながらも恐怖で声にはならず、ソファーの端っこを
    ギュっと掴んでいるだけだった。

    強盗犯の男は、辺りを警戒してか、しきりに体を左右に動かし、握り締めたナイフで
    周りを威嚇している。

    人質となったリンは、後ろから首絞めされ、の左腕にぶら下がっていた。
    小柄な彼女の体重は軽いので、が動く度にプランプランと体を左右に揺らされ、
    首吊りのような状態になっていた。

    (ひえーっ、大丈夫なのかリンちゃん!)
     この悲惨な光景に、ルミは心臓が破裂しそうなくらいドキドキした。

     そんな状況の中、エリカがソファーからすくっと立ち上がると、
    に向かって吠えるように訴えた。

    その子を放しなさいよ!
     よく通る高い声、真っ直ぐ射抜くような鋭い視線、勇敢な少女強盗犯を睨みつける。

    うるせー、動くな!

    「放しなさいってば!」

    動くなって言ってるだろ! てめえ、殺されたいのか!

    ルミは見ていて血の気が引いた。

    (ええーっ、エリカさん危ないよ、相手は銀行強盗だよ、
       刃物持ってんだよ!)


    (つづく)
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