『コスプレ少女』新装版 193-196頁        ★咽元にギラリと光るナイフを突きつけ
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『コスプレ少女』新装版 193-196頁        ★咽元にギラリと光るナイフを突きつけ

2017-01-09 15:51
    ちょっと心に傷あるコスプレ少女たちの物語。
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    【連載小説 コスプレ少女】 今までのあらすじ

    コミュ障で友達が出来なかった中学生のルミは、イベントで年上の美少女レイヤー滝沢エリカや同じ歳で萌え可愛い人気レイヤーの白銀(しろがね)リンと出会う。
    そして、ふたりと打解けていくのだが ……
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    07~09年に商業誌の新人賞に応募も落選した「コスプレ少女ルミ」シリーズと「ソニックボイス」の作品を
    再編集して、書き直したものです。先に当ブログに掲載していましたが、ルミの一人称形式を改め、
    設定(携帯⇒スマホ)修正、加筆しての新装版です。

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    【登場人物紹介】                
                     人公の本田ルミ
    この春、中学生になったばっかりで、
    京都市に住んでる女の子。
    ゲームオタクでプチ引籠り、コスプレをきっかけに
    コミュ障からリハビリ中。
     ツインテールのメガネっ娘のゲームキャラ
    賢者のルミのコスプレイヤー。   



    イメージイラストは はじめとみかん様提供。

                       

                         滝沢エリカ
    ポニーテールにティアラを着けた「エリカ姫」の

    コスプレイヤーで中学三年生。
    イジメによる背中に酷い火傷がコンプレックス。リストカットした過去もある
    ちょっとワケありの美少女。
    ルミをダンス動画作りに誘う。


        

                         白銀(しろがね)リン
    ルミがイベント会場で出会ったベレー帽が
    トレードマークの萌え可愛い女の子。
    本名は坂本サキ

    天使のリンをイメージしたオリジナルコスプレイヤー。
    実は「狂犬サキ」の異名をもつ、街の不良からも一目置かれるほどの喧嘩猛者だった。

     
    イメージイラストは かりん様提供。

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     当ブログ内のイラストの著作権者は、各絵師様に有りますので転載等はご遠慮願います。

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       193-196頁目です。

    ―― 危険人物 ――

     週明けの学校はダルい。 重い足取りで登校するルミ、教室の前で立ち止まり、
    深い溜息をついてから扉に手をかける。

    おはよう ……
    かぼそい声を出して中に入るも、クラスの誰からも 挨拶は返ってこない。

     普段、彼女は髪をツインテールなどにしていない、
    地味なおさげだ、リボンも結んでいない。
    コスプレ仲間のエリカ達と遊ぶ時と違って、メガネも赤い下縁タイプではなく、
    黒くて安っぽいやつを掛けている。

    現実の世界、ここではコスプレヤー『本田ルミ』ではなく、未だクラスに馴染めない
    コミュ障の中学生なのだ。

    彼女は 隅っこにある自分の席に着くなり 溶けるように突っ伏した。
    ああ、次の週末が待ち遠しいよ

    先生が来るまでの教室は、ふざけて走りまわる男子や お喋りに夢中の女子で
    喧騒に満ちた空間だが、ルミにとっては 音の無い深海にでも居るような気分だ。

    彼女の心のソナーには、真っ暗で何の反応もなく、もがいても何も掴めない
    そんな世界しか映っていなかった。

    しかし、今の彼女に入学したての頃のような酷い悲壮感はない。
    なぜなら、学校の外では、趣味のコスプレで通じた友達がいるからだ。


    下校時間、今日も苦行のような一日を終えたルミは、そそくさと帰り支度を済ませると
    足早に教室を出た。
    登校時よりは幾分軽い足取りで家路につく。

    スカートのポケットに仕舞ってあるスマホが お気に入りのアニソンメロディを奏でた。

    エリカさんからだ!
     嬉々としてスマホを取り出すルミ

     エリカからメールの着信だった。

    金曜日、買い物に行くから一時に四条(しじょう)駅に集合!

    ……エリカさんらしいメールやな

     滝沢エリカルミより二つ年上の中学三年生、人気ゲーム『ファンタジア学園』
    ヒロイン『エリカ姫』のコスプレイヤーだ。

     キャラコスである黒髪ロングのポニーテールに銀のティアラがトレードマーク、
    キュっと引き締まった細いウエストにスラリと伸びた長い脚は モデル並みの美少女なのだが、お姫様キャラそのまま、自分勝手に振る舞うので、ルミはいつも振り回されているのだ。

    ルミへのメール内容も相手の都合など一切お構いなしの現地集合せよという命令だ。

        ―― ☆ ――

    待ちに待った金曜日、この日は行事予定日の調整で 授業は午前中までなのだ。
    ルミは急いで京阪電車に乗り、エリカが指示した四条駅へ出かけた。

    京都の四条(しじょう)という所は、一般の買い物客だけでなく、修学旅行生や
    海外からの観光客もたくさんやって来る人気スポットだ。

     そんな繁華街を 頭に銀のティアラを輝かせ、颯爽と歩いているセーラー服の少女がいた。

     エリカだ、眩しいくらいの白い夏服に真紅のスカーフがよく映える。

    エリカさん、やっぱりティアラ着けてのコスプレなんですね

    これはアクセサリーよ、アクセサリー!
     そう言って、この自己中なポニーテールの美少女は憚らない。

     そう、エリカは芸能スカウトをされそうなくらいの綺麗な子なのだが、
    ティアラを着けた『エリカ姫』コスのまま、平然と外を出歩く、
    ちょっと残念なところがあるのだ。

    ルミは 街中をコスプレして出歩いたりしない、イベント開場以外では律儀に着替えている。
    今日もTシャツにデニムパンツの普段着だ。

     エリカの左腕には、白銀(しろがね)リン誰にもエリカを取られまいと
    アピールしているかのごとく絡み付いていた。

    リンちゃん、こんにちは。 今日の服装もすごく可愛いよ

    こんにちはルミちゃん。ありがとですゥ~
    甘いアニメ声で挨拶を返すリン

    淡いブルーのベレー帽にノースリーブのワンピース、その小さな肩を
    彼女の柔らかな髪がふわりと包んでいる。上品で可愛らしいコーデだ。

    もちろん、服装だけでなく、彼女から愛くるしい微笑みを向けられたら、
    思わずギュっと抱き締めたくなる、そんな萌え可愛い女の子だ。

     ルミはコミュ障で友達と一緒に買い物をすることなどなかっただけに、
    ふたりと居られることが とても嬉しかった。

    それに、ふたりとも人が羨むような美少女なので、連れて歩くことが
    モテる男の子のように誇らしい気分に浸れた。

     三人はファンシーグッズやアニメショップを廻り、エリカが明日のイベント(同人誌
    即売会)用の小物を買い求めた。

    ちょと、ここのお店を覘いていくですゥ

     リンが語尾を延ばした甘ったるいアニメ声でブランドショップに誘う。
     エリカリンが店に入っていく、次いでルミもおずおずと入っていった。

     ゲームオタクなルミは、買い物といってもだいたいがアニメショップと本屋以外、
    あんまり用がない、自分『ファッション』感覚に自信がないので、無難で地味な
    格好ばかりしている。
     だからブランドショップなど苦手なのだ。

    この服、ルミちゃんに似合いそうですゥ~

    自らコスプレ衣装までも手作りしている萌え系レイヤーの白銀リンが、
    ルミに店内の可愛い服を色々と勧めてくる。

    ルミは手に取るも値札を見て即リリースする。

    服って高いなあ

    そうぼやくルミだが、中古ゲームやムック本には万超えの金額を平気で注ぎこんでいるのだ。

    ルミちゃん、もっと自分を可愛く見せる努力をしないといけませんですゥよ

    ルミはお洒落上手なリンからコーデの手ほどきを受けるのだが、
    明るい色合いの服は何だか気恥ずかしく、ダーク系をセレクトすると
    リンから地味過ぎだと諭されてしまうのだった。

    服選びってメンドクサイ ……

    ええっ! お洋服を選ぶのって楽しいじゃないですゥかあ
     リンは両手で頬を挟み、信じられないっといった表情でルミを見る。

    リンから真顔でそう指摘されたルミ、女子力の無さを露呈してしまった。
    まだまだコミュ障からのリハビリが必要なようだ。


    ショップを出て直ぐにリンが用事を思い出し、銀行に寄ると言い出した。
    涼みがてらルミ達も一緒に行くことにした。

    閉店間際の銀行、客はそれほどなく空いていた。
    冷房のよく効いた待合所の黒いソファーにルミエリカは腰を降ろす。
    ひんやりとしたシートがお尻に心地よい。

    エリカは短いスカートから伸びた脚を優雅に組んでいる、その膝上が白く眩しい。

    リンはカウンターテーブルの方で、そこの用紙に何やら記入している、
    大方、通販か口座の手続きでもしているのだろう。

    そこへ一人のが入ってきた。

    夏も近く外は半袖で歩く人も多いくらい暑い。
    それなのにその男は花粉症用の大きなマスク
    をして、黒いサングラスを掛けている。

    おまけに黒っぽいジャケットを着込み、その懐に右手を突っ込だまま、
    カウンターへとツカツカと近づいていった。

    は書きものをしているリンの後ろにつくや、突然、リンを背後から首絞めにすると、
    彼女の咽元にギラリと光るナイフを突きつけ、フロア中に響く声で叫んだ。

    動くな! 静かにしろ!

     大理石の銀行内が一瞬静まりかえる。

    金を出せ!

    突然の強盗に行内は一変して騒然となった。
    カウンター周りにいた客は悲鳴を上げて一斉
    に逃げ散り、腰を抜かした中年の女性が
    四つん這いになってルミ達の座っているソファーまで逃げてきた。

    (うそでしょう!)
     ルミは心の中でそう叫びながらも恐怖で声にはならず、ソファーの端っこを
    ギュっと掴んでいるだけだった。

    強盗犯の男は、辺りを警戒してか、しきりに体を左右に動かし、握り締めたナイフで
    周りを威嚇している。

    人質となったリンは、後ろから首絞めされ、の左腕にぶら下がっていた。
    小柄な彼女の体重は軽いので、が動く度にプランプランと体を左右に揺らされ、
    首吊りのような状態になっていた。

    (ひえーっ、大丈夫なのかリンちゃん!)
     この悲惨な光景に、ルミは心臓が破裂しそうなくらいドキドキした。

     そんな状況の中、エリカがソファーからすくっと立ち上がると、
    に向かって吠えるように訴えた。

    その子を放しなさいよ!
     よく通る高い声、真っ直ぐ射抜くような鋭い視線、勇敢な少女強盗犯を睨みつける。

    うるせー、動くな!

    「放しなさいってば!」

    動くなって言ってるだろ! てめえ、殺されたいのか!

    ルミは見ていて血の気が引いた。

    (ええーっ、エリカさん危ないよ、相手は銀行強盗だよ、
       刃物持ってんだよ!)


    (つづく)
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