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記事 13件
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第22回】

    2013-12-31 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     僕は、いじめられていたのだ。
     どうしていじめられていたのかも想像がつく。僕が勇者だったからだ。子供というのは残酷なもので、自分と違うものや特に目をひくものを、面白がっていたぶる事がある。本人たちには悪いことをしているという自覚がない場合もある。悪いとわかっているけど、やってしまうこともある。そんな中、大して腕っぷしが強いわけでもないのに、生まれた時から「勇者」という肩書きを持っていた僕は格好の餌食だったろう。いじめられる要素がありすぎた。
     アダンにやられてショックで死んだ後、さらに頭に石入りの泥だんごをぶつけられて意識が朦朧としている。踏んだり蹴ったりだ。はっきり痛みも感じる。頭の中がぐわんぐわん揺れる。痛い。なんで走馬灯なのに痛いのか。話が違うじゃないですか。聞いてない。聞いてない。
     草原に体を横たえて身悶える僕の前に、誰かが、現れた。
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第21回】

    2013-12-28 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

    6章 あの木の下まで競争な

     
     どこだろう。ここは。
     目の前に広がっていたのは、草原だった。
     大きな木が一本だけ生えている。遠くの方から、子供たちの声が聞こえる。
     これは夢か。死後の世界には川があると聞いていたけど、草原もあるのか。
     それともここはエデンなのか。
     僕が心のどこかで帰りたいと願っていたエデンなのだろうか。
     エデンとアダンって語感が似てるよね。
     アダンとアダンの戦士たち。すみません言ってみただけです。
     せっかくアダンとの戦闘では生き残ったのにショックで死んでしまいました。まったくいいところなしの僕ですが、それも仕方がないのかもしれません。僕は勇者にはふさわしくなかったようです。今まで腐った死体だの人ゴミだのさんざん言ってきました。あれはあくまで比喩で言ってたつもりだったんですが、僕はどうやらそのまんまの人物だったよう
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第20回】

    2013-12-26 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

    「バルトロ、リュシカ、下がってろ。こいつは俺一人でやる」
     アダンがそう言った。
    「勇者ともあろうものが、三対一で戦うわけにはいかないだろう。下がれ」
     アダンの言葉に頷いて、バルトロとリュシカが壁際まで下がる。
     しめた。やっぱりこいつくそ真面目だ。一対一なら勝てるかもしれない。何しろこっちにはドレアさんから譲り受けた先祖代々伝わる勇者の証、ヒロイックブレイドがある。今まで使っていた銅の剣とは段違いの攻撃力、そして剣に乗った様々な人々の思いが、きっと僕を強くする。そうだ、僕がやらなきゃ。負けられない。負けるわけにはいかないんだ。
     アダンが剣を抜き、僕の方をまっすぐ見据えて構える。
     そんなアダンの様子を見て、僕もヒロイックブレイドを握りしめ、息を飲む。
     お前はニセモノだ。僕がホンモノの勇者だ。
    「否定する奴は、説得しちまえ!」
     そうだよなヨ
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第19回】

    2013-12-24 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     階段の上も、燃えさかる灼熱のフロアが続いていた。ゆっくり流れ出す溶岩の熱気が、僕の胸の中をそのまま映しているように思えた。絶対に勝つ。
     そのフロアには、三人の冒険者がいた。立派な鎧を身に着けた筋骨隆々の男、真っ白なローブを着た神々しい女性、そして。僕よりも勇者らしい出で立ちの、ニセ勇者。
    「お前が勇者だな」
     歳は僕と同じくらいだろうか。
     笑顔が素敵。かっこいい。甘い声。凛々しい。命をかけたっていいと思える。
     今までに聞いたニセ勇者の噂がひとつひとつ頭の中に浮かんで消える。僕とはまったく違うタイプの人間であることは一瞬で見てとれた。まだニセ勇者は一言しかしゃべっていないというのに、その雰囲気やたたずまいから、僕は「噂通りの人物だ」と直感的に思った。
    「俺はアダン。俺とお前、どっちが勇者にふさわしいか勝負しよう」
     名乗ったと思ったら二言めで
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第18回】

    2013-12-21 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     灼熱のフロアで出会った男賢者ニーチェは、賢者なのにギャンブルが辞められず、人生が破滅に向かっている打たれ弱いエリートだった。「今月も生活費がなくなる、頼むお金を貸してくれ」と捨てられた子犬のような目でぺこぺこ頭を下げるニーチェには「めをさませ」という呪文が心に響いた。目を覚ませという言葉は「寝坊だ!」という時にも使うが「しっかりしろ!」という時にも使う。どちらも夢を見ているのだ。
     ニーチェと同じフロアにぱふぱふ娘のポーラがいたのだが、まずぱふぱふ娘って何だよ。そこから驚きが隠せなかった。どんな仕事なのかはご想像にお任せするし多分ご想像通りで合っているのだが、このポーラという人、ギャンブラーを心から毛嫌いしている女性で「ギャンブルで全財産をスッたバカな人の気持ちってどんなの?」とニーチェに話しかけていた。なんでこんな相性最悪の二人が同じ階にいるの
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第17回】

    2013-12-19 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

    「おい! おいおいおい! 落ち着けオマエ! いくらやってもムダだぜ!」
     心臓が破裂しそうなほど全力で走っても、フェイントをかけても、ヨコリンがものすごいスピードであっさり僕に追いついて行く手を阻む。酒場の入口までほんの2メートルほどしかないのに、今はその2メートルが気が遠くなるほどの距離に感じた。頼む出してくれ。ここから出してくれ。もういいだろ。僕はちゃんと勧誘したんだ。なのになんでこんな目に。どうして僕がこんな目に。変なゴブリンにまとわりつかれて、酒場はどんどん増築されて、いつまで経っても終わらない。旅立てない。負のスパイラル、無限ループ。その上今度は僕よりも勇者らしいニセモノの勇者だって? はは、勘弁してよ。厄日か。大殺界か。悪い夢でも見ているような気分だった。夢なら覚めてよお願いだから。あれ? 雨かな? ああ……すごい雨だな……ちょっとこっ
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第16回】

    2013-12-17 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     最初にその噂を聞いたのは、リリカという女遊び人からだった。リリカは僕の顔や体をじろじろ舐め回すように見たあと、こんなことを言ったのだ。
    「最近、ニセモノの勇者が出るんだって。あなたはホンモノ?」
     僕は「もちろんだよ」という呪文を即答した。この時は本当に心から「もちろんだよ」と言えたので、リリカには無事信じてもらえたようだった。
     たくさんの冒険者を勧誘してきて気づいたことだが、呪文の威力は思いの強さに比例して大きくなるらしい。相手の目を見据えて真剣に言う「愛してる」と、鼻くそをほじりながら言う「愛してる」では伝わる気持ちがまったく違うのと同じことだ。上っ面の言葉では相手の心に響かない。心を込めて言う必要がある。「仕事のことで頭がいっぱいで、ずっと空返事をしていたら嫁に逃げられた」と言っていた冒険者がどこかにいたが、つまりそういうことだ。空っぽの
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第15回】

    2013-12-14 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

    5章 震えているのはあなたのせいだ
     

     六階に続く階段を上がると雪国であった。
     何を言っているかわからないと思いますが、僕にも何が起こったかわからなかった。あわてて階段を下りて五階に戻ってみる。すすけた壁にテーブル、壁の脇の酒ダル。間違いなく今まで僕がいた酒場だ。ああ、そうか疲れてるんだ。ここまでたくさんの人と話して、五階のジョンスとは壮絶な戦いをくり広げて、一気に疲れが吹き出して、幻覚でも見えたのかもしれない。そうに違いない。僕はうんうんと頷きながら、もう一度六階に続く階段を上がった。
     やはり雪国であった。
     幻覚じゃないのかよ! なぜだ、なぜ酒場の中に雪国が!
     壁面も床も氷でできている。触ってみると確かに冷たい、ホンモノの氷だ。間違いない。それに寒い。待て待て待て待て。なんでなんでなんでなんで? 僕は奥歯をガチガチ鳴らして凍えながら、
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第14回】

    2013-12-12 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

     五階にいたのは、たったひとりだった。
     外見からしておそらく武闘家だろう。僕は少し自信のついてきた呪文の数々を頭の中に浮かべながら、ゆっくり冒険者に近づいていった。さあ、コイツには、何が効く!
     
     ジョンスが あらわれた!
     ジョンスが はなしかけてきた!
    「おれは ジョンス。つよいやつとしか たびには でない」
    「ごたくは いらん。かかってこい!」
     ジョンスは ゆっくり かまえを とった!
     
     え? いや、かかってこいって?
     
     ジョンスの こうげき!
     ゆうしゃに 23のダメージ!
     
     ぎゃあああああああああ! いきなり殴られた! 折れた! 絶対折れた!
     ちょっ、なっ、えっ何? うぐえ。おえええ。お腹痛いお腹痛いお腹痛い。
     
     ジョンスの じゅもん!
    「どうした そんなものか」
     ゆうしゃに 13のダメージ!
     
     いきなり殴っ
  • 【RPG小説】あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね【第13回】

    2013-12-10 00:00  
    【 はじめから よむ (第1回へ) 】

    「世界一の酒場テーマパークを作りたいの!」
     一階カウンター前で、なぜかドレアさんは泣きっ面の僕に対して夢を語り始めた。
     なんですか酒場テーマパークって。ドレアさんは僕が、酒場が増築されたことに感動して泣いているとでも思ってるんだろうか。やっぱりこの人もなんかおかしい。ネジが二、三本吹っ飛んでる気がする。
    「まだまだ増築するわよ!」
     するのか。いや、増築はしてくれていいんですよ。いいんですけど、日を改めてというわけにはいきませんでしょうか。無理ですかね。ですよね。
     壁はこんな色にして、こういうインテリアを揃えて、配置はこんな感じでと、あれこれ青写真を描くドレアさんに僕なんかが「増築をやめてくれませんか」などと言えるはずもなく、僕は精一杯の作り笑顔をしながらカウンター前を離れた。半泣きだったからきっと般若みたいな顔だったと思う。ダメだ帰ろう。