• 30代以上のめんどくさい音楽ファンのために「踊ろうマチルダ」のダイマをする

    2017-09-03 06:45115
    こないだ夏フェス行ってきたんすよ。SWEET LOVE SHOWERってやつ。山中湖のロケーションが好きで毎年行ってるんですけど、今年も楽しかったんですけど、僕ももう31歳なわけで。もうすぐ32歳なわけで。やっぱだんだん最近の音楽がわかんなくなって、フェス行っても「天気よくてビールうまくて楽しいな。あと音楽とか流れるし」って感じになってくるわけですよ。楽しんでるメインがピクニックになってる。

    SLSは新旧のいいアーティストが出るいいフェスなんです。今年は大トリがゆずで、何を隠そう中学のときにゆずを聴いて音楽を聴き始めた僕的には初めて生ゆずを見れて感動したわけです。でも僕がファンだった時のゆずは「もうすぐ30歳」とかいう曲を歌ってたころのゆずなわけで、わしもう30過ぎとるがな、みたいな。ゆず40歳になっとるがな、みたいな。そりゃフェスのバンドたちに「まだ踊れるかー!」とかアジられても「腰痛いっす……」ってなるわ、みたいな感じで切なくなったわけです。

    これは僕のノリが悪くなったというより腰が悪くなっただけなのでオドループしてる若者たちには怒らないでいただきたいのだけど、そんなベガ立ちでフェス見るマンの私が近年愛しているミュージシャンの1人があんまりフェスとか出ない「踊ろうマチルダ」なのです。



    5秒くらい聴いてもらえればわかるけど、声がもうド渋い。「マチルダ」の響きで女性アーティストを連想する人もいるかもしれないけど「踊ろう」とシャルウィーしていることからわかるようにおじさんです。基本弾き語りのソロ。元ネタはオーストラリア民謡の「Waltzing Matilda」。

    表題曲(?)の歌詞がいい。日本とも外国とも取れる世界観で10代の労働とか失恋とかの物語を歌ってる。せっかく希望を抱いて都会に出てきたのに、こんな日々だとマチルダと手を取り合っていないと道に迷ってしまうから「踊ろうマチルダ」というわけ。「目的地までは程遠い」からとマチルダを誘ったのに最後は「目的地なんてどこにも無いさ」と着地する。いいよね。

    ちなみに元ネタの「ワルチング・マチルダ」も切ない放浪者の歌で、寂しいから毎日抱きしめてる毛布に「マチルダ」って名付ける話。今日はこの話だけでも覚えて帰ってください。



    僕がマチルダで1番好きな曲。理由は「見ようと思って見た空は空じゃない」「行き先なら風が決める じゃあその風すら道に迷ってしまった時は誰が風向きを教えるんだろうか?」とか僕の心のやらかい場所を締め付けるフレーズがギュンギュンだから。

    1番好きな曲と言ったけどそのへんは季節によって変わります。そういう歌なんだと思ってる。



    唯一出てるライブDVDのラスト曲(この動画とは違う)。「もう少しだけ君といたいと言っちゃ駄目かい もう少しだけ夢見てたいと言っちゃ駄目かい」って歌を最後に歌うのが最後っぽくてよい。別にそういうエビバディ的な歌じゃなくてむしろ微妙な関係の恋人との1on1な感情を歌った真逆の歌なんだけどフェスで「踊れー!」って言われると「今は大丈夫っす……」って冷めちゃうひねくれおじさん的にはそういうとこも好きです。「落ち着かないならシガレットに火をつけてやるよ ついでに冷めた君の冷めたハートにも火をつけてやるよ」って言われると「つけてー!」って言います僕は。



    そのライブDVDの一部が紹介されてる動画。ギター、ウッドベース、アコーディオン、フィドルっていう絶妙な編成がよい。いいお客さんとメンバーに囲まれてマチルダがめっちゃノってるのでみんなギネス飲みながらこのDVD見てほしい。



    マリッジブルーの逆の歌。いい歌なので自分の配信とかでよく流してたら「オイラと結婚してくれ」を「ゴリラと結婚してくれ」に空耳した皆さんが喜んで「ゴリ婚」とか言い出した曲です。この場で全員踊ろうマチルダに謝罪してください。

    これはマチルダが知り合いの結婚式に送った映像らしい。全体的に酔っぱらっててめっちゃピースフルでいい。楽しそうな人たちを見るのが好きです。


    いかがでしたか?
    そんな踊ろうマチルダの7年ぶりの新譜「新しい夜明け」が9月20日に発売されます! これは今すぐ買わないとですね!!!


    などとGoogleの検索結果で3番目くらいに出てくるクソアフィサイトみたいなまとめでこのダイマを終わります。「踊ろう」と言われると素直に踊れない、そんな人に「踊ろうマチルダ」を聴いてほしい。なんて正直に言うのはダサいし恥ずかしいので。
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  • 将棋界の藤井フィーバーについて藤井ファンが今こそ大声で伝えたいこと

    2017-06-27 01:294448
    ここ数年、会う人全員に「将棋おもしれーんすよ」「それ将棋で言うと矢倉みたいなもんですねwwwww」などと言い続けてそのたびに「ふーん」という大変好意的な反応をいただいてすっかり心が穴熊と化した僕ですが、最近僕が何も言わなくても将棋の話を振ってもらえるようになりました。藤井聡太とかいう将棋のやべーやつが将棋界に降臨したからです。

    みんなは僕に言います。「藤井くんっていうのがすごいんでしょ」「将棋の時代きたね」と。だから僕は「そうなんすよ!藤井くんは奨励会時代からめちゃくちゃ注目されてて小学生のころからプロも解けなかった詰将棋を解いたりしててー!」とここぞとばかりに早口で語り始めて、とはなってません。斜め下を見ながら「うん……」とエロ本をお母さんに見つかったときの中学生のようなテンションでつぶやくにとどまっています。なぜか。

    それは藤井くんが想像以上に強くて「やりすぎだろ……」とちょっと引いてるのもあるけど、それ以上に僕にとって「将棋の藤井」といえば藤井てんてーのことだという思いがまだ強いからです。



    「てんてー」こと藤井猛九段

    藤井猛九段は将棋ファンなら知らない人はいないすごい棋士で、めちゃくちゃ優勢になってからとんでもないポカをして負けることなどから「終盤のファンタジスタ」「てんてー」の異名を持つ棋士です。終始ニヤニヤしながらおもしろいことをつぶやき続けるシュールな解説も人気で、終盤になると「これは大体詰みです、たぶん」などとたちまち曖昧になる様子はプロ棋士とは思えないほどキュートで、よく「終盤は藤井が聞け」などと応援のコメントが飛び交うほどファンに愛されています。今、褒めようと思ったのに完全にお伝えするエピソードを間違えたことに気付きました。

    もちろんガチの実績もあります。代表的なのは名人と並ぶ棋界最高のタイトル「竜王」を3連覇したこと。それもめちゃくちゃ脂がのってる時期の谷川、羽生といった怪物をぶっ倒しての竜王3期在位です。サッカーでいうとレアルやバルサを倒してガンバ大阪が3年連続世界一になるみたいなもんです。ちょっとまた無意識にプチdisが入った気もしますがそれくらいすごい棋士だということです(余談ですがてんてーの「羽生さんと指すときは『なんか強いオッサン』くらいに思うといい」という言葉は深浦九段の「羽生さんと殴り合いの喧嘩をしたら僕が勝つ」と並ぶ将棋界大名言だと思います)。

    藤井てんてーは終盤は確かにアレですが、序盤に関してはとんでもない天才で、例えば人類代表を1人選べと言われれば大体が「羽生さん」と言いますが、将棋を「序盤」「中盤」「終盤」に分けてオールスターを選べと言われたら「序盤」はあの羽生さんを凌いでてんてーが選ばれるでしょう(僕調べ)。てんてーはマジで将棋に革命を起こす序盤戦法の数々を産み出しまくっていて全部震えるほどかっこいいのですが、特に竜王獲得の原動力となった「藤井システム」はやばいです。

    僕は将棋の棋力自体はゴミなので一番かっこいい部分だけお伝えしますが、プロ将棋で「居飛車穴熊」という作戦がめちゃくちゃ強いとされた時期がありました。王様をめちゃくちゃ固めてからゆっくり攻める戦い方で、武士みたいな棋士しかいないころは「穴熊なんか指すやつはダセー」と言われてたのですが、空気の読めない最近の若者棋士がプロになってくると「ダセーとかカンケーねーし」などと即物的なことを言って勝ちまくるので将棋界に空前の居飛車穴熊ブームが訪れました。もちろん棋理的にはつえーのでダセーとかカンケーねーのですが、「同じような将棋ばっかりでちゅまんない」というエンタメ的な視点で悲しむファンもいたと思います。

    一方、藤井てんてーは生粋の振り飛車党でした。振り飛車党というのは最初のほうで絶対飛車を逆に動かしてから将棋をしないと死ぬ一族のことで、その振り飛車こそまさに居飛車穴熊の格好の餌食でした。現在のプロ将棋で圧倒的に振り飛車党が少ないのもこのへんが関係しているみたいです。

    そんな流れの中で「絶対振り飛車で勝つ」と頑固な鰻屋の親父みたいなことを言い出したのが藤井てんてーです。そして伝説の戦法「藤井システム」が生まれます(正確な流れはちょっと違うのでWikipediaとかを読んでください。僕はこれを読むだけで泣けるレベルの感動的読み物です)。

    居飛車穴熊絶対殺すマンとしての「藤井システム」の最もすごいところは将棋の常識を真正面からぶっ壊したところです。例えば将棋には「居玉は避けよ」という格言があります。「アホみたいに攻めることばっか考えないでまずはちゃんと王様を守るんだよ」という基礎中の基礎「囲い」の概念を伝えたもので、穴熊などはまさにその究極系と言えます。しかし。

    「藤井システム」とは「居玉のままいきなり攻めて穴熊ができる前にぶっ潰す」という将棋の根本的な考え方を覆す革命でした。てんてーはこの藤井システムで谷川竜王から4-0のストレートで竜王のタイトルを奪い、将棋界にてんてー旋風を巻き起こしたのです。

    この「藤井システム」はそのあまりの独創性と緻密さから「藤井にしか指せない」とまで言われた戦法でした。ただそれだと他の棋士も負けて困るので死ぬほど対策をされて徐々に表舞台から姿を消していくことになります。かつて独創的な戦法を生みまくった舛田幸三実力制四代名人の「新手一生」という言葉が、研究のスピードの速い現代では「新手一勝」になってしまったというのは有名なお話です。

    これが僕の伝えたい「劇場版 藤井システム」の全てですが、ちょっとだけ後日談があります。根強いファンを抱えつつもタイトルなどの第一線からは少し退いていた藤井てんてーは2016年の銀河戦というテレビ対局トーナメントで突然藤井システムを連続で採用。まさかの優勝を果たして多くの藤井ファンが「藤井銀河!」「藤井ギャラクシー!」と狂喜乱舞しました。

    そして2017年の3月に行われたニコ生の非公式戦「獅子王戦」で、羽生三冠が藤井聡太四段を相手に「藤井システム」を採用。間接的に「藤井VS藤井」の対局を実現させ、見事に若いほうの藤井くんを撃破してみせました。

    非公式戦なので今話題の藤井くんの連勝記録には全然カンケーねーのですが、藤井ファンはこっそり「まだまだ『将棋界の藤井』の座はお前には渡さねーぜ」と溜飲を下げたりしたのです。当の藤井てんてー本人は「藤井くんとは負けるからやりたくない」とか言ってますが、将棋界にはすごい藤井が2人もいるんだ、ということをこのブームで将棋に興味を持った人にちょっとでも覚えてもらえればてんてーファンとしては嬉しいです。

    真の「藤井VS藤井」対決が実現する日も楽しみにしています
  • 羽生善治とかいう鬼みたいな将棋の天才と木村一基という愛すべき将棋の強いおじさんの話

    2016-09-28 01:393571
    お疲れ様です。大井です。今日は生まれて初めて将棋の王位戦というタイトル戦の現地大盤解説を見てきて、酒も飲んできて、今、家のドアを開けた瞬間に「んもおおおおおおお!」と大きい声を出した勢いでこのブログを書いています。王位戦を見てきた大井です。


    マジでほしかった木村八段の「おうい色紙」

    今回は羽生善治という将棋界の永世鬼畜眼鏡に、7大タイトルのひとつ「王位」の座をかけて木村一基八段という将棋の強いおじさんが挑戦した大会でした。7番勝負でここまで3勝3敗の五分。羽生さんは今日が46歳の誕生日。かずきは43歳。年齢だけで見れば大学の先輩後輩くらいのわずかな差ですが、タイトル保有歴は96期対0期という悪魔的な差があります。ちなみに将棋のタイトルは1期でも取れれば十分に歴史に名を残せる大棋士です。ここで一度羽生さんという悪魔について「悪魔じゃん」という認識を改めてください。

    木村一基八段は落語が好きな棋士で、将棋解説の面白さと親しみやすい人柄から「将棋の強いおじさん」などとしてファンに親しまれているおじさんです。ほとんどの天才棋士が10代でプロデビューする中、かずきは極めて遅咲きの23歳でプロ入り。ところが相手の攻めをギリギリで見切って避ける鋭い終盤術を武器に「千駄ヶ谷の受け師」の異名を誇るトップ棋士に駆け上がります。王様が相手の攻撃をスルスルとかわし、最後は敵玉の詰みにまで参加する鈴木大介先生との新人王戦などは名局として語り継がれています。要するに将棋の強いおじさんということです。

    そんな将棋の強いおじさんですが、棋士として生涯の名誉である「タイトル獲得」には恵まれていません。なぜか。同じ時代に悪魔的に将棋が強い羽生善治大先生という悪魔がいるからです。

    おじさんは何度も一生懸命タイトルに挑戦しました。数百人の棋士がいる中でたった一人の挑戦者になるだけでもすごいことです。そして時には某深浦王位を相手に7番勝負で先に3連勝したこともありました。でもそのあと4連敗しました。「あと1勝すればタイトル獲得」の1番で最も負けてるのがおじさんなんじゃないかと思います(8連敗?)。

    40代というのは一般的に棋士の力が衰えてくると言われる年齢です。おじさんは2年前にも王位戦で羽生永世悪魔に挑戦しましたが惜敗。これがラストチャンスかと思われたものの、今年もう一度挑戦者に名乗りをあげました。ここで一度かずきファンは泣きます。おじさん、まだいけるぞ、タイトルをとれるぞ、と。

    一方の羽生さんも45歳(当時)。直近の名人戦では若手の佐藤天彦八段に厳しい負け方で名人を奪取され400万回目の「羽生衰えたな」を言われたりしていました。実際その後の対局でも羽生さんはらしくない負けを重ねており世代交代を叫ぶ声が強まる一方。王位戦でも決して若くない43歳の木村八段が3勝2敗と星を先行し、おじおじファンはいよいよ羽生善治永世鬼畜眼鏡の牙城を崩し悲願の初タイトルを獲得するかと期待しました。

    王位戦6局目は羽生さんにマジック手が出て3勝3敗に。そして迎えた最後の7局目。おじおじファンは「100個近くタイトル持ってるんだから1個くらいおじさんにあげろ!」「タイトル独占禁止法!」「うさぎおじさんもうかずきを許してあげて!」などと叫びます。ところがどっこい、キワキワの勝負を約96回経験してきたうさぎおじさんは最後の最後でライオンおじさんとなり将棋の強いおじさんを一分の隙も無い将棋でふっ飛ばし、見事に王位を防衛してみせました。ここで一度羽生さんという悪魔について「悪魔じゃん」という認識を改めてください。


    苦しい局面での木村八段。応援してるファンも同じ顔をしてた

    木村一基八段は本当に将棋の強いおじさんであり、苦労人であり、面白い人であり、お酒の好きな人であり、負けたあとの感想戦でもファンの前では明るく「こんな手を指すなんて(相手は)ひどい人だよねえ」などと冗談を言ってくれるステキな人です。僕も多くの将棋ファンの例に漏れず羽生さんが永久に将棋界で無双することを願う羽生ファンですが、今日ばっかりはおじおじにタイトルを獲ってほしいと願うおじおじ信者でした。でも将棋の神はそれを許してくれなかった。過去におじさんと王位戦で戦い3連敗からの4連勝というメイクドラマをキメて木村王位の誕生を幻にした某深浦九段は今日の解説会で、「あのあとは木村さんと1年半くらい話ができなかった」と言ってました。それくらい棋士にとってタイトルというのは重いものです。終局直後、木村八段の様子は以下のようなものだったとレポートされています。
    最後に「シリーズ全体の感想」について質問がありましたが、木村八段から声は出ませんでした。
    あの明るいおじおじが、負けた直後の感想戦でも自虐的な冗談を飛ばしてくれるおじおじから、言葉が出なくなる。それくらい43歳という年齢で臨んだタイトル戦は重いものだったのだと思います。僕は今回初めて現地の大盤解説会に参加したんですが、終局後にみんなの前に出てきてくれていつも通り明るく感想戦を行う木村八段を見てブルッと震えてちょっと泣きそうになりました。

    僕は将棋を観るのが好きな「観る将」なんですが、そんな観る将にとって一番大切なのは誰が対局するかよりも「誰が解説するか」だったりします。難解なプロの将棋をわかりやすく面白く伝えてくれる将棋の強いおじさんの解説は、本当にまだ将棋の面白さにピンときてないみんなにおすすめしたい将棋のコンテンツです。将棋界の誰もが一目置く「受け師」でありながら、「おじさん詰ますのは苦手だからなあ」などと言いながら鮮やかな詰め手順を示すおじおじの解説を多くの人に見てほしい。そんなおじおじのタイトル挑戦(…と失敗)を見てたまらずこれを書きました。

    ちなみに木村八段は羽生さんと一緒に将棋を勉強する数少ない「羽生研」のメンバーでもあります。もちろんタイトル戦などでメンバー同士が戦う場合はしばらく研究会もお休みするそう。今日の大盤解説を務めた松尾歩八段も羽生研のメンバーで、3人が終局後にみんなの前で対局を振り返る光景は結構胸が熱くなるものがありました。有望な若手がどれだけ台頭してきても、僕はまだまだ「これからは木村一基八段の時代だ!」と言い続けたいと思います。