• 【RPG制作Tips】あなたの作風は、ゲームブック型?ドラマ型? 各タイプの特徴と落とし穴、その対策をまとめてみた

    2017-06-08 18:592
    おはようございます。
    電車に乗っているときの、窓越しの太陽光→スマホ→眼球 という現代版デルタアタックの攻撃力が高い時期になってきましたね。



    最近は新作アブセントエイジの開発をもりもり進めております。

    ※アイテムに余裕があるとお供のタルトはんがオートでアイテム援護(コンフィグでON/節約/OFF設定可)してくれるの図

    そして先月より、ツクールフォーラムのフォーラムスタッフはじめさせていただいてます。
    フォーラムはまだまだβ版(執筆時点)! 要望あったらお気軽に話してくださいね。






    さてさて、今回の内容ですが……ゲームはいろんな表現の仕方ありますよね。主人公をどう描くかで、物語の展開や、開発にどういった特性が出てくるか、それぞれどういう弱点を持っていてどうカバーするかが変わってきます。

    以前、アブセントエイジの指針作りとシナリオ作成のためにストーリー作りについていろいろ研究していました。そのときの考察メモを放出したいと思います。






    ゲームの作風(特に主人公の扱い方)は、おおよそ【ゲームブック型】【ドラマ型】【中間型】の3タイプに類型されます。正確には

    ゲームブック型--------------中間型---------------ドラマ型

    みたいな位置づけで、明確に分けることはできません。基本的に「どっち寄りか」のお話になります。ゲーム内の様々な表現が「ゲームブック的か」「ドラマ的か」を捉え、利点欠点をつかんでおくと、自分のゲームの強みや穴を知ることができます……というのが今回の主旨です。

    もしご自身がゲームを作っているなら自分の作品が、作っていないなら好きなゲームが、どれにあたるかに当てはめてみてください。
    「フッ…そんな型になんてハマらないゼ」っていうロックな方は、参考程度に読んでいただくか、時代の先駆者となるために、こんなの読んでないで早く制作に戻りましょう。






    ■分類の概要____________________________
    ①「ゲームブック型」(プレイヤー=主人公)
    主人公自体の主張は控えめにして自由度や間接話法でプレイヤーの介入余地を増やし、世界観に没入させる。 特色が濃いもの:ドラクエ、ポケモン、ペルソナ、ゼルダ。


    ②「ドラマ型」(プレイヤー=観客)
    主人公自身の魅力でプレイヤーを惹き付け、主人公自身が考え決断するのをプレイヤーが追いかける。 特色が濃いもの:FF、ファイアーエムブレム、拙作オルタードアークス。


    ③「中間型」
    例1(ゲームブック型を援用したドラマ型。定番の手法)

    主人公が「記憶喪失である」「異世界から来た」「田舎者、新人」のような世間知らずな立場に置き、プレイヤーと意見をシンクロさせてゲームブック型のように自己投影を煽りつつ、徐々にドラマ型のようにキャラクターとして自立させる。 ex) FE覚醒、ルーンファクトリー、ラハと魔法の園、拙作エイリアスエイク。

    例2(アドベンチャーゲーム型)
    主人公に明確なキャラ付けをしつつも感情移入させ、重要な決断をプレイヤーにゆだねる。
    ex) FEif、ルーンファクトリー





    ■各タイプの特徴__________________________
    中間型については多様すぎて語り切れないので割愛します。あと、「作るうえで重要になりやすいもの」は、ゲーム性やストーリーの良さみたいな、基本的かつどのタイプでも当てはまるものは書いていません。
    ①ゲームブック型___________________________________________
    【作る上で重要になりやすいもの】
    ・世界観に対する深い考察
    (探検意欲を刺激することが大事)
    ・相手の行動や心理の予測力
    (行動に対する多彩な反応や、意見が代弁されたときのカタルシスがこの型の面白味です)
    ・さりげない遊び心
    (探検意欲。プレイヤーがいろいろ試したがるようになったら思惑通りです。)

    プレイヤー層の65%くらいが満たしそうな傾向】「能動的なマゾヒスト」「ゲーム=遊び場」
    ・自力で創意工夫したり、じっくりいろいろ試すことを好む。
    ・見るよりも演じることを好む。(応援するより体験したい)
    ・自分がイジられるのが内心好き。
    ・さっきの煽り(「フッ…そんな型になんてハマらないゼ」っていうロックな方は、参考程度に読んでいただくか、時代の先駆者となるために、こんなの読んでないで早く制作に戻りましょう。)を面白いジョークだと解釈する。

    【利点】
    ○演出や使用素材の良し悪しに大きく左右されず、世界観に入り込んでもらいやすい。ついでに、多少の詰めの甘い点は想像の余地やプレイヤーの行動の結果として吸収できる。

    ○キャラクターの台詞がダイレクトにプレイヤーに響くため、メッセージ性を込めやすい。また、魅力的な脇役を表現しやすい。

    【欠点】
    ×目的喪失しやすく、世界観の居心地が悪いと投げられやすい。
    ナビ役を置いてうまく引っ張らせないとストーリーを思うように展開できない。
    この型のゲームで大抵主人公が周囲から一目置かれる存在なのは、プレイヤーに居心地よく遊んでもらうため。

    ×想像を煽る表現をどれだけ出来るかどうかの手腕を問われる。例えば、主人公の個性を省くつもりが人間性や感情を省いてしまうと、逆にプレイヤーは感情移入できず作業感・おつかい感が出る。
    →「頼みごとに対して一瞬イヤな顔をして会話相手にツッコまれる」など、共感できる人間らしさを出す場面も必要。


    【ゲームブック型を活かすテク】
    弱点は直接的な感情表現の乏しさ。それを補うテクニック。
    1.間接話法
     「……え? なんであの王様はあんなことを言ったのかって?」
    2.代弁(ドラマ型でも重要だけど)
     ナビ役「こらー!! 町に来て早々牢屋にブチ込むって、一体どういうつもりよあのオッサン!!」
    3.プレイヤーの投影促進
     「どうしたの? すごい怖い顔をしてるよ……?」
     「助けてくれるなんて、あなた優しいのね」


    ②ドラマ型_______________________________________________
    【作る上で重要になりやすいもの】
    ・人物に対する深い考察
    (主人公とその周囲の掛け合いが中心になるので、人物の魅力は作品の魅力に直結します)
    ・構成、脚本能力
    (映画的な感動を与えるのがこの型の醍醐味です)
    ・アートセンス、素材調達力、企画力
    (後述です)

    プレイヤー層の65%くらいが満たしそうな傾向】「消極的なサディスト」「ゲーム=物語」
    ・劇的で、感動することを好む。
    ・窮地に立たされるキャラ、幸福を迎えるキャラなど色んな様子を見守りたい。
    ・演じるよりも見ることを好む。(体験するより応援したい)
    ・さっきの煽り(「フッ…そんな型になんてハマらないゼ」っていうロックな方は、参考程度に読んでいただくか、時代の先駆者となるために、こんなの読んでないで早く制作に戻りましょう。)を興味深い意見だ
    と解釈する。

    【利点】
    ○主人公の心理描写を直接書けるため、濃厚な人間関係や葛藤、衝突を描くことができる。
    また、あくまで主人公はプレイヤーと別人物なので、極端な逆境に曝してもプレイヤーの心を折りにくい(むしろ超効果的)。

    ○表現の幅が広い。例えば、視点移動(一方そのころ~は……。)や源氏物語式多重視点(複数人物にスポットライトを当てながら一つの話が進む)も自然に使える。

    【欠点】
    ×「プレイヤーの意向」「主人公の意向」「作り手の意向(物語の展開)」がすべて独立して動くので、その帳尻合わせに足をとられやすい。また内容も難解化しやすい。
    →前述の中間型の例は、プレイヤーの意向と主人公の意向を効果的に同一化できるためよく用いられる

    ×プレイヤーとゲームの距離を狭めにくいため、「最初からどれくらい距離が近いか」……すなわち、オープニングのインパクトや演出・使用素材の質・事前情報などにゲーム全体の評価が引っ張られて損をすることがある。また、プレイヤーのナイスプレイが主人公の手柄になりプレイヤーを直接褒めにくい。
    →公式サイト・PV・攻略ガイド・連動企画などゲーム外のワクワク要素も重要になってくる。


    【ドラマ型を活かすテク】
    弱点は話の冗長さと入り込みにくさ。そこを補うテクニック。
    1.オープニングで盛り上げてから経緯に立ち戻る
    ・経緯を説明して殺人現場を見せるのではなく、殺人現場を映して興味を煽ってから経緯をたどる。
    ・いきなり故郷を焼き払う。
    ・冒頭で主人公が死ぬ。そしてあとで生き返る。

    2.説明のしかたを工夫して増えがちな情報量を削減&実感を持たせる
    ・ゴーゴンやコカトリスとの戦闘前に「あの魔物の目を見たものは石化すると言われている…」と解説させるのではなく、迷い込んできた子供や動物が石化する場面を主人公たちが目撃する。
    ・「この飛行石を使うと行ったことのある町に飛べるんじゃ。」と解説させるのではなく、渡した途端うっかり起動してしまって怒られる。

    3.最初から情報を出さないほうがいいものもある
    ・「行ったことのある町に飛べる飛行石をやろう。」→「なんでくれたんだろう?」→「この石で息子と旅をするのが夢だった、でもやっと手に入れて帰ったら息子は病死していて、せめてもの供養がしたかった」と後でわかる
    順を追って話すとすごく冗長になってしまい、逆に話さないと読み手に疑問を持たれてしまう問題を一度に解決可能。

    4.余談でストーリー本筋を乱さない
    ・イベント中に仲間に逐一感想を挟ませると話が進まない。そういった感想的内容は、たとえばイベント後に仲間キャラをその場に留まらせて話しかけられるようにして、話しかけると「私はああ思ったんだけどな」等と言わせる形で表現する。
    (FFでよく使われている気がします。ゲームブック型であるDQでも仲間会話でこの手法が使われてますね)


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  • 【エイリアスエイク】RPGアツマールのフィードバックのお返事&新作『アブセントエイジ』近況

    2017-04-18 22:331
    おはようございます、
    お店でサンプルでもらったハンドソープをハンドクリームだと間違えて授業中に使ってしまい、両手がヌルヌルのまま手も心も濃厚な90分を過ごした経験を持つterunonです。


    先月末、制作中の新作『AbsentAge:アブセントエイジ』のBGM『落丁と絵空事』の試聴版を投稿しました。
    小ネタですが、楽器構成のうちベースが落丁していて、代わりにアコースティックギターが本来出せない絵空事の音域で補っています。本記事のBGMにでもどうぞ。



    アツマールのフィードバックキャンペーンにて、アツマール版エイリアスエイクにたくさんのフィードバックをいただきました。ありがとうございました!
    ここでは、いただいたご意見についてお返事します。そして、「続編を遊びたい!」というフィードバックを多数いただいてるので、続編アブセントエイジについてもちょこっと触れさせていただきますね。

    【ゲームのよかった、面白かったところ】項目
    ・ストーリーが非常に良かった。
    ・ストーリーの完成度が高い etc.



    ストーリーに対するお褒めの言葉を、かなりたくさんいただきました。実はエイリアスエイクは、わたしが初めて作った非短編の物語でした。それに対して良い評価をいただけたことは、今後の作品作りの自信とエネルギーに繋がります。ありがとうございます。
    中でも中盤以降の展開の感触がよく、作った甲斐がありました。

    余談ですが、コメントダウンロードだと、主にプロローグで「茶番は良いから早くして」的なコメントがちょいちょいあったんですよね。それですっかりストーリーはダメダメだと思ってたのですが、最後まで遊んでくださった方はストーリーに高い評価をつけてくださっていることがわかり安心しました。
    ストーリーの序盤の引き込みについては次回作の課題に持ち越します…!


    ・ダンジョン生成、ボス戦のアクションやギミック、相棒との連携など、ゲーム性が良い

    こだわった部分がプレイヤーさんに届いて嬉しいです。ツクールの界隈では、ゲームは物語性の話題が中心になりやすいですが、本来ゲームはそれと同じくらいか、それ以上にアトラクション性が大事と考えています。新しい場所に行くたびに新鮮な気持ちになってほしいという願いです。
    このへんはRPGというより、むしろカービィさん、ゼルダさんのような任天堂製アクション・アドベンチャーゲームのアトラクション性を意識してみました。

    ・音楽、イラスト、テキストのセンスが調和していて良い
    ・絵が綺麗。BGMも非常に良く、ゲームの雰囲気ともマッチしていた。

    実は、制作時には一切調和は考えていなかったんです。もともと自作曲の宣伝を目的にしていたので……。ただ、BGMを楽しんでもらえるような工夫は色々してきたので、うまく調和できたのかもしれません。
    あ、絵はテーマカラーとして、一貫して「ピュアブルーの影・ピュアマゼンタのハイライト」で着色しました。
             この配色にエイリアスエイク
               
    感じてくれたなら
    嬉しいです


    ・独特な戦闘システムが新鮮だった。
    「戦局判断」「頼りになるCPU」をテーマに作りました。ヘタレにならないAI仲間は、わたし自身がすごく作ってみたかったんですよね。
    ソードワールド2.0、キングダムハーツシリーズ、マリオRPG、FF11(からくり士)などを参考にしています。


    【ゲームの改善してほしい具体的な個所】
    ・エンチャントライトによる確実な先行大回復により瀕死時の緊張感が損なわれている。
    気づいてたけど直せなかったポイントでした。「頼りになるAI」がマックススピードで裏目に出た形ですね……。
    「生死をAIに預ける」のって、その手のに慣れてないと、かなり勇気が要るんですよね。なので、「大丈夫、クロロがなんとかしてくれる」って強力に感じさせるために、敢えてすごい安定感を持たせていました。次回作ではこういうスキルは燃費悪めのTP消費にしようかなと思っています。

    ・エンチャントアイスの実際の運用性の低さ。



    想定している運用は、「強敵シンボルとの戦闘」でした。強敵シンボルがあんまり強くないくらいまで成長してくると要らない子になる感はありますね…。
    (初見の公園魔境・路地裏魔境ではかなり強いです。)
    でもでも、敵の範囲攻撃に合わせてアイスクロロを出すとクイックドローで止めてくれたりと
    ピーキーな活躍ができる子なので、是非活躍の場を作ってあげてください。

    ・アイテムをたくさん持っているとセーブ容量が圧迫する。
    リザルトのときに不要なデータのお掃除がかかりますので、魔境の外でセーブするとセーブ容量はけっこう小さくなります。なので、複数ファイルにセーブするときは魔境の外でセーブするのがおすすめです。
    でも、となると燭台でアイテム処分したときもお掃除入れた方がいいかもですね……。検討します。

    ・エンディングを何度でも観れるようにしてほしい。


    何度も遊んでもいいんじゃよ……(・∀・)
    回想できるのはいいんですけど、やっぱり簡単に見られないのがエンディングですからね!

    ・(超個人的要望)各ステータス、スキルの威力などが具体的にどのように戦闘に影響するのかを数値で表示してほしい
    タケチ ヤトさんという方が、以前その辺を検証されててツイッター上で公開されてましたよ! いろいろ検証してもらえるのは作者冥利に尽きます。

    ・ダンジョンで装備を拾ったとき、それが良い装備なのか悪い装備なのか分からないので、わかりやすくしてほしい
    対応として、装備品が現在着けているものより性能評価値が高い場合、取得SEが若干変わる演出を考えています。まず新機能を作りやすい新作で実装して、それからエイリアスエイクに逆輸入しようと画策中です。

    ・装備のパラメータ毎ソートを作ってほしい
    うっ……。できなくもないですが難しめの処理ですね。余裕があれば検討します……。

    ・謎解きをもっと欲しかった
    パズルを楽しんでいただけたようでうれしいです。新作でいっぱい作れるよう頑張ります。

    ・路地裏の魔境ボスへの攻撃判定がやや難しく感じました。
    下手すると戦闘にも入らずに殺されてしまう難所ですね! クライマックスなのでがんばってほしいところです。某助っ人は、ノゾミはんの位置取りに合わせてワープするので、動きを読めるようになると意外と簡単になりますよ!(具体的にはステージの中央より左にいると右に、右にいると左にワープしてきます)


    ■新作『アブセントエイジ』について
    シナリオは書き終わっており、イベントやゲーム部分を作っています。(今年は国家試験があるので、少し低速気味です…。お待たせしないよう両立してがんばります)

    新作の要素について、サプライズを奪わない程度に少しだけお話しします。
    ・前衛と後衛
    新作では最大4人の戦闘になる予定です。それにあたり、各キャラは味方の後衛になることができ、後衛は自動でキャラ固有の援護行動をとります(実質操作キャラは2人まで)。陣形並べ替えは戦闘中もできるので、前作のエンチャントによる戦闘スタイル変更が、前衛後衛の入れ替えで行われる感じです。

    ・仲間呼び出し
    新作は仲間キャラが多いです。それぞれが固有特徴と固有のマップアクションを持ちます。ギミックの攻略もキャラによって変わってくるかもしれません。

    ・固有特徴
    キャラ固有の強力なパッシブスキルです。例えば、主人公サツキは、致死ダメージを受けたとき残HP率*2%の確率で被ダメージを半減し、次の行動が一発逆転の威力になる「運命変転」を持っています。他にも、ランダムフロアの通路内で戦うとクリティカルヒット率+60%の「狭所戦術」、先制攻撃の威力が2.5倍になる「急襲」など、いろいろあります。


    お楽しみに!
  • 【エッセイ】絵と作曲とゲーム制作:増えた選択肢が殺した「絵が描きたい」という感情の回想

    2017-03-13 23:261
    おはようございます、まもなく春ですが、ちょうちょがでる季節になるといつも何故か道端でちょうちょに襲われるため若干の恐怖を感じていますterunonです。


    アイコン絵が新しくなりました! メイキングをツイッターのモーメントにしているので、良かったら見ていってくださいね。


    2日ほど春休暇をいただいたので、気分転換と今後の文章書きの練習を兼ねて、ちょっとしたエッセイ的なのを書きました。わりと長いので、お暇な方だけどうぞ。共感してくれる方がいると嬉しいです。
    ※こういうのを急に上げるケースって、本人が病んでたりすることが多いですが、この文は本当にただの練習に書いたよみものですので、ご安心ください。





    ----------------------------------------------------------------------

    今晩、わたしは久しぶりに外食だけを目的に外へ出た。
    というのは、普段のわたしの選択肢は「自炊しないときはコンビニ」で決まっていて、言うならば行動ルーチンに組み込まれていなかった。 お店にもよるけれど、なんとなく外食は服もメイクも最低限しっかりしていないといけない気がしていたから。

    その点コンビニは楽だった。適当な服装に、必要あればマスクもつけて、お弁当なり何なりをカゴに突っ込んでレジにドンと置く。あとは、スマートフォンに集中しているふりでもして、「お箸要りませんか」以外の言葉や視線のやり取りをシャットアウトしていれば、その日の食糧にありつける。


    「無駄な行動は嫌い」。それが行動規範であるわたしにとって、外食だけを目的に外に出ることは無駄そのものだった。時間と手間とお金を余分に消費して、かといって自炊のスキルが上がるわけでもなく、ただお腹を満たす行為。 そんな考えのわたしがあえてそれを行う気になったのは、他でもなく、いま制作している新作のゲームのストーリー作りで煮詰まっていたからだろう。

    わたしは特に何の主張もしないワンピースに、これまた何の主張もしないコートを着こんで、歩いて10分しない程度の、何の主張もしない定食屋で夕食を何事もなく済ませた。3月の街中は、少し小雨の気配があったけれど、本当に何の主張もしない天気だった。



    その帰り道。
    普段のわたしなら、今流行りの歩きスマホか、歩き国試対策ノートか、歩き新作ゲーム妄想に興じるところなのだが、わたしはどういうわけか唐突に景色を見ようと考えた。
    そのときのわたしは、たしか「絵の着想の引き出しを増やすため」なんて理由をつけていたっけ。この文章を書いている今となっては、なぜそんなことを考えたのか我ながら理解もできず、「この時間で国試の勉強をした方がよかったのでは」なんて、わたしは性懲りもなく頭によぎらせている。ただ、そのとき確かにわたしに景色を見るという行動をとらせていたのは、そんな揮発性の思慮だった。

    熊本の街は路面電車が走っていて、道が広く、電停があり……よく見てみると、街灯が時々おしゃれだったりする。不思議なことに、わたしが見た景色は、妙に鮮やかだった。
    わくわくするような、少し胸を締め付けるような、そんな得体の知れない感覚だった。けれども数年前、わたしはこれと同じ感覚を、しょっちゅう感じていたように思った。そしてわたしは、その正体について思いを巡らした。


    わたしは時々絵を描く。時々ボーカロイドの音楽を作り、自分でそのPV動画を描き……最近はRPGツクールMVなる新兵器を使ってゲーム制作も始め、ニコニコ自作ゲームフェスだとか、レジェンドツクラーだとか、少しずつ成果を上げるようになってきた。

    4年ほど前になるか――
    当時のわたしは、絵が活動の大半だった。音楽は今ほど手の込んだことはしておらず、ましてゲーム制作など「ゲ」の字もなかった。ただ、19歳の大学1年生だった「わたし」は、研究室やら何やらで多忙な今と比べると、時間だけは余裕を持っていた。

    19歳の「わたし」は、髪は伸ばしていつも帽子をかぶっていて、自分の色だと決めた服しか選ばず、母親が使っていたちょっとランク高めの香水を強引にもらい受けて使っていた。やたらイヤリングの数が多く、よく片方だけ失くしてはピアスを付けさせろと親に悪態をついた。
    わたしの自意識過剰気味なツイッターアイコンは、その頃の「わたし」がモデルだ。いつも自信満々な顔をしている。かなりデフォルメ、もとい誇張が入っているが、少なくとも「何の主張もしなく」なった今のわたしには、たとえ外見は似せられても、本質的なところで似せることはできないものがある。

    19歳の「わたし」は、景色をよく見ていた。
    目に入るものに対し、いちいち「こんな雰囲気の絵を描きたい」と思っていた。よく写真を撮っていた。ステレオタイプ的な女子大生を謳歌したことは一度もなかったが、自分なりに人生を楽しんでいた。一言で言うなら、感受性が豊かだったのだろう。

    わたしが外食の帰りに感じたのは、そんな久方ぶりの「こんな雰囲気の絵を描きたい」という感情だったわけだ。感情の正体がわかったとき、わたしは動揺した。だって、わたしは絵を描くのが本当に好きで、数え切れないくらい絵を描いてきて――それなのに、わたしに降りかかった「久しぶりな」感情の正体が「絵を描きたい」だったのだから。



    じゃあ、今までわたしが描いてきた絵は何だったのだ。



    わたしは、いつも楽しんで絵を描いていた。それは事実だ。だが、どうやらわたしは「絵を描きたい」という感情を久しく抱いていなかったらしい。わたしは浴槽の中であれこれ推察して、そんな結論に至った。
    少し、最近に描いた絵を思い返してみる。

    自作ゲームの立ち絵。
    新曲を、ニコニコ動画に上げる際につけるイメージイラスト。
    同人音楽のコンピレーションアルバムのジャケット絵。
    ボーカロイド関連のイベント向けフライヤー。

    どれもこれも、「絵を描きたい」という気持ちからはスタートしていない。
    最近のわたしは、もっぱら自分のゲームや音楽の作品を支えるために自分の絵を「利用」していた。そうでないときは、自分から有償無償の案件を拾いに走り、絵を描くネタをひたすらに外部に求めた。
    さらに思い返せば、音楽も同じ状態だった。自分のニコニコ動画のマイリストを見返すと、新作ゲームのイメージソング、コンピレーションアルバム企画に乗っかるために書いた新曲ばかりがずらりと並ぶ。単に曲が書きたいと思って書き始めた作品が見当たらない。




    ここでわたしは、ようやく「何か理由をつけないと何も行動できない」自分と対峙した。

    わたしはボーカロイドの音楽を作るようになり、これまで絵にかけていた時間のいくらかと、実生活の「無駄」な時間を、作曲活動に割り当てるようになった。
    学年が上がり、研究室に配属されて自由な時間が減ると、わたしは実生活・絵・作曲、それぞれの過程における「無駄」を探して切り詰め、至福である創作の時間を守り続けた。創作している最中も、常に少ない労力で成果を最大化することを意識するようになった。
    さらにここにゲーム制作が加わり、わたしは絵・作曲・ゲーム制作、どの選択肢を選んだら最も効率よく成果をあげられるかばかりを考えるようになった。

    それからさらに何年か経ち、最近では国家試験と就活の足音も聞こえてきた。今や、実生活・研究室・絵・作曲・ゲーム制作・勉強・就活 の一大バトルロワイヤルだ。あの名作スマッシュブラザーズだって4人対戦だというのに、なんとこれは7勢力もある。任天堂もびっくりだろう。



    ふとわたしが浴室の鏡を見ると、「無駄だから」と長かった髪はショートにして、就活で髪も黒く染め直した、なんだか精神的に余裕のなさそうな女がこちらを睨んでいた。
    そういうバケモノかと思った。これ以上自分の領域に踏み入ったら叩き斬るみたいな、そういう目をしていた。

    なるほど。
    こんな目をする奴が、「絵を描きたい」なんて言って目を輝かせるわけがない。そう思ったわたしは、急にどうしようもなく19歳の「わたし」が撮った写真を見たくなった。

    わたしは「感性を磨く手掛かりになる」とかなんとか理由をつけて家中を探したが、結論から言うと、ついにわたしは目的の写真たちを見ることはできなかった。
    探しているうちに、わたしは写真たちの行方を思い出したのだが……そういえば今のわたしは、写真たちを完全に「無駄」と見なしていたのだった。それで、いつだったかに、ハードディスクの容量がどうので邪魔になって、フォルダごと全部消してしまっていたのだ。

    こうしてわたしは、あっさりと19歳の「わたし」を失った。
    その写真の中には、魅力的な作品を作るための何かが、おそらくあっただろう。少なくとも、「絵を描きたい」と思ったときのわくわくした気持ちを、受け手に共有させるための何かが。わたしは「無駄」だと思って切り捨てた物に、無様に足元を掬われていた。

    作品作りの壁にぶち当たっていたわたしは、ついに19歳の「わたし」を「無駄」と切り捨てることは叶わなかった。あの形容できない感情を作品に盛り込みたいと思った。鮮やかにものを見ることができた当時の「わたし」の目を、純粋に羨んだ。
    だからこそ今、こうしてわたしは一種の敗北宣言とこれからの道標として、この文章を書いている(ここでもちゃっかり「無駄ではない理由」を添えるあたり、わたしは何も成長していないのかもしれないが)。


    まずは景色を見よう。

    そこから始めよう。


    本当に無駄なものと、そうではない可能性の原石を、一緒くたにして捨ててしまうのは、もうおしまい。創作の時間を「無駄」から守るために、自分自身を無用にすり減らすのは、もうおしまい。
    浴室の鏡の自分を見て微笑むことができるように、今はただ腐らずに生きよう。
    わたしはそう思った。


    そして、わたしは。







    風呂上がりに薄着で家中を探し回ったツケで、猛烈な湯冷めに襲われ、お腹を冷やしてしばらくトイレに閉じ込められた。
    他のどんな有象無象が可能性の原石だったとしても、この時間だけは正直無駄だと思った。


    おしまい。