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  • 【第2回 津田メルマガ読者アンケート結果発表】津田大介の「メディアの現場」号外

    2012-10-30 23:30  
    220pt
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      津田大介の「メディアの現場」
       ——特別企画「第2回 津田メルマガ読者アンケートレポート」
                                                2012.10.30(号外)

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    《目次》

    ◇属性調査
    1.男女比 2.年齢層

    ◇閲覧環境調査
    3.閲覧のシチュエーション/時間帯 4.閲覧の多い曜日 5.完読率 6.閲覧分
    量 7.コンテンツの閲覧順序 8.一括で読むか、小分けに読むか 9.一号あた
    りにかかる日数 10.閲覧方法 11.津田マガを閲覧する際の使用デバイス 
    12.ePub閲覧用のアプリ 13.ePub閲覧用のPCソフト 14.ePub閲覧用の電子書
    籍端末

    ◇コンテンツ調査
    15.レギュラーコーナーで好きなコーナー/売りになっていると思うコーナー
    16.重要ではないと思うコーナー
    17.面白かった企画(特別企画・レギュラーコーナー別)

    ◇購読者意識調査
    18.購読の理由
    19.津田マガのライバル
    20.期日発行かボリュームか
    21.津田マガ以外の有料メルマガ購読

    ———————————————————————————————————

    メルマガスタッフの相馬です。vol.40、vol.41で実施した津田メルマガ購読者
    アンケートの結果をまとめました。このアンケートは津田メルマガの改善を目
    的にどんな人が津田メルマガを購読しているのか、どんなふうに閲覧している
    のかということに加え、津田メルマガのどのコーナーが好きか、津田メルマガ
    に何を望んでいるのか、など多岐にわたる質問を設け、さまざまな視点から読
    者像を浮かび上がらせました。この号外では、アンケート調査の結果を読者の
    みなさんと共有しつつ、その結果が意味するところを探っていきたいと思いま
    す。

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  • 【小沢一郎議員のドイツ「脱原発」視察同行リポート|生放送のお知らせ】津田大介の「メディアの現場」号外

    2012-10-18 20:50  
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      津田大介の「メディアの現場」
        ——小沢一郎ドイツ脱原発視察 同行取材リポート
              ニコニコ生放送のお知らせ
                                                          2012.10.18(号外)

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    こんにちは。津田マガスタッフの香月です。

    「国民の生活が第一」の小沢一郎代表(@ozawa_jimusho)や森ゆうこ幹事長代
    行(@moriyukogiin)らのメンバーが10月16日よりドイツを訪れ、2022年までの
    脱原発を決めたドイツの「エネルギー政策」の現状を視察しています。「国民
    の生活が第一」は「10年後の原発ゼロ」を政策の柱として掲げており、ドイツ
    の脱原発への取り組みを政策に反映する考えです。


    ■小沢氏がドイツ訪問へ 脱原発前面、衆院選に向け野田政権に対抗
    (MSN産経ニュース)
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121016/stt12101617300003-n1.htm

    この小沢代表のドイツ視察に、津田マガスタッフの小嶋裕一(@mutevox)も同
    行し、ドイツの脱原発への取り組みを取材しています。その取材内容を報告す
    るニコニコ生放送を、18日〜20日の3日間にわたって毎日お届けすることになり
    ました。ベルリンと東京のネオローグ内特設スタジオをインターネット回線で
    つないでお送りします。日本サイドの聞き手はもちろん津田大介です。(香月
    も中継技術スタッフとして関わっています! 朝4時起き!)

    本日18日の早朝6:00(日本時間)からの初回生放送では、一行の視察内容を現
    地の写真や映像を交えてお伝えするとともに、森ゆうこ参議院議員にもご出演
    いただき、プレスには公開されない政治家などの現地関係者との会談内容を伺
    いました。

    明日19日は、ドイツの再生可能エネルギー協会会長との会談を、20日は再生可
    能エネルギーで自給自足するメルケンドルフ村の視察などを放送予定です。今
    後のエネルギー政策を考える上で欠かせない、貴重なリポート盛りだくさんで
    お届けします。朝6時からと早い時間の放送ですが、どうぞご覧ください。もち
    ろんブロマガ以外で津田マガを購読されている方も全編ご覧いただけます。朝
    が弱い方や都合がつかない方は、ぜひタイムシフト再生のご予約をお忘れなく。


    《津田ブロマガ特別企画》小沢一郎ドイツ脱原発視察 現地取材リポート

    放送日:10/18(木)〜20(土)
    放送時間:6:00〜7:00
    出演:津田大介、森ゆうこ(参議院議員)、小嶋裕一(ネオローグ記者)

    配信URL:
    【10/18】(放送済)
    http://live.nicovideo.jp/watch/lv111780040
    クリーガー・エネルギー事業連合国際関係特別代表や、アルトマイヤー環境大
    臣と会談、そのあと太陽光発電の企業を視察。

    【10/19】
    http://live.nicovideo.jp/watch/lv111780048
    再生可能エネルギー協会(BEE)会長や、ブーリング=シュレーター連邦議会環
    境委員長と会談予定。

    【10/20】
    http://live.nicovideo.jp/watch/lv111780052
    脱原発後の政策転換についてエッセンバッハ町長と懇談し、再生可能エネルギー
    による自給自足を達成している、メルケンドルフ村を視察する予定。

    ※現地からの中継は諸事情により、時間の変更等の可能性があります。このた
    め開始が遅れる場合や、準備の都合上、途中からの放送となる場合がございま
    すので、あらかじめご了承ください。

    ※現地のインターネット回線状況により、放送を一時中断もしくは中止する場
    合がございます。


    ======================================================================
    ■ Web:http://xtc.bz/
    ■ Twitter:http://twitter.com/tsuda
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    □ 発行元:有限会社ネオローグ http://www.neo-logue.com/
    □ 発行責任者:津田大介
    □ 編集:松本香織
    □ スタッフ:香月啓佑、小嶋裕一、相馬拓郎、岸良ゆか

    ※本メルマガに掲載される記事の著作権は(対談など一部のコンテンツを除き)
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    ※このメルマガの発行日は第1~第4水曜日です。ゴールデンウィーク、お盆、
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    期に休刊することがあります。
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  • 「消費者安全調査委員会」発足、暮らしの事故の原因究明は進むのか?—津田大介の「メディアの現場」より

    2012-10-16 17:42  
    【委員会発足で暮らしの事故はどう変わる?】津田大介の「メディアの現場」vol.48  より
    この10月1日、消費者庁のもとで「消費者安全調査委員会」が発足しました。その役割は、消費者の身の回りで起こる製品・食品事故の原因を究明し、再発防止策を探ることとされています。同委員会によって、私たちの暮らしは、より安全になっていくのでしょうか。
    ◆「消費者安全調査委員会」発足、暮らしの事故の原因究明は進むのか?
    ――この10月1日、消費者庁のもとで「消費者安全調査委員会」が発足しました。[*1] この組織の役割は、消費者の身の回りで起きた製品・食品事故の原因を究明することだといいます。まず、消費者安全調査委員会とは何か、簡単に教えてください。
    津田:エスカレーターによるケガ、刺身による食中毒……製品や食品をめぐる「消費者事故」は、日常的に起こっていますよね。その再発を防ぐには、事故原因の調査が欠かせません。実際に現場に行く、関係者から聞き取りをする――消費者安全調査委員会はそうした調査を行い、何が原因だったのかを探り、再発防止策を立てる実働部隊 [*2] です。
     
    ◇消費者庁設立の経緯とは
    ――消費者安全調査委員会は、消費者庁に属していますよね。消費者庁ではそもそも、何が行われているのでしょう?
    津田:消費者庁は2009年にできたばかりの組織で、「消費者行政の司令塔・エンジン役」とされています。[*3]
    具体的に、どのような役割を担うことが期待されているのか――その本質を理解するには、同庁設立の経緯を紐解いてみるのが近道です。
    2000年代、日本では衣食住を取り巻く問題が立て続けに明らかになりました。2000年には三菱自動車リコール隠し事件と雪印集団食中毒事件。2002年から2004年にかけては雪印食品を含む複数業者による牛肉偽装事件。2005年にはマンション耐震強度偽装が社会問題に。2006年には不二家の期限切れ原材料使用問題が、そして2007年には北海道土産として広く知られる石屋製菓の「白い恋人」の賞味期限改ざん問題などが発覚します。
    そんな中、2007年9月に自民党の福田康夫が首相に就任しました。同首相は就任後の所信表明演説で2005年の耐震偽装問題に言及したうえで、次のように宣言します。「真に消費者や生活者の視点に立った行政に発想を転換し、悪徳商法の根絶に向けた制度の整備など、消費者保護のための行政機能の強化に取り組」むと。[*4] 「小泉首相時代と比べて支持率の低い福田首相の人気取りだ」という批判の声もありましたが、背景には、日本の消費者行政が縦割り構造の中、なかなか有効な手立てを打てず、相次いで消費者の人命を脅かす生活問題が出ていたということは事実です。
    その後、2007年12月から2008年1月にかけて、中国製の冷凍餃子を食べた消費者たちが下痢や嘔吐などの中毒症状を訴える「毒入り餃子事件」が起こります。[*5] 問題の餃子からは、殺虫剤の成分「メタミドホス」などが検出されました。
    これがきっかけとなり、福田首相は、消費者に主眼を置いた行政の実現を急ぎます。そして同年3月11日、「消費者行政推進会議」[*6] の第1回目会合を開催。さまざまな視点から議論を行いました。
    生命、身体被害に関する消費生活上の事故――消費者事故を分類すると、面倒なことに、事案によってどの省庁の管轄か違うんですね。例えば、コンタクトレンズの事故ならば薬事法にかかわる問題だから、厚生労働省の所管。ブランコの事故ならば都市公園法がかかわる問題だから、国交省の所管。各省庁にまたがってしまうんですね。[*7]
    画像:http://ch.nicovideo.jp/image/ch597/5948/1e7ae9b1d91110cbfffcd273aa07bab9d58c1405.jpg
    出典:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shouhisha/daiw3/siryou4.pdf#page=5
    さらに困るのは、所管官庁がない場合です。2008年7月、こんにゃくゼリーを喉につまらせ、幼児が死亡する事故がありました。[*8] あの事件は、果たしてどの官庁の所管になるのか? 実は該当する省庁がないんです。
    ――ええっ? どういうことですか。
    津田:厚労省の食品衛生法 [*9] は、食中毒など「衛生上の危害」を対象としています。農水省のJAS法 [*10] は、食品表示などを対象にしています。だけど、こんにゃくゼリーの場合、硬さや大きさのような「形状」がそもそも問題となった。となると、問題に対して適切な規制や行政指導を行う権限を持った部署が役所内に存在しない。そういうケースの場合、厚労省も農水省もすぐには対応してくれないんです。
    このような問題は「すき間事案」と呼ばれます。縦割り行政の狭間に落ちてしまって、すくい上げる省庁がなかったということですね。
    ――なるほど。だから、消費者の立場から問題を一元的に管理する役所の必要性が出てきたと。
    津田:消費者行政推進会議で話し合われたトピックとして、「消費者の目線」というものがありました。
    この会議が発足するきっかけになったのは、毒入り餃子事件です。事件が起きてしまったこと自体は、決して歓迎はできないにせよ、ある意味では仕方のない部分もあったのかもしれない。しかし、一番重要なのは、早い段階で被害拡大を断ち切れなかったのかということです。官僚の人たちもバカではないですから、そのための策は、事前に考えられていたんです。それが「食品保健総合情報処理システム」という情報ネットワークシステムです。
    これは普段、厚労省と感染症研究所、保健所などをつないでいます。にもかかわらず、くだんの事件ではなぜか情報共有されなかったんですね。
    また、農水省では2005年、「製造・加工/流通・販売段階における食品安全に関する緊急時対応実施指針」[*11] などの指針を定めていました。これは当時としては先進的なもので、食品に毒物が混入した場合、海外で事件が発生した場合などの対応策があらかじめ加えられていたんですよ。
    こうした策が打たれていたのに、実際には機能しなかったのはなぜなのか――消費者行政推進会議に出席していた委員の一人は、議論の中でこう述べています。
    「厚生労働省や農林水産省のような産業育成省庁の意識やシステムでは、いくら仕組みを作っても対応できないということなのではないか。消費者の目線に立った担当者が消費者行政を動かすことが、消費者の安全を守る大前提である」と。[*12]
    今この話を聞くと、原子力産業の育成省庁だった経済産業省が、原発の安全性についてさまざまな疑義が寄せられても東京電力に対して具体的な指導監督することができなかったことを思い起こさせます。経産省内の一機関だった原子力安全・保安院が適切に機能しなかったことが福島第一原発の事故につながっているわけで、行政が何かを厳しく規制するには、産業育成省庁の意識やシステム下で仕組みを作ってもムダだ、というシンプルな話なのかもしれません。
    いずれにせよ、議論としては、官庁の所管に関係なく、「すき間事案」も含めてすべてを一元化して拾い上げ、消費者の側に立って問題解決にあたる省庁が必要だという結論になった。消費者庁の設立にあたっては、こうした問題意識が大きく働いていたわけです。
     
    ◇消費者事故はデータベース化されている
    ――消費者庁の設立にあたって、どのような問題意識が根幹にあったのかはわかりました。同庁が実際行っている業務についても、少し教えてください。
    津田:消費者庁に期待されている役割のうち、もっとも大きなものの一つが「消費者被害の防止」です。そのために同庁は、消費者事故に関する情報を集めているんですね。
    では、どのようにして全国から事故情報を吸い上げているか。[*13]
    日本には全国各地に、消費者の相談窓口として「消費生活センター」が設置されていて、日ごろから各種相談が寄せられます。保健所や警察、消防署も、当然ながら消費者がからんでいる事故の情報を持っていますよね。これらの情報はまず、国民生活に関する情報の提供や調査研究を行っている「国民生活センター」[*14] に集約されます。同センターは、「PIO-NET」という消費生活相談データベースを持っていて、そこに事例が蓄積されていくんですね。これが最終的に、消費者庁に提供されます。
    さらに消費者事故の情報は、モノやサービスを提供する事業者側からも直接、または関係省庁を通して寄せられてきます。
    消費者庁は、こうして消費者や事業者から吸い上げた事故情報を、「事故情報データバンクシステム」というデータベースに一元化しているんですね。[*15] これはネットで公開されていて、いつでも利用できるんですよ。キーワードを入力すれば、視力回復のレーシック手術に関する事故や美容整形の事故、リチウムイオン電池の破裂事故など、さまざまな事例について調べられます。あまり知られていませんが、貴重なデータベースですよこれは。
    今回発足した「消費者安全調査委員会」に期待されている役割は、こうして寄せられた事故のうち、重大なものの原因究明にあたり、再発防止を考えること。いわば、消費者庁の本義を背負う組織と言えます。
     
    ◇事故を未然に防ぐ策は
    ――消費者事故というと、起きてからの対応以上に、防止策を打つことが重要になってきますよね。消費者庁以前は、各省庁はどのように防止策を講じてきたんでしょうか。
    津田:一口に消費者事故といっても、さまざまなケースがある。なので、それを防ぐための策は省庁や事案によって個別具体的に作られてきました。
    具体的には、どんな制度があるか――身近な例を一つ挙げましょうか。
    最近のライターには、ひし形のマークがついていますよね。[*16] 「PSCマーク」[*17] と呼ばれるこのマークには、「国の定めた技術上の基準に適合していますよ」という意味があります。
    「消費者の生命・身体に対し、特に危害を及ぼすおそれのある製品にはこのマークを表示するように」と経産省の所管する「消費生活用製品安全法」[*18] という法律で事業者に義務付けられているんですね。
    対象製品は、ライター以外に、乳幼児用ベッド、携帯用レーザー応用装置などがあります。これらの製品はPSCマークをつけないと、国内では販売できません。仮にマークなしの製品が出回った場合には、国が事業者に回収などを命じることができるんです。
    ライターへのPSCマーク表示が義務付けられるようになったのは、ごく最近、2011年9月27日以降のことです。
    この背景には、ライターによる火災事故があります。経産省が公表している資料によると、[*19] 132件の製品事故が2004年度から2008年度までの5年間で発生。また、12歳以下の子どもによるライターの火遊びで、東京消防庁管内だけでも500件あまりの火災が1999年から2008年までの10年間で発生しているんですね。
    そこで経産省は「消費経済審議会製品安全部会ライターワーキンググループ」[*20] を発足し、ライターに関する話し合いを行いました。
    そして、話し合いの結果を受け、ライターをPSCマーク添付の対象とし、子どもが点火しづらい「チャイルドレジスタンス機能」を備えたライターのみを、技術水準に適合しているとする方針に変えたのです。
    こうして、本体にPSCマークがついていない使い捨てライターや多目的ライターは、販売が禁止され、市販のライターは「点火にあたって2段階の操作が必要」「レバーが固い」といったチャイルドレジスタンス機能付きのものになりました。喫煙者の方は普段ライターを使う機会が多いでしょうから、このことを身をもって知っているかと。
    経産省の場合はこのようにして、一定の技術水準を満たし、安全な製品だけが市場に出回るようにしているわけです。
     
    ◇消費者安全調査委員会が発足するまで
    ――事故を未然に防ぐための策を講じていたとしても、問題は起こってしまうことがある。そこで消費者庁が消費者事故の情報を収集し、今回作られた消費者安全調査委員会で原因を究明し、再発防止策を作ってルール化する。そういう流れを作ろうという意図があるんでしょうね。消費者庁はこの委員会を作るに先立って、どのような準備を行ってきたのでしょう?
    津田:消費者庁では2010年1月から2012年8月にかけて、医療関係者や大学教授、弁護士などによる「事故情報分析タスクフォース」[*21] を組織しました。
    第1回目の会合で配られた資料によると、その役割は次のとおりです。「消費者庁において一元的に集約する重大事故をはじめとする消費者事故情報(生命・身体被害に関するもの)について、消費者庁として独自に対応が必要な事案を抽出し、迅速・的確に分析・原因究明を進めていくために必要となる助言及び指導を行う」。そして、8回にわたる会合の中で実際、「本棚転倒」「スーパーボールによる窒息」をはじめとする10の事案を抽出し、原因究明や分析を行いました。[*22] その活動内容は、この10月にも報告書のかたちで公開される予定です。[*23]
    ――事故情報分析タスクフォースとは別に、委員会そのものの体制をどうするかという話し合いも行われてきたんですよね。
    津田:はい。2010年8月に「事故調査機関の在り方に関する検討会」がスタートし、そこで14回にわたる話し合いが行われました。[*24]
    結果がまとまったのは、2011年5月。[*25] 消費者安全調査委員会は、この検討会での話し合いを受けて発足しています。
    ――具体的には、どのようなメンバーで構成されているのでしょう?
    津田:委員会は工学などの専門家7人で構成されており、福島第一原発事故に立ち上がった「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」[*26] でも委員長を務めた東大名誉教授の畑村洋太郎さんが委員長となりました。
    畑村さんは「失敗学」[*27] の創始者として知られています。起こってしまった失敗の原因を探り、そこから新たな知見を得る――こうした失敗学の考え方は、重大な事故の原因を究明し、再発防止策を作るという同委員会の設置趣旨にかなったものでしょう。今後は、畑村委員長を筆頭とした委員たちが、事故の選定や調査結果の公表、関係省庁に対する改善策の提言などを行っていくということです。
    ――おお。これで消費者行政も大きく変わる……?
    津田:うーん。お役所にありがちな話なんですが、彼らがすぐに動けるかというと、それはまた別の話です。というのも、今回の委員会は、立ち上げが決まってからの準備期間が短いんですよ。
    同委員会設置を盛り込んだ改正消費者安全法 [*28] が成立したのが8月末。[*29] そして10月に発足……。だから、委員会ができたはいいものの、まだ具体的な事故調査に入れる体制にはないという指摘もされています。
    ――実際に調査を行うにあたっては、スタッフや予算などの体制が問われてきますよね。
    津田:結局はそこが問題になるんですよね。消費者庁は年間100件の調査目標を掲げました。しかし、消費者安全調査委員会の年間予算はわずか8500万円程度しかない。稼働するスタッフも、わずか20名ほどです。
    人材の問題は、非常に重要なんですよね。官庁に勤めていると、2、3年おきに部署が変わることもあります。仮に今回もそうなってしまうと、事故調査に関するノウハウが、委員会内に蓄積されません。
    消費者庁はまだ若い組織で、発足時にさまざまな省庁から人が集められてきており、同庁内で採用され、育ったプロパーの官僚がいません。ある程度じっくりと腰を据えて仕事できるようにしてほしいですよね。
    同委員会の畑村委員長はこうした状況を受け、「私見」と断りながらも「100件を丁寧に調査できるとは思わない」と指摘しています。[*30] 限られた予算、スタッフでどうやっていくか。この委員会にとっては、それが大きな課題ですね。この国が消費者行政に本腰を入れてやっていくなら、予算規模を拡大するなり、いずれ消費者庁から「消費者省」に格上げするなど、抜本的な改革が必要になると思います。
     
    ◇どこまでが調査対象か
    ――となると当面の間、調査対象をだいぶ絞らなければならないのでは……これについて、何か決まっていることはあるのでしょうか?
    津田:消費者事故は、生命や身体にかかわるものと、財産にかかわるものという二つに大きく分けられるんですね。
    消費者安全調査委員会はこのうち、生命や身体にかかわるものを対象にします。ただし、運輸安全委員会がカバーしている「航空・鉄道・船舶」に関するものは除く、と。
    そう考えると、実は対象範囲がだいぶ幅広いんですよね。
    2009年9月1日から2012年6月30日までの3年弱で、生命や身体にかかわる消費者事故は7027件起こっています。うち「重大事故」とされるものは、約4割にあたる2684件。[*31] 年間にならしたとしても、相当な数に上ることがわかります。
    こうした事故のうち、どのようなものに対応するのか。10月3日に開かれた委員会の初会合では、そこも一つの焦点になりました。
    結果、「事故を起こした製品等が広く利用されている」「一定期間に同じ事故が多数発生している」「消費者が事故の発生を避けるのが難しい」「多数の被害が発生する恐れがある」ほか、6点の指針が定められています。
    ――消費者事故の被害者には、命を落とされた方もいるわけですよね。そうなると、遺族の精神的ケアも大切な問題になってくるのではないかと。
    津田:まさにそこなんですよ。事故の原因がわからなければ、残された遺族も浮かばれません。消費者庁ができる前、「パロマ湯沸器死亡事故」が世間を賑わせましたね。この事件が表面化し、社会問題となっていく過程には遺族の思いが深くかかわっているんですよ。
    2005年のある日、大学生が不審な死を遂げました。その死因は「心不全」とされました。しかし遺族は理由に納得できず、2006年2月、警察に再捜査を依頼します。
    すると、パロマ工業株式会社製の湯沸器の不具合で一酸化炭素中毒に陥ったのではないかとの疑いが出てきたんですね。所管官庁である経産省がこの報告を受けて調査を行ったところ、同社製湯沸器で今までに同様の死亡事故が十数件起こっていることが判明。同社を追及した結果、この製品によって合計21人もの死者が出ていたこと、「死者が出ている」という事実を1992年時点で把握していたことがわかりました。
    そして、製品そのものの安全装置劣化、系列サービス業者の不正改造が原因の事故もあるらしいと、衝撃の事実が次々と明らかになり、最終的に同社は「一連の事故対策が不十分だった」と認めるに至りました。
    遺族の思いにより原因究明がなされたこの事件は、同時期に世間を騒がせたナショナル製FF式石油温風機による死亡事故などとともに、消費者行政を変える一つの追い風となったのは間違いありません。
    消費者安全調査委員会の畑村委員長は、選任後の挨拶で「なぜ事故が起こったのかを調査するだけでなく、事故で苦しんでいる人の立場で考えないといけない」と述べました。
    なぜ自分の大切な人が犠牲になってしまったのか――そうした遺族の気持ちをすくい上げ、原因究明にあたること。消費者安全調査委員会ができたことで、これまで行政がカバーしきれなかった「原因究明」を、一定の権限をもって進められるようになる。大げさに言えば、この取り組みがうまくいくかどうかで、今後の消費者庁の存在意義も変わってくるということです。
    ――消費者安全調査委員会に期待される役割は大きいが、同委員会を取り巻く諸問題もたくさんあると。
    津田:課題は山積しています。茨の道かもしれませんが、消費者庁の本義を背負っているともいえる組織です。「実働部隊」としての彼らがどれだけ「実働」できるか。そこが大きなポイントですし、少しずつでも毎年実績を積み重ねていくことが重要です。何より、当事者である消費者がこうした組織の必要性を認めなければ、予算や体制が改善していくことはないでしょう。そのためには、消費者安全調査委員会も自分たちの成果を積極的に国民に対して広報する必要があるでしょうし、そうすることで、消費者行政もよりよい方向に変わると信じたいですね。
    《この記事は「津田大介の『メディアの現場』」からの抜粋です。ご興味を持たれた方は、ぜひご購読をお願いします。》
    [*1] http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG21051_Q2A930C1CR8000/
    [*2] 現場を訪れて直接調査することを前提としているため、スタッフは身分証明書を携帯することが決まっている。
    http://www.caa.go.jp/csic/action/pdf/20121003sannkou_5.pdf
    [*3] http://www.caa.go.jp/soshiki/pdf/leaflet201205.pdf
    [*4] http://www.kantei.go.jp/jp/hukudaspeech/2007/10/01syosin.html
    [*5] http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/china-gyoza/dl/01.pdf
    [*6] http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shouhisha/
    [*7] http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shouhisha/daiw3/siryou4.pdf#page=5
    [*8] http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20080930_1.html
    [*9] http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO233.html
    [*10] http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO175.html
    [*11] http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/kiki/pdf/emergent_02.pdf
    [*12] http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shouhisha/dai3/3gijiyousi.pdf
    [*13] http://www1.caa.go.jp/soshiki/pdf/panfu_2.pdf#page=3
    [*14] http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
    [*15] http://www.jikojoho.go.jp/ai_national/
    [*16] http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/index.htm#lighter
    [*17] http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/contents/shouan_gaiyo.htm
    [*18] http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S48/S48HO031.html
    [*19] http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/contents/outline_of_regulation_for_lighter.pdf
    [*20] http://www.meti.go.jp/committee/gizi_0000002.html
    [*21] http://www.caa.go.jp/safety/task.html
    [*22] http://www.caa.go.jp/safety/pdf/120831kouhyou_6.pdf
    [*23] http://www.caa.go.jp/safety/pdf/120928kouhyou_2.pdf
    [*24] http://www.caa.go.jp/safety/index5.html
    [*25] http://www.caa.go.jp/safety/pdf/matome.pdf
    [*26] http://icanps.go.jp/
    [*27] http://www.shippai.org/shippai/html/index.php
    [*28] http://www.caa.go.jp/safety/pdf/120831legal_3.pdf
    [*29] http://www.news24.jp/articles/2012/08/29/04212815.html
    [*30] http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0304R_T01C12A0CR8000/
    [*31] http://www.caa.go.jp/safety/pdf/120831kouhyou_5.pdf

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  • 【委員会発足で暮らしの事故はどう変わる?】津田大介の「メディアの現場」vol.48

    2012-10-14 02:50  
    220pt
    この10月1日、消費者庁のもとで「消費者安全調査委員会」が発足しました。
    その役割は、消費者の身の回りで起こる製品・食品事故の原因を究明し、再発
    防止策を探ることとされています。同委員会によって、私たちの暮らしは、よ
    り安全になっていくのでしょうか。

    ======================================================================

    ◆「消費者安全調査委員会」発足、暮らしの事故の原因究明は進むのか?


    ――この10月1日、消費者庁のもとで「消費者安全調査委員会」が発足しまし
    た。[*1] この組織の役割は、消費者の身の回りで起きた製品・食品事故の原
    因を究明することだといいます。まず、消費者安全調査委員会とは何か、簡単
    に教えてください。

    津田:エスカレーターによるケガ、刺身による食中毒……製品や食品をめぐる
    「消費者事故」は、日常的に起こっていますよね。その再発を防ぐには、事故
    原因の調査が欠かせません。実際に現場に行く、関係者から聞き取りをする――
    消費者安全調査委員会はそうした調査を行い、何が原因だったのかを探り、再
    発防止策を立てる実働部隊 [*2] です。

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  • 中部横断自動車道をめぐる国交省の不可解な動き—津田大介の「メディアの現場」より

    2012-10-07 13:30  
    津田大介の『メディアの現場』vol.37(配信:2012.6.20+6.27) より
    国交省が高速道路会社NEXCOと組んで段階的に整備を進めている「中部横断自動車道」。現在、長坂〜八千穂間でその建設が検討されており、それに向けて住民アンケートが行われています。本来であれば、政策に民意を反映するために行われるはずの住民アンケート。しかし、国交省がその配布や集計をめぐって何らかの操作を行っていたのではないかとの疑惑が浮上しています。今回は、中部横断自動車道(長坂〜八千穂間)の建設に反対する「中部横断自動車道八ヶ岳南麓の会」[*1] の代表・米田佳孝さんをお招きし、お話を伺っていきます。
    ◆中部横断自動車道をめぐる国交省の不可解な動き
    ――住民アンケートから見えてきた日本の政策決定プロセスの実態とは
    津田:「全国総合開発計画」をご存じでしょうか。1962年から1998年までの間、国土の有効利用や社会環境の整備を行うため、国は5回にわたって長期計画を作成しました。その4回目、1987年に発表された「四全総(よんぜんそう)」――「第四次全国総合開発計画」。[*2] この中に「交通体系の整備」という項目があります。当時、バブル景気の始まりつつあった日本において、交通の利便性向上は大きなテーマでした。そこで国土庁は「全国1日交通圏」という構想を打ち出します。「全国の主要都市間の移動に要する時間をおおむね3時間以内、地方都市から複数の高速交通機関へのアクセス時間をおおむね1時間以内にすることを目指す」[*3] ――これを実現するため、全国に1万4000キロにも及ぶ高規格幹線道路網を張り巡らせる計画が立てられました。おそらく25年前の日本にとってこの計画は、大きな意味のあるものだったでしょう。けれどバブルが弾けて久しい2010年代現在と当時では、時代背景が大きく異なります。1980年代の構想に基いて、2010年代の現在、住民の意見をある意味無視するかたちで国交省が高速道路を造成しようとしているとしたら、果たしてどうでしょうか。本日は、四全総で計画された中部横断自動車道(長坂〜八千穂間)の建設に反対する「中部横断自動車道八ヶ岳南麓の会」の代表・米田佳孝さんに、この問題を追う過程で明らかになった政策決定プロセスの不全についてお話を伺っていきます。米田さん、よろしくお願いします。
    米田:よろしくお願いします。
    津田:まずは、今問題になっているこの道路について、簡単に教えていただけますか?
    米田:群馬県藤岡市と新潟県上越市をつなぐ「上信越自動車道」がありますよね。そして、神奈川県海老名市から愛知県豊田市へと至る「新東名高速道路」。この両者を長野県小諸市と静岡県静岡市清水区で結ぶ道路として計画されているのが「中部横断自動車道」です。道路の総距離は約132キロメートル。一部の区間――佐久南〜佐久小諸間、増穂〜双葉間では、すでに開通しています。増穂〜双葉間では2002年3月30日から2006年の12月16日にかけて、3段階で開通が進められたようです。[*4] 佐久南〜佐久小諸間が開通したのはつい最近の2011年3月26日ですね。[*5]
    津田:さらに現在、新清水〜増穂間、八千穂〜佐久南間でも整備が進められつつあると。こうした段階的なやり方を見ていると、「とにかく中部横断自動車道を作るんだ」という国交省の強い意志を感じますね。
    米田:今、私たち「中部横断自動車道八ヶ岳南麓の会」が反対しているのは、国交省が山梨県から長野県にかけて建設を検討している「長坂〜八千穂」区間の山梨県側の部分です。この基本計画そのものは1997年、国交省がすでに公示していました。けれど、これまで特に動きはなかったんですね。しかし2011年の2月、突然住民にアンケートが配られたんですよ。「中部横断自動車道(長坂〜八千穂)の『今後の整備方針』について、皆様のご意見をお聞かせください。」という。[*6]
    津田:アンケートが配られた……そもそも地元の人は、この道路計画を知っていたのでしょうか?
    米田:いいえ、今回初めて知ったという人が大半です。私もアンケート用紙を見て「なんだこれは」とびっくりしましたね。私は今、山梨県北杜市にある八ヶ岳の南麓に住んでいるんです。若いころからずっと住みたいと思い続けていて、60歳になってから、「ここを永住の地にしよう」と決めました。家を買ったのは3年ほど前ですが、この時はもちろんそんな計画があるなんてまったく知りませんでした。
    津田:中部横断自動車道でも、長坂〜八千穂間については、これまでずっと手付かずで来たわけですよね。それがなぜ2011年2月になって、事態が動き出したのでしょう?
    米田:このアンケートが行われたきっかけは何か――私も気になって調べてみたんです。国交省はこれまで、昔立てられた道路計画をもとに、がむしゃらに建設を進めてきました。けれど2010年4月、国交省の副大臣を当時務めていた馬淵澄夫さんが、これに「待った」をかけたんです。[*7] まずは道路の計画段階でデータを集め、地域の声を聞いて、本当に建設する必要があるか評価しよう――馬淵さんが導入したこの制度は、「計画段階評価」[*8] と呼ばれます。2011年2月のアンケートは、その一環として行われたわけですね。
    津田:今までは国交省内部で道路を作ることを決めてしまってから、「高速道路通しますから」と、地元住民に話をしていた。そのプロセスが変わったんですね。
    米田:はい。私も調べるうちに、「国交省はちゃんと地元の意見を聞いて評価しようと考えているんだな」と思うようになりました。
    津田:でも、八ヶ岳って自然がとても美しいところじゃないですか。だから、長坂〜八千穂間で高速道路を開通させるなんて、あまり賛成する人が多いようには思えないのですが。採算性も見込めそうにないし。
    米田:そうなんです。正確に言うと、地元の住民にも三層あります。この土地に先祖代々住んでいるような人たちは、「長いものには巻かれろ」というタイプが多く、あまり意見を表明しません。別荘族も冬の間はほとんどいないから、意見を表明する機会がないわけです。地元に家を買って住んでいる新住民――ここに移り住んで20年経っても「新住民」というカテゴリーなのですが、この人たちは本音を話してくれます。話をしてみると、もうみんな反対。そんな感じですね。
    津田:この第1回アンケートでは4つの設問が立っています。そのうち最後の
    【質問4】は「その他中部横断自動車道について期待すること懸念すること」という自由記述式の設問です。きっとここには「道路建設には反対します」と書いた人が多かったのでしょうね。結果はどうでしたか?
    米田:この問題を審議している社会資本整備審議会 道路分科会 関東地方小委員会 [*9] が2011年7月7日に開かれたんですね。そこで配布された「第1回意見聴取の結果について」[*10] という資料によると、「その他中部横断自動車道について期待すること懸念すること」いう設問の結果はエリアによって違っています。そのうち「道路整備への懸念に関する意見」を表明した人は、私が住んでいる山梨県北杜市で圧倒的に多く、全体の64%を占めていました。これに対し、「道路整備への期待に関する意見」では、長野県側の南佐久郡、佐久市、小諸市が65%を占めています。[*11] つまり、真逆の結果が出ているんです。
    津田:長野県側で開通賛成派が多いのは、いったいなぜなのでしょう?
    米田:長野県側でも南佐久郡、佐久市、小諸市は、すでに中部横断自動車道が開通しているエリアなんです。となると当然、開通賛成派が主流になりますよね。そんなエリアにもアンケートを配布したことそのものが問題なんですけど――。
    津田:気になることがもう一つあります。この第1回目のアンケートでは、中部横断自動車道を建設するという前提で2つの案が挙げられていました。
    「【(1)案】全区間で新たに道路を整備する案」と「【(2)案】旧清里有料道路を一部区間で有効利用する案」がそれです。【質問3】ではこれを踏まえ、「提示した対策案の他に考えられる対策案」を自由記述式で訊いています。この質問の結果、どんな対策案が出てきました?
    米田:はい、第3の案が浮上してきたんですね。それは、「国道141号線のバイパス整備により、走行性・安全性を向上し時間短縮を図る」というものです。[*12] 国道141号線とは、長野県の野辺山と中央自動車道を結ぶ道路です。地元の人はみんな、この国道141号線を使っているんですね。それで、ここを整備して使いやすくしてほしいという声が多かったわけです。[*13] その後、2011年10月5日に開かれた委員会では、とてもまともな審議が行われました。従来の2つの高速道路建設案に加え、第3案として国道141号線の改良案、そして第4案として「整備なし」いう4つの案が設定されました。そして、第2回目のアンケートをして、地元の人の意見を訊きましょうということになったんですよ。
    津田:少なくともこの時点までは、地元住民の意見を聞いて道路の必要性を検討するという計画段階評価――民主党が政権を取ったことで実現した「行政への政治によるガバナンス」がきちっと機能していたということですね。
    米田:はい。そうして2012年1月から2月にかけて、第2回目のアンケートが行われました。[*14] しかし、ここにきて、いろんな問題が起こっているんです。
    津田:アンケートをすることになったはいいものの、そのやり方に問題があったと――。
    米田:このアンケートは、3種類の方法で実施されたんですね。まず、それぞれの家にアンケート用紙をダイレクトに郵送する「戸別配布」。そして、高速道路のサービスエリアや道の駅、県や市の出先機関なんかに置いておいて、自由に持っていってもらう「留置配布」。それから、ウェブによるアンケートです。このうち問題があったのは、「戸別配布」と「留置配布」です。
    津田:具体的には、どのような問題があったのですか?
    米田:まず、戸別配布から。山梨県北杜市では、アンケート用紙を受け取れなかった人が大変多いんです。まず、別荘にはほとんどアンケート用紙が送られていませんでした。別荘の数は、私が調べた限りでは8000戸ぐらいあるようです。2012年4月12日開催の委員会で配られた「第2回コミュニケーション活動の結果について」という資料によると、山梨県北杜市で戸別配布された枚数は、最終的には21,866枚でした。[*15] この配布の仕方にまず問題があります。
    津田:長野県側ではどうでしたか?
    米田:長野県側を見ると、前回同様、すでに中部横断自動車道が開通済みだったり、整備中だったりするエリアでもアンケート用紙が配られていました。佐久市では18,730枚、小諸市で43,933枚が配布されています。しかも、第2回アンケートには「本アンケートの対象区間」としてアンケートを取るエリアが明記されています。これらのエリアは、その対象区間外となっているんです。ちょっとおかしくありませんか。本来の対象エリアは、小さな村ばかりで、あまり人口がありません。ですから、佐久市や小諸市のような住民数の多いエリアの人たちがアンケートに回答したら、地元の声はかき消されてしまいます。まあ、私たちは、長野県側のことについては、あまり言及するつもりはありませんが。
    津田:なるほど。国交省は「中部横断自動車道を開通させよう」という自分たちにとって都合のいい結果を誘導したい。だから、本来であれば対象外のエリアにもアンケートを配布した――そんな見方もできるわけですね。
    米田:そうですね。
    津田:先ほどのお話では、アンケート用紙をいろいろな場所に置いておく「留置配布」にも問題があった、ということですよね。具体的にはどんな問題があったのでしょう?
    米田:このアンケートは、1人1票、投票できるんです。つまり、家族が4人いれば、4票持っているということになります。でも、山梨県の留置先では「各世帯につき1枚しか渡さないよう、国から指導を受けています」と言っていたんです。僕が文句を言ったら、状況は少し改善したんですけど――。ところが長野県側の留置先には、どんどん持って行ってくださいと言わんばかりに、アンケートがバーンと積んであるわけですよ。
    津田:(「第2回コミュニケーション活動の結果について」を見て)各留置所に置かれたアンケートの枚数も、資料にまとまっているんですね。[*16] ただ、場所によってその数には、だいぶバラつきがあるようですが……。
    米田:はい。今回は45個所に置かれたんですね。このリストを見ていると、一部に例外はあるものの、次のような傾向があることがわかります。地元住民が行きやすい市役所やその支所では置かれている枚数があまり多くない、道の駅やサービスエリアでも同様――と。少し変わった留置先は、県などにある国交省の出先機関です。こういうところで配布枚数が多いんですね。
    津田:だいたいどこも数十枚から数百枚程度の配布。なのに「山梨県県土整備部道路整備課」のような国土交通省の出先機関には、1,912枚とすごくたくさん置いてある――。回答数も602枚と高めです。県庁の道路整備課なんて、普通行かないですよね。
    米田:行く人間は、役人か出入りの業者みたいな関係者でしょう。
    津田:建築関係の役場に留置されているアンケートの枚数が多い――端的に言えば、「ヤラセの可能性がある」ってことですよね。
    米田:はい。私はヤラセだと思っています。統計学的に見ても明らかに不自然です。
    津田:つまり、国交省が自分たちにとって有利な方向に話を進めるため、ヤラセとは言わないまでも、結果に影響を与えるため、動員をかけた可能性があると。
    米田:そういうことだと思います。私たちは、アンケート用紙が手に入らないので、まわりに呼び掛けてウェブからたくさん回答を行ったんですよ。最終的な回収件数は戸別配布で11,752件、留置配布で4,619件、ウェブ方式で3,521件となりました。
    津田:今回の同地区の高速道路整備案は全部で4案あるわけですよね。それぞれ実施した場合のコストはどれくらいなのでしょう?
    米田:これがアンケート用紙に載っているんです。[*17] 列挙すると、次のとおりです。
    --------------------------------------
    ◇案1 全線整備案
    (中部横断自動車道を長坂〜八千穂間の全線4車線で整備する案)
    約2,100〜2,300億円
    ◇案2 一部旧清里有料道路活用案
    (中部横断自動車道の一部に旧清里有料道路を活用する案)
    約1,950〜2,150億円
    ◇案3 国道141号(一般道)改良案
    約1,300〜1,400億円
    ◇整備なし
    0円
    --------------------------------------
    つまり、国交省が採用しようとしている「案1 全線整備案」に比べると、私たちが推し進めようとしている「案3 国道141号改良案」は850億円ほどコストが安くなる計算です。
    津田:コストが850億円削れて、地元住人の賛成も得られる。だとしたら、案3は「折衷案」としては悪くないですよね。
    米田:それなのに――というところですよね。
    津田:アンケートの結果はどうだったのでしょう?
    米田:結果についてお話しする前に、そもそも、第2回目アンケートの設問設定が妥当だったかどうかについて、考えなければなりません。第1回目の住民アンケートの結果、それまでの2案に新たな2案が加わって全4案となり、考えられる選択肢がすべて出揃いました。ならば、どれがもっともよいと思うか、一つだけ選ばせるのが普通ですよね。しかし実際の設問は、4つの対策案を対象に、自由記述で回答させるというものでした。[*18]
    津田:(第2回目アンケートを見て)「質問2 6-7頁に示した以下の対策案
    (※4つの対策案のこと)について、ご意見をお聞かせ下さい」――本当だ。回答は自由記述になっていますね。ここまで来たら、4つの案のうち、どれを採用するかを詰めていくのが筋ですよね。
    米田:はい、第1回アンケートの結果をふまえて行われた委員会で、案が4つに増やされた。第2回目のアンケートでこの4つの案の賛否を地元住民に問うというのが、当然の文脈です。アンケートの設問設定がおかしいだけではありません。国交省がアンケートの結果をどのように集計したか。実はここからが今日の話でもっとも面白いところなんですよ。第2回目のアンケートでは、文明国ではありえない奇妙かつ正当でない分析および集約方法がなされているんです。
    津田:それはどういうことでしょう?
    米田:高速道路の建設に傾くように、アンケートの作成や配布方法が作為的に行われたのではないかと先ほど申しました。にもかかわらず、その結果は、国交省の狙いどおりにはならなかったのです。だから、非常に不思議なアンケートの集約方法が採られたのだと思います。先ほど触れた質問2の結果をちょっと見ていただけますか?[*19]
    津田:(「第2回コミュニケーション活動の結果について」を見て)あ、これは……!
    米田:「【参考】各対策案へのご意見の状況」ということで、エリア別、アンケート回答方法別に結果がまとめられています。つまり、これを見ても、対象エリア全体の結果がわからない。
    津田:しかも、もともと「4案のうち、どれを支持するか」という選択式の設問になっていないんですね、これ。だとするとこれは普通に設問に答えれば、あいまいな回答になりやすい。そして、はっきりとした意見を持った人からは、第1案、第2案にはこういう理由で反対、第3案にはこういう理由で賛成――と回答する。でも、こうした回答を一つ一つ丁寧に読んでいけば、住民の意見は集約できるんじゃないですか?
    米田:もちろんできます。今私たちは、一つ一つの回答を読み取り、集約する作業を行っています。まだ作業の途中ですが、山梨県側、特にヤラセのなかったウェブ回答では90%以上が圧倒的な第3案支持になっているようです。しかし国交省はこれを、4案いずれかに言及したら、賛成だろうと反対だろうと、同じ「1票」というように集計したんです。
    津田:賛成も反対も1票……!? ってこのアンケート結果の資料にしっかり明記してありますね。「意見数の中には『賛成意見』『反対意見』『その他』の意見数が全て含まれている」って。
    米田:ここまでいくと、もう笑っちゃいますね。文明国ではありえない稚拙さです。ただ、彼ら自身もさすがに「これじゃまずい」と思ったんでしょう。質問2に寄せられた意見を一部抽出し、「ご意見の例」として掲載したりしています。[*20]
    津田:「ご意見の例」の方には、にあえて「無作為抽出」と銘打っているのがおかしいですね(笑)。
    米田:日本の国が立派なのは、自分たちにとって不利になるようなこういうデータも、すべて公開しているところです。今まで紹介してきた資料や委員会での議論も、委員会のウェブサイトで全部チェックできるんですよね。[*21] すごく面白いですよ。第2回目住民アンケートの戻りのはがきさえ、個人が識別できる情報を黒塗りしたうえで、すべてPDF化して公開しているんです。[*22]
    津田:すごい! オープンガバメントとしては理想的ですね。国の調査で明らかになった住民の声が、誰でも見られる――。一昔前では考えられなかった話です。こういう宝の山がウェブに上がっているにもかかわらず、メディアはそこに全然注目しない、と。
    米田:馬渕さんがこのように、住民の声を聞いて公開する、という下地を作りました。そして、かたちのうえでは、それがちゃんと実行されています。これが日本のお役所のいいところです。
    津田:そうなんですよね。役所でも現場で働いている人たちは、本当に丁寧に仕事している。
    米田:そう、本当にそうなんです。でも、最終的には国交省では、上のほうからの声か何かが降りてくるんでしょう。「このアンケート結果を基に、高速道路を作れるようにしろ」というようなね。現場の人は苦し紛れに、今まで見たこともないアンケートの集計方法を考えたんだと思うんです。官僚たちが自分たちの都合のいい方向に物事を動かすため、資料のまとめ方や表現を操作する――これを「霞ヶ関文学」と呼びますよね。第2回目のアンケートの集計方法なんて、まさにその白眉でした。いや、よくもここまでやるなと驚きます。
    津田:設問設定をとっても、集計方法をとっても、かなりアクロバティックなウルトラCを決めてきたという感じですね。
    米田:公開されている資料を見ていると、「何が何でも俺たちは高速道路を作るんだ」「毛筋ほどの白があれば『真っ白』と言うんだ」――そういう国交省の意志が伝わってきます。年に数回の委員会では、こういうわかりにくい資料を忙しい先生方に見せ、その場で担当者がもやもやっと説明するわけですよ。それでパーッと取りまとめをすると。
    津田:そして、委員会のウェブサイトに上がっているような議事録ができあがるわけですね。
    米田:はい。委員会の出席者全員がチェックしてからアップするので、少しタイムラグがあるのですが、これにすべてが載っています。たとえば、不思議なアンケートの集計結果をいきなり出されて、委員はどう反応したか。2012年4月12日に開催された委員会の議事録 [*23] を見てください。
    津田:二村さんという委員が、まさに結論を言っていますね。「正直申し上げて、こういう結果の出し方というのを今回初めて拝見いたしました。注目の集まっているものを、賛成も反対もすべてまぜた形で集計するというのは、国交省ではよくやられる手法なのでしょうか。正直申し上げて、こういうのは余り世間一般にはみないような気がするのです」。[*24] 審議会の委員もやっぱり戸惑ったんですね(笑)。
    米田:事務局はそれに対し、こんな言い訳をしています。「我々も集計の仕方についてはかなり悩んだところがあって、今まで、こういった出し方をしている例というのはなかなかないと思っています。(略)確かにご説明の仕方が難しいという指摘が今までもあったところではあるのですが、現時点ではこういう整理の仕方にさせていただいているというところでございます」(笑)。これに続き、審議会の委員長である石田さんは「これ、関心の高さを示しているということを強調し過ぎてもし過ぎることはないですね。賛否ではないということをね」と弁明しています。[*25]
    津田:これは苦しい言い訳ですね……(笑)。
    米田:このように二村さんをはじめとする委員の方々から本質的なツッコミは入ったものの、基本的には高速道路を作る方向でまいりましょう、という結論ありきで議論が進んでいます。津田さんもよくご存じのとおり、審議会や委員会では、開催前に結論を決めて資料を作ります。サイトに上がっている「対策案の評価について」という資料を見てください。[*26] ここに「中間とりまとめ(案)」として記載されているのが今回の結論です。「対策案としては高速道路の整備(【案(1)】全区間で新たに道路を整備する案また【案(2)】旧清里有料道路を一部区間で有効利用する案)が有効であると考えられる」と。[*27] そもそも、会議前に話し合いの結論を資料にまとめるなんて、本来ならばあってはならないことですけどね。
    津田:今回はアンケートの集計方法に対し、委員から疑問が出ているにもかかわらず、結論は揺るがない――。
    米田:それで、ちょっとしたガス抜き策を作っているんです。「追加的なコミュニケーション活動内容(案)」という資料にその内容がまとまっています。[*28] 行政関係者や抽選で選んだ住民代表、各団体の代表を招き、第三者のコーディネーターを立てて、公開形式で「コミュニケーション活動」を行う、と。これを受けてこの7月8日、長野県の南牧村中央公民館で意見交換会が開かれることになっています。[*29] まあ、地方でよくやっているシンポジウムですね。どう考えても、高速道路を通す案で決定するでしょう。原発再稼働問題のとき起こったことと非常によく似ていますね。
    津田:流れは非常によくわかりました。何だか釈然としませんね。今回だって、ちゃんと使われる道路ができるならいいですよ。でも、使いもしない道路に無駄な税金がかけられてしまうわけでしょう。その背後では消費税増税がしれっと通されているわけですからね。
    米田:私は専門が経済学なんです。その観点からすると、中部横断自動車道を通すことで、地元経済がダメになると思います。やっぱり地域GDPを上げようとするなら、人口を増やすのが基本なんですよ。このあたりは地方の過疎化が進む中、人口が少しずつ増えている地域です。まだ住民票は首都圏に置いたまま移していない人が多いけれど、みんながリタイアし始めれば、ダーッと移し始める可能性もあります。
    津田:そういう人たちが来ることで、地域経済が活性化していく可能性が高いということですね。
    米田:はい。このあたりの魅力は、なんといっても自然の美しさと静けさです。でも、高速道路ができればそれがなくなって、住みたくなくなってしまいますよね。実際、全国的にも高速道路ができたエリアでは、ほとんどが通過地点となってしまって、経済基盤の沈下が進んできています。
    津田:なるほど――。この問題は僕も怒りを覚えますね。
    米田:でもね、調べる過程でわかってきたんですけど、国交省はこんなのへっちゃらなんですよ。住民がなんと言おうと、ブルドーザーで自然を潰して道路にしちゃう。そんな勢いですよね。日本は、正当な議論が通らない国になってしまっているんですね。これを何とかしなければ、日本はますます堕ちて行ってしまいます。
    津田:一度計画として進めて、予算もとって――という案件は、もう止められない。だから途中で制度が変わろうがロジカルに反論されようが、「進める」という結論ありきで報告書がまとめられてしまう。霞ヶ関ではよくみる光景なんでしょうが――。
    米田:これはもう、日本の官僚の体質となってしまっていると言っていいでしょう。習い性で自分たちの権益の拡大を謀っているだけではないでしょうか。この道路政策の決定に携わっているほとんどの人は多分、現場を見に来ていないと思うのです。企業経営ではあり得ないことですよ。官僚たちは、今の時代に生きる一人の生身の人間として、自分の頭で考えることをしていない。空恐ろしくなってきます。これは私たちが住む地域だけで起こっている特殊な事例ではありません。日本全国で同じやり方がまかりとおっているんですよ。
    津田:おっしゃるとおりですね。そして、この問題は単に道路行政という特定の問題ではなく、日本の国の運営方法を正当なものにしていくための試金石とも言えそうですね。
    米田:制度疲労を起こしている日本の官僚制度に、計画段階評価といういい方式が導入されたのですから、これをきちんと機能させることは、とても意義深いと思います。正当な情報収集を行い、それを基に正当な議論を経て、政策を決定していく。これは本当に重要なことです。
    津田:米田さんが代表を務めている「中部横断自動車道八ヶ岳南麓の会」では今後、具体的にどのような活動をしていく予定ですか?
    米田:私たちは、とにかくオープンな情報交換ができる場をネットで作っていきたいと思っています。ホームページがすでにあるので、今回の問題に関する知見を複数人で読みやすく編集して上げていき、Facebookのようなソーシャルメディアをからめていきたいんです。私の根底には「多くの人が参加して、オープンに議論して、そこから出てくる意見は正しい」という考え方があります。だから、より多くの人を巻き込んでいきたいんですよね。そして、私たちの活動がきっかけになって、「最近、日本の政策決定の仕方がまともになったよね」とみんなが感じるようになるといい。そういう方向に活動を進めていきたいんです。
    津田:おっと、「動員の革命」みたいな話になってきましたね……!
    米田:実はそのとおりで、山梨県北杜市でデモをやろうと思っています。私の家の近くに、八ヶ岳高原大橋という橋があるんです。富士山も八ヶ岳も南アルプスもバーンと見えるすばらしい橋です。まさにこの橋が、この高速道路建設の象徴的な場所なんですが、ここを往復する楽しいデモをやりたいんですよね。「こんなすばらしいところで、こんなすてきなデモはない」というのをやって、ステッカーを参加者にいくらかで買ってもらう。それを活動資金に、毎年、毎年だんだん人数を増やして、大きな流れにしていく……。まだ僕のアイデア段階なんですけどね。
    津田:お話を伺っていると、今回の委員会は、まさに日本の政策決定の縮図ですよね。日本の委員会や審議会はシステムとして硬直しています。でも、ウェブでオープンにされているデータをみんなで検証し、「これはおかしいだろう」という声を上げていけば、政策決定のプロセスにも、きちんと民意が反映されるようになるかもしれない。この問題を通じて、日本を改革していくきっかけが、本当に作れるかもしれません。
    米田:私たちもそれを現実にするために、力を注いでいきます。
    津田:この動きを盛り上げて、市民型の政策決定を実現していきたいですね。本日はどうもありがとうございました。 《この記事は「津田大介の『メディアの現場』」からの抜粋です。ご興味を持たれた方は、ぜひご購読をお願いします。》 ▼米田佳孝(よねだ・よしたか)
    「中部横断自動車道八ヶ岳南麓の会」代表。株式会社YONEDAオフィス代表、株式会社insprout取締役。慶応義塾大学経済学部卒業、慶応ビジネススクール修了。日本IBMおよび米国IBM勤務後、ベンチャー企業や大手企業での新規事業の立ち上げを実践。その後自身で創業し、20年以上にわたり、ブランド・ビジネスを中軸においた企業経営を実践。これまでの設立企業数は世界6か国で10社超。現在は環境テクノロジー分野のベンチャー企業の立ち上げに奮闘のかたわら、グロービス経営大学院でベンチャー経営戦略の講座を担当。
    [*1] http://cyubu-odando.nanroku.net/
    [*2] http://www.kokudokeikaku.go.jp/document_archives/ayumi/25.pdf
    [*3] 以下の資料の84ページ(PDFのページ番号では94ページ)に該当する記述がある。
    http://www.kokudokeikaku.go.jp/document_archives/ayumi/25.pdf#page=94
    [*4] http://www.ktr.mlit.go.jp/nagano/reconst/koukikaku/pdf/process.pdf
    [*5] http://www.city.saku.nagano.jp/cms/html/entry/4530/229.html
    [*6] アンケートの内容はWebサイトに残っている。
    http://www.chubuoudan.com/result/index.html
    [*7] http://www.mlit.go.jp/report/interview/mabutihukudaijin100405-1.html
    [*8] http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-jigyohyoka/ir-jigyohyoka.pdf
    [*9] http://www.ktr.mlit.go.jp/road/shihon/index00000014.html
    [*10] http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000043722.pdf
    [*11] 以下の資料の32ページ(PDFのページ番号では33ページ)に該当する記述がある。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000043722.pdf#page=33
    [*12] 以下の資料の30ページ(PDFのページ番号では31ページ)に該当する記述がある。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000043722.pdf#page=31
    [*13] 国道141号線の改良案については、2011年(平成23年)10月5日に開かれた同委員会で検討されている。
    配布資料:http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000045391.pdf
    議事録:http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000050539.pdf
    [*14] 第2回目アンケートの内容はWebサイトに残っている。
    http://www.chubuoudan.com/pdf/second_summary.pdf
    [*15] 以下の資料の3ページ(PDFのページ番号では4ページ)に該当する記述がある。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000060447.pdf#page=4
    [*16] 以下の資料の4〜7ページ(PDFのページ番号では5〜8ページ)に該当する記述がある。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000060447.pdf#page=5
    [*17] アンケートの8〜9ページ(PDFのページ番号では5ページ)、「概ねの費用」を参照のこと。
    http://www.chubuoudan.com/pdf/second_summary.pdf#page=5
    [*18] 第2回目アンケートの最終ページに設問がある。
    http://www.chubuoudan.com/pdf/second_summary.pdf
    [*19] 以下の資料の38ページ(PDFのページ番号では39ページ)に結果がまとまっている。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000060447.pdf#page=39
    [*20] 以下の資料の16〜37ページ(PDFのページ番号では17〜38ページ)にかけて掲載されている。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000060447.pdf#page=17
    [*21] http://www.ktr.mlit.go.jp/road/shihon/index00000014.html
    [*22] 以下のページに「○アンケート(ハガキ)」として、通し番号付きでアンケートはがきがアップされている。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/road/shihon/road_shihon00000078.html
    [*23] http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000061309.pdf
    [*24] 以下の議事録の26ページに該当する記述がある。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000061309.pdf#page=26
    [*25] 以下の議事録の27ページに該当する記述がある。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000061309.pdf#page=27
    [*26] http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000060450.pdf
    [*27] この「中間とりまとめ(案)」はその後、正式な「中間とりまとめ」となった。
    http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000062996.pdf
    [*28] http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000060451.pdf
    [*29] http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/koufu_00000109.html

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  • 「反日デモ」はメディアでどう報じられ、伝わったか 〜中国在住フリーライター・ふるまいよしこ氏に訊く

    2012-10-05 12:00  
    【メディアが報じた反日デモの姿とは?】津田大介の『メディアの現場』vol.47 より
    この9月、中国各都市で大規模な反日デモが起こり、日本でも話題になりました。その原因は、日本が中国との間で領土争いをしていた尖閣諸島(釣魚島)を日本が国有化したからではないかと見られています。しかし真の原因は明らかになっていません。尖閣諸島や反日デモをめぐる騒ぎが、新聞やテレビ、そしてネットなどのメディアでどう扱われたか――本メルマガでは、一連の出来事の本質は、いわばメディアの合わせ鏡を通して初めて見えてくるのではないかと考えました。そこで今回は、中国事情に詳しい北京在住フリーライターのふるまいよしこさん、そして若手中国ウォッチャーとして注目されているフリーランスITライターの山谷剛史さんのお二人にお話を伺います。
    ◆「反日デモ」はメディアでどう報じられ、伝わったか  〜中国在住フリーライター・ふるまいよしこ氏に訊く
    津田:9月11日ごろから9月下旬にかけて、中国で反日デモが起こりました。[*1] デモは中国各都市に飛び火。一時は125都市以上にも拡大したとされます。[*2]
    デモ参加者は一部暴徒化し、ユニクロやセブンイレブン、ジャスコのような日系施設を襲っては破壊や略奪を行い、休業や操業停止に追い込みました。[*3] その様子は、テレビや新聞をはじめとする日本のマスメディアでも大きく報じられています。
    事の発端は何だったのか――東京都の石原慎太郎都知事が今年4月、中国との間で領土争いの対象になっていた尖閣諸島(釣魚島)を都で買い取る計画を発表しました。その後、日本は同島を国有化する方針を固め、9月11日、それを閣議決定します。
    このタイミングで、これだけ大規模な反日デモが起こった理由は、それがきっかけであろうとされるものの、真の原因は明らかになっておらず、さまざまな憶測が飛び交っています。
    「中国内部の政治闘争がからんでいる」「同国で貧富の格差が拡大しているせいだ」など。
    社会主義国の中国では、新聞、テレビなどのマスメディアは実質、そのすべてが政府によってコントロール可能であり、[*4] ネットの情報についても、検閲が行われています。
    日本による尖閣諸島の国有化や反日デモといった一連の出来事を現地メディアがどう報じたか。それを追うことによって、今回起きた反日デモの本質や中国政府の思惑、そして日中関係の現状が見えてくるに違いない――そう考え、「メディアと反日デモ」という切り口を中心に、北京在住のフリーライター・ふるまいよしこさんにお話を伺っていくことにしました。ふるまいさん、よろしくお願いします。
    ふるまい:よろしくお願いします。
    津田:今回のデモには、さまざまな謎がつきまとっています。まず第一に、これは国が仕掛けた官製デモだったのか、それとも人々が自発的に始めた自然発生的なデモだったのか。世間の意見は、そこで分かれていますよね。ふるまいさんは、どう捉えています?
    ふるまい:私は「官製デモ」と考えています。中国人のツイッターユーザーさんがこの前、すごく面白いツイートをしていたんですね。「政府が『自発的だ』と言うデモは政府が組織していて、政府が『誰かによって(違法に)組織された』と言うデモは、自発的なものである」と。
    今回も、見事にその図式が当てはまります。あれだけ激しい略奪が横行したのに、逮捕者の数はものすごく少ない。これはどう見ても、官製デモでしょう。中国でそれを否定する人は、多分いないと思いますよ。
    津田:今回の反日デモは、多くの都市で起こっているじゃないですか。そのほとんどが官製デモだったとしても、それに触発された自発的なデモも各地で起こっていたんじゃないかと思うんです。そのあたりはどうお考えですか?
    ふるまい:私の考え方はこうです。日本が9月11日、尖閣諸島を国有化した。それを受けて、中国政府は全国メディアの一面に、それを非難する記事をバッと載せた。とにかく、民衆の反日スイッチをオンにしたわけですよ。
    「釣魚島の主権はわれわれにあり」――そんな見出しが並んでいたら、中国人は多少なりとムードに煽られるところがあったでしょう。みんな「釣魚島はわれわれのもの」という教育を受けて育っていますから。
    そうして反日の雰囲気をまず盛り上げてから、政府がデモを組織したのではないかと。聞いた話では、北京の日本大使館前で行われた反日デモにも、政府が集めたと思しき人や私服警官が相当数入っていたそうです。
    そしてデモ隊の中に(反日だけではなく、反政府スローガンを叫びそうな)「不審者」が入ってくると、彼らが「あそこに変なやつがいる」ということで、周りで目を光らせている制服警官を無線で呼び込み、つまみ出させていたというんです。
    私、反日デモの取材をしていた日本人の記者さんとお話ししたんですね。その方は果敢にも、デモ隊の中に何度か混ざり込んでみたそうなんです。
    そうしたら、そのつど警官が何人か寄ってきて、引っぱり出されたと。私が「デモ隊には私服警官も入っているらしいですよ」と教えたら、彼も「そういうことだったのか」と納得していました。
    ◇反日デモを報じなかった現地メディア
    津田:ふるまいさんは香港に14年、北京に11年お住まいで、ずっと中国をウォッチしていますよね。今まで中国では、何度も反日の動きが起こっているじゃないですか。
    僕の知るかぎりでも、たとえば2005年には、当時首相だった小泉純一郎と閣僚による靖国神社参拝などが引き金となって、大規模な反日デモが起きています。[*5]
    そうしたデモと今回のデモで、どこか違っているところはありますか?
    ふるまい:比較に値するのはやはり、「1972年の日中国交正常化以来、最大規模」と言われた2005年の反日デモですね。
    今回はあの時と比べて何が違っているか――まず、規模がそれを上回っていて、より広域にわたっているんですよね。たとえば9月18日に行われたデモは、その範囲が100都市にも及びました。[*6]
    さらに2005年の時は中国人がわりとのほほんとしていたんですよ。前回は学生さんが活動の中心になったと言われています。なのに、大学の先生をしている私の知り合いは、デモが起きたことをその日の夜まで知りませんでした。届くところにはデモ情報が届いていたけれど、知らない人は全然知らなかった。
    活動の仕方も違っています。あの時は、西から東へとデモ隊が街を練り歩いたんですね。それが今回は、すごく限られたところを中心に、ぐるぐる回っている。
    私が日本大使館前のデモを見に行った時は、デモ隊が中学校の校庭のマラソンコースのようなごく狭い範囲をぐるぐると行進していました。その範囲から出ないよう、警官が張っているわけです。完全に人々が暴れることを想定していて、それを防止する部分にすごく力を注いでいました。さっきも言ったように、私服警官をいっぱい入れていたりして。
    「囲い込み」というんですか、交通も完全に遮断していました。大使館前は、片道3車線くらいある大きな道路なんですね。そこを東西で完全に区切っちゃって、ぐるぐる回らせている。傍から見ていて、「こんなに整備されていて、きれいなデモはないでしょ」というくらい、管理されていましたね。
    2005年のデモでは現場に行かなかったので、実際どういう具合だったかはわかりません。当時の混乱は、日本大使館に誰かが石を投げたところから始まったといいます。海外の通信社から聞いたところによると、石を投げたのは、かなりコアな反日グループで、投石の瞬間には、デモ隊のほとんどがすでに撤収していたらしいです。2005年のデモでは政府は明らかに学生や大学を卒業したばかりの社会的経済エリートを担ぎ出したんですね。彼らは当時、経済成長を続ける中国の「輝ける星」たちだったんです。
    津田:中国のマスメディアは、今回のデモをどう報じていたのでしょう?
    ふるまい:実は今回の件を、現地メディアはいっさい報じていないんですね。もちろん、デモの発端になった尖閣諸島紛争については、先ほども言ったとおり、取り上げています。けれど「この都市ではこんなデモがあり、何人集まりました」といったデモそのものを取り上げる報道は、まったくありませんでした。
    津田:日本ではあれだけ「この都市ではこんなデモがあり、何人集まりました」という報道があったので、にわかには信じがたい不思議な話ですね。それはなぜですか?
    ふるまい:メディアの報道によってワケのわからない人が出てきて大騒ぎになり、事態がおかしな方向に向かうのが怖かったんでしょう。
    これについては、ひとつ思い出すエピソードがあります。2010年に起こった「尖閣諸島中国漁船衝突事件」の時の反日デモです。
    2010年9月7日。沖縄県・尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、「公務執行妨害」のかどで中国漁船の船長が日本に逮捕されました。[*7]
    あの時は中国側がすごく怒ったんですよね。そして反日デモが起きました。あれも初めは、ゆる〜い官製デモだったんです。政府が煽って、うわっと盛り上がった。
    けれど、約1週間おきで各都市に飛び火していくうちに、陝西省の都市で、反政府スローガンが出てしまったんですよ。[*8] デモが各地で広がりを見せるうちに、お祭り状態になり、なんでも不満を叫べ! という人たちが現れた。中国ではデモなんて「許される」ことの方が少ないので、そういう不満分子が出てきやすいわけです。
    それで政府は慌ててデモを止めさせました。今回の反日デモでは、その反省を踏まえ、人々をメディアで煽りすぎないよう、また不審人物に注意しながらデモを行わせたのではないでしょうか。
    津田:今回の反日デモも「反政府運動に転じるかもしれない」と心配されていましたからね。
    1989年4月、中国の改革派指導者・胡耀邦総書記の追悼集会がきっかけで、北京の天安門広場を学生たちが埋め尽くし、大規模な民主化要求運動を起こすという「天安門事件」が起こりました。
    あの事件と今回の反日デモは似ていると指摘する人も、中にはいるくらいです。
    ふるまい:中国ウォッチャーにとって、天安門事件は確かに特別な出来事です。「デモがある」「集会がある」「大きな取り締まりがある」と聞くと、私もあの事件を思い出します。
    中国政府は天安門事件後、同じ土壌ができないよう、その芽をたくさん引っこ抜いてきました。人々が自発的に集まれる場所をなくしたり、集まろうとしたらすぐに規制を入れるようにしたり――あれを境に中国社会がだいぶ変わったのは事実です。
    けれど今回、天安門事件を引っぱり出すのはどうかなと私は思いますね。あれは中国人が自国に向けて、不満を爆発させた事件じゃないですか。対して今回の反日デモでは、日本に矛先が向いていますから。
    ◇毛沢東像は何を意味するか
    津田:もうひとつ気になることがあります。今回のデモでは1949年に今の中国――「中華人民共和国」を建国した毛沢東の肖像が担ぎだされましたよね。僕らにしたら、「え、なぜ毛沢東?」と不思議です。あれはどのように理解すればよいのでしょうか?
    ふるまい:毛沢東が引っ張り出された理由については、日本のメディアを見ていても、さまざまな意見がありますね。「あれは現政権に対する批判である」「共産主義華やかなりし頃に戻りたいという気持ちの表れなのだ」――まあ、そういう意見には、多くの中国人が首をひねっていますけど。
    中国人、特にツイッターユーザーたちは毛沢東像を見て、「なんで今ごろ……」と震え上がっているんですよ。
    1965年、共産党主席を追われた毛沢東は、その座を奪還するため、10年にもわたる権力闘争を行います。この間、中国は内戦状態に陥り、反動分子の処刑などによって、2000万人以上が犠牲になったといわれています。
    中国人は彼を見ると、その「文化大革命」を思い出すんです。
    ただ面白いことに、今回毛沢東の肖像を掲げて練り歩いたのは、文化大革命を知らない若い世代でした。知識はあっても、経験はしていない人たちなんですね。
    津田:ではなぜ、彼らは毛沢東像を掲げたのでしょう?
    ふるまい:毛沢東は1937年に始まった「抗日戦争」――日中戦争の勝利者とされているんですね。
    実際はと言うと、日本と戦って勝ったのは、蒋介石率いる国民党でしたが、国民党はそのために疲弊して中国共産党との政権争いに敗れ、台湾に敗走しました。それが今の中国では、毛沢東率いる共産党の功績になっているわけです。
    日本に勝った指導者・毛沢東、その姿を日本に突きつける――今回のデモでその肖像が引っ張り出されたのは、そういう単純な発想からだったんじゃないかと私は思います。
    津田:毛沢東と並び、この3月に失脚した重慶市の前党委書記・薄煕来 [*9] の肖像も持ち出されましたよね。
    薄煕来は、近く開催される5年に1度の中国共産党大会 [*10] で、党首脳の「チャイナ9」に入ると目されるほどの実力者でした。しかし失脚してしまった。その彼がこのデモで持ちだされたのは、なぜなのでしょう?
    ふるまい:薄煕来は政治的要因で失脚はしましたが、重慶の地元では彼の支持者は多いんです。また在職中に毛沢東礼賛のような行動も多かったので、毛沢東と薄煕来を重ね合わせた人もいたのだと思います。
    津田:中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」[*11] では、今回のデモをめぐって、みんなどんな発言をしていましたか?
    ◇政府の二枚舌に気づいた中国ネットユーザーたち
    ふるまい:私はあまりウェイボーは見ていなかったんですよ。時折のぞいてみると、旗を持って騒いだり、毛沢東の肖像を担いだりしている人たちの写真や、「デモやってるぞー」という発言がわりとバンバン流れていました。これらは政府の検閲には引っかからなかったようです。
    でも中国人のウェイボー職人さんによると、そこから先、破壊活動に走っている様子や、それを止めようとしている人たちの声は消されていたようですね。
    そして「釣魚島は中国のものである。日本を攻撃せよ」という雰囲気がウェイボー全体で作られていった、と。そうした論調を諌(いさ)めるような発言は、書き込んだ次の瞬間にバスバス消されていく感じだったようです。
    津田:一方のツイッターは、中国製サービスのウェイボーとは違って、当局も検閲が入れられないじゃないですか。ふるまいさんは、ツイッターで積極的に情報発信をしていましたよね。そちらの論調をご覧になっていて、いかがでした?
    ふるまい:こちらはやはり当局の検閲が入らないせいか、中国人のツイッターユーザーさんがかなり自主的に発言をしているのが目立ちました。写真も流れていましたね。ユーザーが撮ったもの、ウェイボーでは消されてしまったもの――。
    津田:「中国のツイッターユーザー」として有名なジャーナリストの安替(アンティ)さん(@mranti) [*12] は、この騒ぎについて、どんな発言をしていましたか?
    ふるまい:毛沢東像が担ぎ出されたことに対し、「文化大革命かよ」みたいに言っていましたね。反日デモは淡々と見ているようです。
    彼みたいにあまり騒ぎにコミットしない人たちは、事態を見ながらツイッターで「日本料理食いにいくぞー」なんて呼びかけているんですよ。デモが一番ひどい時は日本料理店がすべて閉まっていたから、「はやく開けてくれ〜!」と言ったりして。
    しばらく休業していたセブンイレブンが開いた時は、「日常が帰ってきた、ばんざーい!」みたいなことをつぶやいていました。
    彼らのように、自分たちの情報発信力を使って、「日本はこんなに身近なんだよ。俺たちの生活に密着してるんだよ」と伝えようとしている人はすごく多いです。
    津田:ははは(笑)。それが彼ら流の情報発信でもある――。
    ふるまい:そうですね。中国は新聞もテレビも、官製メディアなわけですよ。今回の尖閣問題のように、上が「これを載せろ」と言ったら拒絶できない場合が非常に多い。
    その危険性を見破っている人たちは、紙媒体やテレビを真剣に見なくなって、ツイッター上で信頼できる仲間同士と表に裏に情報交換するようになってきています。
    津田:中国当局の手が及ばない治外法権的な場所で、今まで出会えなかった人がお互いつながった。それによって、新しい動きが出てきているのかもしれませんね。
    ふるまい:一つ面白い話があります。ある日本人の方が、ツイッターでこんなつぶやきをしたんですね。「尖閣諸島に『天安門事件』って書いた垂れ幕をいっぱい釣るしておけば、中国のニュースはモザイクで隠すしかなくなるから面白そう」って。[*13]
    私、それを中国語に翻訳して流してみたんですよ。そうしたら、中国人のツイッターユーザーたちに大ウケ。「日本人はすごいこと考えるなあ!」ってバズってましたね。
    「釣魚島は譲れない」と思っていても、こういうジョークで笑える中国人も、中にはいるんです。以前安替に聞いた話ですが、2010年には政府がデモを中止させた後、ネットでも「釣魚島」という言葉を使った書き込みを大量に削除していったんですね。その時に中国人ユーザーは「尖閣」という言葉でそれを置き換えて、自分の主張を伝えたとか。
    中国政府の二枚舌にはすでに気づいていて、「なんでこんなことで日本と中国がケンカしないといけないの?」と思っている人だって、いっぱいいますよ。
    ◇後を引く反日デモの余波
    津田:日本と中国のケンカ――ということで言うと、今回の反日デモでは、「9月18日」という日付がカギを握っていたんじゃないかと思うんです。
    1931年から1932年にかけて「満州事変」が起き、現在の中国東北部にあった旧・満州を日本が制圧しました。その発端となった「柳条湖事件」が起きたのは、1931年9月18日。中国にとっては忘れがたい日でしょう。
    過去にもこの日、反日デモが何度か起こっていると聞いたことがあります。
    実際、今回も125都市で反日デモが行われたと報じられました。[*14]
    9月18日を境に、現地メディアの論調やデモの雰囲気で何か変わったところはありましたか?
    ふるまい:私個人は確かに「18日をピークに止めるだろうな」というイメージを持っていました。実際、ぴったり止めましたね。
    私の住んでいる北京では19日の朝、北京市当局が市民の携帯電話にショートメッセージを一斉送信し、終了宣言したんですね。
    「愛国への情熱をほかの理性的な方法で表現し、抗議活動のために大使館付近には来ないように」と。[*15] これを受けて街は通常どおりになっていきました。
    まあ、そもそも「なんでお前らが終了宣言するんだ?」って話ではあるんですけど(笑)。
    津田:反日デモの影響はひとまず落ち着いたのでしょうか。
    ふるまい:いえ、その影響が必ずしも落ち着いたとはいえません。中国・広州の週刊新聞「南方周末」[*16] はその後、「理性的愛国」というテーマで特集を組んだんですね。
    この特集では、日本企業や日本人が受けた被害にかなり紙面を割く予定で取材していたらしいんです。でも、前日夜に検閲された結果、大きな記事が4、5本削られ、「ほかの記事に差し替えろ」と命令されたんですよ。
    しかし、どうしても記事が足りなかった。すると2本だけ戻ってきたんですね。ただ、それを載せる時に、大幅な修正が入りました。そのうちの一つが日本人暴行事件に関するものです。
    自転車で中国旅行中の日本人青年が、雲南省で起きた地震の救援活動に行き、そこで反日の人たちに襲撃されたことが9月17日にわかりました。[*17]
    それを報じる記事から、「日本人青年が襲撃された」という部分が削られ、「いい日本人が雲南省に行って救援活動しました」という内容に変えられたんです。まるで何事もなかったかのように。
    日系企業が今回受けた損害を取り上げた部分もほとんど削られ、「日本企業は今後、寒流に遭うであろう」と、そんな記述に変えられました。
    ですから、18日が過ぎたからといって、すべてが元に戻ったわけではないですね。21日の今日、私が北京のユニクロに行ったら、店舗のロゴはまだ赤い布で覆われ、[*18] 隠されていました。
    ◇デモを仕掛けた中国当局の思惑とは
    津田:核心に斬り込みましょう。今回の反日デモが官製デモだったとすると、中国当局にはどのような思惑があったのか。ふるまいさんはどう考えますか?
    ふるまい:世間でもっとも有力な説は、「日本が9月11日、尖閣諸島を国有化したからだ」というものですよね。[*19] でも、私はそれが直接の原因では「ない」と思います。
    この4月、東京都の石原慎太郎都知事が尖閣諸島購入計画を発表した [*20] 時は、中国外交部のスポークスマンも当然批判したし、中国共産党の機関紙「人民日報」[*21] などからも批判記事が出ました。
    でも、ほかの新聞は追随しなかったんですよ。それがすごく不思議でした。
    それで、ふだん「よく考えているな」と思っている現地メディアの記者さんたちに、7月くらいにお会いして、「なぜ書かないのか」と訊いたんです。
    すると「尖閣問題をめぐっては、手垢のついた古い話しか出てこない。だから興味がないんだ」と。石原都知事の発言に興味はないのかと訊いたら、「一つの動きかもしれないけれど、だからといって何か新しい視点で書ける?」と言っていました。
    中国国内には問題が山積していて、外国の話題だって書くことはほかにもいっぱいある。そっちで手いっぱいだから、尖閣問題になんて興味ない――それが前線にいる記者さんたちの感想でした。
    もちろん中国当局は、「日本による釣魚島の所有を認めるわけにはいかない」と思っていたでしょう。だって、釣魚島の主権は自分たちにあると信じているんですから。[*22]
    だから、折を見て日本に文句を言うつもりだったでしょうけど、大騒ぎするつもりはなかったんじゃないかと思うんですね。
    津田:仮に中国が最初から大騒ぎするつもりだったとしたら、石原都知事が購入計画を発表した4月の時点でやっていた、と。
    ふるまい:はい。日本政府は石原都知事の勢いに押され、結局は尖閣諸島を国有化することになりました。
    実はその直前の9月9日、中国の胡錦濤主席は日本の野田佳彦首相とアジア太平洋経済協力会議(APEC)で立ち話をしています。[*23] 日本が尖閣諸島を国有化する方針を決めてから、初の接触です。
    ですから、おそらくはこの時、尖閣諸島について何らかの意見交換をしたはずなんですね。にもかかわらず、それからわずか2日後の9月11日、日本は尖閣諸島の国有化を閣議決定してしまった。[*24]
    それでメンツを潰された胡錦濤がブチ切れたのではないか、だから今回の官製デモを仕掛けたのではないか――私はそう考えてしまいます。[*25]
    一見くだらない理由ですが、メンツ重視のこの国の体質からすると、これはありえないこともない。それが私の推理なんですけどね。
    ◇ネットから現れた新世代の中国ウォッチャーたち
    津田:今回は日本の既存メディアでも、一連の出来事を大きく報じていました。ふるまいさんはそれらの報道を、どのように評価していますか?
    ふるまい:「日本のメディアは、あまり中国の現状を知らないな」と思いました。
    先ほども話に出たとおり、この秋、中国共産党が5年に1度の党大会を行います。そして、胡錦濤国家主席と温家宝首相が政権を明け渡す [*26] ――今、日本メディアはそのことで頭がいっぱいなんですね。
    中国政府の御簾(みす)の内で何が起こっているかは、わかりません。
    ですから、今回のデモをめぐっては、「共産党内部で政治的な闘争が行われた結果じゃないか」「誰かが誰かを蹴落とすための方策に違いない」という論調を常に混ぜ込みながら、報じています。
    中国事情をずっと追っている人間からすると、ちょっとずれたことを書いているなという人もかなりいました。
    津田:中国の現状を、ある種のパターンに当てはめて眺めているんですね。
    ふるまい:はい。お付き合いのある日本の記者さんたちに話を聞くと、彼らが現地で取材して記事を書いても、日本にいるデスク――つまり彼らの上司に削られちゃうらしいんです。「こんな記事は意味がない」って。
    彼らの上司は、古いタイプの中国報道の人だから、固定観念があるんですよ。日本のチャイナウォッチングの世界は、これまで、学者さんを中心にした世界だったんですね。
    各メディアにいる中国担当の記者さんは、彼らと懇意にしながら記事を書いていました。学者さんの薦める文献を読み、その主張を参考にして文章にする。
    その結果、視点が単一になってしまって、記事を読んでも、中国事情がよくわからない。日本の読者は中国ネタをはしょってきたのは、そのせいもあるように思います。
    津田:今回の反日デモでも、同じ調子で報道していた、ということでしょうか。
    ふるまい:そうですね。一般の中国人には話を聞いていないな、と思いました。私が見たいくつかの文章は、手慣れた中国人の学者さんにインタビューしてまとめていました。中国では国策に反対する発言を外国メディアに流すと違法とみなされることもありますし、そういう意味で中には「これは話し手が中国政府の意を汲んでしゃべっているのではないか」と感じるものもありましたね。「日中間には今後、しこりが残るだろう」と脅迫めいたことを言ったりして。
    津田:それが事実だとしたら、日本メディアは中国に都合のいい情報を期せずして流してしまってる、ってことですよね。
    ふるまい:それについては、日本の大メディアに勤める記者さんから、面白い話を聞いたんです。
    今回の反日デモでは、中国の公安が日本大使館の中に、「記者寄り集まり所」を作っているんですって。日本の記者たちはそこに集められ、取材する、そこなら安全だから、という理由で。「はい、今この状況をちゃんと取材して、日本に伝えてくださいね」って指導された気分だ、と言ってました。
    津田:中国公安によって運営される記者クラブが大使館の中にあるんですね!(笑)
    ふるまい:中国は日本メディアの記者を通じてデモのすごさを日本に伝え、日本人をびびらせて、日本政府に圧力をかけようとしているのではないか――私自身もそのような疑念を抱いていました。それが記者さんのお話によって確信に変わりましたね。彼ら自身が「中国に利用されている」と感じているのですから。
    津田:日本のメディアはそれを自覚している。にもかかわらず、中国の思惑どおりのことを報道してしまう――。現場の記者も、そういう状況に不満を持っていて、「どうにかして変わってほしい」という思いがあるんでしょうね。
    ふるまい:はい、それはあると思います。若い方は特にね。
    ただし、ネットからは新しい動きも出てきているんですよ。今回の反日デモをめぐっては、面白いことに、若い中国ウォッチャーさんの発言が目立ちました。
    たとえば、「中国・反日デモ暴徒化の背景と、日中関係の今後」[*27] というブログ記事を書いたライター/フォトグラファーの西端真矢さん。彼女の記事は、1万〜2万人が読んだんじゃないかな。
    そして、中国をはじめとするアジア地域に強いITライターの山谷剛史さん(@YamayaT)。あと、日ごろから熱心に中国の新聞報道やネット情報を拾って翻訳しているキンブリックス・ナウさん(@Kinbricksnow)。
    彼らの発信する情報は中国の現状に近く、拾い上げる視点も細かい。それが印象的でした。
    津田:ある種固定化した「中国」観に対し、「ちょっと違うんじゃない?」と異議を唱える人たちが出てきたと。
    ふるまい:はい。西端さんがブログで言っていたとおり、日本のメディアや学者の言う「中国」って、庶民にはよくわからないんですよ。
    なんかずれているよね、って感覚は私にもずっとありました。一般の人たちが感じていた「隙間」や「空白」を彼女の記事が埋めてくれた部分はあると思います。今回はある意味、既存メディアや学者さんは全滅だったんじゃないでしょうか。
    津田:昔に比べ、日本のネット世論も変わってきた、ということでしょうか?
    ふるまい:そうですね。2005年に起こった反日デモの時はツイッターがなかったけれど、あの時と比べると、全体的に冷静に情報を求めている人が増えてきているな、と感じます。
    津田さんは今回、反日デモに関する私のツイートをいくつかリツイートしてくださいましたよね。そのおかげでフォロワーさんが2500人から3000人近く増え、あっさりと1万人を超えたんです。
    きっと「どうして今、こうなっているの?」と疑問に思って、情報を求める人が増えているんでしょうね。だからこそ、さっき挙げたような若いウォッチャーさんの記事に、ビビッドに反応するんですよ。
    そして、みんなが読むから、ウォッチャーさんたちもがんばって情報を出そうとする。私はどちらかというとRTに専念していましたから、そのおこぼれをいただいた感じです。
    ◇「で、日本は何がしたいの?」
    津田:ところで、当事者である中国と日本以外の国のメディアでは、今回の反日デモはどう報じられていたのでしょう?
    ふるまい:北京にはアメリカやヨーロッパ諸国をはじめ、海外メディアの記者がいっぱいいます。
    私は中国語のツイッターアカウントを持っていて、そちらで海外メディア記者のリストを作って見ています。
    日ごろから彼らは熱心にツイッターで情報発信していますが、今回も、やっぱりすごかったですね。西洋メディアはもうネット化しているから、記者さんはどんどん前線に行き、すぐに写真を撮って、記事も上げる。それを自分でツイートして、所属の違う知り合いの記者がそれをまたリツイートして……そんな感じで、バンバン情報が流れていました。
    ただ全般的に見ると、西洋では今、シリアで起きている内戦が深刻な問題になっているため、[*28] 反日デモの扱いはそんなに大きくなかったようです。それでも、中国にいる記者さんたちは、かなりの範囲をカバーしていたと思いますよ。彼らは当事国でない分、逆に客観的に眺めることもできたでしょうし。
    津田:既存メディアの状況は、国によってだいぶ違いがある。一方のネットメディアでは、新しい動きが出てきている――そんな中、日本は今後、どうやって中国との関係を築いていけばよいのでしょう?
    ふるまい:まずは「日本が中国との関係をどうしたいか」ですよね。私にはそこがよくわからないんです。日本を理解してほしいのか、それとも自分たちの要求を受け入れてほしいのか。日本の外交からは、「主張」が見えてきません。
    ただし、主張するにしたって、相手に聞いてもらう技術――場の作り方、手配の仕方が必要です。それが全然できていないから、いったい日本が何をしたいのか、中国には伝わらないんです。
    もちろん中国にも思惑があって、中には歓迎できないものもたくさんあります。
    きちんと外交するにはまず、日本が自国の利益は何か考えないと。そして相手とどう折衝し、どう譲歩していくかをシミュレーションすることが大事です。大使館に投石が行われている真っ最中に、大使館のウェイボーが「マリモ」や「鶴岡八幡宮」を紹介しているなんてちょっとおかしすぎるでしょ。
    津田:仮に反日デモの原因がふるまいさんの読みどおりだったとしたら、日本の外交ベタは洒落にならないですよね。
    ふるまい:中国と付き合うに先立ち、彼らにとってメンツがどれだけ大事かを、誰も野田さんにご注進していなかったのは、すごく痛いことだなと思います。
    そうした情報が外務省に集まっていないし、対中外交のうえで力を発揮していない。現駐中国大使も大使館の中で、外務官僚とうまくいっていないようだと漏れ聞いています。
    そんなディスコミュニケーションの中で、外交政策の組み立てなんてできません。今回の問題には、日本国内の混乱が出ていると思います。
    これについて何か言うとしたら、「で、日本は何がしたいの?」――その一言に尽きますね。
    津田:政治家に対するレクチャーが今、足りていない。民間のほうが中国に関する知恵を圧倒的に持っているのかもしれません。
    ふるまい:そうですね。中国の存在感が日本でも大きくなっているのは間違いありません。ここ10年は中国に来る日本人の数も、ものすごく増えています。
    出張者をはじめ、いろいろな方が中国に来て、民間目線で中国人と付き合っている。中国人にも、外国人と対等に話せる人が増えました。
    そうして日本人にとって中国人が身近になってきているぶんだけ、今回の反日デモをめぐっても、怒りではなく、「どうしてなの?」と理解したい気持ちが先に立つ。そういう日本人がすごく増えてきたことには、手応えに似たものを感じていますけどね。
    津田:この9月29日、日中は国交正常化から40年目を迎えました。[*29] この反日デモを機会に、日中関係のあり方を民間レベルでも見直していきたいですよね。今日は長時間お付き合いくださり、本当にありがとうございました。 《この記事は「津田大介の『メディアの現場』」からの抜粋です。ご興味を持たれた方は、ぜひご購読をお願いします。》
    ▼ふるまいよしこ
    フリーランスライター。北九州大学(現北九州市立大学)外国語学部中国学科卒。1987年から香港中文大学で広東語を学んだ後、雑誌編集者を経てライターに。現在は北京を中心に、日本メディアが伝えない中国社会事情をリポート、解説している。著書に『香港玉手箱』(石風社)、『中国新声代』(集広舎)。現代中国社会の理解に役立つメルマガ「§中国万華鏡§之ぶんぶくちゃいな」を月2回配信中。
    個人サイト:http://wanzee.seesaa.net
    メルマガ:http://www.mag2.com/m/0001314434.html
    ツイッター:@furumai_yoshiko
    [*1] 在中国日本国大使館は9月11日の段階で、反日デモに注意するよう、在留邦人に呼びかける文書を発表している。だが、この文書は在留邦人のうち日ごろから大使館メルマガを購読している人だけに配信された。
    [*2] http://www.sanspo.com/geino/news/20120919/sot12091905050002-n1.html
    [*3] http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00231683.html
    [*4] ふるまい氏によると、20世紀末に独立採算制をとるようになったことがきっかけで、中国でも「市場型メディア」が生まれてきているという。
    http://www.newsweekjapan.jp/column/furumai/2012/07/vs----.php
    [*5] http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/324586
    [*6] http://www.asahi.com/politics/update/0918/TKY201209180624.html
    [*7] http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/gaisho/g_1009.html#6-D
    [*8] http://www.asahi.com/special/senkaku/TKY201010250475.html
    [*9] http://sankei.jp.msn.com/world/news/120402/chn12040208080000-n1.htm
    [*10] http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2808F_Y2A920C1MM8000/
    [*11] http://weibo.com/
    [*12] http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2010/11/post-1767.php
    [*13] https://twitter.com/ui_nyan/status/248138081360830464
    [*14] http://sankei.jp.msn.com/world/news/120928/chn12092800270001-n1.htm
    [*15] http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1902R_Z10C12A9MM0000/
    [*16] http://www.infzm.com/
    [*17] http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120918-00000014-rcdc-cn
    [*18] http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00231738.html
    [*19] http://diamond.jp/articles/-/24887
    [*20] http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120417/plc12041704580005-n1.htm
    [*21] http://j.people.com.cn/home.html
    [*22] その後、中国英字紙のチャイナ・デイリーは9月28日付の米紙ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズに、「釣魚島は中国領だ」とする意見広告を掲載している。
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2902E_Z20C12A9NNE000/
    [*23] http://mainichi.jp/select/news/20120909k0000e010127000c.html
    [*24] http://www.j-cast.com/2012/09/11145954.html
    [*25] 胡錦濤本人ではないが、中日友好協会会長の唐家●(=王へんに旋)元国務委員が本件によって「中国国民はメンツを潰されたと感じた」と述べている。
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/120928/chn12092801060002-n1.htm
    [*26] http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MAMI3E6S972K01.html
    [*27] http://www.maya-fwe.com/4/000233_J.html
    [*28] http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012091202000097.html
    [*29] http://mainichi.jp/select/news/20120930k0000m030038000c.html

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  • 「反日デモ」はメディアでどう報じられ、伝わったか 〜若手中国ウォッチャー・山谷剛史氏に訊く

    2012-10-05 11:00  
    【メディアが報じた反日デモの姿とは?】津田大介の『メディアの現場』vol.47 より
    この9月、中国各都市で大規模な反日デモが起こり、日本でも話題になりました。その原因は、日本が中国との間で領土争いをしていた尖閣諸島(釣魚島)を日本が国有化したからではないかと見られています。しかし真の原因は明らかになっていません。尖閣諸島や反日デモをめぐる騒ぎが、新聞やテレビ、そしてネットなどのメディアでどう扱われたか――本メルマガでは、一連の出来事の本質は、いわばメディアの合わせ鏡を通して初めて見えてくるのではないかと考えました。そこで今回は、中国事情に詳しい北京在住フリーライターのふるまいよしこさん、そして若手中国ウォッチャーとして注目されているフリーランスITライターの山谷剛史さんのお二人にお話を伺います。
    ◆「反日デモ」はメディアでどう報じられ、伝わったか 〜若手中国ウォッチャー・山谷剛史氏に訊く 津田:今回の反日デモでは、中国で新たなネット世論が巻き起こっていることに注目が集まりました。そこで、微博(ウェイボー)[*1] とツイッターでどのような動きが見られたか、ふるまいさんのお話でも「若手中国ウォッチャー」としてお名前が挙がったITライター・山谷剛史さんにお話を伺っていきます。実は山谷さんは、僕の出身高校である東京都立北園高校の3つ下の後輩で、2ちゃんねる創設者である西村博之さんの同級生でもあるんですが、今日は取材ということで、よろしくお願いします。
    山谷:よろしくお願いします。
    津田:今回の反日デモについては、同じ中国国内でも、いわゆる既存メディアとネットメディアで論調が違っていたように思うんですね。山谷さんがウォッチしていた範囲では、どのような違いがありました?
    山谷:新聞のような既存メディアは割と統率されていて、最初の段階では「中国はこれだけ怒っている、尖閣を取られないようにがんばろう」といった論調でした。ただしその後、暴動がエスカレートしすぎた感もあり、「理性的にやりましょう」となりましたね。
    かたやネットでは、行き過ぎを戒める声もあったものの、「反日デモをやりたい」という声のほうが大きかったんですよ。去年日本では、フジテレビの番組編成が韓流に偏っているとして、ネット発の「フジテレビ抗議デモ」が行われました。中国の反日デモも、あれと似たところがありましたね。絶対数は多くないでしょうが、デモ推進派が圧倒的多数。それを諌(いさ)める声が伝わらなかった感はあります。
    ただ1日、2日経ち、デモが暴動化するにしたがって、「ちょっとこれ違うだろ」というほうに、みんな動いてきた。ツイッターやその中国版のウェイボーみたいなSNSでは、既存メディアに先駆けて論調が変わっていました。
    ◇中国政府によるネット言論統制の現状
    津田:中国政府がウェイボーなどの発言にフィルタリングし、反日傾向を抑えようとしていたという話もありますね。
    山谷:はい、デモが始まった最初の頃からやっていました。今回のデモは全土的に行われた15日西安などで大暴動に発展したんです。[*2] それで「西安のエリアでネットに規制がかかった」という話を各所から聞きました。実際、デモ翌日には「反日」などの言葉を含む書き込みが、かなり消されていましたね。
    津田:中国政府はこうしたネット世論を監視するため、ネット世論監視ソフトを使っているそうですね。
    山谷:ネット世論監視ソフトはいろいろな会社から発売されています。これは主に二つのラインがあるんですね。一つは企業向け。企業が自社に関する変な噂がネットで流れた時、すぐに封じるために使っています。もう一つは、中央政治、地方政治含めた政治向けです。特定のキーワードをセットしておくと、すべての中国語サイトを対象に、ほぼリアルタイムで書き込みを検索し、レポート画面を作って問題のサイトや警察に通報するというしくみです。
    津田:それから、中国のネット世論を毎日レポートしているサイトもあると。
    山谷:有名なものに、新聞社の人民日報がやっている「人民網輿情観測室」[*3] があります。これは毎日更新だったのですが、反日デモ後、一時的に更新が行われなくなりました。同じ位置づけのサイトに「中国輿情网」[*4] があります。こちらは15日以降、更新が止まりました。どちらもおそらく血まなこで情報を分析していたのでしょうが、対応にナーバスになって、外部に情報を出さなかったのでしょうね。
    ◇「愛国」と「害国」 津田:山谷さんが書いていたコラムで面白いと思ったことがあるんです。反日デモで暴徒化し、破壊行動に走った人をたしなめる意味で、中国の新聞「中国青年報」が8月20日付の同紙で「害国」という言葉を使いましたよね。「同胞の車を破壊するのは愛国(アイグォ)ではなく害国(ハイグォ)である」と。[*5] これにより、「害国」という言葉が、ネットで一時流行ったそうですね。
    山谷:はい、みんな「うまいこと言うなぁ」と一気に使い始めました。ウェイボーの検索機能で調べると、やはり行き過ぎた愛国心を戒める意味で「害国」という言葉が使われていたりしますね。[*6] 「それ害国だろ。国を害するからやめろ」みたいに。
    津田:それはどういうユーザーが書き込んでいるのでしょう? ネットのヘビーユーザーなのか、それとも普通のユーザーなのか……。
    山谷:割と普通のネットユーザー、一般人が多いですね。彼らは尖閣問題に限っていえば、興味の大小はあるにしても、「日本が悪い」という認識を共有しています。そうは言っても、わりと傍観していて、かなり理性はある。われわれが日本のメディアで見るような、暴徒化した反日デモ参加者とは違います。むしろ、同胞のモラルの低さを見て、悲しんでるんですよ。「中国はまた負けた。日本に負けたのではなく、おのれに負けたんだ(また中国国民は愚かだった)」とね。
    津田:今回は反日が行き過ぎて、中国の新聞社が「良い愛国、悪い愛国」の絵を発表するまでになりましたね。[*7]
    山谷:「新華社」という新聞社が、自社サイトの「新華網」[*8] にアップしたものですね。9月17日のことです。新華社は中国の新聞では王様のような存在――いわば政府の広報誌みたいな位置づけです。
    「権威のある新華社がこんな図を出しました」となったら、多くのメディアがそのまま転載し、自然と広まっていく。中国のメディアでは、本文をまるごと転載しても、法律的にOKなんですね。引用元さえ書いておけば問題ない。
    最近の中国政府は、オフィシャルな情報をすばやく出すという方針を採っているから、とにかく「反暴力、理性の愛国」をわかりやすく伝えなきゃ、ということで、あのタイミングであの絵を出したのでしょう。
    津田:絵を見ると、言わんとすることは何となくわかるけれど、具体的に何が書かれているのか気になります。

    出典:http://news.xinhuanet.com/photo/2012-09/17/c_123726019.htm
    山谷:ちょっと確認しますね。「ここにゴミを捨てるな」という注意書きがあるということはゴミを捨てる人がいるわけで、今は注意書きのことをやる人が少なからずいることを意味します。意訳になりますが、言っていることの概要は次のとおりです。
    《暴力“碍”国……暴力は中国をダメにする》
    (左上)日本料理屋での食い逃げ
    (中上)在中日本人を攻撃
    (右上)同胞の日本車を破壊
    (左下)スーパーで市民の日本製品の購入阻止
    (中下)店舗焼き討ち
    (右下)ネットユーザーを煽る文言をばらまくこと
    《理性愛国……理性は中国を良くする》
    (左上)政府の外交を支持
    (中上)法律を守り同胞の財産を尊重する
    (右上)同胞が団結して愛国をアピールし、国家主権と領土を守る
    (左下)真面目に働き祖国に貢献
    (中下)日本製品不買でなく日本製品に代わる製品を開発
    (右下)ルールを守らず同胞の財産を守らねば愛国の字汚し
    ◇「Yahoo!ニュース」を見ている人に現状を伝えたい
    津田:今回の反日デモは日本のマスメディアでも取り上げられていました。そうした一連の報道を見て、どう捉えていますか?
    山谷:テレビについて言うと、日本と中国ではそもそも放送のシステムが違うから、どうしても違うように見えちゃうんですよね。
    日本はニュースをやっている時間帯が民放の場合、だいたい同じじゃないですか。夕方ごろチャンネルを回すと、どの局も反日デモ、しかも同じ破壊活動の映像が流れている――といった具合。だから、イメージが刷り込まれやすくて、「中国人は恐ろしい」イメージができあがりやすいんじゃないかと思いますね。
    一方の中国では、まず「中国中央電視台」という全国ネットがあり、それとは別に広東省など省ごとのネットがあり、その下にさらにネットがあって――となっている。ニュースのチャンネルはそれぞれに1つしかないから、内容はそんなにかぶらないんです。だから、一つの映像が何度も刷り込まれるってことは、そんなにないでしょう。内容の是非は別として。
    津田:日本のネット世論で何か気づかれたことはありますか?
    山谷:僕自身がツイッターでフォローしているのは、中国に足を突っ込んでいる方ばかりです。だからタイムラインは、極めて冷静でした。もちろん、それが日本の世論でないことは十分存じているところです。
    ネットではどういう媒体を見ているユーザーかで反応が違います。たとえば、僕がふだん、IT系ニュースサイトの「ITmedia」で記事を書くと、寄せられる感想は冷静なんです。だけど、同じ記事が「Yahoo!ニュース」や「ニコニコニュース」に転載されると、伝えたいことがなかなかストレートに理解してもらえない。そういうもどかしさがあるんですね。
    今回の反日デモをめぐる記事は、Yahoo!ニュースを見ているような人に読んでほしかったんですよ。中国や中国人のことを「ニセモノ」「愛国」「毒」「爆発」などといった悪いステレオタイプだけで見る人に、目を通してほしかった。
    日本では中国の掲示板のコメントが翻訳されて中国人の反応として記事化されるように、中国ではYahoo!ニュースのコメントが翻訳されて日本人の反応として記事化され、両国のネットユーザーが誤解し合う悪循環が起きている。
    だから、ありがたいことにいくつか連載枠がある中でも、Yahoo!ニュースに転載される可能性の高いITmediaを選びました。もちろん、ITMediaが一般ニュースを扱いたがっていた、僕がずっと書いている媒体で読者ともうまい具合につながっていた、という事情もあります。今回はちょうどマッチングがうまくいった感じですね。
    津田:ところで、山谷さんは今、日本に戻ってきているけれど、もともとは中国にお住まいでしたよね。また現地に戻る予定は?
    山谷:う〜ん……正直、なかなかキツいですね。僕はガジェット系のニュースを書く仕事をやっているんですよ。今、中国では日本人とわかると、オンラインでもリアルでも、ものが売ってもらえないという話も出てきています。だから面倒だなあとは思っています。
    津田:「身の危険を感じる」ということではなく、「商売がやりづらくなるだろうな」と。
    山谷:はい。心配なのは、基本的にそっちのほうですね。
    中国の人は、お互い面と向かって話すぶんには、いきなり殴りかかってくるようなことはしません。ただしグループになると、普段は理性的な人でもワーッとなって、タガが外れて暴力に走ったりしやすい。そうなると怖いですよね。
    もちろん、日本や日本人に何らかの意味で依存している地域であれば、状況は早めに改善していくかもしれません。でも、外国人がいない地区や日本人が行かないマイナーな都市では、「日本人お断り」と書いても何のリスクもないし、カッコよくみえる。だから、意味はなくても反日アピールをする人間は必ずいるんです。
    津田:反日デモの余波はまだ続きそうだと。今日はどうもありがとうございました。
    《この記事は「津田大介の『メディアの現場』」からの抜粋です。ご興味を持たれた方は、ぜひご購読をお願いします。》
    ▼山谷剛史(やまや・たけし)
    フリーランスライター。主に中国やアジアの国々のIT事情を執筆。日本人の感性で現場の庶民の視点を紹介するルポ執筆のほか、中国のITを軸にしたテーマの講演を行う。ITMedia、ASCII、Impress Watch、日経BPなどのIT系メディアやJBPress、ダイヤモンドオンライン、東洋経済オンラインなどの経済誌などで執筆。著書に『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』(ソフトバンク新書)。今秋、インプレスのNext Publishingより中国IT事情をまとめた本『中国インターネットトレンド[2011.11-2012.10]現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実』をリリース。
    ・公式サイト:http://www.geocities.jp/dtgoshi/
    ・ツイッター:@YamayaT
    [*1] http://www.weibo.com/
    [*2] http://www.jiji.com/jc/zc?k=201209/2012091600275
    [*3] http://yq.people.com.cn/service/index.html
    [*4] http://www.pubtopic.org
    [*5] http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1209/03/news089.html
    [*6] http://s.weibo.com/weibo/%25E5%25AE%25B3%25E5%259B%25BD&Refer=index
    [*7] http://news.xinhuanet.com/photo/2012-09/17/c_123726019.htm
    [*8] http://xinhuanet.com/

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  • 【今、明かされる津田マガ編集者の真相】津田大介の「メディアの現場」特別号外ブロマガ編vol.4

    2012-10-03 15:16  
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    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  津田大介の「メディアの現場」   ――ニコ生「津田ブロマガeXtreme」第2回目書き起こし(後半)                                 2012.10.03(特別号外ブロマガ編vol.4)━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━津田大介さんのブロマガ「津田大介の『メディアの現場』」内の生放送『津田ブロマガeXtreme(エクストリーム)』第2回が、2012年9月12日に放送されました。アシスタントは高橋杏美さん。その放送内容の書き起こし記事を特別号外として、ブロマガ読者限定でお届けします。(企画・制作:ドワンゴ)この日の放送の後半は『ネオローグユニオン拡大版』と題して、津田マガの好評連載である『ネオローグユニオン』が生放送になって登場。『ネオローグユニオン』
  • 【メディアが報じた反日デモの姿とは?】津田大介の「メディアの現場」vol.47

    2012-10-03 01:00  
    220pt
    この9月、中国各都市で大規模な反日デモが起こり、日本でも話題になりました。その原因は、日本が中国との間で領土争いをしていた尖閣諸島(釣魚島)を日本が国有化したからではないかと見られています。しかし真の原因は明らかになっていません。尖閣諸島や反日デモをめぐる騒ぎが、新聞やテレビ、そしてネットなどのメディアでどう扱われたか——本メルマガでは、一連の出来事の本質は、いわばメディアの合わせ鏡を通して初めて見えてくるのではないかと考えました。そこで今回は、中国事情に詳しい北京在住フリーライターのふるまいよしこさん、そして若手中国ウォッチャーとして注目されているフリーランスITライターの山谷剛史さんのお二人にお話を伺います。
    ◆「反日デモ」はメディアでどう報じられ、伝わったか 〜中国在住フリーライター・ふるまいよしこ氏に訊く
    津田:9月11日ごろから9月下旬にかけて、中国で反日デモが起こりました。[*1] デモは中国各都市に飛び火。一時は125都市以上にも拡大したとされます。[*2]
    デモ参加者は一部暴徒化し、ユニクロやセブンイレブン、ジャスコのような日系施設を襲っては破壊や略奪を行い、休業や操業停止に追い込みました。[*3] その様子は、テレビや新聞をはじめとする日本のマスメディアでも大きく報じられています。
    事の発端は何だったのか——東京都の石原慎太郎都知事が今年4月、中国との間で領土争いの対象になっていた尖閣諸島(釣魚島)を都で買い取る計画を発表しました。その後、日本は同島を国有化する方針を固め、9月11日、それを閣議決定します。
    このタイミングで、これだけ大規模な反日デモが起こった理由は、それがきっかけであろうとされるものの、真の原因は明らかになっておらず、さまざまな憶測が飛び交っています。
    「中国内部の政治闘争がからんでいる」「同国で貧富の格差が拡大しているせいだ」など。
    社会主義国の中国では、新聞、テレビなどのマスメディアは実質、そのすべてが政府によってコントロール可能であり、[*4] ネットの情報についても、検閲が行われています。
    日本による尖閣諸島の国有化や反日デモといった一連の出来事を現地メディアがどう報じたか。それを追うことによって、今回起きた反日デモの本質や中国政府の思惑、そして日中関係の現状が見えてくるに違いない——そう考え、「メディアと反日デモ」という切り口を中心に、北京在住のフリーライター・ふるまいよしこさんにお話を伺っていくことにしました。ふるまいさん、よろしくお願いします。
    ふるまい:よろしくお願いします。

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