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記事 4件
  • 杉浦隆幸氏:遠隔操作ウイルス事件の犯人はデジタル・フォレンジックに精通している

    2014-03-26 22:00  
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    マル激!メールマガジン 2014年3月26日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第675回(2014年03月22日) 遠隔操作ウイルス事件の犯人はデジタル・フォレンジックに精通しているゲスト:杉浦隆幸氏(ネットエージェント(株)代表取締役社長)────────────────────────────────────── 先月始まった遠隔操作ウイルス事件の公判で、検察側が片山氏の勤務先のパソコンから遠隔操作ウイルスの痕跡が見つかったとする解析結果を公表した。検察側は、それが片山氏がウイルスを作成していた証拠だと指摘する一方で、弁護側はそれはむしろ氏のパソコンが遠隔操作されていた可能性を示唆するものだと主張するなど、同じ証拠に対して検察側、弁護側双方が180度異なる解釈を主張するといった異例の事態を招いている。 刑事裁判である以上、最後は裁判官が片山氏を犯人と考える十分な証拠が示されたと考えるかどうかの判断にかかってくることは言うまでもない。しかし、遠隔操作ウイルス事件のような高度のコンピュータ・セキュリティの知識が求められる裁判が、一般の刑事裁判の方法で特に専門的な知識を持ち合わせていない裁判官によって果たして公正に裁けるかどうかについては、セキュリティの知識がある人ほど一抹の不安を覚えている。 それもそのはずだ。ここまで検察側の証人として登場した警察の分析官や民間セキュリティ会社の技術者が示したような「片山さんが犯人と考えることが合理的」とする議論は、情報セキュリティ、とりわけデジタル・フォレンジックの専門家から見ると、穴だらけの議論になっているという。デジタル・フォレンジック(デジタル解析)とはサイバー犯罪において捜査に必要なデータ、電子的記録などを収集、解析して、証拠としての妥当性を評価、検証する技術などのことだが、まさにそのデジタル・フォレンジックが専門の企業「ネットエージェント」の杉浦隆幸社長は、業界内でも上位のセキュリティ技術やIT技術を持つ技術者であれば、検察が「片山さんが犯人と考えることが合理的」と主張する証拠の数々は、外部からの遠隔操作によって比較的簡単に埋め込むことができると指摘する。つまり、ここまで検察が示しているようなレベルの証拠であれば、真犯人が片山さんのパソコンにそれを植え付けることは十分可能だと言うのだ。 幼稚園や航空会社などへの脅迫メール事件として始まった一連の遠隔操作ウイルス事件は、高度な知識や技術を有する犯人によってわれわれがいつ身に覚えのない罪を着せられてもおかしくない世界に生きていることを露わにした。そして、それはサイバー犯罪対策課などを設置してサイバー捜査の能力を拡充している警察についても言えることなのだ。 もし今回の裁判で、専門家が見たらとても犯人性が証明されたとは言えないような証拠しか提示されなかったにもかかわらず片山氏が有罪になれば、それはもはや科学的証拠が、近代司法の枠を超えてしまったことを意味する。遠隔操作ウイルス事件を参照しつつ、デジタル犯罪の裁き方はどうあるべきかなどを、ゲストの杉浦隆幸氏とともに議論した。
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・遠隔操作ウイルス事件、犯人の技術レベルはどの程度か・発信元の特定を不能にする「Tor」は、だれにでも使える・デジタル・フォレンジックの技術で、証拠の捏造も可能・無罪性の証明はできるのか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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  • 瀬木比呂志氏:誰も知らない裁判所の悲しい実態

    2014-03-20 07:00  
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    マル激!メールマガジン 2014年3月19日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第674回(2014年03月15日) 誰も知らない裁判所の悲しい実態ゲスト:瀬木比呂志氏(元裁判官・明治大学法科大学院教授) ────────────────────────────────────── マル激では何度となく、警察、検察の問題、とりわけその捜査、取り調べの手法が公正な裁判の妨げになっている問題を取り上げてきた。この問題はあまりにも繰り返し表面化するため、もはやわれわれにとってはそれがライフワークの一つになっている感すらある。 しかし、この10余年、途中に何度も重量級の不祥事に見舞われながら、警察も検察もその体質はほとんど変わっていないようにみえる。そして司法の堕落、 腐敗の根っこに鎮座するご本尊が裁判所だ。どんなに大きな世論の逆風に見舞われても、依然として警察や検察が人質司法や無茶な捜査を続けられる最大の理由は、裁判所がそれを裁判で認めてくれるからに他ならない。その意味では司法問題の最大の責任者にして戦犯は裁判所なのだ。 その裁判所の内情はあまりにもひどい状況になっているようだ。元裁判官で最高裁事務総局や最高裁調査官の経歴を持ち、2012年に退官して現在は明治大学法科大学院教授を務める瀬木比呂志氏は、裁判官の世界は事実上陸の孤島のような外界から閉ざされた状態にあり、その閉鎖性の中で、あり得ないような基準がまかり通っていると言う。 瀬木氏は、現在の司法界は、最高裁を頂点とする権力ピラミッドによる内部統制が極めて効果的に運用されていると指摘する。本来、個々の裁判所、裁判官個々人には階級の上下はないはずだが、司法官僚とも称される最高裁事務総局が人事と昇級の権限を握っていることから、ほとんどの裁判官、裁判所は否応なく上を見て行動するしかない状態だという。さらに事務総局は30名ほどの裁判官を調査官として抱えていて、最高裁の公判以外にも各地の裁判、判決を細かく分析し、内部の会合などを通じてことあるごとに最高裁の意向を下命している。しかも、裁判官が自身の良心に従って、例えば国家賠償訴訟や行政訴訟で市民側の肩を持つような判決を出そうものなら、露骨な報復人事が行われるという。  瀬木氏は「法曹一元化によって人材の流動化を図ることが先決だ」と言う。法曹一元化とは弁護士などから多様な人材を裁判官として任用する仕組みのことだが、硬直化した司法行政体制を打破するには、まずは人事を通じて現在の硬直性、閉鎖性に風穴を開けるしかないと言うのだ。 裁判所が変わらなければ日本の司法は変わらない。いや、一国における正義の最終的な体現者たる裁判所が、このような堕落した体質のままでは、日本全体が ダメになってしまう。日本問題の最深部にある裁判所の問題をわれわれはどう考え、何をすべきなのか。歴代最高裁長官の功罪や裁判官の質の低下、そしてそれ らを報じないメディアの問題なども交えて、ゲストの瀬木比呂志氏とともに議論した。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・裁判員制度は刑事系裁判官復権の隠れ蓑だ・最高裁判事の類型――個性豊かで人間味のある人物は「5%」・それでも司法は変えられる+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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  • 船橋洋一氏:原発事故で露呈した、敗戦から何も学んでいなかった日本

    2014-03-12 23:30  
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    マル激!メールマガジン 2014年3月12日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第673回(2014年03月08日) 原発事故で露呈した、敗戦から何も学んでいなかった日本ゲスト:船橋洋一氏(ジャーナリスト・日本再建イニシアチブ理事長) ────────────────────────────────────── 東日本大震災、大津波、そして福島第一原子力発電所のメルトダウン事故から3年が経とうとしている。被災地の復興においても日本が抱えるさまざまな病理や課題が次々と露わになっているが、とりわけ原発事故については、事故原因の結論も得られていないし、事故現場の収束さえままならぬ状態であるにもかかわらず、もっぱら原発再稼働の是非に政権の関心が集まるという異常な状態にある。 福島原発事故独立検証委員会、いわゆる民間事故調のプログラムディレクターとして事故原因の調査に取り組んできた元朝日新聞社主筆でジャーナリストの船橋洋一氏は、あの原発事故を太平洋戦争の敗戦に続く「第二の敗戦」と捉え、その原因や再発防止により真剣に取り組む必要があると主張する。 あの事故は津波によって原発がすべての電源を失ったために、原子炉を冷やすことができなくなり、メルトダウン、メルトスルーに至ったと説明されている。原因がもっぱら津波だったかどうかについては議論があるところだが、いずれにしても万が一の時に原子炉を冷やせるより強固な設備を完備しておけば、今回のような事故は起こらないという前提に立ち、新たな安全基準などが作られている。 確かにハード面での不備は修正されなければならない。しかし、本当にそれだけでいいのだろうか。今回の事故がここまで甚大な被害をもたらすに至った背景には、単に電源のバックアップに不備があったということではないのではないか。われわれが最も真摯に反省しなければならない点は、ハード面での不備ではなく、日ごろからの危機に対する意識や優先順位を決めて損切りを決断するリーダーの養成だったのではないかと、船橋氏は言う。 では、福島の事故を無駄にしないために今、われわれに何ができるだろうか。船橋氏は何よりも事故の原因究明をより厳密かつ詳細に行い、事故と事故対応における失敗の責任の所在を明らかにすることが何よりも重要だと主張する。そこを曖昧にしたまま組織や仕組みをいじってみても、本当の意味で事故の教訓が活かされることはあり得ない。そして、それはわれわれが第三の敗戦に向けて邁進する道を選んだことを意味する。 われわれはなぜあれだけ酷い目にあっても、その原因と真摯に向き合い反省することができないのか。東日本大震災、福島原発事故から3年が経過したいま、事故に至る経過と事故への対応、そして事故後の原因究明や新たに作成された安全基準などから見えてくるわれわれ日本人の弱点について、先の戦争の反省と絡めながら、ゲストの船橋洋一氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・原発事故の教訓――責任は問われず、倫理性とセキュリティの議論も欠如・もう神風は吹かない “運よく”生き延びられた日本社会・リーダー不在の日本社会は、今後生き残ることができるか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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  • 谷本哲也氏:ディオバン事件と利益相反という日本の病理

    2014-03-05 23:40  
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    マル激!メールマガジン 2014年3月5日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第672回(2014年03月01日) ディオバン事件と利益相反という日本の病理ゲスト:谷本哲也氏(内科医・東京大学医科学研究所客員研究員) ────────────────────────────────────── 東京地検特捜部が2月19日に製薬会社のノバルティスファーマや京都府立医大に対して家宅捜索に入った。表向きの容疑は薬事法で禁じられている医薬品の誇大広告ということだが、この事件は期せずして9.3兆円産業と言われる医薬品をめぐり、業界と大学・研究機関の間の根深い癒着構造を白日の下に晒すことになった。 京都府立医大をはじめ慈恵医大など5大学の研究チームは臨床試験の結果、降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)には血圧を下げるだけでなく、他の降圧剤に比べて脳卒中を予防する効果が確認されたとする論文を発表していた。しかし、研究データに不自然な点が指摘され、調査が行われた結果、この研究には何と薬の販売元のノバルティスファーマの社員が、身分を隠して関わっていたことが明らかになり、自社にとって都合の良い結果が出るようにデータを不正に操作したのではないかという疑いが出てきているというのだ。 しかし、京都府立医大らの研究結果は国際的に評価の高い高級医学論文誌『Lancet』にその研究結果が掲載されたために、大きな広告効果があったとみられている。 内科医で医療ガバナンスの問題に詳しいゲストの谷本哲也氏は「今回の問題は、海外論文誌を巻き込んだ新しいタイプの問題だ」と指摘する。多額の寄付を行っている大学や研究機関に自社の薬の臨床研究を依頼し、その結果を高級医学誌に掲載することで、国際的に薬効を宣伝し、販売広告にもつなげるという仕組みで、製造元のノバルティスファーマはディオバンで累計1兆円以上という莫大な売上げを手にしている。 薬事法は医薬品の許認可については厳しい基準が設けられているが、認可後の臨床研究についてはほとんど規制がないため、仮に今回の事件で薬事法違反が確定したとしても、課される罰金は200万円の科料に過ぎないという。医療関係者の性善説に立った薬事法は元来、悪意を持って臨床研究を薬の販売促進に使う行為を想定していないのだと、谷本氏は言う。ディオバンの高血圧治療薬としての効果は既に認可を受けているため、仮に今回、販促目的でプラスαの薬効を謳うために論文の捏造が行われたことが明らかになったとしても違法性が問われない可能性もあるのだという。 しかし、それにしてもある商品の販売元の社員が、身分を隠して研究に関わり、データにも直接タッチしていたというような、あからさまな利益相反が放置されているとすれば、日本の臨床研究そのものの信頼性が問われることになりかねない。 今や日本の至るところに巣くう利益相反の罠を、われわれはどう考え、これにどう対応すべきか。まずは医療の現場からゲストの谷本哲也氏とともに考えた。
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・現役医師も驚愕した、ディオバン問題の経緯・薬事法の穴をつく研究と癒着・日本医学の権威を失墜させる、利益相反問題・臨床研究を変えるのは、規制強化か、第三者によるチェックの仕組みか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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