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記事 5件
  • 江守正多氏:地球温暖化が異常気象を加速させている

    2018-08-29 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2018年8月29日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第907回(2018年8月25日)地球温暖化が異常気象を加速させているゲスト:江守正多氏(国立環境研地球環境研究センター副センター長)────────────────────────────────────── 地球温暖化による気候変動が、遂に世界的に災害を引き起こし始めた。 元々地球温暖化は激しい気候変動を繰り返しながら、徐々に気温が上がっていく現象だが、平均気温の上昇以前に、熱波や大雨、干ばつなどの異常気象が地球の方々で実害を生み始めている。 日本でも7月23日に埼玉県熊谷市で国内の最高気温となる41.1度を記録するなど未曾有の猛暑が続き、熱中症により、7月は過去最多となる5万4220人が救急搬送され、うち133人が死亡している。かと思えば、西日本豪雨ではこれまた観測史上例のない規模の集中豪雨で多くの河川が氾濫し、200人を超える犠牲者を出した。この夏の天気予報は、猛暑による熱中症か大雨による災害への注意が喚起されていない日が珍しいと言っても過言ではないほどで、遂に異常気象が正常になってしまったようだ。 異常気象は世界的な現象で、この夏、ヨーロッパやアメリカでは熱波で死者が出たり、方々で森林火災が起きたりしている。7月24日、世界気象機関は、世界各地で記録的な猛暑が広がっていると発表、極端な異常気象はしばらく続くと警戒をよびかけた。 異常気象の原因には、そもそも大気や海流の影響で起きる内部変動と、外部からの要因が考えられる。原因が内部変動だけなら長期的には平均化されるが、日本国内の雨量の変化をみても、世界の平均気温をみても、明らかに上昇傾向にある。外的な要因としては人間活動による温室効果ガス排出を考え合わせないと異常気象は説明がつかないと、気象学者で国立環境研究所地球環境研究センターの副センター長を務める江守正多氏は指摘する。 地球温暖化の問題は100年単位で地球全体の平均気温が何度上がるというレベルの話が多く、今ひとつピンと来なかった人も多いかもしれない。しかし、平均気温の上昇に伴って、激しい気候変動や異常気象による災害が頻発することは、以前から警告されていた。それがいよいよ現実のものとなっている可能性が高い。 もしわれわれが地球温暖化の問題に真剣に取り組まなければ、この先地球はどうなるのだろうか。環境省が発表した2100年の未来天気予報では、真夏のある一日の最高気温が東京で44度、札幌で41度と予測されている。そんなことになれば、もはや「熱中症に注意」だなどと言っている場合ではなさそうだ。 2015年に採択されたパリ協定では、2100年の世界の平均気温の上昇を2度以内に抑えることを決定したほか、努力目標として1.5度以内という数字を打ち出し、そのために、二酸化炭素の排出をゼロにすることを宣言している。 確かに野心的な目標だが、パリ協定の採択によって地球温暖化に対する世界の向き合い方が変わってきたと江守氏は語る。それまでは実現が困難と見られ、悲観的な見方が多かった「脱炭素」への動きが、パリ協定を機に世界各国で加速し始めているという。 一方、日本ではまだ「脱炭素」の動きは鈍い。他国と比べ日本では、地球温暖化対策が経済や生活にマイナスなものとして受け止められている傾向が強いため、メディアも含め地球温暖化の話題を避けようとする傾向があることは否めない。 6月に成立した気候変動適応法の意義も合わせて、地球温暖化と異常気象の関係について、気象学者の江守正多氏と社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・人間活動が世界的な気温上昇の原因になっている可能性は95%・地球温暖化は、すでに不可逆なポイントまできている?・気候変動対策は、生活の質を脅かすものではない・絶望を希望に変えるイノベーション+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■人間活動が世界的な気温上昇の原因になっている可能性は95%
    迫田: 今回のテーマは異常気象と地球温暖化、気候変動の問題を取り上げます。今日も本当に暑い一日でした。
    宮台: 今年は台風も多く、災害も大変でした。
    迫田: やはりこのことは考えなければいけない、ということで、国立環境研究所地球環境研究センター副センター長でいらっしゃいます、江守正多さんにお越しいただきました。前回のご登場は5年前で、当時も異常気象の原因をきちんと考えてみよう、というテーマだったのですが、いまはもう、それが現実問題になっているのではないかというほど毎日暑いです。
    江守: そうですね。多くの人が、より強い実感を持って温暖化してきたなというふうに思っていらっしゃることをひしひしと感じます。
    宮台: 日本だけでなく、インターネットを通じて世界もひどい状況になっているという情報がずいぶん入ってきますから、やはり4~5年前とは、人々の受け止め方がだいぶ違っているのではないかと思います。
     

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  • 芹澤健介氏:移民はいないことになっている世界4位の移民大国日本

    2018-08-22 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2018年8月22日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第906回(2018年8月18日)移民はいないことになっている世界4位の移民大国日本ゲスト:芹澤健介氏(ライター)────────────────────────────────────── 日本が今や、世界第4位の移民大国であることを、ご存じだろうか。 OECDによると、2015年の外国人移住者統計で、日本に移住した外国人の数は前年比約5万5千人増の約39万人となり、前年の5位から韓国を抜いて4位に上昇したという。ちなみに2015年のトップ3は1位がドイツ(約201万6千人)、2位が米国(約105万1千人)、3位が英国(47万9千人)だった。日本はこれに次ぐ世界第4位の移民大国なのだ。しかし、ちょっと待ってほしい。日本は基本的に移民の受け入れをしていないはずではなかったか? 実は国連やOECDでは「移民」の定義は、その国に1年以上住んでいる人ということだ。観光ビザで入国している観光客や短期の滞在者以外は、その国に居住している立派な住民であり、定義上はすべて移民となる。現在日本には約250万人の外国人が住んでいるが、そのうち少なくとも26万人は就業を目的とした外国人実習生だ。また、海外からの留学生約26万7千人のうち、実際は出稼ぎ目的の「学生」もかなりの比率を占めているという。 日本は移民を認めていないし、定住に繋がるとの理由から、基本的には外国人の労働者を受け入れていない。そのため、現在日本で働く外国人のほとんどが、名目上は国際貢献を目的とする「外国人技能実習生」や週28時間まではアルバイトが認められる「留学生」という制度を利用して、事実上の出稼ぎに来ている状態なのだ。 特に最近外国人の店員を見かけることが特に多くなった職種の中にコンビニがあるが、近著『コンビニ外国人』が好評を博しているライターの芹澤健介氏によると、コンビニで働く外国人は基本的には全て留学生なのだそうだ。人手不足を外国人留学生に埋めもらうことで何とか回っているコンビニは多い。 働く目的で来ている外国人が127万人を超える一方で、日本は単純労働者を受け入れず、技能実習生だの留学生だのといって、本来の目的とは異なる形で外国人の受け入れを続けていることで、様々な問題も起きている。 外国人技能実習生を支援する「外国人技能実習生問題弁護士連絡会」の共同代表を務める指宿昭一弁護士によると、外国人技能実習生に対するパワハラ、セクハラや、低賃金で長時間働かせる違法な労働の強要などが増えているという。また、留学生についても、学業が本業のため、アルバイトは本来は週28時間以内というルールがあるが、複数の職場を掛け持ちすることで、ほとんどの時間をアルバイトに費やし、勉強どころではない学生も少なくないという。要するに、彼らの多くが実際は日本に出稼ぎに来ているのに、日本では普通には働けないので、留学生という制度を利用しているということのようだ。 実際は日本が外国人労働者無しでは回らなくなっていることが明らかなのに、実習生だの留学生だのといった虚構を使って外国人の労働力を確保し続けているために、外国人労働者の身分はいつまでたっても不安定なままだ。このような状態を続ければ、「日本に働きに行くと酷い目にあうぞ」といった悪評が外国人の間に拡がり、近い将来、外国人が日本に働きに来てもらえなくなることが懸念され始めている。 外国人無しでもやっていけるというのなら結構だが、そうでないのなら、今のうちに外国人が働きやすい制度や環境をきちんと整備することが、将来の日本にとってもプラスになるはずだ。いや、それこそこれは日本にとって死活問題になるかもしれない。 コンビニで働く留学生のアルバイトや外国人労働者の実態について、この問題を取材してきた芹澤氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・コンビニ店員に外国人が増えている理由・「出稼ぎ留学生」の実態とは・外国人材の受け入れを巡る「骨太の方針」は、なぜ法務省の管轄?・日本人はどうすれば「移民」を受け入れられるか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■コンビニ店員に外国人が増えている理由
    神保: 今回のテーマは「コンビニ外国人」です。実は日本は、すでに世界で指折りの外国人労働者大国となっています。データにもよりますが、世界5位の外国人が多く働いている国でありながら、建前上、移民政策はとっていません。外国人に頼らないと日本の経済は回らなくなっているのに、抜け穴と言うか、外国人実習生制度や留学生のアルバイトなど、実際は外国人に頼らないと日本の経済は回らなくなっているのに、そういう特例的なものに落とし込んでいるという、異常な事態になっています。コンビニに行けば、外国人店員にしょっちゅう会いますよね。
    宮台: 20年以上前からそうなっていました。ネームプレートを見る限り、国籍もどんどん違ってきていることは、皆さん気づいていらっしゃるでしょう。
     

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  • 金子勝氏:安倍政権がもう3年続くと日本はどうなるか

    2018-08-15 22:00  
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    マル激!メールマガジン 2018年8月15日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第905回(2018年8月11日)安倍政権がもう3年続くと日本はどうなるかゲスト:金子勝氏(立教大学大学院特任教授)────────────────────────────────────── 事実上の首相選びとなる9月の自民党総裁選は、党内反主流派の立場から安倍政権を批判してきた石破茂氏が8月10日に出馬表明をしたものの、自民党の党内力学で既に勝敗は決したかのような観測が大勢を占めている。 確かに、首相、あるいは自民党の総裁が持つ人事権やその他の権限は絶大だ。そんな絶対権力者に下手に挑んで負けようものなら、その後の人事で冷遇されるばかりか、この先、どのような災いが身の上に降ってくるかもわからない。政治家でなくとも、長いものに巻かれたくなる誘惑はわからなくはない。 しかし、仮に党内力学や永田町の政治力学がそういうものだったとしても、市場や国際社会はそんなことにはお構いなしで、日本を巻き込んでいく。また、市民生活も永田町の論理に沿って回っているわけではない。 野党の自爆にも助けられながら、アベノミクスを旗印にここまで長期政権を築いてきた安倍政権だが、日銀の「異次元緩和」による景気誘導や株、国債の買い支えにも限界が来ていることは明らかだ。日銀の政策決定会合を受けた7月31日の黒田東彦日銀総裁の会見の後も、債権市場は乱高下といってもいいような激しい動きを見せ、市場のアベノミクスへの評価が揺らいでいることを印象づけた。 経済学者の金子勝氏は、2020年の東京五輪の前にアベノミクスのツケが回ってくる可能性が高いと指摘する。現時点では2020年の五輪に向けて、公共事業を始めとする活発な経済活動が行われているが、人口が減り続け高齢化も進む日本で、五輪後に大きな需要拡大が見込める要素は見当たらない。土地でも株でも、五輪後に落ちると分かっていれば、その前に売っておきたいと考えるのが投資家の心理だと、金子氏は語る。 経済面での「アベノリスク」に加え、安倍政権がもう3年続けば、森友・加計問題で露呈した日本政府のガバナンスの機能不全も、一層進むだろう。官邸官僚の専横は一層進み、官邸に人事を握られた霞ヶ関全体で忖度政治が拡がることは避けられそうにない。 かつてのように政権が一年ごとに目まぐるしく変わるようでは、しっかりと腰を据えた政策が実行できないのは事実だが、政権が長期化すれば、権力は必ず腐敗し、民主主義の根幹が蝕まれていく。特に現在の日本は「政治改革」の名の下に意図的に首相官邸に権限を集中させてきた経緯がある。権限を集中させたのはいいが、それに見合ったチェック機能を整備してこなかったことのツケが、ここに来てもろに回ってきている。 もし安倍政権がもう3年続いた場合に、日本に何が起きるかを金子氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・辺野古問題が象徴する、思考停止と時代錯誤・アベノミクスは詐欺だと言い切れる理由・2020東京五輪以前に、日本経済が限界を迎える可能性・カギを握るのは、原子力ムラ/電力会社の解体だ+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■辺野古問題が象徴する、思考停止と時代錯誤
    神保: 本日8月10日、石破茂さんが自民党総裁選への出馬表明を正式に行ないました。石破さんの方に流れがあれば咬ませ犬はいくらでも用意できていましたが、どうもその必要もなく、安倍再選はほぼ決まりという流れです。9月20日までまだ一ヶ月以上あるので、もちろん何が出てくるかわかりませんが、今日はその影響、安倍政権がもし3年続いたらどうなるか、というテーマで議論したいと思います。宮台さん、最初に何かありますか。
    宮台: 沖縄県の翁長知事が亡くなりました。ラジオでも申し上げましたが、翁長さんはある意味で、最後の保守でした。イデオロギーよりもアイデンティティ、あるいは誇りある豊かさだと語っており、社会思想上、もっとも伝統的な、社会を保全するための保守でした。経済も政治も、社会のためにあると、翁長さんは訴えていらっしゃったわけだけど、それに引き換え、日本のウヨブタ、安倍首相官邸を始めとする保守は、一体何を保守するのかと疑問に思います。経済を保守しようとしているのかと思えば、経済政策はめちゃくちゃだし、イデオロギー的には無教養丸出しだし、宗教はどうかと言えばバックに日本会議があるだけで意味がわからない。社会も経済も、政治も宗教も保守しようとしていない。
    神保: 権力を保守しようとしているのではないでしょうか?
    宮台: そうですね。それが現状だということです。
    神保: そのあたりも議論したいのですが、やはり皆さんの大きな関心事のひとつは、安倍政権が3年続いたときに、東京オリンピックを超えて、本当に経済がもつのか、ということでしょう。ゲストは、立教大学大学院特任教授の金子勝さんです。
     

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  • 吉崎達彦氏:米中貿易戦争と「Q Anon」とトランプ政権の行方

    2018-08-08 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2018年8月8日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────米中貿易戦争と「Q Anon」とトランプ政権の行方ゲスト:吉崎達彦氏(双日総合研究所チーフエコノミスト)マル激トーク・オン・ディマンド 第904回(2018年8月4日)────────────────────────────────────── トランプ政権周辺がここに来ていよいよ喧しい。 就任以来30%台に低迷していた政権の支持率は、6月の歴史的な米朝首脳会談で一時回復基調に転じたが、その後7月に入って米ロ首脳会談後の記者会見で、2016年の大統領選挙への介入容疑で捜査が続くロシアのサイバー工作について、トランプがプーチンの言い分を全面的に受け入れるシーンが世界中に流れてしまった。さすがにこれには身内の共和党からも厳しい批判があがり、トランプ政権の支持率が再び低迷する原因となっている。 また、トランプが独断で始めた中国に対する関税の引き上げも、中国との間で関税の報復合戦に発展してしまった。世界の2大経済大国間の関税報復合戦の世界経済への影響については、アメリカ国内はおろか世界が懸念を持ち始めている。 政権発足から1年半でトランプ政権の主要閣僚が次々と入れ替わった結果、今やトランプ政権は基本的にイエスマンで固められた専政状態にある。その結果、世界はトランプリスク全開の状態に陥っていると言っていいだろう。 しかも、ここにきてトランプの謎の行動が一部で問題視され始めている。それは今年に入ってから支持者集会などで目立ち始めていたアルファベットの「Q」の文字が書かれたプラカードを持った人々とトランプの関係だ。「Q」はネット上でじわじわと拡がってきた陰謀論を信じる人々の集まりで、正式には「Q Anon」(キュー・アノン)と呼ばれているグループのことだ。Anonは匿名を意味するAnonymousを省略したものだそうだが、基本的にかなり過激な陰謀論を展開しながら、SNS上で自然発生的に拡がってきた運動体のようだ。 ところが、なんとトランプ大統領が講演などでこの団体に、秘密のシグナルを送っているようなのだ。7月31日のフロリダ州タンパの支持者集会でも、トランプは前後の脈略と関係なくスピーチの合間に突如として「17」という数字をたびたび口にしている。これは「Q」がアルファベットの17番目の文字ということで、Q Anon支持者の間では17が聖なる数字とされていることを受けたものと見られている。17を連呼することでトランプはQ Anonに対して、「あなたたちの主張はちゃんと理解している」というサインを送っているというのだ。 トランプが何をやっても今さら誰も驚かないかもしれないが、Q Anonにしても関税の報復合戦にしても、ロシアへの全面的な歩み寄りにしても、政策としては何の正統性もないものばかりだ。何のことはない、一連のトランプの行動は、3ヶ月後の中間選挙や2年後には大統領選挙を意識した選挙運動に世界中を巻き込んでいるだけのことなのだ。 このままトランプの暴走が続くと、アメリカは、そして世界はどうなるのか。希代のアメリカ・ウォッチャーでエコノミストの吉崎氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・トランプが目配せする「Q Anon」とは・激化する米中貿易戦争の推移・時代遅れの関税政策が招くもの・止まらないトランプと、日本への影響+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■トランプが目配せする「Q Anon」とは
    神保: 今回は米中の貿易戦争のような話をメインにしようと思うのですが、ここに来てアメリカで面白い動きがあったので、それも含めて、代表的なアメリカ・ウォッチャーである双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦さんにお話を伺っていきます。今日の前半のキーワードは、「Q Anon」です。トランプの支持者集会などで、「Q」というプラカードを持った人が目立ち始めています。
    吉崎: この間から何だろうと思っていて、今日、事前に説明を聞いて初めてわかりました。
     

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  • 畑尾一知氏:だから新聞は生き残れない

    2018-08-01 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2018年8月1日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第903回(2018年7月28日)だから新聞は生き残れないゲスト:畑尾一知氏(元朝日新聞社販売管理部長)────────────────────────────────────── 新聞やテレビなどの既存のメディアの不振が伝えられるようになって久しい。しかし、ここに来て、いよいよ新聞がやばそうだ。 朝日新聞で長年販売を担当してきた畑尾一知元販売管理部長は、この10年間で新聞の読者が25%も減っていることを指摘した上で、今後10年間で更に30%も減るとの見通しを示す。このままでは全国紙を含め、既存の新聞の中には経営が立ち行かなくなるところが早晩出てくることが必至な状況となっている。 新聞が苦境に陥っている理由として、畑尾氏は特に若者の新聞離れが顕著になってきていることを指摘する。実際、NHKの調査では新聞を読んでいる人の割合が10代で3.5%、20代でも5.5%まで落ち込んでいる。若者の間ではもはや20人に1人も新聞を読んでいないのだ。全体でもこの20年で新聞を読む人の数は52%から33%まで低下しており、半数以上の人が新聞を読んでいると答えた世代は60代と70代だけだ。 なぜ新聞がこうも読まれなくなったのかについて畑尾氏は、値段の高さ、記事の劣化、新聞社に対する反感の3つを主な原因としてあげる。朝日新聞を例に取ると、1970年代に700円台だった月極の購読料はその後、高騰を続け、1980年代には2000円台、1990年代には3000円台まで値上げされている。これは紙代の上昇などをそのまま反映したものだそうだが、その間、新聞社は人件費やその他のコストを削るなどの経営努力をほとんど何もしてこなかったと畑尾氏は言う。 それでも新聞が情報発信を独占できている間は、やむなく新聞を取っている人が多かったが、インターネットが登場し、新聞に頼らないでも必要最低限の情報が入手できるようになると、毎月4000円近くもする新聞の購読料の割高感が際だつようになってしまった。 畑尾氏はそれでも、紙の新聞には一定のニーズがあるとの見方を示す。新聞社が社員を半分に削り、紙面も半分以下にしてスリム化を図れば、新聞社は生き残ることが可能かもしれない。しかし、既存の新聞社には、それはできないだろうと畑尾氏は言う。要するに、破綻しているのは新聞社のビジネスモデルではなく、新聞社の経営体質の方なのだ。 朝日新聞の平均給与は1200万円にのぼるという。再販制度に守られ、記者クラブなどの情報利権を独占しながら、高給を食む若い記者たちが臆面もなく取材現場にハイヤーで乗り付けるような新聞社の体質が根本から変わらない限り、既存の新聞社に未来はないことは明らかだ。 実際、新聞を読む人の数はものすごい勢いで減っているにもかかわらず、日本新聞協会が毎年発表する新聞の発行部数は、そこまでは落ち込んでいない。そのギャップはいわゆる「押し紙」として、販売店に押しつけられているのが実情だと畑尾氏は語る。 新聞社から出資先の地方の放送局などへの天下りも、常態化している。一体、いつまで新聞社はこのようなことを続けるつもりなのだろうか。 ただ、新聞社に忘れてほしくないことは、これまで新聞社の中にプールされてきた職業としてのジャーナリズムのノウハウは、再販など数々の特権を容認することで市民社会が新聞社の経営を支えたことによって確立され維持されてきた、いわば公共的財産だ。堕落した経営体質故に新聞社が消えてなくなるのは自業自得としか言いようがないが、公共財産としてのジャーナリズムまで道連れにされては困る。 朝日新聞の販売管理部長を務めた畑尾氏、新聞社経営の現状とその体質、生き残りの可能性などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・現在の新聞社は「保護」に値するのか・自由自在に料金を上げてきたことのツケ・新聞衰退のさらなる原因と、消滅した場合の影響・処方箋は、現在の新聞社の外で実現する+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■現在の新聞社は「保護」に値するのか
    神保: マル激では初期のころ、メディアの問題を多く取り上げていましたが、その頻度は落ちてきていました。番組が始まった2000年代初頭は、まだマスメディアに勢いがあったし、経営もよかったから「このままだと、既存のメディアはヤバい」という話をする価値があったのだけれど、そろそろ“いまさら感”が出てきています。
    宮台: アメリカの後を追った感じす。アメリカでは90年代には、すでにマスコミ論ではなく、インターネット論が花盛りでした。キャス・サンスティーンの議論が典型ですが、「見たいものしか見ない」という、インターネットの傾向をどうすれば打破できるのか、という提案がなされたりしていました。10年くらい前から、日本でもその議論が完全に当てはまるようになりましたね。
    神保: アメリカで起きていることが10年遅れくらいで日本で起きる、というのは他の分野でもよくあることですが、メディアもそうなりつつあるということですね。ただ日本の場合、一握りのメディアへの資本や売上の集中度が高く、つまり記者クラブ制度、再販制度などに守られてきたため、「競争力を培ってきたがゆえに、アメリカよりも10年もった」というわけではありません。むしろ上げ底をされてきたからここまで保たれたのだとすれば、臨界点を超えた瞬間に、一気にガタンといく可能性があるのではと思います。
     

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