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【対談】犬飼博士×中川大地『Pokemon GO』から考える近未来の社会――Nianticが設計するヒューマン・コンピュテーションの可能性 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.674 ☆
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【対談】犬飼博士×中川大地『Pokemon GO』から考える近未来の社会――Nianticが設計するヒューマン・コンピュテーションの可能性 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.674 ☆

2016-08-24 07:00

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    【対談】犬飼博士×中川大地
    『Pokemon GO』から考える近未来の社会――
    Nianticが設計するヒューマン・コンピュテーションの可能性
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.8.24 vol.674

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    今朝のメルマガは、評論家/編集者の中川大地さんと、eスポーツプロデューサーの犬飼博士さんの対談をお届けします。『Ingress』に深くコミットし、『ポケモン』の全作品をプレイし続けてきたという犬飼さんと、本メルマガで「現代ゲーム全史」を連載し、その書籍が本日発売になる中川大地さん。ゲームの文化・歴史に精通する二人が、『Pokemon GO』ブームと今後の可能性について語り合いました。


    本メルマガで連載されていた中川大地さんの『現代ゲーム全史』の単行本が、本日、発売になります。ファミコン以前の時代からスペースインベーダー、マリオ、ドラクエ、FF、パズドラ、Ingress、さらにはPokemonGOまで――。"文化としてのゲーム”のすべてを一望できる大著です。ぜひともお買い求めください!

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    『現代ゲーム全史−−文明の遊戯史観から』
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    ▼プロフィール
    中川大地(なかがわ・だいち)
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    1974年東京都墨田区向島生まれ。ゲーム、アニメ、ドラマ等のカルチャー全般をホームに、日本思想や都市論、人類学、生命科学、情報技術等を渉猟して文化と社会、現実と虚構を架橋する各種評論の執筆やコンセプチュアルムック等を制作。批評誌『PLANETS』副編集長。著書に『東京スカイツリー論』、編書に『クリティカル・ゼロ』『あまちゃんメモリーズ』など。

    犬飼博士(いぬかい・ひろし)
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    1970年愛知県生まれ。ゲーム監督、eスポーツプロデューサー。IT(ゲーム)とスポーツの間に生まれた情報社会のスポーツ「eスポーツ」や、空間情報科学をテーマとした展示「アナグラのうた 消えた博士と残された装置」、「未来逆算思考」、「eスポーツグラウンド」、「スポーツタイムマシン」など、身体的コミュニケーションを誘発するフィジカルな作品を制作。近年は運動会を次世代ゲームプラットフォームととらえる「未来の運動会プロジェクト」を進行。「超人スポーツ」委員としても活動中。

    ◎構成:長谷川リョー

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    ■『妖怪ウォッチ』への米国からの応答としての『Pokemon GO』

    中川 日本での配信開始から1ヵ月、『Pokemon GO』はすっかりコミュニケーションインフラとして定着しました。それによって、一定のプレイ文化の形成も徐々にされてきている印象があります。犬飼さんは、本作の前身にあたる『Ingress』でも地域ベースのプレイヤーコミュニティの運営に深く関わっていらっしゃいましたが、両者を比べてみた印象はいかがですか。

    犬飼 『Ingress』が出たときよりも興奮していますね。初めて『Ingress』をプレーしたときは、初めてのことが多すぎて何が何だか分からなくて、面白さを発見するまでに時間がかかったんですよね。じわじわと興奮がやってきた。一方もともと『ポケットモンスター』シリーズは大好きで、新作が出る度に買っているんですが、今回の『Pokemon GO』の最初の感触も、新作をプレイするときの興奮に近かったかもしれない。『Ingress』と『ポケモン』の新作が合体してやってきたので興奮しています。

    中川 アメリカで先にリリースされて騒ぎになっていたことも期待感を高めましたよね。日本でのリリース日がなかなか決まらないので、かつてのドラクエの発売日前のワクワクがいつまでも続いているような、ゲームにまつわる懐かしい空気を多くの人に味わわせてくれた感があります。
    このメルマガで連載していた「現代ゲーム全史」は2014年までが最終章になるので、最終回では『Ingress』と対比させて『妖怪ウォッチ』を取り上げたのですが、『Pokemon GO』は『妖怪ウォッチ』が『ポケモン』から取り込んで進化させた部分――目に見えない妖怪が近づいてくると反応して、覗くと妖怪が見える、というAR的な機構を、再び奪還したような関係になっている。9月に発売が予定されている「Pokemon GO Plus」にしても『妖怪ウォッチ』のコンセプトそのままですよね。つまり、アメリカ産のAR技術と、アニメ『電脳コイル』でもモチーフになっていましたが、日本の妖怪という想像力が融合することで、『Pokemon GO』というコンテンツが生み出されたわけです。しかし、それがアメリカであそこまで熱狂的な盛り上がりをみせるのは意外でした。

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    ▲「Pokemon  GO  Plus」(出典


    犬飼 日本の場合は、ゲームに触れるより先に、マスメディアによって煽られてしまった部分が大きいと思います。「『Pokemon GO』という面白いゲームが出るらしいぞ」ということが、広告や宣伝ではなく、社会現象として世間に広がって、ニュースで大々的に報じられたり、リリース前なのに内閣府から「注意せよ」とお達しが出るなど、ありえない現象が起こっていった。
    これはアメリカ在住の友人から聞いた話ですが、向こうでは最初から劇的な盛り上がりがあったわけではなく、街中で遊ぶ人が少しずつ増え始めて、それが取材されてマスメディアに乗り、YouTubeで拡散されて社会現象化していった。その過程で起きていた現象は、単純に人が集まっただけです。「パーティーをやってるらしいぞ!」と噂になったけど、何のパーティーなのかよく分からない。音楽も流れていないし、ただスマホを持った人がウロウロしているだけ。こんな風に街中に人が集まる現象を、これまで誰も体験したことがなかった。

    中川 これまでも風景にタグがついたり特定の場所にチェックインするとバッジがもらえる仕組みのARアプリはありましたが、「見えないもの」を見たい、という動機があって初めて一般の人々が衝き動かされて、社会現象として可視化されたということですね。


    ■『ポケモン』に伏在するアメリカ文化への幻想

    犬飼 アメリカでは『Pokemon GO』のプレイヤーを狙った強盗が現れたり、プレイ中に死体が発見されたりといった事件が起きていますね。

    中川 『Pokemon GO』で遊んでいて死体を見つけてしまった話は、すごく象徴的だと思います。『ポケモン』は『MOTHER』の強い影響下にあることが知られていますが、もともと『MOTHER』というゲームは、映画『スタンド・バイ・ミー』のような、アメリカの田舎の少年の成長物語にインスパイアを受けている。要するに「幻想としてのアメリカ」をモチーフとしているんです。
    映画『スタンド・バイ・ミー』は、子供たちが現代人にとって他者性のある「死体」を探しに行くという、一種の通過儀礼を描いた作品ですよね。つまり、『Pokemon GO』は「死体を発見する」という『ポケモン』の原点にあたる風景を、もう一度、逆輸入する形でアメリカに現出させたわけです。こういった、危険も含めた原体験のようなものは、さんざん注意喚起された後にリリースされた日本では味わえないので、正直、羨ましささえ感じます。

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    ▲1989年発売のRPG『MOTHER』。糸井重里、宮本茂が手がけたことでも有名。(出典


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