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古川健介『TOKYO INTERNET』第7回 匿名性の次の依代「初音ミク」から見る日本が作れるプラットフォームとは【毎月第2水曜配信】
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古川健介『TOKYO INTERNET』第7回 匿名性の次の依代「初音ミク」から見る日本が作れるプラットフォームとは【毎月第2水曜配信】

2017-03-08 07:00
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「けんすう」こと古川健介さんが日本的/東京的なインターネットの特質に迫る連載『TOKYO INTERNET』。今回は、「名無し型匿名」の発展型としてゼロ年代後半に登場した「初音ミク」を分析しつつ、日本的インターネットが次に何を生み出すのかを考えます。

匿名性の次の依代「初音ミク」から見る日本が作れるプラットフォームとは

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(イラスト・たかくらかずき)

前回の記事では、なぜ日本のネットサービスでは匿名性が好まれるか、という点に関して「関係性を消し去るため」と述べました。更に「名無しさんというキャラにユーザー全員がなりきることで、より関係性を消していき、一体感を得ていく」というところまで述べています。

たとえばアメリカなどでは、自分の個性やアイデンティティを非常に重視し、「自分は自分であり、自分の意見を言うことが大事」という考え方を強く教育をされます。私は私、という考え方です。

それに比べ、日本を含む東アジアでは、全体の関係性の中で、自分というものを考えます。会社での自分と家での自分、というので、キャラが全く違うということもありえます。

関係性を強く意識する日本人にとって、匿名性のインターネットサービスは、その関係性がないところでコミュニケーションができるため、居心地がよかった。そして、単なる匿名にとどまらず、みんなが「名無しさん」という同一のキャラクターを演じることで、その関係性をよりゼロにしていったのではないか・・・というのが前回の主張です。

この記事ではそこから先にさらに推し進めて考えていきたいと思います。考えていきたいのは、「その匿名性があったことで、日本のインターネットは何を生み出したか、そして何を生み出す可能性があるか」という点です。

ちなみに、この連載の主な目的は「インターネットサービスなどは、実は都市に深く結びついている。東京からは、どんなサービスが生まれる土壌があるのかを整理し、これから作られるサービスの手助けをしたい」という点にあります。その意味からも「匿名性と名無しさんへのなりきりによって、関係性を消した先に、何が生まれたのか」ということを整理し、さらに今後何が生まれていくのか、という点を重点的に書きたいと思います。

集合知と匿名性は何を生み出すか

まず、最初に「集合知」と匿名性の関係について掘り下げて考えていきたいと思います。

集合知とは、2004年くらいに盛んに言われた言葉です。Web2.0という言葉が当時流行ったのですが、要は「たくさんのインターネットユーザーが投稿などをすることで、その集合した知識の全体が良い感じに使える知識になったもの」という感じでしょうか。広義の意味では、オープンソースプロジェクトや、クリエイティブ・コモンズなども含まれますが、ここでは技術者や専門家ではない、一般のユーザーが行動することが、集合的な知となる、という意味に限定して考えていきます。

その意味での集合知を分解すると、以下の2つになります。
・インターネットユーザーによる大量のデータ
・その大量のデータを解析して、使いやすくする
インターネットユーザーによる大量のデータは、明示的に投稿するものから、無意識に行っている活動も入ります。

前者の例としてはクックパッドなどです。多くの人たちが自分のレシピを投稿しており、そのデータが大量にあるため、レシピサイトとしての価値が高いのです。

後者は、Googleの検索結果などです。Googleの検索結果の順番のロジックは、それぞれのサイトに貼られたリンクの数だったり、検索結果から遷移したときのユーザーの動きなどを見てランクを決めています。

ネットサービスにおける集合知についての議論は、2004年ごろのWeb2.0時代に盛んにされましたが、当時は海外と日本の差はほとんどありませんでした。ブログや、ソーシャルブックマークなどは、アメリカで流行し、そのあと日本でも類似サービスが出てきて流行ったわけです。

しかし、ゼロ年代後半から10年代にかけて、差が出てきます。

まず、GoogleやApple、Facebook、Amazonなどのいわゆる「BIG4」と言われる企業たちは、「ありえないほどの大量のデータを確保する」「その大量のデータを、ものすごいリソース(人的資源、サーバ費用など)にて解析する」ということをしていっています。

Googleなどは凄まじく、Android携帯を使っていると、今日どこの場所にいったか、どこでご飯を食べたのか、というものをGoogleマップで保存していたり、「一昨日買ったこの靴、値下がりしていたよ」と表示してきたりします。Googleで検索をしていたり、Chromeを使ってWebを徘徊していたり、Gmailを使ってメールをしたり、Googleカレンダーを使っていたりするユーザーは、相当なデータをGoogleにあずけているわけです。Googleはあらゆるデータを抑えており、それを凄まじい精度で解析をしています。これはますます加速していくでしょう。

こうした戦いは、シリコンバレー的な、グローバルのインターネット企業の得意とするところであり、強者がより強者になっていく、という形です。

そして、現在、よく話題になる人工知能(AI)に関しては、彼らが圧倒的に先に行っています。人口知能とは、いってしまえば大量のデータを保有しており、それを学習するための大量のリソースを使えるかどうか、にかかっているので、その2つを使える企業は限られているからです。

中国などのインターネット企業はそれに追従しつつありますが、日本のインターネット企業では、そのような動きができている企業はかなり限定的です。かろうじてYahoo!JAPANなどでしょうか。

しかし、この流れの中、日本では、全く別の集合知により、新しいプラットフォームができあがっていました。それが「初音ミク」です。


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