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高須正和×落合陽一 〈カオス近代〉からコンピューテーショナルな生態系へ・前編(魔法使いの研究室)
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高須正和×落合陽一 〈カオス近代〉からコンピューテーショナルな生態系へ・前編(魔法使いの研究室)

2017-10-10 07:00
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    メディアアーティストにして研究者の落合陽一さんが、来るべきコンピューテーショナルな社会に向けた思想を考える「魔法使いの研究室」。今回はチームラボMake部の発起人にしてMakerFaire深圳・シンガポールで実行委員を務める高須正和さんとの対談をお届けします。前編では、〈近代〉というパラダイムの超克をキーワードに、「100年後のキャズムを超えられない男」であるエジソンの業績を振り返りながら、今、中国で進みつつあるテクノロジーによる社会の変容について議論します。 ※この内容は2017年4月27日に行われたイベントの内容を記事化したものです。

    人類にとっての〈近代〉をいかに終わらせるか

    落合 今回のテーマは一見、難しい話に見えるかもしれませんが、ある種の生態系を成り立たせるイメージ、自分たちのモチベーションやそこから生まれた表現をチームで走らせるために必要な妄想というものがある。今日はそういう話を高須さんと話していけたらと思います。僕は「日本のイケてない部長さんがいなくなる会」を作りたいと思っているんですよね。

    高須 そうそう。そこでは「超合理的」がキーワードになるよね。

    落合 超合理的に考えて、「うちの会社はメーカーなんだけど、イノベーションないんだよね……」ってときに「いや、そんなことはしなくていいんです」「Kickstarterになる必要はないんです」というような話を、中国の深圳から来た高須さんと……深圳でいいんですよね?

    高須 シンガポールですね(笑)。

    落合 シンガポールから来た高須さんと話していきたいと思います。最初に僕から自己紹介を簡単にしていきます。

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    落合 僕がやろうとしているのは「人類にとっての〈近代〉を終わらせる」ということです。皆さんは今は〈現代〉だと思ってるかもしれませんが、〈近代〉です。「国民国家」や「法律」といった概念は、近代的な枠組みの一部で、それをどうやって終わらせるか、ということを考えています。そのために人間や環境を拡張・補完する。コンピューテーショナルに操作された光や音、波動によって「新しい自然」を構築し、〈近代〉というスタイルを更新するのが、僕の目指しているところです。

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    この〈近代〉を象徴する人物が、エジソンとフォードです。米国の巨大企業、ゼネラル・エレクトリック社とフォード社の創業者ですね。彼らは〈近代〉を規定することによって、20世紀という時代を作りました。
    たとえば、「T型フォード」は史上2番目に多く生産された四輪車ですが、そのために開発された工場による大量生産方式は、人間の労働単位を「時間」に定義しました。研究開発によってイノベーションを生み出し、大量生産によって低コスト化した製品を一般大衆に普及させる。このフォード方式の体制下では、人間の画一化が求められます。そこで要請されたのが、現在まで続いている集団教育と、「問い」と「答え」を前提とした学習方式です。この方式の教育を大学まで続けて、最終的にサラリーマンになることが、最も幸せに生きる方法であるという社会様式。その最大到達点が現在のトヨタでありAppleのiPhoneです。
    確かに、このやり方は21世紀初頭までは正しかったかもしれません。しかし、今後訪れる新しい社会では、エジソン・フォードの作った〈近代〉は更新されなければならない、というのが僕の考えです。
    たとえば、健常者と障害者という区分は、〈近代〉が規定した枠組みです。そもそも「標準的な人間」という発想がなければ、人間に障害なんてないんですよ。それはパラメーターの一部にしか過ぎない。たとえば身長が低い人がいたとします。重力が500倍くらいある環境で棚に手が届かないとなれば、それは圧倒的な障害です。でも、地球の1Gの重力下では、そんなことはないですよね。本来はパラメーターの問題でしかないことを、「障害」と規定したのは〈近代〉の枠組みです。それをどうやって破壊するか。そんなことばかり考えながら、僕はものを作っています。

    高須 単純な一つの回答じゃなくて、いくつも答えがあるということがキーワードになる気がします。今はすごくたくさんの答えがある時代です。いろいろな仕事があるから、いろんなことができる。答えがひとつではない、というのが脱近代だと思う。

    未来の製品をコミュニティベースで生み出す

    高須 では、僕の自己紹介をします。「MakerFaire」という世界的なDIYの祭典があって、僕は「MakerFaire 深圳」と「MakerFaire シンガポール」の運営をしているグループの一員です。アジアのMakerFaireに世界で一番多く参加して、プレゼンしたり出展したりしています。

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    さきほどのお話でも〈近代〉と〈現代〉の対比がありましたが、ここでは「従来の発明家」と「メイカー」をの2つを、ぱきっと切り分けて語ってみたいと思います。
    伝統的な発明家は大学や大企業の研究所にいますが、発明以外のことはほかの人がやっています。企業であれば、企画部が企画して、技術部が研究して、広告代理店が宣伝して、セールスマンが売ります。それに対して、メイカーと呼ばれる人たちは、仲間と一緒に学んで作りながら、お互いに評価しあうことで、イケてるものとイケてないものを決め、お金を出して仲間たちから買うという形で、イノベーションを生み出しています。

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