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1年延期になったオリンピックについて、もう一度だけ考え直す | 乙武洋匡
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1年延期になったオリンピックについて、もう一度だけ考え直す | 乙武洋匡

2020-07-06 07:00
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    今月より、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。
    今朝は、乙武洋匡さんをゲストにお迎えした「1年延期になったオリンピックについて、もう一度だけ考え直す」です。新型コロナウイルスの感染拡大により、1年延期となった東京五輪。withコロナ時代だからこそできる、開催の仕方とは。そして、今こそ議論されるべき、オリパラの本質とは何なのでしょうか。(放送日:2020年6月2日)
    ※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。

    【明日開催!】
    7月7日(火)19:30〜「YouTubeとNetflixは世界をどう変えるのか(遅いインターネット会議)」(ゲスト:明石ガクト)
    YouTubeやNetflixなどの映像配信プラットフォームの台頭により、エンターテイメントの世界は大きな変容を迎えています。今後求められる映像コンテンツとはなにか。私たちはそれをどのように受容し、楽しむことができるのか。それらのコンテンツは、文化の地図をどう牽引していくのか。
    映像制作のプロフェッショナルである明石ガクトさんと、お話しします。
    生放送のご視聴はこちらから!

    遅いインターネット会議 2020.6.2
    1年延期になったオリンピックについて、もう一度だけ考え直す | 乙武洋匡

    たかまつ ごきげんよう。本日ファシリテーターを務めます、たかまつななです。

    宇野 評論家の宇野常寛です。

    たかまつ 「遅いインターネット会議」、この企画では政治からサブカルチャーまで、そしてビジネスからアートまで、様々な分野の講師をお招きしてお届けします。本日は有楽町にある三菱地所さんのコワーキングスペースSAAIから放送しています。本来ですとトークイベントとしてみなさんとこの場を共有したかったのですが、当面の間は新型コロナウイルスの感染防止の為、動画配信と形式を変更しております。今日もよろしくお願いします。

    宇野 もう2ヶ月ぶりのSAAIですよ。

    たかまつ めちゃくちゃ綺麗な会場ですね。

    宇野 このイベント「遅いインターネット会議」は3月から始まったのですが、まだ一度もお客さんを入れていません。本来ならここに100人くらいお客さんを入れてやろうかなと思っていたんですけど。ここ2ヶ月に至ってはリモートだったので、僕たちですらこの施設には入らずに実施していたんです。徐々に回復していって、夏ぐらいにはここにお客さんを入れてやれるかなという希望を持って再開してますので、皆さんよろしくお願いします。

    たかまつ ここで開催できるようになるのが楽しみですね。

    宇野 コロナウイルスが画期的な新薬とか宇宙からのメッセージで瞬間的に撲滅されたら来週からお客さんがバーッと来れますよ。だから皆さん、人類の勝利を楽しみにお待ち下さい。

    たかまつ それでは本日のゲストの方をご紹介いたします。本日のゲストは作家の乙武洋匡さんです。

    乙武 はい、よろしくお願いします。

    たかまつ よろしくお願いします。

    宇野 よろしくお願いします。

    乙武 これ気づいたんだけど、(上の照明を見て)これって炊飯器の中身なんだよね。

    宇野 そう、これ東京R不動産というサイトを運営しているOpen Aの馬場正尊さんがめっちゃいろんなところを凝ってやっていて。こういう細かいところも全部、リサイクル品がすごく多いんですよ。

    たかまつ 電球のカバーが炊飯器になっているという。

    宇野 このビル自体も有楽町の古いビルなんだけど、そこにある有り物を使っておしゃれにリノベしていくってコンセプトで作られてるんです。

    乙武 へぇ〜、素敵。

    たかまつ ちょっと興奮しますよね。

    宇野 本当だったらここをお客さんで埋め尽くす予定だったんです。

    たかまつ これはおしゃれですよね。勤務後にここに来て勉強するとか。

    宇野 ただ、コロナで本来やれるはずのものがやれなかったということは僕らも一緒なんだけど、今日は僕らの100倍くらいダメージを負っているものの話をしましょう、ということで。

    たかまつ さて、本日のテーマは「1年延期になったオリンピックについて、もう一度だけ考え直す」です。新型コロナウイルスによるパンデミックで2021年夏への延期が決まった東京オリンピック・パラリンピック。果たしてこの決定は正解なのか? 延期決定のプロセスで見えてきた問題とは何か? 21世紀のオリンピック・パラリンピックはどうあるべきなのか? 改めて議論していきたいと思います。ということで宇野さん、本日のこのテーマについてはいかがでしょうか?

    宇野 今日のゲストの乙武さんにも参加していただいたんですが、5年前に僕らが作っている雑誌『PLANETS vol.9』では「オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト」といって、単にオリンピックに反対と言うのではなく、建設的な対案をぶつけることで現状のプランニングをポジティブに批判しようとしたんです。そこで、開会式のプランや、パラリンピックの新たな位置づけ、東京という街の開発計画など「僕らだったらオリンピックをこうやりたい」という夢の企画書を作りました。あれから5年経って、「さぁオリンピックはどんなものか」と待ち構えていたらまさかの延期だったんです。僕は、このタイミングがオリンピックを日本人がどう迎えていくのかを考える最後のチャンスだと思うんです。なので、もう一度乙武さんをお呼びして、じっくりオリンピックについて考えてみたいと思い、今日の会を企画しました。

    開催延期までの決定プロセスを振り返る

    たかまつ それでは早速議論に入っていきたいと思います。まず最初の議題はこちらです。「開催延期までの決定プロセスを振り返る」。今年3月下旬、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、東京オリパラの開催延期が決定しました。乙武さんはこの延期決定をどのようにご覧になっているでしょうか?

    乙武 3月末の3連休(編集部註:3月20日〜22日。オリンピック中止の発表は24日)でコロナウイルスの感染が一気に拡大したんですよね。ただ、このときには、オリンピックがどうなるのかがまだ決まっていなかった。

     本来ならあの3連休の前に国も緊急事態宣言を出すべきだったし、東京都としても、ちゃんと危機を叫ぶようなアクションを取るべきだったけれど、やっぱりオリンピックのことがあったから後手に回ったんじゃないか、という声もあります。単純に政治判断のミスで後手に回ってしまったのか、きちんと考えた結果として遅らせようという判断だったのか、こればかりは真相がわからないのでちょっと批評のしようがないなというのが正直なところです。

     これは結構いろんな人から批判をいただきそうな意見ですが、たとえ、後者の政治的判断によって感染拡大防止の為の一手が若干遅れたのだとしても、一旦、オリンピック・パラリンピックをどうするかをちゃんと決めようという判断をしたことは、僕としては結果的によかったんじゃないかなと思ってるんです。なぜなら政治って、結局は結果なので。

     結果として中止ではなく、なんとか1年延期ということでまとめられたし、東京でもそこまでの医療崩壊を起こさずに、何とか感染者数は減少を辿れた。そういう意味では、僕としては、もし政治判断によるものだったとしたら評価しても良いんじゃないかなと思っているんです。

     ただ1点、あまり納得がいっていないのが、IOCとの交渉の窓口です。今回のオリパラの主催都市は東京で、開催主体は組織委員会なわけですよね。でも、開催可否や延期するかどうかの交渉の過程で、IOCとの交渉窓口が安倍首相になっていたんです。それで「あれ? 国ってなんだっけ?」と思って。これまでのオリンピックって、東京都とオリパラの組織委員会が主体で、国はあくまでサポート役という立ち位置だったはずなのに、なぜこの決断には急に首相が入ってきたんだろう、というのは僕の中ではあまり整理しきれていない部分ですかね。

     IOCが安倍首相とこんな話をした、とかコメントを出すことが多くなってきて、「あれ? 今の日本の窓口って安倍さんになってるの?」と。それは批判という意味ではなく、ただ不思議でしたね。

    たかまつ わかりました、ありがとうございます。宇野さんはどのようにお考えですか?

    宇野 今回のコロナ禍は基本的には国家の反撃フェーズだったわけです。この10年は例えば、GAFAのような巨大なプラットフォームのような国家以外のプレーヤーの力が相対的には強くなってきていたところだった。ところが今回のコロナ禍によって、「やはり政治じゃないと決められないことってあるじゃん」という当たり前のことにみんなが気づいたんだと思うんです。なので、このタイミングで世界中の国家権力が、もう1回自分のターンが来たと思ったはず。だから、今回のオリンピックの官邸の対応もその一環だと僕は思っています。

     その上で今回のオリパラ延期について僕が何を思っているかというと、オリパラのことが問題になること自体が問題で、議論の順番を間違えてしまっているということです。単にパンデミックの抑制に対して最適な手を打てばよかったし、その上でどうすれば一番ダメージが少なくオリンピックを開催できるのか、感染拡大を防ぐためにはやめた方が良いんじゃないか、とか、何が最適かという議論をすればよかったと思うわけです。にもかかわらず、実際にはオリパラとコロナ対策、どちらを優先すれば支持率が維持できるかが天秤にかけられていた。


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