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「PLANETS vol.9」の全貌 ——2020年の東京を舞台に、宇野常寛が企む「A,B,C,そしてD」とは? ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.139 ☆
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「PLANETS vol.9」の全貌 ——2020年の東京を舞台に、宇野常寛が企む「A,B,C,そしてD」とは? ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.139 ☆

2014-08-19 07:00

    「PLANETS vol.9」の全貌
    ――2020年の東京を舞台に、
    宇野常寛が企む「A,B,C,そしてD」とは?
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.8.18 vol.138

    宇野常寛は、2020年の東京オリンピックに向けて、一体「誰」と「何」を企んでいるのか――? 本日のほぼ惑では、その全貌を少しだけお届け致します!!

    【PLANETS vol.9(P9)プロジェクトチーム連続インタビュー第13回】

    この連載では、評論家/PLANETS編集長の宇野常寛が各界の「この人は!」と思って集めた、『PLANETS vol.9 特集:東京2020』(略称:P9)制作のためのドリームチームのメンバーに連続インタビューしていきます。2020年のオリンピックと未来の日本社会に向けて、大胆な(しかし実現可能な)夢のプロジェクトを提案します。

    今回は、他でもない宇野常寛自身が、今冬発売予定の『PLANETS vol.9 特集:東京2020』について語ります。これまでの「P9」連続インタビューで様々な人から語られたアイデアが、どのような形で一つの本に結実するのか――その全貌を、先日開催されたトークイベント「渋谷セカンドステージvol.2
    東京2020」内での、宇野によるプレゼンを再編集するかたちでお送り致します。
     
    ◎文:真辺昂
     
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    ▲左から宇野常寛、乙武洋匡、堀潤、家入一真、猪子寿之(敬称略)
     
     
    ■はじめに――「PLANETS vol.9」を構成する「A,B,C,D」とは?
     
    僕が自費出版しているPLANETSという雑誌があるのですが、今回その9号となる「PLANETS
    vol.9」のテーマを「東京2020」としました。これは、一言でいうと2020年に開催が決まった「東京オリンピック/パラリンピック」について、20代・30代の若い知性が集まって自分たちならではの計画書を出そう、というものです。

    もちろん、かつての64年の五輪が新幹線の整備やカラーテレビの普及をもたらしたように、2020年の五輪もまたこの先何十年かの日本社会やライフスタイルの雛形が提示されることになると思います。ですので、僕たちの計画も、単なる五輪開催プランに留まらず、21世紀の日本社会そのものへの提案になっています。

    言論人の社会提案というと、どうしても「あえて実現不可能なぶっとんだビジョンを提示しました。これって問題提起的でしょ?」というスタンスが多いのだけど、僕はこれは単にワクワクするような内容で、かつ実現可能なプランを提出する能力が足りないから言い訳しているだけだと思う。でも、僕らは違います。実際に2020年に実現可能な、そしてたくさんのひとに「こんなオリンピックが、こんな日本社会が2020年に実現したらいい、と思えるものにします。

    内容は、各パートにおけるテーマの頭文字をとって「A」「B」「C」「D」の4パートとしました。Aは「Alternative」、Bは「Blueprint」、Cは「Cultural
    festival」、Dは「Destroy」を表しています。それぞれのパートに対して、さまざまな研究者や起業家や文化人などを招きながら議論していく予定です。さて、ではいったいこれら4つのパートの中で、どんなことを議論するのか、その全貌についてこれから話していきたいと思います。
     
     
    「A」→「Alternative」僕らが考えるもう一つの「オリンピック/パラリンピック」

    “A”パートは「Alternative」、つまり、「僕らだったら、こんなおもしろいオリンピック/パラリンピックを開催しますよ」という企画書です。

    例えば、チームラボ代表・猪子寿之氏とは<リアル参加型オリンピック>というものを考えています。具体的に、最新の情報技術をつかった、ユーザー参加型の開会式や、聖火リレーや選手入場にバーチャル参加できるようにしたり、実際の選手の運動をホログラムで再現することによって、一緒に走ったり飛んだりできるなど、「誰もが参加できる」オリンピックを構想しています。

    そしてパラリンピックのパートでは、パラリンピック”ならでは”の議論、つまり「初期条件が全然違うばらばらの人間たちを、どうやってフェアに戦えるようにするか」ということについて考えていて、ここではゲーム研究者の井上明人氏を中心に議論しています。

    義肢や装具の性能は今、大きく向上し、生身の身体よりも義足の方が競技に有利な未来はすぐそこまで迫っています。既にもう訪れているという人もいるくらいです。このとき、僕たちはふたつの問題に直面する。ひとつは近代スポーツが想定してきた「人間」の幅が狭いという問題です。現代ではそれなりに改善していますが、近代社会がやはり若い健常者の成人男性を基準に「人間」というものを考えすぎてきた問題はスポーツという文化には大きく影を落としている。なので、僕たちは未来のパラリンピックを通して「人間」という概念を拡張することを提案したいと思っています。

    もうひとつの問題がそんな社会になったとき、つまり身体的な条件から何から何まで違う人間が同じ社会を営むときにフェアネスはどう確保されるのか、という問題ですね。実際に性能のいい義足とドーピングの境界線は曖昧になりつつある。

    このとき、僕たちが手がかりにするのがずばり「ゲーム」の知見です。

    ヘンなたとえに聞こえるかもしれませんが、サッカーとか野球とかって主に健康な成人男性がプレイすることを想定してつくられたゲームだけど、テトリスって5歳から80歳くらいまでの「バラバラな条件のプレイヤー」でもフェアに戦えるように創られている。そう言う意味で、ゲーム研究の知見が非常に活きるんですね。

    あるいは、やはりこれも多様なプレイヤーが参加するのでルールを工夫することでフェアなゲームを構築している「ロボコン」のゲーム設計なども参考にしながら、本当の意味で誰もが参加できる「拡張」人間のためのオリンピックのかたちを、、最終的には2016年にスイスでの開催予定の「サイバスロン」(ロボット技術を駆使した義手・義足・パワードスーツを付けて競技する義体者のオリンピック)についても言及しながら「拡張した人間を前提としたオリンピックというのはありえるか?」みたいなことまで議論していく予定です。
     
    --[参考]--
    ▼〈リアル参加型オリンピック〉を超やりたい!!――チームラボ代表・猪子寿之の考える東京五輪2020
    ▼ゲーム研究者・井上明人 インタビュー 義足がドーピング扱いされる時代に~パラリンピックが問う近代スポーツの前提
    ▽「サイバスロン」のプロモーションビデオ
     
     
    「B」→「Blueprint」2020年の東京、その未来都市の青写真

    “B”パートは「Blueprint」――2020年の東京の青写真、要するに「都市開発」のことです。今回のオリンピックで東京という都市はがらっと変わります。1964年のオリンピックが今の東京の”雛形”をつくったように、21世紀の東京はこれからの6年で創られていきます。とはいえ、その実態というのはほぼ「湾岸の開発」です。このオリンピックを契機にして、「湾岸に新都市を」という都や国の宿願が成し遂げられるのはまず間違いない。そしてその結果、東京は今僕たちが住んでいる、新宿や渋谷といった私鉄のターミナル駅とその西側のベッドタウンから成る「旧都心」と湾岸と埋立地からなる東の「新都心」に分裂していくことが予想されます。さて、この分裂を受け止めた上でどんな提案をしていけるか、Bパートでは大まかに言ってそのようなことを議論していきます。議論の射程は「原発の問題」や「東京と地方の問題」にまで及ぶ予定です。

    他にも、新しく開発される湾岸に、「これからの日本人のライフスタイル」を象徴するようなモデル都市を提案したいと考えています。かつて東京オリンピックの頃に開発された住宅地が、まさに戦後ホワイトカラー層のライフスタイルの”雛形”になったように、ゆくゆくは分譲住宅になるであろう湾岸から「これからの日本人のライフスタイル」の”雛形”を提案していく。そんなこともこのBパートで議論する予定です。
     
    --[参考]--
    ▼建築学者・門脇耕三インタビュー 2020年に東京は旧市街と新市街に分裂する――五輪の生むデュアルシティをハッキングせよ!
    ▼社会学者・南後由和インタビュー 都市をスポーツの問題として読み替える――都市と身体の新しい関係
    ▼「未来の跡地を歩く――2020年オリンピック施設探訪」山梨知彦×門脇耕三×宇野常寛
     
     
    「C」→「Cultural Festival」どうせなら、日本文化の祭典も

    とまあ、ここまでオリンピックの話をしてきたのですが、ぶっちゃけ、僕はスポーツが大嫌いなんですよね(笑)。

    高校の時、定年間近の体育の某先生に、「宇野、俺はお前の体育を3年間受け持った。しかし、ついに一度もお前に運動する喜びを教えることはできなかった。それが定年を迎える上での心残りだ……」と言われたくらいに、ずっとスポーツというものに興味がなくて、正直ロンドンオリンピックなんて1秒もみてないんですよね。

    だから”C”パートは「Cultural Festival」です。要するに「スポーツに興味がない人のために、文化祭を勝手に企画しちゃおう」というものです。どうせオリンピックで外国人観光客がいっぱい来るんだったら、外国人の人たちに日本カルチャーを存分に味わって貰ったらいいんじゃないかと思っています。漫画・アニメ・ゲーム・アイドル・食文化・ヴィジアル系など、ぶっちゃけオリンピックみたいなリア充イベントにノれない非リアの人たちや外国人の為に、カルチャーの祭典を企画していきたい。これはどちらかというとオリンピックの時に日の目を見ない「旧都心」を中心に展開できないかということを考えています。
     
    --[参考]--
    ▼起業家・家入一真インタビュー 「何者でもない、みんなが『バカ』になれるオリンピックを実現したい」
     
     
    「D」→「Destroy」オリンピック破壊計画

    そして最後の”D”パートは「Destroy」――「破壊」します。もはやオリンピックなんて無くなってしまえ、と(笑)。……いや、まあ、これは実際に破壊するわけではなくて、いわゆる「ポリティカルフィクション」というやつですね。フィクションのかたちを借りて「オリンピック破壊計画」を描くことによって、例えばセキュリティ意識の喚起ができないだろうかと考えています。実際、オリンピック時におけるテロとか安全保障というのは極めてシリアスなテーマですしね。

    それと同時に、僕としては「フィクションの可能性」も考えたい。残念なことに、日本って戦後民主主義下であんまり戦争ものの小説や映画が発達しなかったせいで、現実や社会状況を踏まえたフィクションがすごく弱い。だから現実の日本で「ポリティカルフィクション」を持ち込むということを実際に試していきたいと思っています。例えば、「オリンピック破壊計画」というテーマで細かい設定を作り込んでネットで公開して、それを大勢の人に2次創作して貰ったらおもしろいんじゃないか、そんなことを考えています。
     
    --[参考]--
    ▼「愉快な東京オリンピック破壊計画」はありうるか ――ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記が語るポリティカル・フィクションの可能性
    ▼2020年東京オリンピック「破壊計画」――ライター/編集者・速水健朗が構想する"東京でのテロ"
     
    以上が僕たちが今、全力で編集している「PLANETS vol.9 東京2020(仮)」の概要です。ここでは話していないあっと驚くような仕掛けや企画がまだまだまだまだあるので、お楽しみに! 発売はこの秋、11月くらいを考えています。

    ▼YouTubeで無料公開中の、宇野によるプレゼン部分の動画はこちらから。
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    (了)
     
    ※当日のイベントのすべての様子は、以下のリンクからご覧になることができます(PLANETSチャンネル会員限定)。乙武洋匡(作家)・猪子寿之(チームラボ代表)・家入一真(起業家、活動家)・宇野常寛(評論家、PLANETS編集長)・堀潤(ジャーナリスト、NPO法人8bitNews代表)が出演! オリンピックを話題の中心に据えながら、2020年の東京とその可能性について話し合いました。

    【前編】
    【中編】
    【後編】

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