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サマータイムよりもアツい政策!?/投票率よりも大事なこと(統一地方選2015)(橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第7回) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.299 ☆
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サマータイムよりもアツい政策!?/投票率よりも大事なこと(統一地方選2015)(橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第7回) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.299 ☆

2015-04-08 07:00

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    サマータイムよりもアツい政策!?/
    投票率よりも大事なこと(統一地方選2015)
    (橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第7回)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.4.8 vol.299

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    本日のメルマガでお届けするのは、英国留学中の橘宏樹さんによる連載『現役官僚の滞英日記』の第7回! 「政治や国際問題になんて関心ないよ」という読者のあいだでもじわじわと人気を上げてきているこの連載ですが、今回は英国流の「サマータイム」の日本への導入、そして今月の12日と26日に控えた統一地方選について考えます。 いま地方を元気にするために、「選挙に行く」よりも大事なこととは――?

    橘宏樹『現役官僚の滞英日記』前回までの連載はこちらのリンクから。
      
     
     みなさま、こんにちは。ロンドンの橘です。日本はすっかり春到来のようで、このところ私のFacebookのタイムラインも満開の桜やお花見の写真で賑わっていました。イギリスでは今年のイースター(復活祭)は4月5日(日)ということで、今、ロンドンは行楽真っ盛りです。気温もぐっとあがり、ハクモクレンも段々と咲き始め、曇天ではあっても明らかに風に温もりが感じられるようになってきました。
     イギリス(そしておそらくキリスト教国一般)には日本のような休祝日はあまりありません。そのかわり誰もが一斉に長い休暇を取る時期が何度かあります。このイースター休暇は、クリスマス、夏休みに並ぶ3大休暇イベントのひとつと言えるでしょう。観光客とともに、街頭で腕を振るう大道芸人の数も一気に増え、ロンドンの街中が春を歓んでいる雰囲気です。私の同級生たちの多くも帰郷したり旅行に出たりしており、寮は閑散としています。そして5月、6月には各種論文の締切、そして試験が待ち受けています。
     
     さて今回は、サマータイム制度と日本の統一地方選挙について書いてみたいと思います。
     
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    ▲サマセットハウス(美術館的な催事場)中庭。春の陽射しを楽しむ若者たち。
     
     
    ■ サマータイムは有効なのか
     
     春の到来とともに、イギリスはサマータイムに突入しました。2015年3月29日(日)1時から10月25日(日)2時まで、時計の針を1時間早めることになります。サマータイム制度の主な目的は、日が出ている時間をなるべく有効活用しようということにあります。日の出がだいたい朝の6時頃で始業が9時だとすれば日照時間を3時間は無駄にしているとも言えます。18時に仕事が終わる人は、昨日までは17時だった時刻に仕事が終わるわけで、自由に使える日没時刻までの時間が1時間長くなるわけです。学校に通ってもよいですし、屋外スポーツもしやすくなります。お子様連れで出かけやすくもなります。経済活動が活発化するでしょう。
     こうしたメリットを考え、日本でもこのサマータイムの導入について、これまで様々な議論や試行実験などが行われてきましたが、混乱を恐れてか、なかなか本格的な導入にまでは至っていません。
     しかし、つい先日(2015年3月27日)安倍首相は、今夏の「ワークライフバランス推進強化月間」に合わせて、中央官庁の国家公務員の就業開始時間を1~2時間程度早めるように各閣僚に指示しました。霞ヶ関だけサマータイム導入ということです。これによって官僚が家族と過ごす時間を持ちやすくなるのはもちろんのこと、様々な業種業界の方々との交友を深めて新鮮な知見に触れることができれば、より適切な政策立案を発想できそうで、良さそうです。
     しかし残業を強制的に不可とするものではないようです。そもそも公務員の残業が長くなる根本要因のひとつは、しばしば指摘されているように(例:駒崎弘樹氏のツイッターでの発言)、国会議員の先生方からのご質問が深夜に舞い込み、翌朝までに回答を準備せねばならぬということが多いからです。担当者が知っていることを電話で答えるだけで済むのであればよいのですが、そうもいきません。関係課や他省庁と連絡して決裁を回し、政府・組織としての正式な回答を作成する調整過程に時間が大きく費やされるのです。
     民主主義国である我が国においては、民主的に選ばれた国会議員は大変エラいので、民主的に選ばれていない我々公務員から、例えば「ご質問は前々日の朝以降受け付けません」などとは到底言えないのが実情です。
     もちろん国会議員の先生方も大変お忙しいので、自分の質問を準備する時間がどうしても押してしまう事情もあります。だからこそ、質問をされる前に「レクチャー」すなわち根回しをしようとする役所も多くなりますし、質問を「早く取ってくる」という新聞記者のようなこともします。これらの業務量は馬鹿になりません。
     
     ちなみにイギリスでは、本稿の第3回(イギリスの情報公開は本当に進んでいるのか? )でも触れたとおり、政治家と官僚の間に接触禁止規定があるので、このような事前根回しは不可能です。そしてほとんど誰も残業しません。英国財務省に出向経験のある高田英樹財務省広報室長によれば、「夕方以降閑散としている」とのことです。(『霞ヶ関発の「働き方改革」へ向けて(2015年1月)
     とはいえ、霞ヶ関の残業時間も、国会議員の先生方含め、多くの方々の尽力によって、ひと頃よりもだいぶ改善はされてきていることは申し添えたいと思います。誠にありがとうございます。
     
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    ▲晴天のテムズ河岸。ビクトリア時代からの個性的な名建築が並びます。
     
     
    ■ むしろ標準時を変える!?
     
     サマータイムの効用に話を戻します。仕事時間を朝方に前倒しするメリットについて、上記の「アフターファイブ経済」の開拓は大変魅力的だと思います。と同時に、日本人が何時から何時まで仕事をするべきかを考える上では、地球上において、GDP世界第3位の規模を持つ日本市場をいつ開きいつ閉じるのか、という視点も重要になってくると思います。
     
     この点、サマータイムやその漸進的導入などにとどまらず、いっそ、兵庫県明石市を通る東経135度の標準時子午線を、東経165度にまで動かしてしまおう、というアイディアもあります。これによって、日本時間を2時間前倒しにしてしまおうというわけです。夏の間に限らず通年です。
     私がこのアイディアを初めて聞いたのは、元京都市観光政策監(京都の観光行政のトップ。市役所のナンバー3)の清水宏一氏からです。(氏は寺社をライトアップして行楽シーズン以外の宿泊客を増やした「夜間拝観」や「京都検定」の導入により京都の年間観光客を4000万人から5000万人にまで増やしたレジェンド的公務員です。「こういう考え方もあるで(ニヤリ)」と、お話してくださいました。
     
    ▼参考リンク
     
     私は当時、なかなかぶっ飛んだアイディアだな、と大変驚きました。そして、その後調べてみたところ、政府の産業競争力会議(第9回2013 年5月22 日)でも、猪瀬直樹前都知事が同説を主張していました。竹中平蔵氏も「ポジティブ・サプライズになる」として、これに同調していたようです。(第9回産業競争力会議議事要旨 ) 
     また、猪瀬氏は標準時移動の主な狙いとして、「主要都市の中で、最も早く始まる市場 •東京を 目指す。海外から東京市場を カバーすることが困難になり東京回帰が起こる。」「世界市場を東京、ロンドン、NYで8時間ずつ24 時間カバーできるような体制にする」と述べています。(「東京標準時間」導入プラン )
        とはいえ、当然ながら同説には批判も多く寄せられています。例えば、標準時2時間前倒しをそのままの形で実現してしまえば、西日本に住まわれる方々や冬季の北日本の方々などは、日の出前の暗闇や零下の屋外で活動することを強いられてしまうことになってしまいます。
     
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    ▲賑わう休日のコベントガーデン。007の愛車アストンマーティンを展示し最新作を宣伝中。
     
     
    ■ 標準時を移動すれば東京はアジアの金融センターになれるのか
     
     また、世界で最も早く金融取引を始めることだけが目的なのであれば、東証の取引時間を早めれば良いだけかも知れません。
    しかしそれ以前に、東京がシンガポール・香港・上海よりも魅力的なアジアの国際金融センターとなるには、標準時や取引時間を動かすことだけでは足りないと思われます。ロンドンでもアジアの金融事情は、しばしばシンポジウムのテーマになります。日本の海外投資規制が障害であるということは、既に何度も議論されてきており、思うような動きが日本側にないので、最近はもう話題にもならないというのが「シティ」(ロンドンの国際金融家達)でのリアルだと感じています。
     
     シティから見ると、アジアの金融センターは現在明らかにシンガポールであり、中国経済との接続が進む香港・上海の今後には期待大。東京は、好きな人は好きだが、投資したり住んだりするには、めんどくさいことが多過ぎる、という空気です。特に、投資先ということは赴任先ということにもなりますから、金融エリートの奥さん連中が暮らしてもよい、暮らしたい、と言うかどうかは拠点の開設にあたり非常に大事な問題であるようです。現在、イギリスはじめ先進国の一部では、東京はアフリカなどとともに、暮らすのが大変な「障僻地」に分類されています。蒸し暑い上に英語が通じないので、赴任者には厚い手当がつくのです。
     

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    最終更新日:2024-04-19 07:00
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