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僕たちは「シンギュラリティ」をどう迎えるのか? オクスフォードで出会った人工知能研究者・江口晃浩氏にインタビュー(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第5回)【毎月第1木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.533 ☆
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僕たちは「シンギュラリティ」をどう迎えるのか? オクスフォードで出会った人工知能研究者・江口晃浩氏にインタビュー(橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第5回)【毎月第1木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.533 ☆

2016-03-03 07:00

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    僕たちは「シンギュラリティ」をどう迎えるのか?
    オクスフォードで出会った人工知能研究者・
    江口晃浩氏にインタビュー
    (橘宏樹『現役官僚の滞英日記 オクスフォード編』第5回)
    【毎月第1木曜配信】 
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.3.3 vol.533

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    今朝のメルマガは、橘宏樹さんの『現役官僚の滞英日記』です。今回は、橘さんがオクスフォードの人々と実際にどのように交流しているのかをレポートします。さらに、現地で出会った日本人研究者・江口晃浩さんに、人工知能研究の現在についてや、落合陽一さんの『魔法の世紀』の感想などを語ってもらったインタビューも掲載します。


    ▼プロフィール
    橘宏樹(たちばな・ひろき)
    官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA(http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。

    本メルマガで連載中の橘宏樹『現役官僚の滞英日記』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。

    ※本稿の内容(過去記事も含む)に関して、皆様からのご質問や、今後取材して欲しいことを受け付けたいと思います。こちらのフォームまたはTwitter(@ZESDA_NPO)にお寄せいただければ、できるかぎりお応えしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。


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    ▲ハイ・ストリートから聖メアリー教会を臨む

    こんにちは。橘です。この原稿を執筆しているのは2月後半ですが、日照時間が日増しに長くなるのを感じています。朝夕の風はまだまだ冷たいものの、公園の早梅はほころび始め、木蓮の蕾も膨らみ始めています。心なしか、冬の終わりが近そうな雰囲気が漂っています。最近は、大教室を借りて、動画をプロジェクタで大きく映して、友達とミニ映画会を催すのがマイブームです。見たいけどまだ見れていない映画を毎週交代で推薦しあい、数人でシアターを貸切にして楽しんでいます。

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    ▲ミニ映画会を楽しむクラスメイト。この日は「東京物語」を上映。

    また、ちょっとローカルな話題ですが、オクスフォード界隈の有名人にInigo Lapwood君という人物がいます。コスプレ・パーティで手製の火炎放射器を「危険ではない」などと言いながらニコニコぶっ放して休学を食らったのち、現在は復学がかなったのですが、その彼を生で見ることができました。オクスフォードの学生らしいハンサムで品のいい雰囲気をまとっていて、無邪気すぎるのかイッちゃってるのか、ミステリアスな笑みは健在で、金髪美女とコモンルームでチェスをしていました。こちらの記事で、その火炎放射事件が報道されていて、ご機嫌で炎を放つInigo Lapwood君の写真も掲載されています。

    さて、オクスフォード編第2回では、オクスフォードの知的イノベーション力の源は、細やかな配慮が行き届いた異分野間交流の機会が重層的に設計されていることにあると述べ、その仕組みについて描写しました。


    僕自身もこのシステムを最大限活かしてセミナーに出席したり、フォーマル・ディナーに招待されたり、カレッジ内のイベントに出向いたりするなかで、様々な人々に出会い、刺激や学びを得ています(この火炎放射器の彼とはまだ交流できていませんが)。
    ここでの生活も早いもので5ヶ月が過ぎるなか、この学園都市コミュニティの「異常なる日常」にかなり馴染んでいる自分を感じます。今回は、そんな毎日の中から、僕自身が出会いや交流から得た具体的な学びについてお話したいと思います。

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    ▲プレ・ディナータイムに食前酒を楽しむ人々

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    ▲ウォルフソン・カレッジのフォーマル・ディナーの様子

    まず、上記第2回でもご紹介したカレッジのフォーマル・ディナーは、オクスフォードの生活文化を象徴する習慣です。控え室で食前酒を楽しむ時間、ディナータイム、ティールームに場を移してチーズやフルーツとお茶やワインで寛ぐ食後のティータイムなど、席替えが促される中で、無理のない交流の時間がゆったりと取られています。招待した友人以外の、隣席になった初対面の方々などと様々な会話を交わすことが当たり前です。ある意味、制度化された集団的ホームパーティとも言えましょう。


    ■ フォーマル・ディナーで得た「『無戦略』を可能にする5つの『戦術』」理論へのフィードバック

    ある時、招待されたフォーマル・ディナーでたまたま隣席になったオクスフォード大教授(経済社会学専攻・ニュージーランド人・元ケンブリッジ大教授)に、本稿でかつて述べた「無戦略を可能にする5つの戦術」について、ぶつけてみる機会がありました。僕の昨年一年のイギリス観察報告はどのくらい的を得ていたのでしょうか。幸いいくつかコメントをもらうことができました。


    まず、「5つの戦術」の第一の戦術について話してみました。「弱い紐帯」のハブ機能、すなわち、大英帝国時代の遺産である旧植民地国「コモンウェルス」53カ国22億人のネットワークのハブ機能を担うことで、緩いけれど確かな関係を維持し、英国は各国から多くの資源を調達していると思う、というものです。
    すると、
    「それは間違いないね。そういえば、サッチャー首相が財政を大きく削減した時、オクスフォードの教授の給料も大きく減らされて(イギリスの大学はほとんど全てが国立)、たくさんアメリカの大学に引き抜かれていったんだ。そのとき、(教育予算削減に反対な)側近が『首相、優秀な学者がたくさんアメリカに引き抜かれています。どういたしましょう』と聞いたところ、サッチャー首相曰く『コモンウェルスから優秀なのが入ってくるでしょう。それでいいじゃない』と答えたらしいよ」
    という逸話を教えてくれました。
    実際、教授もニュージーランド人ですし、現在のオクスフォードの教授陣は本当に世界中から集められています。教師の国籍が多様性に富んでいることは世界ランキングの維持にも好影響を与えています。

    次に、第二の戦術、イギリスの「カンニング」の巧さについても話してみました。すなわち、ニュージーランドやオーストラリアなどコモンウェルス(旧植民地国)内で行われる先進的な取り組みをだいたい2年くらいウォッチしていて、良さそうなものを本国行政にも積極的に取り入れていきますよね、という話です。
    これに対して教授は、
    「それは確かにそうだね。だいたい2年で導入すると言ったが、現に私の友人で、ある新しい取り組みがニュージーランド政府で始まって1年くらい経ったところに、イギリス政府から派遣されていたやつがいたよ。やり方や実態など、現地での「学び」を持ち帰れというミッションだったわけだ。導入することが決まったらすぐ対応できるように、1年前からもう準備を始めているわけなんだね」
    と教えてくれました。僕が思ったよりも、カンニングは早い段階から行われていたことがわかりました。

    それから第四の戦術「トライ・アンド・エラー」、すなわち試行錯誤を繰り返す中で、最適な解を模索していくスタイル、失敗を恐れず自ら変化していこうというメンタリティについても話してみました。
    「おっしゃるとおり。例えば英国では内閣改造のたびに政治家主導で省庁再編をするよね。まあ、部局の指揮命令系統が変わるだけで、引越しとかはあんまりしないんだけど、いずれにせよ中央官庁は内閣のマニフェスト実現の手段に過ぎない。だからその時々で最も適した形に再編されるべきだ、と考えられていると思うよ。省庁の再編は法律の改廃の必要がないからね」
    とのことでした。実際、「1980 年からの 30 年間に 25 の中央省庁が設立されたが、そのうち 13 は 2009 年まで に消滅した。1983 年設立の貿易産業省のように 24 年間存続したものから、ビジネス・企 業・規制改革省やイノベーション・大学・技術省のように、2 年しか存続しなかったものまである」(引用元:国立国会図書館 『中央省庁再編の制度と運用』)のです。日本では省庁の設置・廃止は法律事項ですから、その都度、法の改廃を行わないといけません。

    このように、柔らかいディナーの会話の中ではありながらも、隣席だったというだけでかなりまとまった意見交換をすることができました。そして昨年の僕の気づきの集大成について恐る恐る切り出してみたことで、オクスフォード大教授からも同意と新たな論拠も貰うことができ、大変貴重な機会となりました。ちょっとしたチュートリアル(個人指導)です。教授からも別れ際「楽しませて(enjoy)もらったよ。今度また食事でもしよう」との嬉しいコメントまで頂戴しました。

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    ■ 人工知能/計算神経科学研究者・江口晃浩君との出会い

    オクスフォードには学部・大学院合わせて約100人くらいの日本人学生が学んでいます。共通の友人の紹介で出会った江口晃浩君は、大変優秀でユニークな人物でした。人工知能、計算神経科学が専門の彼との会話から多くのことを学びましたので、その内容をインタビュー形式で掲載し、みなさんと共有したいと思います。僕自身は国費派遣の官僚(文系)というある種ありふれた、しかしある種特殊な学生ですが、他にはどういう日本人がどんな経緯でオクスフォードに来てどんなことを学んでいるのか、このインタビューでイメージしていただけるかと思います。

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    ▲江口晃浩君


    ■ ロボコンを見て高専へ、そしてアメリカへ留学

     今日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

    江口 僕はオクスフォード大学の博士課程で学んでいて、今年で四年目になります。専門は「計算神経科学」という分野で、人工知能(以下AI=Artificial Intelligence)と脳科学などのジャンルを融合させた分野ですね。実験心理学部内の「DPhil. in Experimental Psychology」というコースに所属しています。AIと言うとエンジニアのイメージが大きいと思うんですけど、自分たちは実験心理学部に所属していることもあって、「人間は物事をどう理解しているのか?」というところに焦点を当てて研究しています。

     ありがとうございます。研究の詳しい内容については後半で伺うとしまして、まずは、ここまでの歩みについてお聞きかせ願えますか。

    江口 自分はもともと愛知県で生まれて小学校は東京で過ごし、中高のときは愛知県に戻りました。高校ではなく、国立の高等専門学校である「豊田高専」というところに行きました。

     高専に進もうと思ったきっかけは何だったんですか?

    江口 僕の今の夢は「心を持ったロボットを作る」「心を持ったものを作る」なんですけど、そもそも小さい頃に見た『鉄腕アトム』のようなロボットの漫画・アニメが好きで、そういうものを自分の力で作りたいと思っていました。だけど実際にどう作ったらいいのかあまりイメージが湧かなかったんです。
    それが小学校高学年ぐらいの時期だったのですが、親が「全国高等専門学校ロボットコンテスト(ロボコン)」のチケットを手に入れて、観に行ったんですね。そこで高校生が自分でロボットを作って戦わせているのを見て、「いつか自分もこんな世界に入りたいな」と思ったのが原体験かもしれません。高校受験する頃には愛知に戻っていたのですが、そのときの優勝校の豊田高専がすぐ近くだということに気付いて、「じゃあここに進学しよう」と思ったんですね。

     なるほど、運命的ですね。そのあとは、アメリカの大学に進まれたんですよね。アメリカの大学へ行こうと思ったのはなぜだったんですか?

    江口 実は、高専入学当時は課題やテストに追われていて、忙しさのあまり、最初の「ロボットを作りたい」という目的を見失っていたんです。それで三年生の頃にたまたまアメリカに一年間交換留学に行くことになって、実際に行ってみたらすごく衝撃を受けたんです。アメリカの高校生たちって、大した根拠もないのに「自分は映画監督になるんだ」とか「政治家になるんだ」とか言っているんですよ。日本だったらそういう夢を語る人は小学生だったらまだ多いと思いますけど、高校生ぐらいになると「自分はサラリーマンになる」「貯金したい」とかそういう感じになるじゃないですか。だけどアメリカ人たちは子どもみたいな夢を高校生になっても語っているんですね。それと、アメリカでは学びたいことも全部自分で選べるという感じだったので、そういう「学びたいことを学ぶ」ということが許されるアメリカの状況を見て、自分の最初の目標を思い出したんです。それがアメリカの大学に進学した大きなきっかけですね。

     初心を取り戻したというわけですね。

    江口 高専って本来なら五年間通って、短大卒相当の資格を取るのが普通なんです。だけど、もう一回仕切りなおしてアメリカで一から夢を目指そうと思って、そのあとは三年制に行って高校卒業資格を得て、アメリカに行きました。アーカンソー大学というところで、コンピューターサイエンスと心理学を勉強しました。

     日本の大学に行くことは考えなかったんですか?

    江口 アメリカの大学って、自分の学びたいことを好きなように学べて、しかも途中で変えることも可能なんです。当時の自分も、とりあえずAIに興味があるけど、AIの何に興味があるのかがはっきりしていないところがあったので、色々な選択肢を残しておけるシステムはありがたかったんです。
    アメリカでは、ロボットを作ったり、株のシュミレーションをするようなゲームを作ったり、あとは自動で部屋のマップを作る簡単なAIを作ったりとか色んなことを試しました。その結果、自分の求めていたものは「心を持ったロボット」だったことに気がつきました。ロボットじゃなくてもよくて、「心を持った何か」ですね。そして、AIを作るためには人間の心を理解しないといけないと思って、心理学という全然別の方向も専攻するようになったんです。だから自分の学んだコンピューターサイエンスと心理学の中間を学びたい、研究したいと思うようになりました。それでアーカンソー大学にいるうちに色々と調べたところ、オクスフォードにコンピュテーショナル・ニューロサイエンス=計算神経科学という分野をやっているところがあることを知ったんです。普通はAIと計算神経科学って全然別のものとして扱われているんですけど、ここのラボはOxford Centre for Theoretical Neuroscience and Artificial Intelligenceという名前で、その2つを一緒にやっているところが面白いなと。

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    ▲WEBサイト「オクスフォードな日々」でも発信中


    ■ 人の心は作れるのか?

     人間の「心」それ自体を考えることと、それをプロダクトにして作っていくことの2つを同時に扱う江口さんにとって、うってつけのラボに出会えたわけですね。現在の江口さんの博士課程での研究はどういう内容なんでしょうか?

    江口 人間の視覚つまり「目から見る情報」がどのようにして脳で処理されて、理解されるかを研究しています。そもそも計算神経科学が、AIと何が違うかというと、AIって例えば「空を飛びたい」と思って飛行機を作るような考え方なんですね。だけど計算神経科学では飛行機ではなく、「鳥はどうやって空を飛んでいるのか?」を研究します。だから鳥の精巧なモデルを作って、鳥がいかに風や空気を操って飛んでいるのかを理解しようとするわけです。


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