百人斬り競争の新聞記事について
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百人斬り競争の新聞記事について

2014-01-14 15:26
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百人斬り競争の新聞記事はジョークです

日中戦争の初期に、こういう新聞記事がありました。


1937年12月13日東京日日新聞

今の人にとっては少しわかりにくいかもしれませんが、この記事は完全にジョークあるいはフィクションです。

現在では消えてしまった感覚ですが、かって日本には嘘を嘘と知りながら、真実に見立てて遊ぶといった文化が存在したのです。

失われた感覚


歴史的な経緯を説明しますと、上記のような文化は講談速記本から発生しました。

百人斬りは講談速記本の世界では平凡で、千人斬りまで存在します。



建前上、講談速記本には真実が書かれています。講談速記本の作者の言葉を貼り付けてみましょう。



作者はこの物語を書き上げるため、現地調査し古文書を読み解いて作ったと主張しています。ところが講談速記本の世界では、猿飛佐助が五人程度の人間を空に飛ばし時速二百キロの速度で移動させますし、豊臣秀頼が沖縄を統治しています。

こんなもの嘘に決まってるわけですけど、その時代に戻って確認してくることは出来ない。だから絶対になにがあっても嘘だと断言するのは難しい。まず絶対に嘘だけど、豊臣秀頼が沖縄を統治していたかもしれない。絶対になにがあっても嘘だけど、可能性がないわけではない。

本当である可能性があるから、ノンフィクションとして読んだとしても、物語が成立してしまう。

というわけで講談速記本というのは、そのまま嘘として読めば、笑えるジョーク、あるいは勇壮なフィクション、本当の話として見立てて読めば、名勝旧跡、歴史的な事象を知るノンフィクションになるというわけです。

新聞記事について

「いやいや講談速記本と新聞は違う、講談速記とかいうのはフィクションだし、新聞には真実が書かれているじゃないか」などと思われる方がいらっしゃると思うんですけど、それは大間違いで、新聞記事にも大量の嘘が掲載されます。

嘘だか本当だかよく分からない二つの記事を要約してみましょう。

通信兵が鬼神の猛闘

十数名でとある占領地を守っていたところ、兵力一〇〇〇の中国兵が午前三時に夜襲をかけてきた。流石の日本兵も防戦一方、本部としていた民家はすでに木っ端微塵に砕かれていた。傷ついた一人の歩兵が、銃弾をくぐり抜け奇跡的に残された電話で本部に助けを求めると、折悪しく歩兵がいない。そこで三〇程度の通信兵たちは決死隊を結成、武器は短刀のみという貧弱さだが、三里の道を韋駄天走り、たどり着いてみると生き残っている味方はせいぜい五名である。ところが通信兵たちは諦めない。闇に紛れて相手の背後に周り、短刀のみの肉弾戦で中国兵を圧倒、二時間かけて数百名を斬り殺した結果、敵はチェコ機銃数十に、野砲一門、弾丸数千を残して遁走した。

血だるま百人斬り

とある日本軍中尉が敵と交戦中、弾丸が尽きると十数時間に渡って岩石を投げて防戦、敵が群がる山の斜面に飛び降りるや、全身に蜂の巣の如き弾丸を受け、血だるまになりながらも左右の敵を斬り倒すこと百人にも及んだ。

面白いフィクションだなって思いながら、俺は上記二つの記事と百人斬り競争の記事を読みました。フィクションとして読むと、こんなことできるわきゃねぇだろと突っ込みを入れることが出来ます。

その一方でこれを事実と見立てて読むと、日本軍は勇壮だッと読めてしまえるわけですね。

俺は戦争について詳しくないので、こういうことが実際に出来るのかどうか、判断できない。もしかしたら実現可能なのかもしれないけど、とにかくこの話は嘘だと思います。

しかしながら、それじゃ絶対に嘘なんだなッ!! 絶対だなッ!!! 本当だったら死ぬのかッ!!! みたいな感じに詰め寄られると、見てきたわけじゃないから嘘じゃない可能性もあるわけで、ただまあ嘘じゃねぇかな多分だけどという感じです。

この様に上の新聞記事というのは、本当である可能性が残っているから、二倍楽しめるというような文章で、つまり講談速記本と同じ構造なわけですね。

昔の常識は今の非常識

今の人からするとよく分からないと思いますが、昔の人はこういう感覚を持ちつつ文章を読んで楽しくやっていました

恐らく記事で百人斬りを達成したと話をしている兵隊さんも、講談速記本などのフィクションを楽しんだことがある冗談が好きな普通の人だったんだと思います。


ところがこの二人は、新聞記事を基にして、処刑されちゃっている。

こんな記事を真に受けて死刑にするとか野暮の骨頂なわけですけど、嘘を嘘と知りながら、真実に見立てて遊ぶためには、かなり高度な文化レベルが必要です。当時は戦争で世界的に文化レベルが下がっていましたから、こういう嫌な結末になってしまったのも仕方がなかったのかもしれませんね。
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他31件のコメントを表示
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東スポと言う新聞があってだな…
40ヶ月前
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日本刀がどれほど優れてても数回斬ったらもう切れないんだが・・・
三胴四胴とか国宝クラスの名刀でも100人なんて不可能ww
40ヶ月前
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 社会的その内容が影響した時点で嘘でした、冗談でしたではすまされないんだがな。
40ヶ月前
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数回斬ったら斬れなくなると言うのはどこぞの小説のフィクション。
包丁ですら事件だの何だので人を何人も殺傷出来てるのに日本刀が数回な訳が無い。
40ヶ月前
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つまり、「新聞がウソを書いてもおおめに見ろ」ということですね?
ウソを書きたかったら小説でも書けばいいのではないですか?
新聞という公共性の高い、真実を書いていると想定される媒体をわざわざ使うべきではありません。新聞は新聞記者の遊びの場ではありません。「遊び心が大切」というなら、どこかよそでやってください。
たとえば、葬式ではしゃぐ人はいますか?「遊び心」を持ち込むべきではないところでデタラメを書けば、怒られて当然です。
それから、この「百人切り」の話は、朝日新聞と毎日新聞が国民の戦意を高めるために創作したのだそうです。その時、両軍人は、「そんなウソを書いていいのですか?」と確認したそうですよ。新聞記者は「私に任せてください」と答えたそうですが。
山下泰平さんも、書いた文章を人目にさらすなら、最低限のことは調べてからにしてください。
40ヶ月前
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>>35
「日本刀3人限界説」は山本七平のデマだね。
40ヶ月前
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「当時の価値観」を理由に戦中のあれこれを無かったことにしようという、この手の話題でよく使われる詭弁の一つ。百歩譲って「当時の価値観では肯定されていた」としても、そのことを現在の日本で肯定していること自体が問題なのに。
40ヶ月前
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日本刀の限界は使う人次第
いやマジで
40ヶ月前
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山下さんの記事は大変興味深いのですが引用が文節単位なのでモヤモヤします
前後の文脈がわからないと唐突で頭に入りづらいし妥当な引用なのかどうかも判断しづらい
恐らく文字の読み取りやすさ優先なのだとは思いますが、段落単位かせめて文章単位まで残してもらうわけにはいかないでしょうか
あとたまにどっからの出典なのかもよくわかんない時があって正直ゼロから創作されても全く気づかないと思う
いやそんな面倒くさいことするかって話ですけれども
40ヶ月前
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>>40
その辺りはいろいろ理由があるんですけど、ブログですからこういう書き方してます。
40ヶ月前
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