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  • 「安倍政権『閣議決定』乱用の果てにあるもの」小林よしのりライジング Vol.83

    2014-04-22 12:00  
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     今月1日、安倍政権は武器や関連技術の輸出を原則禁じた 「武器輸出3原則」を 「閣議決定」 によって47年ぶりに全面的に転換し、輸出を容認した。
     今月11日には、福島第一原発事故を忘れ去ったかのような内容の、 エネルギー基本計画も 「閣議決定」 し、原発の維持・推進へと舵を戻した。
     さらに安倍政権は今国会中に、 集団的自衛権を容認する憲法解釈の変更を 「閣議決定」 し、歯止めなく米国の戦争に自衛隊が参加できるようにしてしまおうとしている。
     そして、秋には政府の意向次第でいくらでも恣意的運用が可能になると危惧されている 特定秘密保護法の運用基準を 「閣議決定」 する見通しである。
    「閣議決定」「閣議決定」「閣議決定」…
     これだけ反対が多い重大な案件を、安倍政権はすべて「閣議決定」で通そうとしている。
     そもそも、「閣議決定」とは何なのか?
    「閣議」とは、文字通り「内 閣 の会 議 」だ。
     よくニュース映像で、総理大臣を囲んでソファの左右に大臣が座るシーンが放送されるが、これは閣議開始前の撮影用の場面だ。閣議そのものにはカメラが入ることはなく、その内容も非公開である。
     閣議には3種類ある。原則毎、火・金曜日の午前中に全閣僚が出席して行なわれる 定例閣議 、臨時に行われる 臨時閣議 、閣議そのものは開催せず、各閣僚の間を持ち回って賛否を求めて決定する 持ち回り閣議 である。
     そして、この閣議において内閣の意思として決定されたものを「閣議決定」というのだ。
     閣議にかけられるのは「法案」「答弁書」「一般案件」などである。
     内閣が国会に「法案」を提出する際にも閣議決定が行われるが、法律を成立させるのは国会の役割なので「閣議決定した」という報道があった時点では、法律はまだ成立していない。
      ニュースで「政府は○○法案を閣議決定した」というのは、「これから○○法案が国会で審議されることが決まった」という意味である。
     また、国会質問に対する「答弁書」を閣議決定する場合もある。
     昨年5月、安倍首相が就任以来首相公邸に引っ越さないままになっていることについて、公邸には「2・26事件」の犠牲者の幽霊が出るという噂話があることを踏まえ、民主党議員が「幽霊の噂は事実か。首相が公邸に引っ越さないのはそのためか」という質問主意書を提出。
     これに対して、幽霊の噂について「承知していない」とする答弁書を閣議決定している。 
     ここで問題となるのは、「 一般案件 」の閣議決定である。
     これは、内閣としての意思決定が必要な国政に関する重要な事柄である。
    「一般案件」の中には、法令に「閣議の決定を経なければならない」と明文化されているものもあれば、明文規定のないものもある。 いわゆる「 村山談話 」は明文規定のない閣議決定である。
      以前の自民党与党時代には、閣議決定の前に党が「事前審査」をしていた。 政調会部会において議員は支持組織などの意見を入れようと修正を迫り、調整が行われ、政調審議会、党の意思決定機関である総務会で議論、了承されて閣議にかけられることになっていたのだ。
      これを最初に壊したのは、小泉内閣による「郵政民営化基本方針」の閣議決定である。
     小泉は与党内の調整を十分行なわずにこの閣議決定を強行したため、自民党の郵政民営化反対論者は大騒ぎになったのだが、小泉は一切意にも介さなかった。
      閣議の前に与党事前審査を経るというのは、法律上何の定めもない、長い間にできた慣習でしかなかったからである。
      安倍政権はこの手法を常態化させ、与党内の調整をおざなりにして何でも政権の意思どおりに進めようとしている。