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マコトさん のコメント

面白くなってきたw
No.2
126ヶ月前
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 夕食は意外にも真っ当だった。本格的なイタリアンが食べられるカフェだ。コースで頼んだ料理は前菜の一口めから美味いし、店内の雰囲気も良い。 「なにむくれてんのよ。ちゃんとお金は経費で落とすわよ?」  向かいの宮野さんはフォークで大量のパスタを絡めとり、ずるずるとすする。何をするにしても騒々しい人だ。  オレはグラスの水に口をつける。 「これ、意味あるんですか?」  取材のことだ。  5時間ほどで、オレたちは2つの噂――「水曜日の歌声には暗号が隠れている」と「水曜日の地下室には魔物が棲んでいる」の取材を終わらせた。妙に疲れたが、ちっとも働いた気がしない。  たとえば、歌の噂。水曜日にだけ現れるというストリートミュージシャンについて、2時間ほど聞き込みをした。  彼は水曜日の真夜中、十字路に現れる。その歌には暗号が隠されており、読み解けば悪魔と契約できる。するとみるみるギターの腕が上達するが、27歳になった最初の水曜日に死んでしまう。実は、自殺したミュージシャン自身が悪魔になり、今もまだ歌い続けているのだ――  という話を宮野さんから聞いていたけれど、聞き込みは結局空振りだった。それらしい十字路の写真を撮って、調査終了ということになった。  もう一方、「水曜日の地下室には魔物が棲んでいる」も似たようなものだ。宮野さんはそれらしい話を語るけれど、調査はすべて空振りで、結局写真を数枚撮るだけ。5時間かけた結果がその辺りの十字路と、玩具の怪獣を配置した薄暗い部屋――地下室でさえない――の写真というのには、さすがに徒労を感じる。  宮野さんが、フォークでこちらを指す。 「何もわからなかったとしても、とにかく調べることが大事なのよ」 「どうしてです?」 「わからないことがわかったでしょ」 「でも記事にはするんでしょう?」 「大口の広告主様の依頼だからね。私の文才で上手くやるわ」 「捏造じゃないですか」 「大丈夫よ、語尾はみんな『かもしれない』にするから」  文才のある人間の文章だとは思えない。 「なら初めからその文才だけでどうにかすればいいのに」 「調べもせずに書けないわよ。オカルトっていうのはね、あくまで真実を目指しているから意味があるの。錬金術だって占星術だって本気で研究したから科学の発展に貢献したの。その姿勢を忘れたらただの悪ふざけじゃない」  彼女のこだわりはよくわからない。 「じゃあ、宮野さんは真実だと思ってるんですか? 悪魔になったミュージシャンとか」 「まったく」 「意味がわかりませんね」 「信じてなくても譲れないラインはあるの。こっちはプロのライターなんだから」  宮野さんは手を上げてウェイターを呼び、「次の料理を持ってきて」と告げた。いつの間にか彼女の皿が空になっている。オレも慌てて、パスタを口に運ぶ。 「のろのろしないで。これも調査の一環なんだから」  と彼女は言った。  3番目の噂は、『水曜日のディナーには睡魔しかいない』だ。これまでの噂よりも一層、意味がわからない。 「さっさと食べて、はやく睡魔を探しなさい」 「睡魔ってなんですか」 「睡魔は睡魔でしょ。引きずり込まれるような眠気よ。私だって眠いわよ」 「そんなのどうみつけるんです?」 「よく観察しなさい。あのカップルとか、女の方眠そうでしょ。一応写真に撮っておくわよ」 「盗撮じゃないですか。店の人に怒られますよ」  宮野さんは不機嫌そうに舌打ちした。 「なら、いいわ。私を撮りなさい」 「貴女が睡魔なんですか?」 「そうよ。私が睡魔よ」  宮野さんは、どちらかといえば眠気の正反対にいるような女性だ。  でも口論するのも馬鹿らしくなってきた。ため息をついて、カメラを構えようとした時だった。 「失礼いたします」  宮野さんの隣に、ウェイターが立った。彼は言った。 「スイマ様、でございますか?」  自棄になったような口調で、宮野さんは答える。 「そうよ。それがどうかしたのよ」  ウェイターが運んできたのは、次の料理の皿ではなかった。彼は宮野さんに、小型のアタッシェケースを差し出す。銀色をした、アルミかなにかでできたアタッシェケースだ。 「こちらに、スイマ様のお名前がありましたので。お忘れ物ではございませんか?」  アタッシェケースにはネームプレートがついている。――suima。  宮野さんはそれをしばらく眺めて、笑った。 「間違いなく私のものよ。ありがとう」  彼女はアタッシェケースを受け取って、「早く次の料理を出しなさい」とウェイターを追い返す。  オレはこめかみの辺りを押さえた。 「嘘ですよね」 「もちろん」 「泥棒じゃないですか」 「あとで間違いでしたって返せばいいでしょ。これも調査よ」  彼女はふふふと気味の悪い笑みを浮かべ、「面白くなってきたじゃない」と呟いた。  頭が痛い。 KURAMOTO Itaru ‏@a33_amimi なにこれもう犯罪者が歩いてるし…!w とうしん ‏@toshin000 宮野さんw 闇の隠居 ‏@yamino_inkyo 嫌な予感しかしないって感じw 交響楽 ‏@koukyoraku suima って何だろう リョウゼン シュウ ‏@shuu_ryouzen …デートだ!これはどう見てもデートシチュエーションだ!けしからん!(笑) とうしん ‏@toshin000 宮野さんの言葉は我々へのメッセージのようにも受け取れるなぁ。 「取り返しのつくミスはミスじゃない」 「何もわからなかったとしても、とにかく調べることが大事なのよ」 「あくまで真実を目指しているから意味があるの。」 みどばち ‏@midobachi3 これ完全にロバートジョンソンだわw capo ‏@caporello 「水曜日」って本当に曜日の水曜日のことなのかな? amor000(ムゲン) ‏@nagaeryuuiti その発想はなかった、確かに。 達句英知 ‏@tac9999 あと、3時間か。実際何が起きてどうアプローチするのかは、ベルが鳴らないとわからないってことですね。 ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。 お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(   @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。 なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
3D小説「bell」本編
3D小説の楽しみ方



1.これは、「読者たち」が「絶望の中にいる少女」を救う物語です。少女を救う意志と情熱を持つ読者=あなたの参加をお待ちしております。



2.現実と作中の時間はリンクしています。たとえば主人公が8月1日にピンチを迎えるなら、読者のみなさんは8月1日までにその問題を解決しなければなりません。



3.ひとりの読者=あなたが、物語を変えます。作中のすべての問題を、あなたひとりが解決しなければいけないわけではありません。読者のうち、たったひとりでも問題を解決すれば、物語は先へと進んでいきます。



4.ルールは明示されません。物語を読み、想像し、自ら方法を見つけ出さなければならないのです。