3D小説「bell」本編
■久瀬太一/7月25日/16時
目の前にみえた大きな歩道橋を駆け上がる。人通りが多い。サラリーマンに肩をぶつけて、走りながら頭を下げる。
そんな馬鹿な、という思いもあった。
どうして暗号の答えが、オレの記憶と関係しているんだ?
常識的に考えて、論理的に考えて、あり得ない。
――でも。
今は、ごちゃごちゃと考え事をしている場合じゃない。
オレは走る。
頭がまっ白になるまで、全力で。
――本気で走れば、女の子のピンチには間に合うはずだろ。
世界はきっと、そういう風にできているんだ。そうでなければならない。根拠もないが信じている。信じるほかに、どうしろってんだ。
歩道橋を下り、狭い坂道に入った。そのまま、坂を駆け上がる。この辺りには坂が多い。
周囲の景色は、ずいぶんと様変わりしていた。オレの記憶もあやふやだった。それでも道の幅やガードレールに、仄かな懐かしさを覚えていた。
2度、角を曲がる。ひたすら走る。地面のおうとつに足をとられる。オレはそれを知っていた。少しバランスを崩したが、転倒せずに走り続ける。
――その地下室で、彼はいくつもの夢に触れた。
地下に子供教室が入っている建物の前を駆け抜ける。その建物だけは、オレの記憶と、なにも変わっていなかった。
そのまままっすぐに走り、突き当りを左折した。前方を見上げると、巨大な建物がみえる。
――巨大な塔は常に彼を見下ろしていた。
たしかにそれは、ファンタジーゲームに登場する、背の高い塔のようだった。
目的地は目の前だったが、線路を超える道がない。忘れていた。この辺りの地形は入り組んでいる。舌打ちして、立体交差の方へと向かう。
息が上がっていた。立体交差を駆け抜けながら、左手をみると小さな公園がみえた。木陰にささやかなベンチが佇んでいる。
――彼はいつも母親を待っていた。そのベンチが、彼に待つことを教えた。
今は疲れた様子の中年男性が、そこに腰を下ろしている。
立体交差は下り坂になり、オレはそこを駆け下りる。身体を反転させるような気分で、脇にある小道に入った。
――ホテル。
覚えている。
その公園に隣接するように、小さなホテルがある。こぢんまりとしたアパートのような、あまりホテルらしくはない建物。
オレは、その前に立った。
――廃ホテル。
やっぱり。そこにあるのは、もうホテルではなかった。すでに営業を止めて、ずいぶん経っているようだ。看板も撤去されていた。脇にある小さな入り口には黒と黄色のロープが張られ、『立ち入り禁止』と書かれた看板がぶら下がっている。
息を飲んだ。
――ここだ。
間違いなく、夢でみた建物だ。
オレは『立ち入り禁止』をまたいで進む。
ドアには鍵がかかっていなかった。
それを引き開けると、きぃ、と悲しげな音が聞こえた。
パウダス @paudasu
進んできた
とうしん @toshin000
ついに出会うのか!?
リョウゼン シュウ @shuu_ryouzen
分かる人が見れば場所を特定できそうな記述がわんさか。
闇の隠居 @yamino_inkyo
確か昨日見た未来ではつまずいたときはすっかり夜だったから、かなり早く到着できてるってことかな?
にえ@爆睡 @nie_nonstarter
さすがに爆弾の解体はできないですよね。無事に佐倉さんを連れ出せるでしょうか…。
おろないん @kougi1205
俺が圧迫面接を受けている間にすごい進んでいるではないか。お前らGJ
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