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あろん。さん のコメント

きた
No.1
120ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
 今日がクリスマスイヴだなんて、信じられなかった。  そんな日は決して訪れないんじゃないかとさえ思っていた。  準備が足りない。万全とは言い難い。  それでも私は今夜にすべてをかけなければならないのだ。  どちらかといえば友達付き合いはしっかりとしている方だから、イヴのお誘いにはことかかなかった。でもそのすべてを断った。いちいち恋人ができたのではないかと疑われるのは遺憾なことだ。今夜の私のテーマはありきたりな恋愛ではない。いってみれば世界と時間を相手にした壮絶な戦いだ。そうとう過剰な心意気だが、わりと本心である。  ――なんといっても、今夜は久瀬くんを取り戻すチャンスなのだから。  私はこの世界のなによりも奇跡的なプレゼントを求めている。        ※  久瀬太一という少年がいた。  今はもういない。  実のところ私も、正確にすべての事情を理解しているわけではないのだけれど、いろんなことがあって10年と何か月か前に、ふっと消えてしまった。  私はそれから彼を取り戻すことばかりを考えてきた。  ――というのは、実は正確ではないらしい。  世界5分前仮説という思考実験がある。  5分前に世界が生れたとして、私が持っているそれまでの喜びや悲しみや感動や無関心が、体験と知識と私そのものがすべて5分前にふっと生れたという仮定を、どうしたところで否定できないという仮説だ。  深く考え始めるとわけがわからなくなってくるけれど、この話で私が伝えたいのは懐疑主義的哲学ではなく、ごく表層のSFチックな物語だ。  ――久瀬太一はほんの数か月前に、10年前からいなかったことに「なった」。  それが私の持っている、もっとも信憑性の高い彼の情報だ。  もちろん簡単には信じられないことだ。でも私は、それを事実として信じることに決めている。  理由は、いろいろあるけれど、いちばんシンプルに語るとこうなる。  ――だって、その方が都合がいいから。  彼が過去改変によって消えたというのなら、それは私にとって、この上なく都合の良い話だった。なぜならこの世界では過去改変が起こり得るということだ。  小躍りして、鼻歌をうたいたくなるほどの僥倖である。僥倖なんて言葉、生れてはじめて使ったかもしれない。  でも考えてみて欲しい。  10年前にいなくなった彼を取り戻したい私にとって、もっとも都合がいいのは、「彼がいなくなった」という事実そのものを消すことだ。あるいはおそらくそのきっかけとなった12年前のあの事故自体を消すことだってできるかもしれない。  単純に、私は過去改変を望んでいる。  彼にとって不幸な過去が消え去り、幸福な過去と未来が生まれることを望んでいる。  ややこしい設定も世界の真理も関係なく。  私はそんな、奇跡的なプレゼントを、この聖夜に願っている。        ※  私はイヴにPCのキーボードを叩く。  顔も知らない大勢に向かって。  ――急なメールで申し訳ありません。  と、まず書き始めた。  ――皆さんにお願いしたいことがあります。  このメールが届く人々の中に、きっと私が望む誰かがいるはずだ。  でも、慌ててはいけない。  ――ですがその前にまず、こちらの事情を説明をさせていただきたいと思います。  確実にプレゼントを手に入れるために、私はエントツからおっこちるわけにはいかないのだ。        ※ 【プレゼント作成ご協力のお願い】  急なメールで申し訳ありません。  皆さんにお願いしたいことがあります。  ですがその前にまず、こちらの事情を説明させていただきたいと思います。  皆さんはすでにご存じかと思いますが、  私は聖夜協会という、不思議な組織に所存しております。  この聖夜協会を作ったのは「センセイ」と呼ばれる人物であり、  彼には極めて特殊な力があります。  それは、超能力のような、不思議な奇跡を生み出す力です。  協会内では、センセイが与える奇跡は「プレゼント」と呼ばれます。  センセイはかつて、クリスマスが訪れるたびにプレゼントを人に与えました。  このプレゼントの与え方には、ひとつ、決まったルールがあります。  センセイはひとりの「いい子」を指名しますが、  そのいい子自身がプレゼントを受け取るわけではありません。  いい子が願いを込めて贈り物をしたとき、  その受け取り主が願いに応じたプレゼントを手に入れるのです。  いい子自身は得をしない、この構造にはセンセイの深い意図があるように思います。  おそらくセンセイの考えるいい子とは、人の幸福を喜べる人なのでしょう。  ですからいい子に与えられるのは、プレゼントを贈る権利なのです。  おそらくは愛する人に、素晴らしいプレゼントを贈るときにこそ、  本当の幸せを感じられる人を、センセイはいい子と呼んだのでしょう。  さて、実のところ私がクリスマスカードをお送りしたのは、  センセイが今年の「いい子」のリストにあげていた方々です。  つまりこのメールを受け取っている誰かの中に、  いい子がいるのだと思われます。  私はある事情で、どうしても「プレゼント」を手に入れなければなりません。  ですから皆さん、お願いです。  私と一緒に「いい子」を捜してください。  それから――「いい子」に選ばれた方は、本当に身勝手なお願いで申し訳ありませんが、  どうかプレゼントを贈る相手に私を選んでいただけませんでしょうか?          ※  メールが思わぬ長文になり、私は息を吐き出す。  センセイの意図に関する部分は省いても良いだろうか?  でもまあ、おそらく私の予想は正しいし、センセイが考える「いい子」像には納得できるものがある。  ついでに、私にとってもありがたい話だ。  ――私はプレゼントを望んでいる。  欲の深い私は、おそらくセンセイの定義するところの「いい子」ではないのだろう。  聖夜協会では次のいい子に選ばれるのは私だというのが通説だし、それを積極的に否定するつもりもないが、大きな勘違いだと言わざるを得ない。  私は私の幸福を望んでいる。  彼らが考えるような聖人でも、言葉のままのいい子でもない。  ――センセイが選ぶ「いい子」は、私にプレゼントをくれるだろうか?  そのことは、もちろん不安だった。  普通に考えて、こんな怪しいメール、と自分でも思う。  ――でも、なんにせよ行動しなければならない。   まずは「いい子」をみつける。ほかにはどうしようもない。  息を吸って、吐いて。  メール文の続きを書こうとしたとき、メールの着信があった。  ――センセイ?  私はそのメールを開く。        ※  Merry Christmas  よいイヴを迎えているだろうか?  もちろん君が「いい子」を捜していることは私も知っている。  君に「いい子」の候補者のリストを贈ったのは私だからね。  ああ、もちろん、データは外部に漏れないように頼むよ。  信用問題にかかわることだ。  ところで、今夜「いい子」に選ばれる誰かの簡単な特徴を、  5つ用意してみた。  このメールにはそのうちの2つを添付している。  でも簡単に伝えてしまっては、誰にとっても面白くないだろう?  2つのファイルにはそれぞれ鍵をかけておいた。  なお、答えは仮名にひらいて入力してほしい。  加えて、この添付ファイルは君の手元から外に漏らさないように。  適度な時間に、また次のメールを送る。  また、リストに載っている人たちのうち、  何人かには、贈り物が届くように手配している。  贈り物の内訳は下記の通りだ。  夏のアイテム 1人  ある偉人の名言 2人  少女の歌声 2人  友人が描いた絵 20人(10種×2)  鍵の手がかりはこの贈り物にある。  協力し合えば、きっと鍵は開くだろう。  じっくり考えてみてほしい。  センセイ        ※  メールにはたしかにふたつのファイルが添付されていて、それぞれにパスワードの鍵がかかっている。  不思議なファイル名だ。  一方は、長い。謎の数字の羅列だ。  ファイル1【8/8 5/6 2/9 4/6 5/5 6/8 6/6 3/8 6/9】  なんだこれ。よくわからない。  日付けがいくつも並んでいるようにもみえた。  だが、推測の手がかりはない。  もう一方のファイル名は、まだしも人間味があった。  ファイル2【ひとつの石から Primzahl を拾え】  とはいえ、わけがわからないことには変わりがない。  ここからファイルのパスワードを読み解けるのだろうか?  私はため息をついて。  たった今届いたセンセイからのメール内容を文面に書き添えて、それから。  願いを込めて送信ボタンを押した。  ――どうか我儘な私の元にも、サンタクロースは現れますように。  それは無理な願いなのかもしれない。でも。  幸福を望むことさえ許されないのなら、私は「いい子」なんかでいたくはない。  この世界に彼がいないなら、私は彼を取り戻そうとするだけだ。  プレゼントが生まれるのは、おそらく今夜。  そのチャンスを、逃すわけにはいかない。 【BAD FLAG-07 不在】 ゆゆ子。 @yuzuyoriyuyuko メリー様視点きた、バナーみさきちだぞ!?!?!?! よもぎ@3D小説 @bell_candy84 シンプルに、メリーはちえりだと思ってます!ちえりは社交的だとみさきちが一部で言ってました! 指腐(しふ)@3d小説 @shifwol BADFLAG後9時間あるので落ち着いて行きましょう みどぽん@(_・ω・)_ダァン!!班 @Mitosiba_ho 電波ありやて ルート@私は正しました @Led1192 電波来たけどベルくんはどうなってるんだろうか 少年 @3d_bell こっんにっちはー! アディルカ/アザレア @adluka34 @3d_bell こんにちはー。ベルくんですかー? 少年 @3d_bell ざんねん、私は少年くんではありません。 臨時のお手伝いさんです。 Ouro @Ouro2525 @sol_3d ベルくんじゃない・・・だと・・・  バンソコ @banndoeido アイちゃんに雰囲気似てますね… カカロー@ソル岐阜班 @kakaro_sol とりあえずお手伝いさんがメリーとソルを繋ぐ梯子なんだな! もちもちしないよ @not_motti 公式トップにメリーの画像が追加されたね、第2章はこの3人メインなのか ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。 お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント( @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。 なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
3D小説「bell」本編
3D小説の楽しみ方



1.これは、「読者たち」が「絶望の中にいる少女」を救う物語です。少女を救う意志と情熱を持つ読者=あなたの参加をお待ちしております。



2.現実と作中の時間はリンクしています。たとえば主人公が8月1日にピンチを迎えるなら、読者のみなさんは8月1日までにその問題を解決しなければなりません。



3.ひとりの読者=あなたが、物語を変えます。作中のすべての問題を、あなたひとりが解決しなければいけないわけではありません。読者のうち、たったひとりでも問題を解決すれば、物語は先へと進んでいきます。



4.ルールは明示されません。物語を読み、想像し、自ら方法を見つけ出さなければならないのです。