シアさん のコメント
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そろそろ久瀬くんがくる時間だ。
「いきましょっか」
とベートーヴェンが言って、扉を開ける。
私もおそるおそるホールに出た。
ちょうど同じタイミングで、向かい――あの、表に数字だけが書かれたパネルがあった部屋の扉が開いた。
そちらから姿を現したのは、ファーブルとニールだ。
「もう見張りはいいんですか?」
とベートーヴェンが言う。
「センセイの部屋に入るには、どうせホールを通らなければけいません。どちらにいようと同じ事です」
とファーブルが答える。
頭をかきながら、ニールがぼやいた。
「ならオレまで巻き込むなよ」
「誰も貴方にまでドアを見張れとはいっていないはずですが?」
「うるせぇ。オレの勝手だろうが」
さて、と呟いて、ファーブルがこちらに歩み寄ってくる。
「そろそろ白状する気になりましたか?」
彼は鋭い目つきでこちらの顔を睨みつけている。
私は生れてはじめて殺意というものを感じたような気がした。どうしてこんなことになってしまったのだろう。本当に、わけがわからなかった。
「ねぇ、こんなリンチみたいなことしてても仕方ないでしょ? やっぱり警察を呼びましょうよ」
そう言ったのはベートーヴェンだ。彼女の感覚が、いちばん一般的――というか、私に近いように思う。
だがニールが首を振る。
「センセイが死んだってのは、考えづらい」
「どうして。あれだけの出血よ? それに昨夜の時点では間違いなく脈が止まってたんでしょ」
「だがセンセイの遺体は消えちまった。オレが馬鹿な飼い犬みてぇにこのドアを見張ってたのに、だ」
「つまり密室から死体が消えたっていうんでしょ? でもそれで、どうして死体が生き返ったことになるのよ?」
「そんなことができるのはセイセイだけだからだよ」
「なによそれ? 密室トリックは被害者じゃなくて犯人の領分でしょ」
「お前は本当にセンセイのことがなんにもわかってないんだな。オレは、センセイが死んだふりをしたのさえ、あの人の悪ふざけだって可能性を疑ってるんだぜ」
彼は鋭い目つきでこちらをみる。
「なあ、山本。あんたはセンセイに頼まれて、あの人を刺した振りをした、なんてことはないのか?」
頷いてしまえばいいのではないか、と一瞬だけ思った。
実は殺人事件なんてなくて、ただ「センセイ」と呼ばれる人がいたずらですべて演じていただけで、私はその協力者で。
ぜんぶ趣味の悪いフィクションなら、それでよかった。
――でも、違う。
昨日、確かにひとりが死んだのなら、それを勝手に嘘にしてしまっていいはずがない。
私は首を振る。
「何度も言ってるでしょ。私はあの部屋で気を失っていただけなの」
嘘は嫌いだ。それで、誰かが傷つくかもしれないから。
私は、私の知っている真実を信じる。
「さっさと警察を呼んで、それではっきりさせましょうよ」
ファーブルが首を振る。
「センセイのご意向がわからない以上、迂闊なことはできません」
「ただ、普通に、殺されただけかもしれないじゃない」
思わず答えながら、何を言っているんだ私は、と思った。
人が死んだことが、誰かに殺されたことが、「ただ普通」なんて状況なわけがなかった。いついかなる時でも、どんな理由があろうとも。
「ただ普通に死ぬなんてことはあり得ないんだよ、あの人に限ればな」
とニールが言った。
ファーブルは、どこか悲しげな、もっといえば不安げな笑みを浮かべる。
「今回の件に関しては、珍しく私と貴方の意見が共通しているようですね」
はっ、とニールは笑う。
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ。オレはさっさと帰りたいんだ。つまらない脇道に時間をとられていたくないんだよ。結局、このガキがセンセイの指示を受けていなかったんなら、未遂だとしてもこいつが犯人なんだろ。それで決まりだ」
「ですが、センセイの行方は未だわかりません」
「それこそセンセイの勝手だろ。会いたきゃ向こうから出てくるさ」
ほら、解散、解散――と、ニールは手を振る。
「いいえ。今日はクリスマスだ。どんな奇跡が起こっても不思議ではありません」
妙に芝居がかった口調で、ファーブルは首を振る。
「もうしばらく、あの方の帰還を待とうではありませんか」
いや警察――とベートーヴェンがつぶやく。
でもニールもファーブルも、そんなこと聞いてはいないようだった。
「どうでしょう、ニール。私は少々、観察眼に自信があります。余興に昨夜、なにがあったのか解き明かそうではありませんか」
「興味ねぇよ。勝手にやってな」
「そういわずに。考えてみれば、いかにもセンセイらしい趣向だとは思いませんか? 密室に消えた死体。その死体自身がセンセイというのも、あの人の遊び心のように感じます」
「お前がセンセイのなにを知ってるってんだよ」
「おやおや。貴方が古参だということを鼻にかけるのも珍しい」
「うるせぇ。オレの前で笑うんじゃねぇ。お前の笑顔はぶん殴りたくなる」
どうやら話が奇妙な方向に進んでいるようだった。
「まあ、犯人はこの少女で決まりでしょうがね」
「ちっ。その点だけは、同意してやるよ」
しかも私には都合の悪いところだけで仲がいい。
「そんなことよりも――」
はやく警察に、と、また言おうとしたときだった。
「いいですね」
若い青年の声が聞こえた。
※
ドアが開いていた。
なぜだか、ひとめでわかった。
そこに立っているのは、彼だ。
あのころとまったく違う。でも、なにも変わっていない。
安心して、気が抜けて、涙が滲んだ。
――久瀬くん。
本当に来てくれたんだ。
「やっときたのね」
とベートーヴェンが言った。
「すみません、宮野さ――」
「黙りなさい私はベートーヴェンよ」
「なんですかそのまんまな名前」
「うるさいわねいいでしょ。こっちも色々大変なのよ」
「お手数をおかけしましたよ。貴女がここにいて助かりました」
彼は息を吐き出して、それから、こちらに向かって歩いてきた。
「本当に山本がいた」
どきりとする。
もともと、彼を捜してここに来たはずなのに、急に再会するなんて考えてもいなかった。
「ええ、はい」
と口ごもりながら頷いた。
「久しぶり。10年ぶりくらいかな?」
「うん。だいたいそう」
「なんかへんな感じだな。意外とわかるもんだよな」
「うん。わかる」
「元気にしてた?」
「そこそこ。普通に大学生だよ。久瀬くんは?」
「オレもそう――じゃないかな、たぶん。なんかころころ状況が変わるんだ」
久瀬くんは困ったような、どちらかというと恰好悪い顔で笑う。
彼がなにを言っているのかはよくわからないけれど、その笑顔がみえてよかった、と素直に思う。
「なんにせよ、今は容疑者なんだろ?」
「うん。よくわからないんだけど、なんかそんなことになってます」
「たぶんオレが巻き込んじまったんだろうな。悪い。でも、きっともう大丈夫だ」
久瀬くんはポケットから、スマートフォンを取り出す。
「名探偵に事件の真相を解き明かしてもらおう」
ほうな@bellアカ @houna_bell
宮野さんwwwwwwwwwwwwww
chronos @chronos9603
久瀬君推理丸投げやないかーいwwwwwwwwwww
みゆ@ソル見守り班 @yazima_miyuki
ほんと久瀬くんの登場かっこいい
のにか@富山sol @nyooo0207
電波きたー!!
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1.これは、「読者たち」が「絶望の中にいる少女」を救う物語です。少女を救う意志と情熱を持つ読者=あなたの参加をお待ちしております。
2.現実と作中の時間はリンクしています。たとえば主人公が8月1日にピンチを迎えるなら、読者のみなさんは8月1日までにその問題を解決しなければなりません。
3.ひとりの読者=あなたが、物語を変えます。作中のすべての問題を、あなたひとりが解決しなければいけないわけではありません。読者のうち、たったひとりでも問題を解決すれば、物語は先へと進んでいきます。
4.ルールは明示されません。物語を読み、想像し、自ら方法を見つけ出さなければならないのです。
1.これは、「読者たち」が「絶望の中にいる少女」を救う物語です。少女を救う意志と情熱を持つ読者=あなたの参加をお待ちしております。
2.現実と作中の時間はリンクしています。たとえば主人公が8月1日にピンチを迎えるなら、読者のみなさんは8月1日までにその問題を解決しなければなりません。
3.ひとりの読者=あなたが、物語を変えます。作中のすべての問題を、あなたひとりが解決しなければいけないわけではありません。読者のうち、たったひとりでも問題を解決すれば、物語は先へと進んでいきます。
4.ルールは明示されません。物語を読み、想像し、自ら方法を見つけ出さなければならないのです。
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