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記事 21件
  • ■久瀬太一/8月8日/25時10分

    2014-08-09 01:10  




     ――ん?
     スマートフォンを覗き込んでいたオレが顔を上げる。
    「読めてるよ。みんなには助けられてばかりだ」
     サクラも足を止めて、振り返った。
    「え? なにかいいましたか?」
    「いや」
     オレはまたスマートフォンを確認しながら、先へと進んでいく。
    「それはなんですか?」
     とサクラが尋ねる。
     彼女はスマートフォンを知らない。
     やっぱり、現実の「佐倉」とは違うのだろう。――当たり前か。言動をみていればわかる。
    「神さまがメッセージをくれるんだよ」
     と、どこかぶっきらぼうにオレは答えて、ずんずんと進んでいく。




    煙@制作者派 @smoke_pop 2014-08-09 01:13:05
    おっ??もしや今これ誰かリアルタイムに編集した!?  
    QED @qed223 2014-08-09 01:12:44
    攻略本の「読めたら返事して」に反応してるのか  
    かめ@kameaa

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  • ■久瀬太一/8月8日/25時

    2014-08-09 01:00  




     スマートフォンをみるオレの手つきをみて、思い当る。
     オレが確認しているのは、メールではないようだ。
     ――向こうのオレにも、電波は届いていない?
     なら、あの制作者から届いたアドレスか。
     これでカンペキ、とアドレスに入っていたページ。
     本当に時がくれば、あのページを読めるようになるみたいだ。
     とりあえずあのページを読めばいいのか、と考えて、窓の向こうの自分とオレが入れ替わった場面を想像して、背筋が震えた。
           ※
     次の部屋は、あいかわらず薄暗いけれど、緑があった。
     萎れて元気のない草。花はない。
     ぐるりと囲まれた緑の中心に、少女が横たわっていた。
     その風景は、古い童話の挿絵のようだった。――昔々、悪い魔女に呪いをかけられたお姫様がいました。彼女は長い眠りにつき、それまで元気だった草花もすっかり萎れてしまいました。そんな場面を想像した。
     ――少女。
     オ

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  • ■久瀬太一/8月8日/24時45分

    2014-08-09 00:45  




     ようやく扉の錆を落としたオレは、またスマートフォンをチェックする。ずいぶん慎重になっているようだ。
     小さな声で、ぼそりと、
    「常にダッシュって。歩いてる余裕ないよ、こんなの」
     と呟いた。 ――なにがあるんだよ。
     軽く深呼吸をして、ドアノブをつかむ。
     そして、ドアをあけた直後、オレは駆けだす。
     オレは部屋の外周にそうように走る。部屋の真ん中には、黒いローブのようなものを着た、背の高い男がいる。
     そいつはオレに気づいたようだった。
    「貴様は、英雄クゼ……生きていたのか」
     妙にしぶい声で話し始める。
    「仕方ない。私が始末してやろう」
     だがオレはそんなこと、聞いちゃいなかった。
     部屋の奥にある扉にまっすぐ向かう。
    「逃がすか」
     黒いローブの男が、軽く右手を持ち上げる。
     その直後、オレの目の前で、扉が燃え上がった。
     だがオレはまるで、そのことも知っていたようだった。

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  • ■久瀬太一/8月8日/24時30分

    2014-08-09 00:30  
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     棚の上に残されていた、2本のボトルを回収したオレは、次に古びた壺の前に立つ。オレの胸に届くくらいの、巨大な壺だ。あちこちにひびが入っている。
     中には水が入っているようだ。オレはいったん、2本のボトルを足元におき、ゆっくりと壺を傾ける。
     流れ出た水が足にかかり、オレは顔をしかめた。すでにその水は腐っているのかもしれない。それでもオレは、ゆっくりと慎重に、壺を傾けて水を捨てる。
     ――そんな壺、どうするんだよ?
     わけがわからなかった。
     オレはしがみつくようにして、空になった壺を持ち上げ、よたよたとした足取りで歩き出す。その先にはドラゴンがいる。
     ――まさか、それでドラゴンを倒すつもりか?
     オレは馬鹿なのか、と思った。
     だがどうやら違うようだ。
     ドラゴンのすぐそばに巨大な壺を置き、オレはそれで満足したようだった。額の汗を拭っている。
     さらにオレは、部屋のかたすみにある

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  • ■久瀬太一/8月8日/24時20分

    2014-08-09 00:20  




     アナウンスが告げる。
     ――次は青と紫の節、9番目の陰の日です。
     窓の外にみえるオレは、あのリアルすぎて嘘みたいなドラゴンに背を向けて、一心不乱に逃げていた。
     その光景をみて、オレはまず希望を感じた。
     ――持っている。
     バスの窓の外にみえる、未来のオレは、手に持ったスマートフォンを横向きにして覗き込んでいる。
     ――オレは、あれを取り戻すんだ。
     現実がこのまま進むと、きっとそうなる。
     このまま。
     ――八千代が血を流した先で?
     それは正しいことなのだろうか? わからない。
     ともかく窓の向こうのオレは、スマートフォンをポケットにしまい、ドラゴンに背を向けて走る。腰から妙に豪華な装飾の施された剣を抜く。
     それで、向かって左手の扉を斬りつけた。
     剣の破片が舞う。それは根元から折れてしまったようだった。扉は? すっぱりと下半分が切り取られている。オレに一発で扉を斬れる

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  • ■久瀬太一/8月8日/24時10分

    2014-08-09 00:10  




     シンプルなアナウンスが聞こえた。
     ――次は、8月15日です。
     窓の外にみえた景色に、オレは、息を飲んだ。
           ※
     そこにいたのは八千代だった。
     八千代は縛られて倒れていた。
     うつぶせで、顔はみえない。だが頭部の辺りから、じっとりと血が広がっている。
     ――聖夜協会は、人を殺さないんじゃなかったのかよ?
     だがオレだって、ソルに助けてもらえなければニールに撃たれていたはずなのだ。八千代からの情報は意外にあてにならないのかもしれない。
     八千代の周りには、数人の男たちが立っていた。
     ファーブルたち? 違う。少なくとも、彼の姿はない。
     男のうちのひとりが言った。
    「答えろ。センセイはどこにいるんだ?」
     八千代は微動だにしない。
     男は平然と続ける。
    「お前は悪い子だ。とてもとても、悪い子だ。センセイを独占しようだなんて、そんなことが許されるはずがない」
     平然

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  • ■久瀬太一/8月8日/24時

    2014-08-09 00:00  




     24時になるころ、オレは夢の中でバスに乗った。
     今回は、バスの中にいるのは、あのきぐるみだけだった。リュミエールの姿も、グーテンベルクの姿もない。
     オレは最後尾の座席に腰を下ろす。
     ソルのスマートフォンが奪われた、と告げると、少年ロケットのきぐるみは言った。
    「なるほど。そりゃ大変だ」
     ちっとも感情のこもっていない言葉だ。
     オレはバスから窓の外を眺める。みえるのは相変わらずのトンネルだ。オレンジ色の光が、ほんのわずかな時間だけオレを照らして、すぐに後方へと流れていく。
    「あのスマートフォンだけは、取り戻したい」
    「もちろん。ソルの協力は必要だ」
    「どうすればいい?」
    「オレが知るかよ。ただの少年だぜ?」
    「ロケットだろ」
    「ロケットは空の飛び方しか知らない」
     やっぱりこいつは頼りにならない。わかっていたことだが。
     ソルからのメールを思い出し、オレはきぐるみに尋ねる。

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  • ■佐倉みさき/8月8日/17時

    2014-08-08 17:00  




     東京を出発して、名古屋、秋田ときて、次は尾道である。
     さすがにもう少し理性的なルートはなかったのだろうかとつい考えてしまうが、どうやら久瀬くんの年齢を辿っているようだから文句もいえない。
     ノイマンとニールは誘拐犯であり、私はその被害者だからということで、飛行機は避けている。結局のところ、新幹線で8時間もかけての移動になった。
     隣ではノイマンが、一心不乱にノートPCを叩いている。さらにその隣では窓に側頭部を押しつけてニールが眠っている。
     車内販売のワゴンを押す女性が通りかかり、私とノイマンはアイスコーヒーを買った。移動が増えるとコーヒーを飲む機会も増えるなと思う。
     アイスコーヒーで、ノイマンがようやくノートPCから顔をあげたから、私は声をかける。
    「大変そうですね」
    「今夜、続きのデータを公開する予定なのよ」
    「間に合うんですか?」
    「とりあえず深夜にはなにかしらアップす

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  • ■久瀬太一/8月8日/14時

    2014-08-08 14:00  




     ホテルの部屋に戻って、違和感に気づいた。
     鞄の位置が変わっている。
     ――誰かが、この部屋に入った?
     書き物机の引き出しを開ける。
     そこになければならないものが、なかった。
     思わず舌打ちがもれた。視界が暗くなったような気がした。
     オレは部屋を飛び出し、すぐ隣の八千代の部屋をノックする。
     ドアはすぐに開いた。
    「どうした?」
     と八千代が顔を出す。
    「あんた、オレの部屋に入ったか?」
    「いや。どうして?」
    「誰かが、部屋に侵入した」
     八千代が珍しく険しい表情を浮かべる。
    「なるほど。ファーブルは意外に強引だな」
    「どういうことだよ?」
    「考えればわかる。君があいつに会いに行ったなら、オレは君のあとをつける。ホテルに人はいない」
    「鍵のかかった部屋だぞ?」
    「どうにでもなるさ。オレにだってそれくらい、どうにでもできる」
    「そうかよ」
    「なにか盗られたのか?」
     オレは額

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  • ■久瀬太一/8月8日/13時45分

    2014-08-08 13:45  



     ファーブルとの面会は、表面上は何事もなく終了した。彼とはファミリーレストランを出てすぐに別れた。
     オレは当事者にみえて、当事者ではなかったのだと思う。これはきっと、八千代とファーブルとのつばぜり合いのようなものだ。
     オレのみたところ、その結果は引き分けだった。
     八千代の「魔法の言葉」は確かにファーブルの口を閉じさせ、一方でファーブルの「八千代の秘密」は確かにオレの胸に小さな棘を突き立てた。
     ――八千代は、すでにプレゼントを持っている?
     本当に?
     あいつはつい最近まで、聖夜協会員ではなかった。だが彼の父親は聖夜協会の連絡役をしていた。以前から、八千代も聖夜協会と関わっていたのかもしれない。
     答えの出ないことを考えながら歩いていると、ふいに、すぐ隣から声が聞こえた。
    「どうだった?」
     八千代だ。タイミングが良すぎる。
    「オレを見張っていたのか?」
    「見張るふりをしていた

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