• 「オーデュボンの祈り」(伊坂幸太郎)

    2020-07-02 00:0019時間前

    寓話性に満ちた味わい深い作品である。登場人物たちの内面の描写は削ぎ落しながら、特徴的でそれぞれの役割をしっかりと破綻なくこなしていく。

    これこそが物語の一つの極北ではないのであろうか。近現代の小説は人間の内面を描くこと、作家自身の内面描写に対する評価が大きすぎるのではないのだろうか。

    私小説や純文学ならいざ知らず、エンタメ系の物語であるならば、そのジャンルの構文や文脈を活用して、記号化したキャラクターを駆使しながら物語を紡いでいいのではないかと思うのだ。なろう小説やライトノベルがよく批判されるが、現代の寓話として世界観やキャラクター、ストーリーなどを共有し、省略するのはいいと思うのだ。作品の質の良し悪しは批判にさらされるべきだとは思うけど。

    これだけエンタメが活性化し、可処分所得を埋めるための手段が多様化している中、小説もいかに娯楽性の高い時間を過ごせたかで評価する時代が来てもいいと思うのだ。


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  • 「愚か者の盟約」(佐々木譲)

    2020-07-01 00:00

    年々齢を重ねるごとに、不倫や浮気に対する許容性が無くなっていっている気がする。若いころなら割り切れていたし、むしろ男の甲斐性とすら思っていたのだが、だんだん異物感が大きくなっていき、最近では物語にこの種の要素が入ってくると、それだけで評価が下がっていく。やっぱり純愛物が一番だよね。現実では難しいだろうけど。

    政治ものになると愛人だの浮気だの、下半身系の話に必ずと言っていいほど触れるのは、なぜなのだろう。それも話の本筋に関係ないところでちょくちょく入ってくる。この作品も、別に下半身事情などなくても成立する話だったのでは。そもそも、主人公に清廉さを求めるなら、不要なエピソードだと思うし、不倫相手に一途でも、不倫である以上、潔癖でも清潔でもなんでもないと思うのだが。

    ついでに言うと冒頭でエクスキューズを入れてくるのは、潔くないし、かっこ悪いと思うのだ。男なら自分の描いた作品を胸張って出さないかん。


  • 「出口汪の論理的に話す技術」(出口汪)

    2020-06-30 00:00

    塾講師の活躍は目覚ましいが、もっとも有名な塾講師といえば、私の世代ではこの人だ。受験生のころは参考書や問題集でとてもお世話になった。まさか社会人になってからもお世話になるとは思ってもいなかったが。

    考えてみると、参考書とビジネス書とは相性がいいのかもしれない。どちらも初学者むけにわかりやすく、目に留まりやすく書き、所定の目標を明らかにし、視覚的に解説し、短時間で理解させる。学校教育と社会人教育は異なるが、目標がはっきりしているというところでは一緒だ。

    流石に国語の塾講師らしく、学校で習った文法をもとに理論的に解説してくれるし、そもそも生徒に教えるために話法はかなり修練しているのだから、話術に関しては自覚的に習得して、人に伝えられる理論になっている。

    自分に求められていることを自覚的に発表できるのも、ビジネス上での一つのスキルだと思うのだが、それに関する書籍も一つ書き記してもらえないだろうか。