• 「学ばない探偵たちの学園」(東川篤哉)

    2020-08-08 00:004時間前

    ユーモアミステリは肩肘の力を抜いて軽く読めばいいのだと思う。というよりも頭からっぽにしてトリックの巧妙さなんか気にすることなく、筋立ても覚えることなく、そのキャラクターと雰囲気に酔いしれればいいのだと思うのだ。トリックの厳密さや巧妙さを競う本格ミステリに対してミステリ風とでもいうのだろうか。

    ミステリ風といえば、個人的には新本格も個人的にはこのジャンルに入る。言葉遊びだけで解決したり、超常現象がトリックの種だったり、完全に謎解きさせる気がないと思うのだが。ミステリというより「なぞなぞ」みたいな。

    ミステリ風はミステリの雰囲気をまとった何かなのだから、この作品も学園小説として読めば十分面白い作品に仕上がっているし、キャラクターの成長を描く必要がないというミステリの特徴がキャラクター小説としても読むことが出来る。タイトルに長編推理小説と書いてあるところから、すでにミスリードは始まっていたのか。


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  • 「星のダンスを見においで」(笹本祐一)

    2020-08-07 00:00

    女子高生とスペースオペラって相性がいい。今でこそベタ過ぎてひねられるようになったと思うが、少女が活躍する活劇って映像化しやすいし、華がある。

    作品自体はスペースオペラらしく軽妙なタッチで描きながら、少女の成長とそれを見守る大人たちという構図はジュブナイル小説の王道で、郷愁すら感じる。

    作品自体は何度も再刊され、古い作品であるのだが、あまり古さを感じないのはやはり普遍性が高いからであろう。やっぱり少年少女の成長物語っていうジュブナイル小説はいつの時代も求められているのだと思う。

    下手に科学考証などせず、宇宙を舞台にした空想未来を舞台にするのはファンタジーに通じるところがあると思うのだが、理屈を抜きにしてその世界に浸れるっていうのはそれだけで面白い作品だと思うし、多少の矛盾があっても強引に押し切れる強さがある作品はこの時代には多かったと思うのだ。そういうわけでもっと知られてもよい名作だと思うのだ。


  • 「ブラック・ティー」(山本文緒)

    2020-08-06 00:00

    山本文緒は日常の些細なボタンの掛け違いから、錯誤がだんだん大きくなることを描くのが本当に上手な作家である。恋愛中毒しかり、あなたには帰る家があるしかり。日常の誰にでもあるような本当にちょっとした落とし穴から、だんだん加速するように転落していき、最後には大きな破綻を迎える。この作品は短編集なので、短くきれいにまとまってはいるが、それぞれの短編の主人公はそれぞれ他人とは異質な欠損を抱え、異様な行動をしているが、一方でその原因をたどってみればほんと些細な、誰にでも思い当たるようなことばかりである。

    普段何気ない躓きにも大きな転落が待っていて、気を付けなければと思うのか、大きな転落というのは普段何気ない所にもぽっかりと開いており、気をつけようもなく襲い掛かるもので、今は運よく生き残れているだけと考えてしまうのか。この考え方の違いが、人生の幸福度を左右するのだろうなあ、と最近しみじみ考えてしまった。