逃げる阿求
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逃げる阿求

2014-02-08 23:42

    魔理沙は箒を傍らに持ち、白い息を吐きながら人里外れの雪原を歩いていた。沈みゆく夕日に照らされ、辺りは橙(だいだい)色に暗くなってゆく。
    ふと森の方を見ると、赤い和装のスカートを纏う少女が黄色い袖をはためかせ、引きつった表情で駆け寄ってきた。筆と紙を持つ手が激しく揺れる。
    「なんだなんだ?」
    走り慣れていないのかしきりにもつれる少女を見て、魔理沙は思わず口の端を歪めた。
    「助けてください!」
    少女は魔理沙の背後に回って思いきりしがみ付いた。相当な距離を走って来たのだろうか、ひんやりした感触が布越しに伝わる。
    正面に視線を戻すと、どこから来たのか真っ黒な球体がすぐそこまで迫っていた。
    「待てー」
    「ひっ!」
    球体の中からくぐもった声が聞こえるのに合わせて、少女がぶるりと震える。
    「おいおい、いったい何の騒ぎだ。あと顔を見せろ」
    すると、球体の縁から金髪の女の子がぬっと顔を出した。側頭部に、びっしりと赤文字が書かれた小さいリボンをつけている。
    「遊んでいただけなのに」
    「そうなのか?」
    魔理沙は、自分の腰元から顔を覗かせている和服の少女に目を遣った。少女は激しく首を振る。
    「いいえ! 追われる方は命がけなんです!」

      おわり


    『ウサギと猟犬』より


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