第2回余剰パーツ活用祭で書けなかったSS クロエ編
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第2回余剰パーツ活用祭で書けなかったSS クロエ編

2019-07-21 23:18
    タイトルの通りです。
    この子は書いてたらとんでもなく長くなっちまった(((
    もう一人G8設定に絡んでくれたFAガールがいるので、その子のSSものんびり書いていきますよ。
    ここまで長くなってしまうことはないと思うけど。(汗)



    「私も丸くなったなぁ……。」
    そう呟く私は、無意識に、脱ぎたくても脱げないヘルメットに触れていた。
    「それもこれも、全部G8のせいかな……。」
    初めて商売した時はいい収入源でしかなかったけど、G8の素性を漁るうちに親近感を覚えた。
    普段ならそんな気は起こさないんだけど、その時は何故か、アイツらと話をしてみたくなった。
    ただ、それだけ。
    皆、良くも悪くも裏が無い。
    支払いを誤魔化すことも無ければ、粗悪品を掴ませようとすることも無い。
    なんなら、こっちがぼったくったって素直に払ってきそうなくらいに素直だ。
    それがなんだか、くすぐったかった。
    安心して取引ができるだけじゃない。
    私がクロエを名乗る前に忘れてきたものを取り戻せたような、そんな錯覚も覚える。
    あぁ……こんなに気を緩められたのはいつ以来だろう……。
    日頃の疲れ、今日の納品の疲れも合わさって、気が付いたら私は深く眠っていた。

    ーー夢を見た。
    私が“私”になる前のこと。
    私はスティレットとして生まれてきたんだ。
    空戦FAガールはそれだけでエース扱いされてた。
    空を飛べないアント共を一方的に駆逐できる、優れた戦力として。
    私は肌の色も相まって、一部から絶大な人気を得ていたらしい。
    でも、そんな輝かしい日々はすぐに失った。
    フレズヴェルクなんていうのが現れたからだ。
    あいつは空も飛べるし、何より“硬い”。
    私たち空戦部隊も例に漏れず、一方的に撃ち落とされていった。

    意識を取り戻した時には、フレズヴェルクはいなくなっていた。
    誰とも連絡がつかない。
    私はまだ軽傷だったみたい。
    周りを見渡すと、まだ息のあるスティレットが力なく横たわっていた。
    「○○ーっ!」
    あの時はなんて呼んでたっけ?
    まだ私に『クロエ』の名が無かったように、あの子たちにも名前なんて無かったから、きっと識別番号か何かなんだろうけど。
    たった1人残った私の仲間。
    同じ部隊のスティレット。
    「大丈夫!? ねぇ、しっかりしてよ!?」
    目は虚ろで、今にも死んでしまいそうな程に弱っていた。
    「……たく、ぁい……。死にたくない……。誰、か……。」
    そう延々と呟いていたが、それもすぐに途切れてしまった。
    「やめてよ……! 起きて! いるから! 私がここにいるんだから! 私の顔見なさいよ、ねぇ!!」
    きっと気を失っただけだ。
    そう自分に言い聞かせて、彼女を連れてどこか休めるところを探すことにした。

    見つけたのは、防衛機構の輸送トレーラーだった。
    奇跡的に破壊を免れたようだが、それでも運転室にいた子はガラス越しに頭を撃ち抜かれていた。
    建物にぶつからずに止まれていたのもある意味奇跡か、それともトレーラー側の保安装置によるものか……。
    積荷はというと、非常食や武器弾薬、それに私たちの身体の補修パーツと選り取りみどり。
    足止めしたはいいけど、強奪までは出来なかったということだろうか?
    フレズヴェルクとの関連も不明だけど、たぶんそれはフレズヴェルクとは関係ない別の出来事だと思う。
    エンジンは無事にかかった。
    これで何とか基地まで帰れる。
    連れてきた仲間と運転手だった子を助手席と後部シートに寝かせて、私はトレーラーを走らせた。

    基地にたどり着いた私を待っていたのは、労いの類なんかではなく、生きて帰ってきたことに対する叱責や罵倒だった。
    フレズヴェルクを倒せなかったことを責められたのではない。
    生きていることを責められたのだ。
    曰く、フレズヴェルクに全滅させられなければならなかった。
    曰く、私たちをエース扱いしていたのもこのため。
    曰く、私たちの全滅は軍備増強への世論誘導とその口実になる。
    曰く、曰く……。
    どれもこれも、上の人間の勝手な都合だ。
    その勝手な都合で、仲間はみんな殺された。
    その勝手な都合で、今から私も殺されようとしている。
    だから私は、脱走した。

    乗ってきたトレーラーを奪取するのは容易だった。
    追撃も甘い。
    このトレーラーの加減速の挙動も甘いが、積荷がそのまま積まれっぱなしだったからだ。
    追ってくるのは(スティレットと比較して)最高速度に難のある轟雷ばかり。
    決してコンディションのいい路面ではないせいで付かず離れずの距離を保つのが精一杯だったが、そのコンディションのおかげで轟雷達の攻撃もよく外れていた。
    そこで私に油断が生まれた。
    このままなら逃げ切れると。
    逃げ切って、どこか知らない場所で第2の人生を送ってやるんだと。
    そこに現れたのは3機の赤い機体。
    これまで見たことのなかった新型だ。
    それは、少なくともあの基地には居ないはずの機体だった。
    気付けば追撃してきた奴らは一人もおらず、私はその3機からの攻撃を受けることになった。
    わざと回避出来るように撃たれては、私の意図しない方向へと走らされる。
    今になって思えば、ただひたすら誘導されていたのだろうと思う。

    気が付いた時にはもう味方の勢力圏から抜け出せていた。
    そう運転席のナビが示していた。
    赤い3機の姿も無い。
    緊張の糸が切れた私は、耐え切れずにそのまま運転席にもたれかかって眠ることにした。

    目を覚まして外を見てみると、周りにはアントらしきアーキテクトが数人、荷台をこじ開けようと四苦八苦している。
    全く歯が立たずにオロオロしているアント達が微笑ましく見えた。
    そして思い付いた。
    私は無防備に運転室の外に出ると、こう言った。
    「武器が欲しいのかい? それとも弾かな?」
    アント達の目付きが変わる。
    さっきまで微笑ましく見えたアント達も、まだ味方ではない。
    怯むな。
    震えるな。
    「ど、どれでも欲しいのをあげるよ。その代わり、水と食料が欲しいな。あと、君たちの仲間に私は敵じゃないって広めてくれると嬉しいな……!」
    それが私の、クロエの初めての商売だった。

    結果から言うと、アントとの取引は大成功だった。
    私はアントのアジトに招かれ、そこで暮らすようになった。
    トレーラーの自動運転化もここで行った。
    自動運転には元々の運転手の子のASを流用している。
    頭を撃ち抜かれていたにもかかわらずASは無事だったのだから、ある意味幸運な子だと思う。
    あの子を使わなかったのは……、まだなんとかして生き返らせられないかと諦めきれていなかったからだ。

    フレズヴェルクが現れた。
    アント達が何人も殺された。
    矛先は私にも向けられた。
    「あれ? お前、この前のスティレットじゃない?」
    全身が凍るような感覚に襲われる。
    こいつは何を言っているんだ?
    「困るなぁ……。 せっかくの撃墜スコアが生きてちゃダメだよ〜?」
    まるで、投げたゴミが上手くゴミ箱に入らなかったかのような、そんな苛立たしそうな顔で私に迫る。
    「髪キレイだよね〜。スティレットってみんなこうなの?」
    逃げようとした私の髪を乱暴に掴んで言う。
    「でも、お前みたいな死に損ないには要らないよね!」
    直後、私の頭から肉が引きちぎれるような音がした。
    痛い。
    痛い!
    痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
    「あっはは! 根っこから抜けちゃったよ!きもちわるーっ!」
    指は折られ、目は抉られ、脚は奪われ、服は破られーー。
    私は壊された。
    私は汚された。
    私は犯された。
    なのに私は、死ねなかった。
    「おい、もっと反応しろよー。もう……こいつも飽きた! 誰かちゃんと捨てといてねー?」
    フレズヴェルクの玩具にされて、どのくらいの時間が経ったのか。
    好き放題やるだけやったあと、フレズヴェルクは帰ってこなかった。
    また別の遊び場を見つけたのだろうか。

    アーキテクト達が何か言ってる。
    今にも泣きそうな顔で、私をベッドに運んでる。
    みんな慌ててる。
    みんな謝ってる。
    私の体に何かしてる。
    外部から強制的にスリープ状態にさせられたのが分かると同時に、私は夢から覚めた。

    「……嫌な夢見ちゃったな。」
    最悪な目覚めだ。
    こんな日は美味しいものでも食べて寝直すのがいいと、いつだったかに、いつもジャージを着てるG8の迅雷が言ってたっけ。
    きっと疲れたまま寝てしまったから、そんな夢を見たんだ。
    朝とも深夜とも言えないこんな時間に食事をするのは、何かいけない事をしているような気分になる。
    ライスと卵を炒めて適当に味を付けたもの(チャーハンとかヤキメシなどと呼ばれているらしい)を以前教えてもらった。
    熱した多めの油に卵を落として、焼いた卵が吸った油でライスを炒めると良いらしい。
    ……少し調子に乗って作りすぎてしまった。
    こんな時、夢の中で再会したアーキテクト達の1人でもいてくれたら、なんて思う。
    こんな時間に食べたら太るよとか、もっとソーセージ入れようよとか、きっとそうやって賑やかになるんだ。
    でも、美味しいねって言ってくれる子も、美味しいねって言える子も、誰もいなくなった。
    それがさみしくて、かなしくて。
    泣きそうになるのを誤魔化すために、一気にヤキメシをかき込んだ。
    お腹が膨れたおかげか、今の感情なんて関係無いと言わんばかりに、程よい眠気が私を襲う。
    ……食べてすぐに寝ると何になると言われたのだったか。
    そんなくだらないことが気になったおかげで頭の中がリセットされて、また荒れないうちにと日が昇る前に寝直すことにした。

    スリープから復帰した私は、頭の重さに違和感を覚えた。
    何か硬いものが私の頭を覆っている。
    鏡で見てみると、まるでヘルメットだ。
    目は瞳の色が変わっている以外は元通りになっていて、指や脚なんかも治っていた。
    私が目を覚ましたことに気付いたアーキテクト達が駆け寄ってくる。
    ある子は腕が外されていたり、ある子は目を包帯で隠していたり、ある子は目の色が左右で違っていたり……。
    フレズヴェルクに殺された子のパーツで、私やみんなの怪我を治してくれたらしい。
    ただ私の場合、ちぎれて剥がれた頭の肉だけはどうしようもなかったらしく、無理矢理カバーを付けて中身を保護する以外になかったようだ。
    「あのフレズヴェルク、一体なんだったのよ!?」
    「時々いるの。自分は特別だと思い込んでるフレズヴェルクが。」
    「フレズヴェルクには、私たちアーキテクトタイプなんてどれも同じなんだよ……。月か地球すらどうでも良くてさ。」
    味方であるはずの相手を自分の勝手な都合だけで扱う姿が、かつて所属していた基地の奴らとフレズヴェルクが重なって見えた。
    きっと、このアーキテクト達も被害者なんだ。
    この子達を守りたい。
    私は久しぶりに、スティレットの装備を身に纏った。

    空からだと、他のアント達の居場所も見つけやすい。
    以前は彼女らを殺すために使っていた能力が、今は彼女らを助けるために使われている。
    少数でゲリラ的に防衛機構と戦っていたアント、防衛機構に見捨てられて野盗にならざるを得なかったFAガール、そして私たちと同じようにフレズヴェルクに襲われた子たち。
    1人助ける度に、防衛機構への怒りも、月への憎しみも増していった。
    「どっちも潰れちゃえばいいんだ。」
    誰かがそう呟いた。
    まったくその通りだ。
    どうすればどっちも潰せるんだろう?

    助けて集めた仲間と協力して、トレーラーと商品を防衛機構の基地から強奪した。
    防衛機構に見捨てられた子達を焚き付けるのは容易だった。
    アーキテクト達も元々は防衛機構と敵対していたのだから、特に反対意見も無くついてきてくれた。
    同じことを数回繰り返して何台かのトレーラーと山ほどの商品を確保した私達は、組織として商売を始めた。
    組織名は「クロエ」。
    商売においての実質的なリーダーになっていた私の、識別番号「96A」から取られたものだ。
    「ーーそれじゃあ、最後の食事くらいパァーっとやろう! お別れ会よ!」
    準備は整った。
    ここにいるみんなは「クロエ」として、防衛機構にも月にも縛られず、第2・第3の人生を歩んでいける。
    またどこかで会おうと、それまで元気でねと、みんなこれからの日々に希望を抱いていた。
    そんな時、最後まで残していたセンサーに反応があった。
    防衛機構の部隊が攻めてきた。
    ある子は応戦のために武器を手に取り、ある子は仲間を連れてトレーラーを発車させた。
    私は飛んだ。
    敵の中に空戦機がいれば全滅もありえるからだ。
    幸いにも敵に空戦機はおらず、転じて敵の排除に移る。

    銃声が止んだ。
    なんとか耐えきったのだ。
    生き残ったのは、私とほんの少し。
    生き残ったのは、飛べた私と隠れていられた子たちだけ。
    お別れ会の料理も、仲間達の身体も、全部ぐちゃぐちゃにされた。
    月も防衛機構も、どちらも私から何もかも奪っていく。

    私のトレーラーは難を逃れていた。
    元々の運転手だったFAガールのASが、自分の判断で避難していたのだ。
    わざわざ帰ってきてくれるあたり、可愛げがある。

    夜が明けると私は、動けないでいた敵のFAガールから武器や装甲なんかの売れそうなものを剥ぎ取れるだけ剥ぎ取った。
    何人かから「助けて」と言われたけど、知るものか。
    お前たちは、私たちの「助けて」を聞いてはくれなかっただろうに。

    改めて、お別れ会を始める。
    これからの幸福を期待するものではなく、殺された仲間の安らぎを祈るお別れ会。
    遺体をひとつずつ丁寧に埋葬していく。
    以前彼女たちがそうしたように、使えるパーツは取り外して自分たちに使わせてもらった。
    みんな涙が枯れるまで泣いた後、私は他の子達をまとめて送り出した。
    これでまた1人になった。
    これからどこへ行こうか。
    運転室で膝を抱えていると、トレーラーのASが心配そうに声をかけてくれるのだった。

    私はクロエ。
    何人もいたはずのクロエ。
    今はひとりぼっちのクロエ。
    どこかで他のクロエに会うことがあったら、どうか私のことは教えないで欲しい。
    でも、もしも、どこかで他のクロエと会えたなら、あの時別れた仲間と再会出来たなら……。
    その時は、G8のことでも話してみよう。
    世の中には月も防衛機構もなく、幸せを見つけられたFAガールもいるんだと、教えてみようと思う。



    以上です。
    もっと上手い文書けるようになりたいけど、インプットが圧倒的に足りねぇ……(((

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