「エネルギー問題討論会」(連載小説 ~第58話~)
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「エネルギー問題討論会」(連載小説 ~第58話~)

2014-02-26 21:59

     食堂でボンヤリとテレビを眺めているレユレユ。
     テレビ画面の中で、エネルギー問題に関しての番組は続いている。
    「さて、続きましては、火力・原子力・再生可能エネルギーの利点と欠点をそれぞれの立場から語っていただき、討論してもらいましょう!」
     司会者の紹介に従って、次々と論者が入場してくる。

     討論の流れは、こんな感じ。
     火力発電は、それなりに安くて、何よりも安定して電力を供給できるのが利点。欠点としては、資源には限りがあるコト。そして、二酸化炭素などを排出してしまう。ただし、最近建てられた火力発電所は、効率よく資源を使えるようになっていて、二酸化炭素の排出量も昔に比べると抑えられるようになってきている。

     原子力発電は1機で大規模な発電を行えるのが魅力。ただし、事故が起こると、大変な規模で人にも地球にもダメージを与えてしまう。それを防ぐ為には、お金もかかる。また、安定して電力を供給できるものでもない。1度止めると再度動かすのが大変。なので、なかなか発電量を調整できない。火力発電と同じで、資源に限りがある。
     再生可能エネルギーに関して現時点で有力なのは、風力と太陽光発電。太陽熱発電を主力にしている地域もある。それ以外は、まだまだ。地熱発電に関しては、将来的な希望がある。利点としては、自然にやさしい。欠点としては、コストが高い。普及率が低い。

     討論は、原子力発電を推す論者と、再生可能エネルギーを推す論者の一騎討ちの場面へと突入していた。
    「太陽光だ、風力だと言っても、まだ現実的ではない。そんなモノを導入しても電気代が上がるばかりだ」と、原子力発電論者。

    「電気代のコトを言うなら、原子力の方が圧迫している。安い!安い!と言いながら、実質はそれとは全く逆。しかも、これから安全対策にますます予算が必要になっていく。信じられないコトに、原子力発電のコストは毎年上がり続けているのだ!」と、再生可能エネルギー論者。
     確かに、その話は聞いたコトがあるな、とレユレユは思った。原子力は、毎年コストが上がり続けているのに対し、風力や太陽光発電は毎年、右肩下がり。既に、逆転してしまっているという話も聞く。
    「公害の問題は、どうか?たとえば、風車を設置した近隣住民から、低周波や騒音被害の苦情が出ているというデータもある。巨大な太陽熱発電所の上空を飛んでいる鳥が熱で焼け死に、年間に何十羽という被害が出ている」と、原子力発電論者。
    「それは、微々たる問題だ。原子力発電所は、1度の事故でその何万倍もの被害を与えてしまう。火力発電にしたって、そうだ。二酸化炭素の問題は完全に解決したわけではない。実際に、騒音や低周波の被害が出ているならば、距離を置いて建設すればいい。どうしてもという場合には、引っ越しの費用を補助する政策などを取ればいい」
     ま、どんな発電方法を取るにしてもデメリットあるものだよな。そんなコトを言っていたら、高速道路やバイパスや線路の側に住んでいる人は、苦情だらけだろうし。どうしたって便利にはリスクがつきまとう。人々が便利な世界になればなるほど、どこかの誰かは苦しむのだ。問題は「どのリスクを選択するのか?」なのだろうから。

     そんな風に考えていたら、食堂にソフィアが入ってきて、レユレユの正面に座った。
    「原発なんて、サッサとやめちゃえばいいのよ。それで全部廃炉にしちゃえばいい」
     相変わらず、ソフィアは直球勝負だ。

    「ま、そういうわけにはいかないよ。急に全部を廃炉にするとなると、電力会社も破綻しちゃうしね。その辺は、ゆっくりやっていかないと」
    「いろいろと面倒なのね、世の中って」
    「そりゃあね。何もかもが理想通りとはいかないよ。それでも、人類はそういった問題を1つ1つ解決しながら、ここまでやってきたんだ。きっと、今回もどうにかなるよ」

     真剣に人々が考えればね…とレユレユは思った。でも、もしも、人々が完全に興味を失ってしまったら。その時は、駄目かも知れない。解決できる問題も解決できなくなって、世界は悪い方向へと向っていってしまうかも。

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