「宗教団体の設立」(連載小説 ~第90話~)
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「宗教団体の設立」(連載小説 ~第90話~)

2014-03-30 22:24

     レユレユの理想は高かった。自分を極め、自分にできるコトならば、何でもやろうとした。必要なものを最大限取り入れて、必要ないものを極限まで削った。だが、誰もがそんな風にできるわけではない。
     小さな集まりは、小さな集まりのまま。世界の隅っこで細々と活動を続けるだけ。発展の兆しすら見せようとはしない。周りの人達も、できるだけついていこうと努力はしたが、おのずと限界は生じてくる。やがて、レユレユは孤立し始めた。

     そんな流れが変わる時が来る。1人の男の登場だ。男の名は、八百条輝(やおじょうひかり)
     八百条は、理想は理想のまま終わってはならないと考えていた。あくまで現実の結果を伴わなければならない、と。かといって、現実が現実のまま進行するのもつまらない。それはそれで虚しいものだ。現実は理想に従って、初めておもしろくなる。

     それは、自分1人の力ではどうしようもないだろうな、と八百条は常日頃から考えていた。そこに、理想の塊みたいな存在が現われた。理想が服を着て歩いているような人間。「これだ!」と思った。
     ここに理想と現実が交差したのである。

     八百条輝が新しく加入し、レユレユと2人きりで話をしている時。
    「レユレユ様、このままではいけません。レユレユ様のお考えは立派です。その行動も。ただし、それは1人の人間として。誰もがそんな風にできはしないのです。このままでは破綻します」

    「それは、僕にもわかっているよ、八百条君。でも、どうすればいいのかがわからない。僕は僕なりに世界を学び、未来の世界のあるべき姿を見つめ、それに向って自分を変えていくだけ。できるのは、それだけだ。それを他の人に強制したりはできない」
    「それでいいのです。それでいいのですよ。レユレユ様は、そのままでいい。むしろ、もっとその道を極めてくだされば。変えるべきは、そこではない。組織のあり方なんです。それも、ほんのちょっとしたコトでいい」

    「具体的には?」
    「宗教団体にしましょう」
    「え?でも、それは…」

    「レユレユ様は、その頂点に立ち、自らを極めてください。誰も追いつけないほどに。そうするコトで、そこまで理想を追求するコトも、努力するコトもできない者達の尊敬と信仰の対象となるでしょう。この方が税金的にも非常に優遇されます。理想をかなえるための最善の近道となるでしょう」
     レユレユは、何か嫌な予感がした。だが、強く反論するコトもしなかった。その意見は、理にかなっていたし、理想論だけでは世界は変えられない。現実に即した方法が必要だった。その為には、彼の提案したやり方は最適に思えた。


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