「本格的なお店屋さんごっこ」(「夢見市物語」 ~第28話~)
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「本格的なお店屋さんごっこ」(「夢見市物語」 ~第28話~)

2014-07-26 21:28

     夢見市立アゲハ小学校では、1年に1度、本格的なお店屋さんごっこが開催されている。小学校の生徒全員が集まって、お店を開いたりお客さんになったりするというもので。どういう所が本格的かというと、税金を取られるのだ。消費税はもちろんのこと、所得税や住民税、固定資産税なども取られる。加えて、給料明細も発行される。
     1・2年生はお客さん。3・4・5年生はお店屋さん。6年生は、税務署の人や警察官などの公務員と銀行を担当する。お店屋さんや公務員をしている人も、手に入れたお金で買い物をすることが可能。
     さらに、外部から一般市民もお客さんとして参加できる。学校の入り口で、その日だけ使える紙幣を貰って、自由に買い物ができるようになっている。商品は、子供達自作の工作や文集、絵や折り紙、農園で育てた野菜などなど。それ以外にも、マッサージや手品の公演などの形にならないサービス。その場で似顔絵を描いてくれたり、リクエストした曲を弾いてくれるといったものまである。

     お店を出す子供達は、最初に土地の売買の方法を勉強する。お客さんが集まりやすい場所の土地の値段は高くて、税金もたくさん取られる。高い土地を買った人は、それだけたくさん利益を上げなければならなくなる。逆に、安い土地を買った人は、ノンビリと商売ができる代わりに、あんまりお客さんがやって来ない。
     お客さんになった子は、最初に貰ったお金で好きなものを買うコトができるのだけど、無駄遣いするとすぐになくなってしまう。それと、消費税もキッチリ取られるので、それも考えないといけない。

     子供っていうのは、意外と難しいコトでもスイスイとこなしていくし、覚えていってしまうものなのだ。そこに“興味”さえあれば。
     たとえば、大人でもなかなかやらないようなシミュレーションゲームでも、ゲーム好きの子は1人で勝手にルールを覚え、攻略法を編み出してクリアーしてしまったりする。今回も、それと同じ。嫌々勉強している時には、なかなか覚えられないようなコトも、楽しみながらなら、すぐに覚えてしまう。



     お店屋さんごっこが開かれた何日か後の総合学習の時間に、星流君はインターネットで土地の値段を見て回ったいた。自分が住んでいる地域が、時価いくらくらいするとかそういうのだ。
     そこから発展して、近所のマンションや一軒家がいくらくらいするのだろうと興味が沸いて調べていく。さらには、隣町や行ったコトのある街の価格も調べて回る。

     星流君は、その週の総合学習時間はずっと、そんなコトをやって暮らした。おかげで、周辺地域の市区町村の名前や土地評価額などをスッカリ覚えてしまっていた。
     そうして、大人になって振り返ってみるとあらためて思うのだった。子供って、とっても不思議な生き物なんだなって。

     後に、この小学校のある生徒がプログラムを組んで、もっと現実に近いお店屋さんごっこができるようになるのだけれど、それは、もっとずっと先のお話。星流君がこの小学校を卒業してからのコト。


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