「エピローグ」(「夢見市物語」 ~最終話~)
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「エピローグ」(「夢見市物語」 ~最終話~)

2014-07-28 22:48

     夢見市の市長である大石悠真は考えた。
     “世界を変えよう”という意志は本物だった。その意志があったからこそ、ここまで来ることができた。だが、それはもっと別の形でもよかった。この街の市長という形でなくとも。もっと別のやり方もあったのかも知れないな…と。

     結果的に、このような方法にたどり着いたのは、運だった。運命のようなものだった。世界を変える為ならば、どのような手段でも構わなかった。
     それでも…それでも、と思うのだ。それでも、これでよかったのだろう。この街に集まってきてくれた多くの者達。そして、未来ある子供達が、きっと、この世界を素晴らしい方向へと変えてくれる。今は、まだ小さな力かも知れないけれど、何年か何十年か後には、きっと…
     その為に力を貸そう。もう少しだけ。

     コンコン、と市長室の扉がノックされる。
    「どうぞ」と、大石悠真は答える。
     カチャリという音を立てて、扉はゆっくりと開く。入ってきたのは秘書の奈々瀬ひとみだった。

    「お茶をお持ちしましたわよ」と、奈々瀬ひとみ。その話し方は、どこか冗談めかした感じがする。
     市長室の机の上にお茶の入ったコップを置きながら、奈々瀬ひとみは尋ねる。
    「また、どこかに行きたくなったんじゃないの?いつものように、遠くに行きたくなったんじゃ?」

     大石悠真は、しばらく考えてから答える。
    「そうだな。それもいいかも知れない。ここでの生活も、随分と長くなってしまったし…」
    「私は、どこへだってついて行くわよ。あなたと一緒にいると退屈しないもの。最初からずっと、そうだったもの」
    「それは、ありがたいね。でも、もうちょっとだけ、ここに留まってがんばってみようと思うよ」

    「飽きっぽいあなたにしては珍しいわね。こんなにも長く、同じ場所に住み続けるだなんて」
    「確かに。それは言えている。けど、それだけ大切なコトが、ここにはあるってわけさ。あるいは、それだけ成長したのかも知れない。同じ場所で長く努力を続けられるように、成長したのかも…」
     そう言って、大石悠真は窓の外を眺めた。そこには、いつもと変わらず平和に営みを続ける夢見市内の風景が広がっていた。

     ~おしまい~


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