八雲紫と秘封と月と
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八雲紫と秘封と月と

2020-11-27 05:15
    八雲紫。
    境界を操る程度の能力を持ち、長い金髪で、紫色を基調とした服を好む、幻想郷の賢者である妖怪。
    その外見や能力から、遥か未来?の大学生である秘封倶楽部のマエリベリー・ハーン……メリーとの関係性が疑われています。

    マエリベリー・ハーン。
    京都の大学に通う大学生で、境界の揺らぎを見る事の出来る眼を持ち、金髪で紫を基調とした服を好んで着ている事が多いです。
    その能力は徐々に進化し、境界に干渉する事も少しずつ可能となっています。

    二人は、「ハーン」と「八雲」というその姓も昔のギリシャ出身の日本民俗学者、ラフカディオ・ハーン/小泉八雲の帰化前後の姓と一致している為、尚更関係性を深く見られています。
    それら共通点から、「紫はメリーの成れの果て」「紫が後にメリーになった」「直接の親族」等、二人が同一人物或いはそうでなくとも直接関係しているという想像がされる事が多いです。

    しかし、その能力・外見・姓という「外側」は兎も角。
    「得意分野」、「性格」や能力の「使い方」……等を見ていくと、また別の見方も出来てきます。
    その「別の見方」というのは……「八雲紫の『中身』はマエリベリー・ハーンよりも、その相方である宇佐見蓮子との共通点が多いのではないか?」という事です。
    その観点について、順に考えていきましょう。

    ①得意分野
    八雲紫は、東方文花帖での彼女の式神・八雲藍からの言及や東方求聞史紀の本人のページ
    における記載等から、計算能力が非常に高く数字に強い事が伺えます。
    そして、東方緋想天・東方非想天則におけるスペルカードやスキルカードの名前には『物質と反物質の宇宙』『魔眼「ラプラスの魔」』『光弾「ドップラーエフェクト」』等、何故か物理学用語が混ざります。
    また、東方萃夢想の紫ストーリーにおいて紫が参加者から奪う酒を(わざと?)言い間違う際、アリスの時は「ワイン」に対して『ヴァンアレン』(←ヴァン・アレン帯。地球の磁場に捕らえられた、陽子(α線)、電子(β線)からなる放射線帯)、妖夢の時は「どぶろく」に対して『ドブロイ波』(←ド・ブロイ波。光子を含む運動する物質一般に付随する波動現象)と妙な間違い方をしますが、どちらも物理学用語です。

    つまり、八雲紫は数字に強く計算が得意で物理学に明るい。
    しかし、メリーの大学における専攻は相対性精神学。物理学とは程遠い学問です。
    一方、相方の蓮子の専攻は「超統一物理学」。「ひも」理論の研究をしているそうです。
    また本人曰くプランク並に頭が良いかも、との事でメリーも蓮子の聡明さは認める所です。

    ②性格や活動方針
    八雲紫は、作中で頻繁に「胡散臭い」という扱いをされ、実際に振舞いとしては他人を翻弄するような曖昧だったり難しかったりする言い回しを好みます。また、誰かの行動に従って動く事はまず無く、その聡明さを活かしてすべき事を考えた上で自分が主導で動く事が殆どです。
    一方、メリーは秘封倶楽部においても自主的な行動をする事は余り無く、基本的には蓮子が出した提案に乗って活動する事が殆どです。また、人を翻弄するような事は無く感性は基本的に常人寄りで、考え方こそ曖昧な捉え方を好みますが言い回しは素直でストレートなものです。
    胡散臭くこそありませんが、蓮子の方が難しい言い回しを好み(メリーも頭が良いので理解している事が多いですが)、また秘封倶楽部の活動でも自らが主導して活動を行う事が殆どです。

    ③能力の使い方
    八雲紫は、その「境界を操る程度の能力」を基本的に「概念や事象の境界を操作して、その曖昧な境界を動かし、その概念や事象の状態等を別の状態に変えて確定させる」というような使い方をします。水面に映った月の実像と虚像の境界を操り実際の月へと繋げたり、完全憑依におけるスレイブとマスターの境界を操って逆転させたり。実行はしていませんが人間と妖怪の境界が曖昧になっている隠岐奈様の二童子・里乃と舞の人妖の境界を操って確定させる事も可能であろう旨もグリモワールオブウサミで語られています。
    一方、メリーは当初は境界の揺らぎを見るだけだった目が進化して境界をある程度操れるようになっていますが、その使い方は「境界を確定させず曖昧なまま干渉する」という事が殆どです。夢の中で過去と現在を曖昧にして過去の幻想郷に飛ぶ、夢と現を曖昧にして夢の中の物を現実に持ち帰る、自己と他者の夢を曖昧にして蓮子を自己の夢に連れてくる、自己と他者の境界を曖昧にして蓮子とビジョンを共有する……等。
    八雲紫の能力の使い方は、寧ろ「夢は夢、現実は現実」と捉えた上でそれをどちらかに確定させようとしたり「これは夢だ」と割り切っていた為か夢の中で全く傷を負わなかったり、と曖昧な物事を確かなものへと論理的に確定させて扱う蓮子の考え方に近いとも言えます。

    このように、八雲紫の性格や精神的な部分は明らかにマエリベリー・ハーンではなく宇佐見蓮子を彷彿とさせる要素が多く存在しています。とはいっても、容姿や能力に姓は明らかにメリーを意識したものである事も事実。
    これは一体どういう事なのか。

    ここで、東方憑依華における「二つ名」の部分に注目してみましょう。
    憑依華の二つ名は、キャラ毎にそれぞれ一色で書かれています。






    では紫はどうかというと。
    実は一人だけこの「二つ名」が少し異なっています。


    「神出鬼没で裏表のある妖怪」の二つ名の、前半が黒、後半が紫色で書かれているのです。
    それも「裏」と「表」の部分で色が変わっており、「裏」は黒、「表」は紫色です。

    ……この配色。
    ここまで語っていた話で察しはつくかもしれませんが、それぞれ黒は蓮子が、紫色はメリーが良く好んで着ている服の色です。半ばイメージカラーと言ってもいい。
    それが「表」は紫色、「裏」は黒。

    ……八雲紫とは、「表」、つまり肉体はマエリベリー・ハーンで「裏」、つまり精神は宇佐見蓮子である存在なのではないでしょうか。
    それなら、明らかにメリーに通じる外見と能力及び性を持ちながら精神的な部分は蓮子に繋がっている部分が多いのも説明が付きます。


    『八雲』紫という名が小泉八雲と通じる事から、同じく小泉八雲の帰化前の名であるラフカディオ・ハーンと同じ姓を持つマエリベリー・『ハーン』と繋げられ「メリーの前身or末路」とされる事の多い紫。特に、成熟・達観していると思しき姿及び思考から末路、「後の姿」とされる事が多いです。時間軸としては「未来」であると思われる秘封世界より「過去」の存在である紫がそう扱われるのは、秘封作品においてメリーが能力で過去に渡る描写があったからでしょう。

    ……しかし、紫がメリーの「後」の姿だとしたらそもそも名前を変える必要はあるのでしょうか?
    秘封世界より過去と思われる「現在」、その時代においてマエリベリー・ハーンの名を知る者は当然居ません。
    「後世≒自分達の時代に、裏で妖怪としてとはいえマエリベリー・ハーンの名前が残っては困る」という意図で改名したにしても明らかに日本人ではない外見で日本人名を名乗る必要もない。
    ……ですが、「中身」が変わっていたのならそれも理解しやすくなります。
    つまり、「中身が日本人になった為日本名を名乗った」という事です。
    中身が蓮子になっていたとして、相方の名や彼女の出身国の名で呼ばれるよりも日本名の方が馴染みがあり反応もしやすいでしょう。
    蓮子なら、ラフカディオ・ハーン→小泉八雲の話を知っていてギリシャ人から日本人になった彼に準え、中身がギリシャ人?→日本人になった今の体の名に「八雲」と付ける事も有り得そうな話です。


    尚、八雲紫の東方妖々夢における戦闘テーマ曲……ネクロファンタジアですが、これが大空魔術に収録された際、ブックレットで「ネクロファンタジア」という言葉を発したのも蓮子です。
    不老不死の薬が手に入ったら飲むのかとメリーに尋ねられ、「勿論飲む」と答えた上で不老不死が避けられる理由やそこからの不老不死の薬の実在性などを語った上で

    「不老不死は、死が無くなるんじゃなくて、生と死の境界が無くなって生きても死んでも居ない状態になるだけよ。
            ネ ク ロ フ ァ ン タ ジ ア
     まさに顕界でも冥界でもある世界の実現だわ」

    と発言します。……つまり、「ネクロファンタジア」という言葉に最も近づいたのは蓮子なのです。

    八雲紫の精神が宇佐見蓮子であるなら、数字に強く物理学に明るい事、性格が主導的で難しい言い回しを好む事、能力の使い方が物事の曖昧化でなく曖昧状態からの確定がメインである事、等も説明が付きます。


    【それでは「マエリベリーの精神」は何処へ?】
    ……このように八雲紫が「マエリベリー・ハーンの体に蓮子蓮子の精神が入った存在」だと仮定して。
    それが精神の入れ替わりによるものだとしたら、「宇佐見蓮子の体でマエリベリー・ハーンの精神」という存在も何処かに居る事になります。
    しかし現状それを匂わす存在は表向き居ない状態ですが……
    八雲紫がメリーと繋がる存在と想像された最も大きい理由の一つである「能力の類似性」から、蓮子の能力と類似性を持つ存在を辿ってその存在を追ってみましょう。

    蓮子の能力は「星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる」というものです。
    これだけだと共通する要素のあるキャラは殆ど居なさそうに見えますが、相方であるメリーに起こった「能力の進化」、境界の歪みを見えるだけだった目から干渉出来るようになったように、蓮子の能力も進化の可能性が無いとは言い切れません。
    そこで蓮子の能力が、「見るだけでなく干渉が可能になる」という相方と同系列の進化をしたとしたら。「時間と場所に干渉する」能力となるでしょう。
    「場所」は「空間」とも言い換えられます。
    時間と空間に干渉し操る。

    ……十六夜咲夜の「時間を操る程度の能力」は、空間と時間が切っても切れないものであるという事から空間にも干渉出来るもので、それにより時空間を操作する事が可能なものです。
    しかし、咲夜本人は10~20年程度人間をやっているだけの存在で、能力や外見に蓮子要素を、性格にメリー要素を直接感じさせる部分はありません。

    ただ、現在謎に包まれている彼女の過去にまで想像を伸ばすと話が変わってきます。
    永夜抄で「満月を見ると危ない事になる」事がレミリアにより示された事、永琳が咲夜を見ただけで「永琳にしか解らない理由で大変驚いた」のみならず全ルートで唯一自機達が永夜の術を使っていた事に即座に気付いた……つまり恐らく見ただけで咲夜の能力がどういうものかを把握していた事、何より紅魔郷でのテーマ曲が「月時計 ~ルナ・ダイアル」である事、等から月の民にその出生が関わっている可能性があります。
    「月の民」及び「時間」という要素を見ていくと、一人辿り着く人物が居るのです。

    月の王・月夜見。
    当時地上に共に居た永琳ら、後の月の民となる親族や仲間と共に穢れ無き月への移住を提案し現在月に住む、月の都のトップ。
    彼女の日本神話における元ネタ・月読命は、月が月齢という要素で農耕等に関わる事から、神として「時と暦を司る」とされる説が、話によっては存在しています。
    また、家庭教師として彼女の右腕でもある月の頭脳・八意永琳という大物を付けられる「月の姫」、蓬莱山輝夜は立場としては月夜見のかなり近い親族(娘など?)である可能性が高いのでしょうが、その輝夜も能力は「永遠と須臾を操る程度の能力」。要は歴史的側面からの時間操作とも言える能力で、容易に身に付く物ではない事からこれが血筋による発露だとしたら、月夜見の血筋には時を操る能力が継がれている可能性があります。

    咲夜も、その能力から月夜見の何らかの要素を持たされ作られた人造人間などのような存在で、永琳らがその出生に関わっていて、それ故に時間を操るなどという人間としては規格外の能力を持ち、また永琳が見ただけで解るくらい彼女の事をよく知っていたのかもしれません。
    月の民が地上に居たのは太古の昔ですが、咲夜の能力を考えたら太古に生まれて(作られて?)も現在まで自分の時を止めたりして生き残っていても不思議ではないかもしれないですしね。


    つまり、率直に言ってしまえば「月夜見はその能力が宇佐見蓮子に通じる所がある」存在である可能性が高いのです。
    ……能力だけで言うなら「つまり月夜見とは蓮子である」という説になってしまうのですが、しかし月の都の性質や制度を考えていくと蓮子とは異なるものが見えてきます。

    月の都では、蓬莱の薬は禁薬です。
    東方儚月抄の小説版一話、永琳の話に於いて彼女が回想したところによると、蓬莱の薬は都では飲む事は勿論作る事も禁じられており、実際に禁を破って飲んだ輝夜は処刑の後、死なないと分かると地上に一時流刑という重い罰が課されています。

    しかし、前述のように蓮子は「不老不死の薬を飲むか否か」というメリーの問いに「勿論、飲むわよ。」と断言しています。個人的な信条と民族内での決まりとなると異なる部分もあるかもしれませんが、少なくとも蓮子個人の方針と月の民の方針は真逆です。

    また、蓮子は前述のように物事をハッキリ割り切って考える派の考え方で、精神的な豊かさを求めてはいますが科学的、論理的な考え方でそれに当たる方針に見えます。
    一方、月の都は確かに科学的にも非常に発展していますが、その方針としては精神的な豊かさを重視し、生命力から生まれる「穢れ」を忌避して「寿命を減らさない」という、生と死自体から遠ざかって曖昧になる方針で生きています。
    このような考え方の方針も、蓮子と月の民は逆に見えるものです。

    一方、メリーは不老不死の薬への方針は不明ですが大学における専攻は「相対性精神学」。
    その詳細は不明ですが、自己や他者という「絶対的」な精神性とは異なる、主観・客観を排除した「相対的」な精神についての学問、とすれば月の民の「豊かではあるが精神的な発展を求め生きても死んでも居ない状態を目指す」というような方針にも通じる所があります。

    つまり、月夜見こそが「体が宇佐見蓮子、精神がマエリベリー・ハーン」という存在ではないか、という話です。

    その前提で考えていくと、いくつかメリーに「月夜見に繋がる要素」がある事が判ってきます。

    まず、伊弉諾物質においてメリーが過去のビジョンを見てそこから持ち帰ったイザナギオブジェクト、天逆鉾。その一部。
    その天逆鉾を用いて日本を作り出したのが、月読命らを生んだ伊邪那岐命とその妻である伊邪那美命です。
    そして、その伊邪那岐伊邪那美の時代に二人が干渉した伊弉諾物質の次の音楽CD、燕石博物誌において二人で作る同人誌の話をしている際に夢で異世界に渡るメリーについて考える蓮子が

    「この世は薄い膜のようなものでそれがいくつも存在していて、膜は川の流れにさらされた染め物みたいなもので、メリーの行動は染め物に書かれた模様が河を渡り別の染め物に移るようなものかもしれないが、そうして移った模様は(別の染め物にとっては)模様ではなく汚れとして認識されるだろう」

    と『心の中で』考えている時に、それに明らかに反応するタイミングで「上の空」なメリーの口から

    ――異物が混入したら、排除しないと

    という言葉が漏れました。
    蓮子の思考を前提とするとこの「異物」とはメリー自身の事を示しているので、メリー本人が自身の意思で発した言葉とは思いにくいものです。
    そして、その「別の膜に移った汚れ、異物」であったのが前作の伊弉諾物質でのメリーの動きで、「移られた膜」側の存在が伊邪那美伊弉諾であった訳で。

    ……ここまでだけなら伊邪那岐(及び伊邪那美)だけとの繋がりですが。
    更にその前、鳥船遺跡の裏表紙には表表紙に描かれた蓮子とメリーの非常に薄い姿がこっそり描かれているのですが、そこに映るメリーには「左目が描かれていない」事が良く見ると分かります。
    描かれていない左目に注目してしまいますが、逆に「映っているのは右目だけ」という事に注目して考えると。

    ……伊邪那岐は死んだ伊邪那美を黄泉の国から連れ帰ろうとして「決して振り返るな」と言われたのに振り返ってしまい、そこで醜くなっていた彼女の姿を見てしまいそれを恐れて逃げ出し、神を生みつつ逃げて黄泉の国から地上に逃げ帰りますが、地上で黄泉の穢れを落とした際にその身体から天照大御神、月読命、須佐之男命……所謂三貴神を生みます。
    その三貴神が生まれた場所が、天照は左目から、須佐之男は鼻から。
    そして月読が「右目」から、なのです。

    【結:月夜見と紫の秘封倶楽部】
    このように、精神蓮子・体メリーの存在が紫、精神メリー・体蓮子の存在が月夜見だとしたら月の都を攻めるように見せかけて侵入しようとしたり八意永琳を助けたりして繋がりを作ろうとしている紫の行動も、色々別の見方も出来るかもしれません。

    まだ情報の少ない月夜見と、情報こそ多いものの謎の未だ多い紫。
    二人について考える際の参考になれば、是幸い。
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