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  • 第一次偶像戦争 【832】 [三条ともみ]

    2021-06-22 22:444時間前


    体が跳ねる
    夢の世界を泳いでいた頭が、私の意志に関係無く、いきなりフル回転をし始め
    そのせいか、輪っか状の鈍い痛みが頭の中を走る
    土地との繋がりに意識を向け、流した魔力をたどっていく
    意識の焦点がそちらに絞られていく中、私の目は薄暗い部屋と
    膝の下まで捲れてしまった薄い布団を、瞬きもせず、ずっと映していた
    …………
    ……この魔力……
    ……間違い無い。舞さんが来た
    確信した瞬間、胸の奥の心臓がグンと潰れる
    心臓から溢れた血が、血管に圧をかけたのか、胸の奥にも痛みが走り、広がっていく
    どうする?どうすれば?
    頭は回っている筈なのに、具体的な何かが出てこない
    思考と感情がかみ合ってないのか、恐れと焦りが
    答えを出そうとしている所を、下から上から跳ね飛ばし、グチャグチャにしていっている
    不味いマズいマズいマズイ
    答えが出せない原因が分かっても、内面世界の混乱は収まらない
    近づいてくる舞さんが、平静の方へ向かおうとする私を許さない
    一度、一旦
    なんとか、どうにか
    …………
    目をつむる
    寝ていた布団の上で姿勢変え、瞑想をする時と同じ形を取る

    息を吐いて、吸って、また吐く
    辿っていた感覚を全て引っ込め、自分の内に落としていく
    思考も感情も、全部を自分の中心へと納め
    そのまま寝る前にライトを消すように、何もかもを止める
    …………
    ……よし
    無理矢理だけれども、落ち着くことは出来た
    ……ちゃんと今を受け止められているかは分からないけど、考える事は出来そうね
    ……どうするか……迎撃するか、逃げるか……。
    ……何を選ぶにせよ、皆に状況を知らせないといけない。
    それなら、先に知らせて、全員で考える?
    ……ダメね……このまま皆を起こして、状況の説明をしたら
    少なからず混乱するのは確実。
    そこから集まって、一から対策を考えるとなると
    最初に全員が落ち着く為の時間が必要になるだろうし
    たとえ全員が冷静さを取り戻したとしても、言葉を交わす内に出てくるであろう焦りが
    伝播し、増幅され、感情だけが先行して、話が進まなくなる恐れがある。
    皆で考えるにせよ、一からはダメ。
    少なくとも私だけで、方向性と、具体案を一つは用意しておかないと。
    残り時間と、その後集まって相談やら打ち合わせをする事を考えると
    そこら辺が一番現実的なライン。
    迎撃
    逃亡
    逃げるにしても、どう逃げるか。どこへ逃げるか。
    あずささんを巻き込む?
    ……そこも考えないといけない。生き残る事を考えるなら。
    …………
    ……生き残る……
    私はゆっくりと隣に視線を動かす。
    障子越しの星明りがぼんやりと照らす部屋の中、ニナちゃんはぐっすりと寝ていて。
    私がやるべき事。私のやりたい事。
    ……中々、両立は難しそうね。
    ……ん、動こう。
    私は布団からゆっくりと立ち上がり、部屋の灯りを灯す。
    連動して、家全体の灯りが付き、静かな夜が、障子を通り越して庭へと追い出された。
    屋敷全体に感知妨害はかけてるから、外へ光が漏れる事は無いけれども、相手は日高舞。
    直感で何かを感じ取って加速してくるかもしれない。迅速に動きましょう。
    緩く展開する魔力。着ていた薄手の寝巻が輝き始める。
     「……あう……。」
    ニナちゃんの声。他の部屋にも動きが生れ始めた様ね。
    呼び出した戦闘用の着物が、寝起きの肌に触れる。途端、抑えていた恐れや焦りがぶり返す。
    呼吸。目を閉じ、手を強く握って、不要な感情をそのまま潰して。
     「ともみおねーさん……
      ……なにかあった……んで、ごぜー……ますか?」
    起き上がったニナちゃんは、左右に頭を少し振りながらそう言って。
     「えぇ……。皆を集めないといけない事が起こってるわ。」
    左右に揺れていた頭が固まる。ニナちゃんの目が見開いて、私を覗き込んで。
     「失礼、何か問題が?」
     「入っても構いませんでしょうか?」
    左右の障子越しからの声。
     「緊急事態よ。舞さんが来てる。
      皆、準備して客間に集まって。」
    魔力が動く。そこから僅かにだけれども、同様の色が感じ取れた。
     「舞さん……。」
    ニナちゃんは固まったままそう呟いて。
     「何の用か知らないけど、出来る事なら、明るい時に来てほしかったわね。」
    和ませようと出た適当な言葉。
    でも、そんな全く考えていなかった言葉に、ひっかかるものがあった。
    どうして舞さんは、こんな夜遅くに来たんだろう?
    舞さんの性格からして、夜襲っていうのは少しズレる様に思える。
    感知妨害的なものもかかってないし、速度だって、確かに速いけれども……。
    …………
     「確かにそうでごぜーますね。」
    いつもの声に戻ったニナちゃんは、布団から出ると私と同じように着替えて。
     「ニナちゃん、寝ぐせついてる。」
    いつもなら朝のお風呂なりシャワーなりをすました後で着替えるから、妙に新鮮で。
     「ともみおねーさんも、ちょっと跳ねておりますよ。」
     「えっ?」
    慌てて頭に手を当てる。変なタイミングで手が髪に触れる。
    領域で確かめても、確かに髪は跳ねていた。
     「なおさないといけないわね……。」
    出来ればシャワーを浴びて、髪以外も色々と整えておきたいけど、そんな時間は……。
     「ニナにお任せくだせー。」
    ニナちゃんの手の中が輝く。大きめのヘアブラシとコームが、小さい手の両方に握られる。
     「それじゃあ、お願いするわね。」
     「はいっ!」
    元気のいいニナちゃんの声。
    …………
    ……何とかしないといけないわね。

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  • 第一次偶像戦争 【831】 [日高舞]

    2021-06-20 21:21

    磨かれた肌に、しなやかに輝く髪。
    下着含め、服にも不快感は無いし、完全に元通り。このまま涼ちゃんを
    また抱きにいけるぐらい。
    …………
    ……行ってもいいけど、流石に今度は呆れられる?
    ……いや、全く同じ反応でしょうね。基本は。
    そこからどう引き出すか、引き出せるかが、腕の見せどころ。
    ……でも、行くとなると、終わった後、また麗華ちゃんにも顔出したくなるだろうしな~。
    ……こっちも二度目はどう反応するのかしら?
    また殴られるのは確定として、一度目と同じ様に
    涼ちゃんみたいな、無色透明の虚無みたいな感情でぶん殴られるのか
    今度こそ、麗華ちゃんの地が出てくるか。
    だとすると、殴られる場所も、もうちょい下になったり?
    涼ちゃんの愛の雫を、今も私が抱えてるのが気にくわない的な。
    ……響ちゃんならあるかもしれないけど、麗華ちゃんは無いわね。
    ただ、次は一発殴られるじゃすまされないかな。
    …………
    ……今日、涼ちゃんを抱いて麗華ちゃんの所へ来たのが、私じゃなくて響ちゃんなら……
    ……その時も同じ?それとも今度こそ麗華ちゃんの私怨が入る?
    ん~……公平だとは思うけど、響ちゃんの場合絶対挑発してくるでしょうし……。
    ……他に私との違いはなんだろ?涼ちゃんをこっちから襲ってるっていう意識の差?
    響ちゃん、自分が好きな事は相手も好きな事みたいな考えがありそうなのよね。
    セックスの場合、射精っていう分かりやすい現象もあるし。
    …………
    ……そこら辺のなんやかんやに、正直興味はある。
    ただ、これ以上は私も部外者みたいな立場じゃいられないわね。
    涼ちゃん襲っておいて、部外者っつーのもアレだけど。
    ただ、私の場合、涼ちゃんとの未来を考えてる訳じゃないからなぁ……。今のところは。
    ……麗華ちゃんに一番引っかかるのは、そこかな?
    まぁ、この戦争でこれ以上、私の方から涼ちゃんをつつくのは無しね。
    麗華ちゃんは、サチコちゃんとも一緒に過ごしてた訳だし
    この戦争の前後で色々と変わってるだろうから
    私が動かなくても、面白い事は起こるでしょ。
    濃いめのセックスも出来て、私の性的な欲求も満たされたしね。よしよし。
    しっかし、切っ掛けはアレだったけど
    他所の家にお邪魔するっていうのも、中々面白かったわね。
    他の子の住んでる所を遠くから見る事はあったけど
    実際に中に入ったり、施設を使ったりすると、新たな発見があったりして、楽しい。
    汚れた服を洗濯して、お風呂に入っただけなのに
    興味と体験の双方で、良い物を貰うことが出来た。
    私の所を比べてみたりして、改めて感じたのは
    共同生活をするとはいえ、個人の趣味嗜好は結構出ちゃうという所。
    すごく仲が良い友達でも、一から作った家での生活を、知ったり、体験できれば
    今まで知らなかった一面が沢山見られそうだし
    そういった面での興味もかなり刺激されたわね。
    絵画や立体、小説なんかの創作物と違って
    生活っていう地に足の付いた共通部分が入るから、とっつきやすいっていうのもいい。
    出来る事なら、もうちょっと麗華ちゃんのお城で、ゆっくりしたかったわ。
    麗華ちゃんの所は、生活の場としての城の他に城下もあるし
    他の誰かと比べなくても、麗華ちゃんの趣味嗜好の濃さの違いを楽しめそう。
    勿体なかったな~。夕食ぐらいまで粘れば良かったかもしれない。
    ……やっぱ何やるにしても、残り時間の少なさがネックよね~。
    もうちょい早く動けばよかった。そこはマジで後悔してる。
    ……ただ、もう仕方がないとして、残り時間をどう過ごすか
    残りのイベントをどう楽しむか……。
    …………
    ……行きましょうか。
    このまま自分のお城に帰って、演劇の練習の続きもいいけど、テンション的にはこっちかな。
    【Flight】に魔力を流し、飛ぶ方向も少し変える。
    感知妨害は……今更かけても不審がられるし、いいかな。
    伊織ちゃんの事だから、これぐらいは予想パターンのうちに入ってるでしょうしね。
    よし、それじゃさっさと行きましょ。
    位置と時間的に、深夜にいきなりって事になるけど、最後なんだし許して欲しいわね。
    ……そういや、絵理ちゃんもう落ちちゃってるけど、住んでた所どうなってるのかしら?
    時間があったら寄って行こうかな。お酒とか残ってたら嬉しいし。
    …………
    ……主を失った城か……
    自分の中に沸いてくる、また別の興味。
    それと連動して上がっていくテンション。
    これを維持したまま麗華ちゃんの戦闘まで持って行けるかしら?
    出来なかったなら出来なかったで、それもまた面白そうだけど。
    絶対何かあったって事だしね。

  • 第一次偶像戦争 【830】 [東豪寺麗華]

    2021-06-18 22:44

    ときおり吹く風の音と、お湯が湯船へと流れ落ちるせせらぎに似た音。
    あとは、私がお湯を動かして出来る音。
    他に音は無い。他に誰も居ない。
    見上げた空にある太陽は、傾いてきていて
    これからゆっくりと、オレンジを纏っていくんだろう。
    ……静か。
    もう時間はないと、分かっているのに。
    こんな事をしている場合じゃないと、理解しているのに。
    それでも、私はまたお風呂に入ることを選んで、湯船に浸かったまま、動かないでいる。
    ……別に、さっきろくに入れなかったからって訳じゃないのよね。
    会話はあったけれども、それを含めても、授業中の教室みたいな静けさだった。
    ゆっくりと落ち着いて入ることは出来ていた。
    ……だから、この二度目のお風呂は、ひょっとして
    伊織と日高舞の二人と居た時間を、空間を、関わりを洗い流したいから?
    ……それとも違うわね。ていうか、二人に失礼だし。
    ……何というか、独りになりたかった。
    あの二人と居た場所で、あの二人の残り香が残るこの場所で、独りになってみたかった。
    改めて、色々と考えてみたかった。
    もう残り少ないからこそ出来るだけ整理しておくべきだと思った。
    ……できない所があるとしても。
    私は目を閉じて、浸かっているお湯に身をゆだねながら、今日の出来事を思い出す。
    練習中に、突然、舞さんが来て。
    私は舞さんを殴ったのに負けて。
    そして、伊織を呼んでお風呂に入って、恐らく最後になる取り決めをして……。
    ため息に似た息が口から漏れる。顔に当たっていた湯気の感触が少し変わる。
    疲れた……というよりは、いよいよかという諦観でしょうね。
    いつ来られてもいい様にしてるでしょとか伊織に言っておいて、私もこの様。
    ……むしろ唐突に戦闘が始まって、理不尽に終わった方が楽だったかもしれない。
    明確に期限が決まって、最期の時間に近いものが出来て……
    ……いえ、それよりも舞さんに負けた事の方がダメージが大きい?
    …………
    ……分かんないわね。
    閉じていた目を開けて、空を見上げる。さっきと大して変わってはいなかった。
    ……無いなら、無いなりに時間は残ってる。まだ、きっと。
    私は、一通り思い出した今日の事を含め
    今から舞さんとの戦いが始まるまでに、処理すべき事の優先度を頭の中でつける。
    今日明日ぐらいしかない中で、何をすべきか。
    強くなる事以外にも、やらないといけない事は多い。
    ……やらないといけない事。
    ……分かってる。……でも、今の私の中に一番大きく存在するのは
    伊織の言った「醜い未来よりも、美しい過去」という言葉。
    ……そうよね。間違って無い。
    だから、怖かった。今の涼くんを否定してしまいそうで。
    ……今まで何度も何度も迷ったこと。
    答えを出せた様で、またすぐ疑って、落ち込んで……。
    ……でも、今度は、今度こそは、確かなものが得られた気がする。
    今日得られたものは、私の気持ちとはまた違う所。涼君への理解みたいなもの。
    私はちゃんと、今の涼君も見ていた。今の涼君の気持ちも、理解出来ている。
    根拠は無いのに、確かにそう思えた。実感があった。
    想像と妄想ばかりが膨らんだ盲目的な恋でも
    過去の恋愛感情に引き摺られているだけでもない。
    今の涼君を、今の私は愛している。今もずっと、愛し続けてる。
    それが分かったのが嬉しい。
    舞さんに負けはしたけれども。
    …………
    ……結局、全部自分の中だけで起こって、自分の中だけで納得した事だから
    想像と妄想で出来た恋愛と、実際は何の変わりないかもしれない。
    ……それでもきっと、進む事は出来てる。
    前よりも自分を信じていいと思える。思えてる。
    …………
    ……信じて……
    ……お湯の中に沈んだ手を握る。
    私が掴んだもの。私が得たもの。
    それを信じる事。それを確かめる事。
    ……まだ足りない?信じる気持ちが、それか勇気が。
    だから、舞さんにも、伊織にも、涼君の場所を聞かなかった?
    ……今更、会いにいくのもズレてる。舞さんの直後だし……。
    ……それにもし、何となく予想している場所と違っていたら……。
    ……こっちは、どうでもいい理由と、子供みたいな恐れのせいね。
    …………
    ……大丈夫。私はちゃんと涼君に会える。
    だから、次に会う時に、恥ずかしくない様にしないと。
    色んなお話が出来る様に、色んな事を体験しないと。
    次は一緒に居られる様に、居てもらえる様に……
    ……私も頑張らないと。