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第一次偶像戦争 【75】 [伊集院北斗]
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第一次偶像戦争 【75】 [伊集院北斗]

2017-03-22 21:12

    部屋の明かりに照らされた窓の向こうの緑が動く。太い蔓が左右にズレる。
    緑の向こうの暗闇は爆発音に合わせチカチカと瞬いて。
    ……気付かれてはいないのか?
    小鳥さんも俺も【黒】使いでは無いから
    てっきり領域を最大に展開してこちらの動きを察知しているかと思っていた。
    【Opposition】のスキャンであちらの動きや場所が俺に筒抜けなのは
    アメヒコ君が伝えているだろうし
    なら、今、道を開こうと攻撃しているのもしているのも半分陽動で
    俺達に動きがあった瞬間、潰しに来るものだと思っていた。
    向こうからすれば舞さんが帰ってくれば勝ちな訳で
    こちらの相手をせず外へ出る方法を考えるだけでも良い。
    それでも真っ直ぐ向かって来てるんだから、別の意味があるのだと……。
    ……今考えたら地面を掘って外へ出られたらマズかったな。
    山側は元々の樹木があるし、俺の植物の根も順次広がっているから……
    ……いや、そこは関係ない。
    やろうと思えば今展開している魔力だけでも
    樹木の根の有無を問わず全員単独で地面に穴を開けて移動するぐらいは出来る筈。
    それをやらなかったのは何故だろう?
    注意を引くのを逆に恐れた……というのは弱いな。
    既に進入されていて、更に何をやっているかもよく分かってないのなら
    外へ出そうとするために逆に注意を引こうとするぐらいが自然だ。
    じゃあどうして……
     「あっ!北斗さん!地面に降りるなら気を付けて下さいね!」
     「……と言いますと?」
    小鳥さんの顔に満面の笑みが浮かぶ。
     「ふふふ……実は、地面から高さ一メートルぐらいまで
      トラップを敷いてるんです!触れたらダメージ受けちゃいますよ!」
    なるほど、そういう事だったか。
    小鳥さんが対応に向かってくれていたし、俺は【Opposition】からの情報があったから
    詳細な感知を働かせて居なかったが、かなり迂闊な行為だったな。
    働かせないのなら【Opposition】で互いの感知を縛った方がよく
    俺も使える様に残すのなら、もっと警戒すべきだった。
    一番ダメな中途半端な対応になってしまったな。しっかり反省しなければ。
     「全く気がつきませんでした。
      こうやって上手く進んだのも
      小鳥さんが色々と動いてくれていたおかげですね。
      ありがとうございます。」
    感知を全開にしてみても手前にあるショックスパイクの魔力が目立ち、分かりにくい。
    というか、全力で感知を働かせても僅かに漂う程度しか『視』えないのならば
    戦闘時の魔力の残滓と見てもおかしくはない。
    他への動きを許さない為に今は均一にトラップを張っている様だけれども
    全体に雷を落として魔力に強弱のムラを作れば
    本当にスペルが混ざった罠なのか、ただの魔力の残滓なのか分からなくなりそうだ。
     「いえいえそんな……。
      北斗さんも何かやってましたし、私も試しちゃいました。
      ……でもまだ改良の余地はありますね。
      誰も引っかかってないですし、多分、気付かれてます。」
    確かにダメージを受けているような動きは無かった。
     「アメヒコ君辺りでしょうね……。
      本体もさることながら、式神からの情報もありますし……。」
    見えてはいけない。触れられてもいけない。
    この二つを『見えても気がつかない』と『触れられない』に変えたとしても
    そのハードルはやはり高い。
     「っと!話してる場合じゃないですね!
      ショックスパイクを解除します!」
    離れを覆っていた小鳥さんの強い魔力が解け、漂う。
     「飛びながら上に抜け穴を作ります。
      差し込む光で視界が悪くなるかもしれませんし
      少し領域を張っていきましょう。」
    小鳥さんと俺は互い頷き、窓から外へ出る。
    連続して起きていた爆発音と光は
    ショックスパイクを解除してすぐに途絶えていたが
    俺達が窓から飛び出た後、また轟音が響きだした。
    外は生木の焼けた鼻に引っかかる臭いが充満している。
    ……ここを離れたら一度服やカバンも変えた方が良いな。
    お酒を飲む時に染みついた臭いが邪魔になる恐れがある。
     「次は北ですよね!」
    小鳥さんは楽しそうに。
     「はい!」
    俺も楽しい。
    とんでもない相手に
    とんでもない喧嘩の売り方をした訳だけど
    事は上手く進んだし何より隣に小鳥さんが居てくれた。
    俺のバカに付き合ってくれた。
    それだけで楽しかった。
    感覚が小中学生に戻ってるような気もするがそれもまた良いだろう。
    上。
    光。
    白。
    その向こうはきっと青。
    空の水色。
    小鳥さんと俺はその水色目がけ、暗闇から飛び出した。


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