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第一次偶像戦争 【134】 [麗華 響]
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第一次偶像戦争 【134】 [麗華 響]

2017-07-26 22:22

     【東豪寺麗華】

     「あそこよ。」
    私は大きく切り立った崖とその下に広がる黄土の大地に視線を投げて。
     「……ふんッ、まぁまぁだな。」
    コイツの感想なんてどうでもいいけど、とりあえず連れて来られたのはよかったわ。
    それと……
    キュンと魔力感知に視覚を合わせる。
    ……崖の上の【Masticore】の数が減って周囲に分散してる。
    伊織もそこら辺理解してるって事ね。このバカと違って話が早くて助かる。
     「コハルはどうするの?
      崖の上にうちの子達が居るからコハルもそっちに行かせれば?」
    少し距離を置いて、私達の後ろについてきているコハルとヒョウ達。
     「そうやってコハルを人質に取る気だな!そうはいかないぞ!」
    無駄に大きな声。
     「なら別にいいわ。」
    どうせ最初はすぐに終わるし、コハルも自由時間が出来るでしょ。
    浅いため息を吐き出しつつ、降りようと崖の方へ目をやると
    小さな影がこちらへ向かってくるのが見えた。
    緊張。
    張り詰めてはいないものの、呼吸を意識させる様な。
    そんな対応が面倒な空気が隣から発せられていた。
     「お帰り、麗華。それと久しぶりね、響。」
    目。視線。瞳の中で頷き合って。
     「ただいま。」
     「おう!伊織とは一ヶ月ぶりだな!」
    一ヶ月ぶりって……
    準備期間中、伊織に会いにいってもないし、伊織も行ってないの?
    この戦争で伊織は相当重要なポジションだと思うけど……。
     「麗華から聞いたけど本当に自分達の戦いの邪魔しないんだな!?
      本当に!本当なんだな!?」
    無駄な念押しと大声。
     「アンタ達二人ともそういう勝ちで納得しないでしょ。
      私は漁夫の利をしてくる輩の牽制する見返りに
      アンタ達の情報を得に来ただけよ。
      今の美味しい立場を放棄して初日に目の敵にされる対象を増やす気は無いわ。」
    「初日に」か。
    嘘に少しのホントウを混ぜてるのが上手いわね。
    状況によっちゃ二人で響を叩くのも有り得たのに。
     「……その言葉、信じておくぞ。」
    響は伊織にそう言うと、私を睨み、下に見える黄土の大地へと降りていった。
     「素直じゃないわね。」
    呆れてる様で、懐かしさを感じている様にも見える伊織。
     「甘えさえてくれなきゃ嫌だってタイプだからあんなもんでしょ。」
    そういう面を涼君に求めるのにも腹が立つ。
     「……で、見つかった?」
    目。瞳。真剣な。
     「……上手く隠れてるみたいで無理だったわ。
      対応ありがと。」
     「麗華も気を付けておきなさいよ。」
     「分かってる。あのバカよりよっぽどの脅威だわ。」
    響との戦闘だけじゃなく、響の目の前でも……
    ……というか、今、私の魔力の性質を見せていい相手は伊織だけね。
    そもそも伊織にもまだ隠してる部分があるし。
    涼君は……
    ……できれば最後まで内緒でいたいかな。




     【我那覇響】

    体の重みが魔力から脚へと移っていく。
    土の匂い。乾いた風。
    靴の先で地面を引っ掻くと
    ザッと細かい土が払われ、少し色の濃い岩のような地面が見えた。
    足下からずっと先の崖まで視線を上げてみる。
    地面からの照り返しが眩しい。
    気温も上がってきて、逃げ水とかも出そうなぐらいだな。
    …………
    漂うマナ。
    所々ある戦ってた様な痕跡。
    魔力は……綺麗に回収されてるから誰がやったかは分からないな。
    でもマナの量や不均等さから考えて、そんなに前じゃない。
    ……自分が寝てる間?
    ……でも、麗華は自分と戦う事は分かってた訳だし他の子がやったって事?
    なら途中の変な光もここから?
    ……う~、わからないぞ……
    ………………
    …………
    ……いや、待て!わかったぞ!
    あれか!言い訳のためか!
    自分に負けるのが怖くて
    わざと直前にハードな練習みたいなのを入れてきたんだな!
    自分に負けるのを認めたくないからってせこい手を!
    自分を眠らせたのは急にこういうせこい手を閃いたからだな!
    一ヶ月もあったのに負ける覚悟も出来てないなんてホント情けない奴だぞ!
    空。
    影。
     「ヒョウ達はずっと飛びっぱなし?」
    麗華は少し離れた場所に降りて。
     「すぐ帰ることになるからな。下手に休むと逆に疲れる。」
    それに地面に降りたら何されるか分かったもんじゃないぞ。
     「そう。で、アンタはどうなの?準備は出来てる訳?」
     「自分はいつでもいいぞ。」
    自分の視線の先にある瞳。嫌いな色。
     「わかった。開始のタイミングはそっちでどうぞ。
      得物を展開して魔力も最初から全開で行った方がいいわよ。」
    麗華はそう言うと自分の返事を聞く前に背中を向けて飛んでいってしまう。
     「何だアイツ!」
    腹立つ!
    何が「開始のタイミングはそっちでどうぞ」だ!
    なら自分に背中向けてる今殴りかかってもいいのか!
    そっか、お前はそうやって自分を攻撃して来たんだったな!
    自分は卑怯者じゃないからそんなことはしないぞ!
    怒りと苛立ちが自分の中で混ざり燃える。
    そんな炎を内に抱えながらゆっくりと遠くな背中を睨み付けていると
    100メートルより少し足りないぐらいの距離で麗華は地面に降りた。
    そのまま振り返って自分の方を向く。
    さっきと同じ顔。面倒くさそうな表情。
    それを見て内に抱えた炎がまた強くなる。
    吐き出す息。
    解放する魔力。
    一度目は不意を突かれて二度目は油断に不用心が重なってた。
    だから次は無い。もう次は無い。
    麗華、もうお前は自分には勝てないぞ。
     「5秒後に殴りかかるぞ!」
    だから麗華!お前はその表情のまま後5秒でこの戦争から退場だ!


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