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第一次偶像戦争 【135】 [東豪寺麗華]
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第一次偶像戦争 【135】 [東豪寺麗華]

2017-07-28 22:44

    魔力。
    領域。
    【赤】と【緑】の。
    でも、それだけ。
    響の両手には何もなかった。
    ため息と共に両肩に疲労感みたいなのがのしかかってくる。
    何なんだろ。
    得物を展開せずに私を襲ったら、何も出来ずにあしらわれたのに
    今度もまた素手で来るとか何?物事を記憶できないの?
    それとも今度は手だけじゃなく、領域を展開しているから平気とか?
    予測とか想像とか、そういう類は頭の中に無いの?
    じゃあ、何が入ってんの?無駄な自信?
     「5秒後に殴りかかるぞ!」
    は?
    ……もう本当に嫌になる。
    何でコイツの相手をしなきゃならないんだろう。
    私は涼君を好きなだけなのに、何でコイツと絡まなきゃならないんだろう。
    あと何度私はこの思考と感情に囚われないといけないんだろう。
    コイツの心が潰れるまで、こういうのって続くんだろうか。
    何度も殺すって決めたし、実際にやるつもりだけど
    私の世界に、現実に、コイツが直接入り込んでくると
    どんどん粘っこい感情が内から沸いて、絡みついてくる。
    ……もういい、目の前の事だけでもさっさと終わらそう。
    えっと、あと何秒だっけ。
    何秒でもいいや。
    動。
    魔。
    私に向けて。
     (じゃ、いくわね。)
    解放する能力。
    結ばれる繋がり。
    行き渡り集う力。
    うん、十分ね。
    魔力を集めた響の拳が私に向かって伸びる。
    魔。
    能力。
    ユカとミチルの。
    左手。
    開いて。
    受け止めて。
    そのまま握りつぶす。
    皮膚を突き破る肉と骨。
    響表情が変わる前に私は右手で手首から先が潰れた響の右腕を掴み
    未だ残る突撃の勢いを誘導し、背負い投げる様に地面に叩きつける。
    地面に出来るクレーター。
    出来た凹みと対をなすように浮かぶ響の体。
    右手。
    腕を離して。
    拳。
    固く、強く。
    構え、狙い。
    響の顔を打ち抜く。
    ひしゃげる頭。
    飛び散る血と脳。
    同時に私の魔力が直接響の精神へ干渉する。
    燃える様な響の魔力が消えていく。
    ……通った様ね。
    やっぱりヨリコの能力強いわ。
    【五色】使いの私にとって、相手の精神に干渉するのに
    【黒】でスペルを描く必要が無いってだけでも大きいのに
    私の方で意識的な強化や調整無しでも
    プレインズウォーカークラスに効果があるなんて。
    ……でもまぁ、コイツがバカっていうのを差し引かないといけないわね。
    あと、ヨリコの能力を私の魔力をベースに使った訳だから
    今の魔力をしっかりと覚えておいて
    その上でこのバカにデフォルトだとどの程度効いているかしっかりと調べましょ。
    感触的には2時間ぐらいかしらね。寝てるの。
    ……映画の時間考えたら中途半端だったかな。まぁいいわ。
    叩きつけた拳は頭蓋を割り、地面のザラついた固さを感じていた。
    握っていた拳を解く。
    手にまとわりつく気持ちの悪い生暖かさと柔らかさ。
    ゆっくりと手を手を引き抜くと、赤く汚らしい液体がダラリと糸を引いた。
    周囲に飛び散った赤い血が急激に色を変えていく。
    それは地面に広がる髪から黒が溶け出した様に見えた。
    飛び出た骨と目、脳が黒ずんでいく大地の中で浮かんでいる。
    頭が潰れても痙攣し続けてる体が醜い事この上ないわね。
    この調子だと失禁もしてるんじゃないかしら。
    魔力
    【緑】
    私の魔力が離れたせいか、響の頭にまた【緑】の魔力が集う。
    ……死体が残らないのは助かるけど、正直これあんまり意味無いわよね。
    体が治っても意思がロックされてるんじゃ動けないし
    北斗みたいに相手の魔力があろうが片っ端から再生していくような強さも無い。
    ていうか、コイツの戦い方ってちぐはぐすぎるわ。
    能力を考えた場合、こちらに殴りかかる必要なんて全く無い。
    むしろ遠距離から火力を投げ続けて逃げ場を封じつつ
    安全地帯を構築していくのがベストでしょうに。
    ノノの能力を共有した私には投射系スペルは効果が薄くなるけどアンタは違うでしょ。
    直接的ではないにしろ、ノノの能力への解答の一つがアンタの能力でしょうが。
    【緑】系のバフだって、瞬間的なものより
    継続的なエンチャントの方が得意な筈よね。
    効果上限が低いのなら、火力で時間稼いでその間に重ねていけばいいじゃない。
    どうして理に適った動きが出来ないの?
    何故考えも無しにつっこめるの?
    涼君とパーティーを組んでいる時にコイツのカバーを何度したことか。
    思い出してまた気が滅入る。
    意味無い、出来無い、必要無い、考えない。
    無い無い無いないの空っぽをわざと選んでるんじゃないかしらコイツ。
    そういうキャラが受けるとでも?
    底の浅いキャラ付けね。
    いつも他に誰か居て、馬鹿な自分をフォローして貰えると思ったら大間違いよ。
    私は汚れた手を生み出した水で洗い、崖の下から上へと飛んだ。
    もう少し待てば潰れた頭が再生するから
    飛び散った肉片の処理も出来ただろうけれど、一度思考や感情を切っておきたかった。
    また無駄に待たせるのもよくないしね。
    スルスルと上がる高度と、土の茶から緑へと変わる足下の大地。
    微かに聞こえていた風を切る音は輪郭がハッキリとし始め
    到着する頃にはフィルターをかけないと声での会話が出来ないほど大きくなっていた。
     「また2時間ぐらい起きないけど、コハルもこっちに来る?
      映画か何か流すつもりだけど。」
    明るい緑の色をした先頭の竜の頭の上へと声を投げて。
     「よろしければご一緒させて下さい~。
      さっきはちょっと暇だったので~。」
    角の間にちょこんと座るコハルは私の言葉に笑顔で応えてくれて。
     「全体的に長く眠らせすぎてるわね。
      コハルには迷惑かけるわ。ごめんなさい。」
    もうちょっと精神攻撃に対するレジストを入れてもいいと思うけど
    そこまで警戒してくるのは次の次か、もっと先ね。
    次はまぁ得物の展開をするかしないかって感じかしら?
    能力無しで殺せば流石に使ってくると思うけど。
     「戦争中ですしお気遣いなく~。」
    ……コハルの方が状況を分かってるわね。
    …………
    ……私が言えた立場じゃないか。
    捕縛系スペルで退場にもせず、本気も出してない。
    私怨含みの戦いとはいえ、私もこの戦争を舐めてると取られる行動ばかりしてるわね。
    ……でも、やっぱりあの馬鹿だけは……。
     「ヒョウ君達はどうしましょう~?
      スペースが無いなら飛んでますが~。」
     「開けてるところだと崖下になるかな?
      離れてるけど響の死体があるから、それでもよければになっちゃうわね。
      上の森を整理するとなると、ちょっと大事になるかな。」
     「下で大丈夫ですよ~。
      日光浴もできますし~。」
    ドラゴンは恒温動物と言っていいけど、よく日光浴してる姿を見るわね。
    森の開けた所に長時間居座った痕跡を見つけたりすることも多いし。
     「それじゃ行きましょうか。」
     「はい~。」
    コハルを乗せたヒョウが動く。
    直後、その後ろにあった空に浮かぶ大きな質量も。
    ……コハルはヒョウを、ヒョウは自らの分身を創り出す。
    通常なら分身は魂に似せた魔力の塊だけれども、今は完全に肉体を得てるわね。
    ……全面戦争になった場合、うちの子達が負けるとは思えないけれど
    全員が無事っていうのも楽観視しすぎてる。
    ……私達は一人でも欠けたら戦力が著しく落ちる。
    もし、響がコハルとヒョウ達を巻き込んで戦う事を選んだのなら……。
    …………
    ……使いたくはないけれど、使わざるを得ないでしょうね……。

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