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第一次偶像戦争 【201】 [北斗 律子]
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第一次偶像戦争 【201】 [北斗 律子]

2017-12-14 22:59

     【伊集院北斗】

    火が空を走った。
    巨大な火が、空の向こうへと消えていった。
     「……やっぱり舞さん怒ってますかね?」
    真っ白い浜辺の上で、一緒に空を見上げる小鳥さんはそう呟いて。
     「どうでしょう。
      俺達を探してはいると思いますが
      さっきの火球は、警告というには見た目だけでしたね。」
    あれぐらいならやろうと思えばこの戦争の参加者なら誰でも出来るだろう。
    魔法陣を描く時間や、魔力効率を無視すればだけれども。
     「……警告ではなく、予告だとすれば……。」
    ……なるほど、予告か……。
     「その時は逃げましょう。」
    逃げられる時間ぐらいは作れるだろう。
    最終的な勝利への道は遠ざかってしまうかもしれないが
    ここで終わってしまっては元も子もない。
    静寂。
    波の音。
    途切れる言葉。
    隣の小鳥さんは、まだ空を見上げていて。
     「……初日に戦って、そこから舞さんのお城に行って……
      ……その帰りに、ともみちゃんのお家に寄って、飲み明かして……。
      ……なんていうか、嘘みたいに思えちゃいますね。
      今は穏やかすぎて……。」
    そう言った小鳥さんの表情には少しの影が刺していた。
     「……そういえば、初日に小鳥さんのアレが見られなかったのは
      使用に何か条件があるんでしょうか?」
    わざとぼやかして。
     「あれ……というと?」
    絡み合う視線。
    俺の目に映し出される疑問の色を少し混ぜた小鳥さんの瞳は
    さっきの会話の中にあった「あれ」を俺から引き出そうと
    可愛らしさという爪をほんの僅かに立て、自分の方へ引き寄せよせようとしていた。
     「雲を纏う奴です。」
    パッと小鳥さんの表情が晴れる。
    ……さっきもそうだけれど、小鳥さんの持つ無意識なあざとさみたいなのは
    男にとっては凶器でしかないな。
     「あぁ!あれですね!
      あれは……なんというか……
      ……そういやなんで使わなかったんでしょう?
      結構前のめりの時に勝手に使ってる感じだから
      途中で逃げるっていう意識が邪魔したんでしょうか?」
    考え込む小鳥さん。
     「あれ、綺麗ですよね。
      雷光が走る雲の中を、小鳥さんが踊っているようで。」
    雲間に見える小鳥さんの緑の髪。
    その手が振るう、大きな槍。
    消えては現れ、また雲を纏うその姿。
    初日に見られなかったのは、少し残念だった。
     「えぇ!?そそそそそんな風に見られてたんですか!?」
    赤面する顔を冷やすように頬に両手を当てる小鳥さん。
     「戦闘中に考える事では無いですが
      やはり綺麗なものには心惹かれますね。」
     「そんな……心惹かれるなんて……。」
    頬に当てていた小鳥さんの手はそのまま顔を覆ってしまって。
     「綺麗なだけではなくて、色々と戦いの参考にもなりましたから
      俺も似たような事が出来ないか試してみたんです。」
    動かす魔力は強く、そのままそれが外へと展開される。
     「えっ!?」
    小鳥さんの顔から両手が離れ、そのまま俺の方を見て固まってしまう。
     「……魔力……
      ……そこまで出しちゃって大丈夫……なんです?」
    小鳥さんの瞳だけが動いて、俺に問うてくる。
     「なので、すぐに逃げちゃいましょう。」
    さっきの火球が予告だとしたら、さっさと逃げた方がいい。
    丁度良い機会だし、色々と試した後、ここから離れよう。
     「……了解です!」
    小鳥さんは頷いてくれて。
     「……それでは。」
    俺は押さえ込んでいた感覚も全て解放する。
    新しい情報が一気に魂に流れ込む。
    ……やっぱりこっちに慣れる方が先だな。




     【秋月律子】

    クレープの生地を焼いていた冬馬の手が止まり
    丁度かぶりついていたリュウのクレープから、バナナとアイスが地面に落ちる。
     「律子さん……。」
    冬馬の手は私の方を見て。
     「……動いたは動いたけど、何か妙ね。
      あと、クレープ焦げるわよ。」
    慌ててクレープの生地をひっくり返す冬馬。
    それにしても、舞さんが動いたか……。
    もうちょっと我慢してくれるかと思ったけど
    現実はそこまで都合良くいかなかったって事かしら。
    ……しかし、妙な感じね。
    一応魔力は感じたし、何をやったか視覚でも確認出来たけれども
    感知系に何か手を加えていないのならば、威力はそれ程でも無さそうだった。
    範囲を重要視したのか、それとも見せる事が目的か……。
     「……どうしましょうか……。」
    冬馬は焼けた生地を大きな木のまな板の上に乗せて。
     「……動向は気になるけど、下手に動いても返り討ちにあうだけよ。
      斥候程度なら見逃してくれるかもしれないけど……。」
    ただ、本当にまだ序盤の序盤。
    開始してから一週間すらたってないから、戦力を減らす事は避けたいのよね。
    舞さんの眷属達も動いてるでしょうし。
     「……予定通りにいきましょう。
      最悪、舞さんに絡まれたのなら、あの二人も無理矢理巻き込んでいく感じで。」
    道中絡まれなくても、その後で絡んでくる可能性はあるのよね。
    舞さん的には初日と同じ展開だし。
    ……舞さん的には似たようなもんなんでしょうけど
    こっちからすればたまったもんじゃないのよね。
    舞さんとマトモに戦える相手っていうのが、そもそも限られてくるんだから
    数は同じでしょみたいに取られてしまうと……。
    ……ホントこのタイミングで動くとか止めて欲しかったわ。
    せめて10日、いや1週間でいいから我慢して欲しかった。
    …………
    ……いや、これまさか、モモカちゃん達が全滅したって事は……
    ……無い……事はないでしょうけど……。
    …………
    ……全滅はそうそう無いとしても、誰かが殺されて
    その報復で舞さん本人が動いたという線は……。
    …………
    ……舞さん達が探しているのは小鳥さんと北斗……。
    確かに二人の眷属は、モモカちゃん達を返り討ちに出来る……。
    ただ、眷属同士の戦いに舞さんが介入するかと言われると……。
    ……眷属同士とは限らないか……
    領土に入った段階で敵対行為と見なすパターンも……
    ……でも、モモカちゃん達は舞さんの眷属なのよね……。
    他の所ならまだしも、舞さんに攻める口実を与えるのは……。
    …………
    ……もっと素直に、小鳥さんと北斗の位置がバレたって事は?
    ……いや、じゃあ最初の火球の意味が分からない。
    あの程度なら眷属を殺すのも難しい。
    軌道が分かればもう少し読めたかもしれないけれど、ここからじゃ……。
    …………
    ……そういった情報まで取りこぼさずとはいかないのは分かってるけど……。
    …………
    ……いっそ伊織には話をつけておく?
    ……ダメね。
    逐一こちらの動きを把握できる伊織に
    手の内というか、目的を話しちゃうのはマズいわよね。
    放っておいても読まれる可能性は高いでしょうけど……。
    …………
    ……やっぱり伊織は無しね。
    むしろ伊織と舞さんを外した全員と連絡を取る方が……。
    …………
    ……そっちも難しいわね。
    情報面での圧倒的なアドバンテージがある伊織は狙われ易いから
    誰かと組んでる可能性は高い。
    その誰かが分からない内に、安易に接触をするのは……。
    …………
    ……やっぱり安パイから落としていきましょう。
     「うん!予定に変更無し!
      クレープ食べ終わったら行くわよ!」
    朝日の中、皆が頷く。
    かなり早く取った朝食と、何故かついてきたデザートと。
    私も残り少ないクレープを口に運ぶ。
    舞さんが動いた。
    けれども、舞さんの城を落とす事は出来ない。
    まだその実力を、私達は持っていない。
    火球を飛ばしただけで、城に帰っているかもしれないけれども
    私達に、私に、力があれば、舞さんと戦える事ができたのならば、確かめに行く事も出来た。
    確かめに行く事に意味があった。
    今はまだ、舞さんの行動に、気まぐれに、一方的に振り回されるだけ。
    それを変える。変えてみせる。
    今よりももっと、強くなって。

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