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第一次偶像戦争 【259】 [冬月律]
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第一次偶像戦争 【259】 [冬月律]

2018-04-16 21:42

     「お待たせ~☆」
    サキちゃんの元気な声に導かれ、色々なものを抱えた数人がコテージに入ってくる。
    ……これで全員か。
    …………
    ……下手な欲と動きは禁物だな。
    隠しているものを全て見ることは難しいし、出来ないだろうが
    見えている地雷ぐらいは回避しておくべきだろう。
    ……そう考えて安心している所もありそうだけど……。
    ……まぁ、やっぱりまだ早いな。もう少しゆっくりと条件を揃ってからでもいい。
    伊織ちゃんの件で共闘、もしくは漁夫の利を得られるかもしれないし。
    …………
    ……しかし、さっきの会話の中で
    もう一つの脅威である貴音ちゃんの話題が出てこなかったのが気になる。
    貴音ちゃんが律子さんと組むとは思えないから、今居る場所を知っているとか?
    それか、戦場が彩音ちゃんの領土の上という事で、安心している節があるんだろうか?
    ……安心しているのならば……。
    …………
    ……いや、この点はどうしようもないな。交渉が通じる相手とも思えないし。
    …………
    ……最初に戦う俺が暴れすぎると、貴音ちゃんが付け入る隙を与える事になる。
    ……彩音ちゃんの警戒をくぐり抜け、貴音ちゃんが介入してきた場合
    一番最初に叩かれるのは間違いなく彩音ちゃん。
    情報アドだけじゃなく、土地のマナのアドバンテージを奪えるのは大きい。
    …………
    ……あの二人の能力が真っ向からぶつかった場合どうなるんだろう?
    時間をかければ彩音ちゃんが有利か、それとも全く関係無いか……。
    ……やはり貴音ちゃんが出てくるのはマズいな。条件を追加しても回避した方がいい。
    あっちも貴音ちゃんと繋がりがあるとは全く思ってないだろうし
    ここはそれを匂わせて優位に立つよりも、安全を取っておこう。
     「こっちも大体デキました。」
    湯気が立つ大皿を手に、キッチンから出てくる彩音ちゃん。
     「持ってきた料理も並べたいから、皿貸してくれるか?」
    現れた彩音ちゃんに、冬馬君は声をかけて。
     「既に準備させてマス。
      キッチンの方へドウぞ。」
     「流石だな。助かる。」
    バターの香り立つ、キノコの炒め物をテーブルに置くと
    彩音ちゃんは冬馬君と一緒にキッチンに消えていった。
     「やっとお酒あけられる~。」
    向かいに座るアンズちゃんは、テーブルの上に顔を置きながらそう呟く。
    ボトルは既に並べられているのに、開けてはいけないというのは確かに酷だわな。
     「それじゃあ、氷とか色々用意してこようか。」
     「うっす。お願いしま~。」
    アンズちゃんの声に背中を押され、俺はキッチンへと急いだ。

    グラスから、周囲から、お酒の香りが漂い、満ちていく。
     「乾杯って感じでも無いデスが
      やらなきゃやらないで何か締まらないでスネ。」
     「シラフが多いなら、とりあえずやるのが慣例になっちゃってるからね。」
     「それジャ、久しぶりの再会にカンパイ。」
     「「乾杯。」」
    掲げられるグラスは、一気に傾けられ体に流れ込む。全員、共に。
    料理に伸びる手と、騒がしくなる部屋の中、俺は隣の彩音ちゃんに声をかけて。
     「始まる前に条件に少し追加する事にしたから。」
    ん。と二杯目をグラスに注ぎながら頷く彩音ちゃんと
    見なくても分かる、向かいのテーブルからのキツい視線。
     「先がいい?それとも今がいい?」
    向かいに。
     「今で。」
    視界に入ってくる料理を小皿に取る手を無視し
    俺と律子さんは強い視線を交換して。
     「最初の戦闘で場が荒れたのなら、場所を変えるっていうのが追加の条件かな。」
    律子さんに変化は無い。瞳もちゃんと、こちらを見ている。
     「……いいわ。」
     「ありがとう。貴音ちゃんの警戒もしないとだからね。」
    貴音ちゃんの名前を出しても変化は無いか……。
    やっぱり想定はしていて、あえて口に出す必要は無いと考えてたんだろうな。
     「貴音には会えていないんだっけ?」
     「そうそう。土地には全く手を出してない様だから
      居そうな場所も分からないね。」
    それは涼君も一緒。
    一応、それらしき魔力をフウカちゃんとナナミちゃんが確認はしているけれど
    どこかは分からないし、もっと言えば本当に涼君が居る場所を示しているのかも。
    ……舞さんは当然として、涼君も警戒すべき相手。
    やる気が無さそうだから今は放置しているけれども……。
    …………
     「律クンは次何飲みマス?」
    声をかけてきた彩音ちゃんに目をやると
    赤みが強い瞳に、ほんの少し心配しているような色を宿していた。
     「彩音ちゃんは何を飲んでるの?」
     「今は焼酎デスね。百年の孤独です。」
     「よければ貰っても?」
     「勿論デス。グラス用意しマスね。」
    彩音ちゃんはテーブルの上に纏めて置いてある使っていないグラスを手に取る。
    紙の巻かれたボトルのキャップは開かれ、空にグラスに焼酎が注がれる。
     「はい、ドウゾ。」
    彩音ちゃんの手から受け取るグラス。
    そこから漂う、少し重く、甘い香り。
     「っと、あんまり飲む気なかったノならすみマせん。
      知ってると思いマスが、それ40度なんで。」
     「大丈夫。今はゆっくりと味わって飲むよ。」
    受け取ったグラスを少し傾ける。
    度数の高いお酒特有の熱はあるけれども、刺激は少なくて
    口に含む前は重かった香りが、一気に花開く。
    ……美味しいお酒に、美味しい料理。
    やっぱり、退場するには惜しいな。俺は勿論、彩音ちゃんも。



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