第一次偶像戦争 【378】 [秋月律子]
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

第一次偶像戦争 【378】 [秋月律子]

2018-12-14 22:22

     「伊織はどうするの?」
    最後の一杯の雑炊を食べ始めようとする貴音を横目に伊織に問うてみる。
     「能力の名前?」
     「そう。早めに決めとかないと後で面倒よ。」
    舞さんが千早みたいに壊滅的なネーミングセンスをしてるとは思えないけど。
    娘の愛ちゃんはしっかりとした名前だし。
     「私の場合能力って感じでも無いのよね。
      魔力の性質とかそういうのに近いんじゃない?」
     「そこら辺は関係無いでしょ。
      舞さんが能力と見てるか見てないか
      そして舞さんより先に名前を付けているか付けていないかが重要なんじゃない。」
    本人の認識なんて関係無いのよね。日高舞には。
     「……いくつか考えておくわ。」
    早めに早めにって言ってるけど〆切りは次の次に舞さんに会った時でしょうし
    そんなに急かすもんでもないか。
    私は役目を果たしたんだから、それ以上は本人の問題よね。
     「……それにしても貴音が自分の能力に
      《MY FOOLISH HEART》なんて名前をつけると思わなかったわ。」
     「伊織も狙っていたのでしたら早い者勝ちですよ。」
    貴音はそう答えるとまたレンゲを動かして。
     「アンタの事だから食べ物飲み物辺りから
      名前を引っ張ってくると思ってたから意外ってだけよ。
      カクテルの名前辺りだと良いのが揃ってるでしょ。
      アンタの【色】を会わせてBlack Velvet辺りとか。」
    カクテルか……確かに良さそうなのは揃ってるわね。
     「美しい名をありがとうございます。
      ただ、食べ物や飲み物の名にしてしまうと
      それを注文する時に私の能力を指すのか食べ物や飲み物の方を指すのかで
      混乱させてしまうと思い、こちらにしました。」
    歌の名前も混乱させる時があると思うけど……まぁ本人がいいのなら別にいっか。
     「……多分無いと思うけど、名前が被った場合どうなるのかしら?」
     「その時は当人同士で話し合うか殺し合うかすればいいでしょ。
      縛り無しで十数名の能力を決めるのに名前が被るって
      意図的な嫌がらせでも無ければ運命的なものを感じるレベルだから
      色々と拗れるかもしれないけど。」
     「色々と拗れるって何よ。」
     「名前の取り合いで終わらない可能性もあるって事よ。
      具体的な所で涼の能力名が他の誰かと被った場合
      響がもの凄い絡んできそうでしょ?」
     「……確かにね。」
    涼の能力はかなり特殊だし、名前を能力に寄り添ったものにするのであれば
    被る事は早々無い。
    ……でも能力と名前が全く関係無い感じだと……。
    ……私が一番被る可能性があるのか。『月』っていう単語が入ってくるかもしれないから。
    陶器の音。
    カランと、静かに響く。
     「ご馳走様でした。
      大変美味しゅうございました。」
    貴音はそう言うと調理をした冬馬にも軽く頭を下げた。
     「食後酒はいる?」
     「あるのでしたら頂きたいです。」
     「ブランデー、グラッパ、ウィスキーに貴腐ワインとかもあるわね。」
     「でしたらグラッパを。」
     「分かったわ。私も貰おうかしら。
      冬馬はどうする?伊織は……いらないわよね。」
     「なら俺も。」
     「私は要らないわ。」
    サキに目配せをすると
    小さいくびれた花瓶に足がついた様なグラッパグラスが手際よく用意された。
    ……何となくいつものノリで食後酒を勧めちゃったわね。ホント何やってるのかしら。
     「どうぞ。」
     「ありがと。」
    繰り返されたやり取りもこれで最後。
    …………
    使い終わったグラスの片付けを片付けをするサキと目が合う。
    ……サキも分かってるわね。
    なら、もう後はこれを飲み終わるだけ。
    貴音がグラッパの注がれたグラスに手を伸ばす。
    隣。
    視線。
    瞳。
    私は冬馬との最終確認をした後、貴音と同じようにグラスに手を伸ばした。

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。