第一次偶像戦争 【385】 [四条貴音]
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

第一次偶像戦争 【385】 [四条貴音]

2018-12-28 22:22

    グラッパの熱。鍋ともおじやとも違う臓腑を、血を、直接揺さぶるような熱さ。
    ゆっくりとわたくしの体の中に染み込んでいく。
     「そろそろ食事も終わりかしら?
      何かあるなら早めにね。」
    一緒に飲んだのに、律子はこの余韻を楽しまなくてもいいのでしょうか?
    この熱を、この香りを味わいながら、今し方食べたものを思い出し
    これから食べる物に思いを馳せる、まこと楽しき時間……。
    ……律子も分かるでしょうに、すぐさま終わらせようとするのは
    わたくしにとっては久しぶりでも、律子にとってはいつもの事だからですか?
    それとも、もっと楽しく思える事が控えているからでしょうか?
    ……わたくしのうかがい知らぬ間に、律子は大分変わった様子……
    声。表情。空気。それらの大本である心もきっと……。
     「私は特にないわ。」
    ……結局、伊織は何も食べずに終わるのですか……。
    機械の体なので食事が必要無いとはいえ、すとれすは溜まるもの
    ちゃんと肉体を持ち、食事をするという楽しみを
    こういった戦争の日々でも行っていればいいのですが……。
     「わたくしも……。」
    まぁ、伊織の事ですしちゃんとしているでしょう。
    わたくしが下手に心配するのは失礼というものですね。
     「貴音はお酒を持ち帰らなくても?」
    こういった気遣いは前の律子と変わりませんね。
     「ええ。自分で持ってきた分もありますし
      何より下手に持ち帰ってしまうと、頂いた料理が恋しく……。」
    そう……今日頂いた物は全て美味で……
    恐らく、あと一ヶ月以上、これと同等の食事は……
    …………
    ……あぁ……なんといけずな……想像しただけでもう……
     「わかったわ。それじゃあ、もう全員何も無しなのね。」
    ……先の事を考えても仕方がありませんね。
    今は未だ僅かに体に残るグラッパの余韻を最後まで楽しんでいきましょう。
     「サキ。ルミさん。」
    律子の声。
    サキとルミ、そして律子と天ヶ瀬冬馬の魔力。
    放ち、集い、場が動き始める。
    ……まだ僅かにグラッパの残滓はわたくしの中で熱と香りを放っていますが
    最後までキッチリと楽しむ事は出来ない様ですね。
    強いマナ。
    天ヶ瀬冬馬の魔力が混じる、浮遊城のマナが遠く、開放される。
    反射的に魔力を開放する伊織。
    わたくしも伊織の魔力の開放に合わせ、自身の魔力を外に出して。
    ……一連の動きよりも伊織の反応が遅れていたのはわたくしのせいでしょうか?
    伊織の側につくと言った筈ですが、信用はされていない様ですね……。
    わたくしが先に魔力を展開してしまいますと、より警戒されると思いましたが
    やはり信頼が無ければ意思は上手く伝わらず
    上手く伝わらなければ上手く噛み合いもしませんね……まこと難しいものです。
    ……ですが既に幕は上がってしまいました。
    ……それではわたくしも舞台に立ちましょうか。
    音。
    周りから。
    壊れる、崩れる音が。
    周囲に満ちるマナと律子の魔力。
     「アンタ!」
     「ん?戦闘開始の合図でもすると思った?」
    これは律子の言い分が最もですね。
    律子と天ヶ瀬冬馬を囲う様に走る魔力の流れ。
    次の瞬間、世界は全て黒く塗りつぶされて

    魂だけを掴み引き寄せる力
    ふむ
    しかし、今のわた

    展開した魔力を焦がす熱
    ……なるほど【Damnation】と共に【Armageddon】ですか……
    わたくしの能力……
    ……いえ、わたくしの《MY FOOLISH HEART》を嫌っての一掃ならば
    この黒と光に乗じて動いてくると思いますが……
    …………
    ……気配も無く、直感も働かず……
    ……やはり動いてきてはくれませんか
    触れる事が出来れば
    魂までとはいかなくても、魔力にだけでも触れる事ができたのなら……
    しかし、動いてこないとなると、これは……
    体に廻る魔力を強
    【赤】
    ッ!

    衝撃


    痛み
    肌を、体を焼く痛み
    黒で染められていた世界は今は噴き上がる炎に全てを焼き尽くされて
    ……やはりそう来ましたか……
    しかし、それならば……
    机と椅子は既に吹き飛び、わたくしも僅かに吹き飛ばされた模様
    床の感触は無いものの、瓦礫なのか、周囲に物はある様ですね
    わたくしは両の手に魔力を集める
    伊織も動いているでしょうか?だとすれば、位置に気を付けねばなりませんが……
    ……こういった状況では致し方ありませんね。
    わたくしは炎の生み出す光の世界を記憶と直感を頼りに飛ぶ
    恐らく使われたスペルは【Obliterate
    生まれた炎の勢いは弱まっていない所を見ると
    瞬間的な爆発や光ではなく、直接炎の形で顕現させたもの
    という事は大本にある【赤】の魔力はまだ生きている
    そこに行けば

    魔力
    炎の向こう
    イージスの、律子と天ヶ瀬冬馬の
    そして
    別の【赤】も
    次の一手
    恐れと、快感がわたくしの背中を走る

    冬馬が
    そうなることは
    わたくしは両手の内に滾らせた魔力を外へ
    そして全身全てからも、外へと魔力を展開する
    触らばそこから

    厚く
    重い
    しかし
    わたくしの魔力が冬馬に侵入する
    ッ!
    弾かれる感覚
    魂も、肉体も、両方とも
    かなりの防御系スペルを重ねての一撃
    そして【Obliterate】の炎
    この炎の中では触れたあと繋がりを維持するだけでも相当な魔力が必要
    ……受け身では難しい様ですね
    ですが、この炎の中では冬馬、貴方の速さも殺されております
    次はわたくしの一撃を

    直感が走る
    それも嫌なもの
    しかし、律子がわたくしを逃がすとは思えません
    それならば、わたくしがとらなければならない道は
    わたくしは再び勘を頼りに炎の中を飛んで

    悪い予感が強くなる

    消える
    水が
    熱持つ奔流が
    下からわたくしの体を攫って

    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。