第一次偶像戦争 【515】 [我那覇響]
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第一次偶像戦争 【515】 [我那覇響]

2019-09-18 22:22

    ぐるりと体勢が変わる。
    体全体がゆらゆらと揺れ始めるのが分かる。
    一連の動きを覚えてる。割としっかり目に。忘れない。忘れてない。
    あ~……。
    視覚が認識していた光を意識が受け取って処理し始める。
    ……そっか。もう朝なのか……。
    ん~……。
    ハンモックの中で体を伸ばすと、また少し揺れが強くなった。
    ……これで寝ることにも慣れてきたけど
    正直普通のベッドか布団の方がよく眠れそう。
    前々から憧れてたから後悔は無いけど、これから先ずっとってのも考え物だな。
    外で寝てみたいってのと一緒に一旦置どこかに置いておくのもありかもしれない。
    まだまだ先は長いんだしね。
    伸ばした足をハンモックの外に出す。
    体重を足の方に持って行くとフライパンからするりとお皿に落ちるオムレツみたいに
    自分の体はハンモックの外へと出た。
    指先から着く地面。ひんやりとした土の感触を足の裏で確かめてから
    傍に居るヒョウと、その背中に目をやる。
    ヒョウとコハル。木々の隙間から僅かに入ってくる朝の光に照らされた二人は動かない。
    まだ寝てるのかな?自分、確かに今日は麗華の所に行くって言ったよね?
    まだ少し時間はあるし、平気だけど……。
    …………
    ヒョウとコハルの方に視線を残しながら慎重に足を地面に置いていく。
    静かに、静かに、気づかれない様に……。
    綱渡りでもしている様に、足の指先で地面を確かめたあと
    足の裏全体を置いていき、それからやっと体重を移す。
    音を立てないように。気付かれないように。
    ……ん?
    ……あれ?
    なんで自分がコソコソする必要があるんだ?
    夜に何かやってたのはコハルだし
    大体ここは自分の土地だし、コハルは自分の眷属だし……。
    ……でも、コハルに聞いても教えてくれるか分からないし……。
    …………
    ……むぅ……
    自分の視界の中に居るコハルは、ヒョウの背中の上で
    少し丸まりながら、すやすやと眠ったままで。
    ……とりあえず確認だけはしておいた方がいいよね。
    そこから先は……コハルが言ってくれるかどうかとか……。
    ……コハルもここが自分の土地だってことはよく分かってる。
    なら、自分に伝わる事を承知の上で行動したんだよね。
    別に裏切るとかそんなのは思ってないし
    コハルにはコハルの考えがあって行動したわけだから
    自分の方から聞くのは止めた方がいいかな?
    ……う~ん、でも気になるぞ。
    ……自分で言うのもなんだけど、こういうの気になり始めると止まらなくなるから
    自分の方から聞かない方がいいって思ってても、多分聞いちゃうんだろうな……。
    ならせめて教えてくれなかったときに「うぎゃー!」とか言わないようにしないと。
    コハルにも色々あるよね。教えてくれないのは寂しいけど……。
    …………
    ……そういや、どうして教えてくれないことが前提になってるんだ?
    …………
    ……
    やめやめ!とにかく確認だけして、あとは麗華との戦いに集中するぞ!
    今日こそ決着をつけてやるんだ!その為に準備してきてるんだし!
    うん!そっちに集中!
    もう振り返る様な姿勢になっていた体を前に戻す。
    お目当ての崖まではあと25メートルぐらい。
    さっと行って下を見て確認して終わり!としたい所だけど
    自分の足取りは結局変わらず、抜き足差し足で切り立った崖の上まで来てしまう。
    まぁ、コハルがやった事とコハルを起こす事は別だよね。
    よく眠ってるみたいだし、やっぱりギリギリまで寝かせてあげよ。
    うんうんと納得した後、少し息を吐いて崖の上から下を眺めてみる。
    森の中に出来た丘の上に100頭以上居るドラゴン。
    ……やっぱり数が減ってるぞ。
    潰れた薮が変色したり
    そこから更に新しい植物が生えてきたりして斑に見える丘が
    昨日よりもずっと多く見える。
    ……散歩?それとも警戒?
    う~ん……。
    自分は考えながら崖から足を出す形で座り込む。
    今日は麗華の所へ行く予定……。
    自分を倒す気なら、それが終わった後の方がいいよね。
    けど、その予定を知ってるのは麗華だけだし……。
    ……伊織も?
    ……伊織相手に警戒?
    ……むぅ……。
    …………
    ……あっ!そうか!麗華が道中ちょっかいを出してくるかもしれないんだ!
    アイツ自分が今日終わらせる事を……。
    ……今日終わらせるつもりってコハルも知ってる?
    誰にも話してないと思うけど……。
    ……む~……わかんないぞ……。
    あ~!ダメだダメだ!集中するって決めたのに!
    この場所が悪いんだな!見ないようにしよう!
    さっき座ったのにすぐ立ち上がるって、なんだかバカみたいだけどそれも無視!無視!
    乱暴に手をついて体をよじりながら立ち上がると
    ヒョウの背中の上のコハルが生まれたばかりの小動物の様に
    モジモジと動いているのが見えた。
    コハルも起きる?
    話してくれる?
    集中しないといけないのに、やっぱり気になる事の方に引っ張られる。
    気持ちだけじゃない。体も無意識の内にコハルの元へと向かっていた。
    ちょっとだけ感じる緊張。
    でも、自分は信用してるぞ!コハルの事を!たとえ話してくれなくても!
    ……うん……。たとえ話してくれなくても……。

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